第5回 サイトゾル、細胞骨格、細胞小器官

 今週の授業は細胞小器管の構造と機能を順に取り上げていったため、やや雑ぱくな内容になりました。サイトゾルや細胞骨格を含めた各小器官の機能は、これから考えていく器官や組織のはたらきを直接に担っています。生理学Ⅰ&Ⅲでは、ある器官や組織、細胞の機能を考えるときには、具体的にどの細胞のどの小器官が関わっているのかに触れていくつもりです。自分でもけその都度よく考えるようにしましょう。

 サイトゾルは細胞内で生じる多くの化学反応の場です。細胞内である反応が生じているという説明があった場合、小器官が特定されていなければサイトゾルが舞台となっていると考えていいでしょう。ATP産生のための解糖系やグリコーゲンの合成と分解、あるいは赤血球中でヘモグロビンが存在するのもサイトゾルです。また、細胞外からの刺激が細胞内に伝わっていく場合も、サイトゾルでさまざまな分子の移動や化学反応が生じています。

 ところで、サイトゾルの「ゾル」とは、全体がコロイド溶液になっている状態をさします。したがって、流動性はあり、化学反応の進行にも支障のないようになっています。ただ、一般的な細胞の条件では、細胞質の周辺部分(膜近傍)には微小繊維などが豊富であるために、粘性が高い状態(ゲルといいます)になっています。

 細胞骨格については、3種類、特に微小繊維と微小管の構成が重要です。繊毛、鞭毛、微絨毛は、いずれも生理学Ⅱ&Ⅳや解剖学で学ぶ内容に関わっていますが、ここで頭に入れてしまいましょう。アクチンは非常に有名なタンパク質で、微小繊維を構成すること以外にも役割があります(『生理学Ⅰ第5章』で取り上げます)。微小管は骨格であると同時に、細胞内での小器官の移動にも必須の役割があります。これも別の機会に取り上げます。

 細胞小器官は、一区塚に分けて説明をしました。タンパク質の合成や加工・修飾、運搬に関わっているのがリボソーム、粗面小胞体、ゴルジ装置です。第2章第6節遺伝子発現のしくみで改めて取り上げますが、それぞれの構造や互いの関わりについておさえておきましょう。

 同じ小胞体でも、滑面小胞体は非常に特殊な位置づけです。生理学Ⅰ&Ⅲでは筋細胞における役割について触れます。

 リソソーム、プロテオソーム、ペルオキシソームの3種類は、細胞内での分解や処理にかかわる小器官です。特にリソソームは多様なはたらきをもっているため、研究も進んでいます。参考として上げら「オートファジー」はその代表です。プリントには図と簡単な説明しかありませんでしたので、追加で説明文を配布しました。改めて解説することはありませんので、各自で目を通しておくように。

 ミトコンドリアはATP産生のための小器官です。ただし、サイトゾルで生じる解糖系が非有酸素反応(酸素を消費せずにATPを産生する)であるのに対して、ミトコンドリア内で生じるクエン酸回路と電子伝達系は有酸素反応(反応の進行に酸素が必須)です。すでに学んだ赤血球にはミトコンドリアがありません(他の小器官もほとんどありません)から、赤血球は有酸素反応によってATPを産生することができません。

 細胞小器官の構造を考える上で忘れてならないのは、小胞体、ゴルジ装置、リソソーム、ペルオキシソーム、そしてミトコンドリアはいずれも膜によってできているということです。これらを細胞内の「細胞内膜系」としてまとめることもありますが、いずれも細胞膜同様に脂質二重膜(+膜タンパク質)によってつくられています。ミトコンドリアだけが膜が二重になっていますが、他はすべて1枚の膜によって、サイトゾルとその小器官の内部が仕切られています。細胞膜とこれら小器官の膜を合わせて『生体膜』ということがあります。来週の授業で追加プリントを配布して、これらの細胞内膜系小器官の成り立ちを解説します。