最新の成果

 SARS-CoV-2あるいはCOVID-19について、世界中で精力的に研究が進められています。
 基礎的な研究では、ウイルスが細胞に侵入するしくみが少しずる分かってきたようです。SARS-CoV-2が、2型アンジオテンシン変換酵素受容体(ACE2 receptor)を受容体として細胞に侵入することについてはすでに触れました(「コロナウイルスの特徴と新型コルナウイルス」)。ウイルスが細胞に侵入するには、この受容体がウイルスのスパインタンパク質と結合するだけではなく、もう一つ酵素が必要なようです。この酵素はTMPRSS2transmembrane protease/ serine 2)と呼ばれているセリンプロテアーゼで、SARS-CoVと同一のしくみであることが報告されました(https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30229-4)。また、日本のグループもTMPRSS2があると、SARS-CoV-2の感染効率が高くなることを報告しました(https://www.pnas.org/content/117/13/7001)。TMPRSS2は気道上皮に発現していることも分かっており、インフルエンザウイルスの感染についてはかなりしくみが分かっているようです(http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/005040172j.pdf)。その阻害剤もすでに研究されているようですから、今後の治療薬の開発につながるかもしれません。

 また、国内の症例に関する報道を見る限り、軽症状態から一気に悪化するなど、COVID-19の症状は一般的な肺炎の経験則が通じないようです。肺の状態も一般的な肺炎と異なるようですし、かなり全身性の症状もあるのでしょう。最近発行されたアメリカの科学誌“Science”に、論文とは別にこれまでの多くの論文をまとめて紹介する形で、わかりやすく図解された記事が掲載されました。読み込んでいるわけではありませんが、図の部分だけを簡単に紹介します(正確な翻訳ではありません、念のため。https://www.sciencemag.org/news/2020/04/how-does-coronavirus-kill-clinicians-trace-ferocious-rampage-through-body-brain-toes?utm_campaign=news_daily_2020-04-20&et_rid=79656768&et_cid=3293026)。

 重症化した場合、SARS-CoV-2は肺に重篤は症状を生じるが、多くの多の器官におよび、以下のような症状が観察されている。
1.肺:ウイルスの攻撃によって炎症を起こした肺胞または気嚢の壁が免疫細胞の作用によって破壊される。炎症を起こした肺胞または気嚢では免疫細胞が密集している様子が観察されているようだ。この結果、酸素の取り込みが減少するため、患者は咳をし、熱がでて、呼吸が困難になる。
2.肝臓:入院患者の最大半数は、血液検査で得られる酵素活性から判断して肝臓の状態が悪化している。 免疫系の過剰反応と投与された薬によって肝機能が低下していると考えられる。
3.腎臓:重症の場合に腎臓の損傷がよく見られ、この結果、死亡する可能性が高くなる。 ウイルスは腎臓を直接攻撃する可能性がある。また、血圧の急速な低下のような全身性の症状の一つとして腎不全が生じる可能性がある。
4.腸:患者の報告と生検データから、ウイルスは下部消化管に感染するようだ。これは、ウイルスの受容体として機能するACE2受容体が下部消化管に豊富であることを示唆している。 患者の約20%以上が下痢を呈する。
5.脳:一部のCOVID-19患者は、脳卒中、発作、錯乱、および脳の炎症を起こしている。ウイルスによって何が起きているのかはまだよく分かっていない。
6.眼:結膜炎は患者に最も共通してみられる症状である。
7.鼻:一部の患者は嗅覚を失う。 おそらく、ウイルスが嗅神経を終末から移動して細胞体に損傷を与える可能性があると推測されている。
8.心臓、血管:ウイルスは、細胞表面にあるアンジオテンシン変換酵素2ACE2)受容体に結合することにより、血管内皮細胞に侵入します。 感染は、血栓、心臓発作、心臓の炎症も促進する。
 
 スペイン風邪(Spain-flu)は知っていますね。19181919年にかけておこったインフルエンザのパンデミーです。ちょうど第一次世界大戦中で、世界中で2000万人胃以上がなくなったそうです。アメリカから始まったとのことですが、スペインが第一次世界大戦では中立の立場を取っていたため、全ての情報がスペインから発せれたためにこの名があるそうです。
 原因ウイルスはH1N1型で、当時としては新型のインフルエンザウイルスであったため、集団免疫もなく、世界的に大流行しました。亡くなった方々の多くが、呼吸器系のみならず、全身に内出血をしていたそうです。つまり、ウイルスが気道粘膜だけではなく、全身の血管(たぶん内皮)にも侵入していたということでしょう。