2018年度 第8回 受動輸送

 前期も半ばにさしかかりました。勉強のやり方やペースがつかめてきましたか? 他の科目のことは分かりませんが、生理学Ⅰはここまでの内容がしっかり理解できていないと、来週以降の授業はかなり苦しくなります。もし不十分だと思うところがあれば、早めに復習しておきましょう。毎回の小テストや各章末の要点のまとめを参考にして整理すると効率がいいでしょう。

 今回は冒頭でタンパク質の輸送について簡単に補足しました。来週の授業でもう一度見て説明するところがあります。

 さて、中心は受動輸送ですが、広義の拡散についてもおさらいをしておきましょう。当たり前のことを説明したまでですが、液体の分子が常に運動しているということは何を考えるにしても重要です。

 簡単に補足しておくと、分子が運動エネルギーをもっているということは、すなわち温度があるということです。「絶対温度」を知っているでしょう。ケルヴィン温度ともいい、”K”であらわします。温度感覚は摂氏温度と同じで、「摂氏温度+273.15」であらわします。絶対温度が0K(絶対0度とよばれることもあります)は摂氏-273.15度にあたり、この温度ではすべての原子や分子が運動しなくなります。逆に言うと、この温度よりも高い温度では、温度に応じたエネルギーを持つため、物質はエネルギー量に応じて運動することができます。したがって、室温ではすべての分子が運動エネルギーを持ち、液体あるいは溶液中では「ランダムに運動している」=「動いている」わけです。このような運動の結果、溶液中では必ず拡散(広義の拡散)が生じます。

 受動輸送は、細胞膜を間に挟んだ状態で上のような拡散が生じていると考えるといいでしょう。ただ、細胞膜を通過するためには物質の性質によって通り道が異なり、授業で説明した3通りが使われます。

 単純拡散は、文字通り最も単純なしくみです。細胞膜の基本構造である脂質二重膜を通過できる物質は、低分子量で滑非極性(または極性が低い)物質に限られています。授業では例も挙げましたが、他の科目で触れられることもあるはずですから、その都度よく見直しをしましょう。

 膜チャネルは今後も何度も取り上げます。チャネルとよばれる膜貫通タンパク質がつくる通路を、比較的小型の分子が通過します。非極性であれば単純拡散で輸送できますが、極性が強い分子(イオンなど)では脂質二重膜を通過できないため、そのような多くの分子は膜チャネルを通過します。

 促進拡散では、チャネルタンパク質が提供する通路では小さくて通過できないような大型の極性のある分子が、キャリアタンパク質がつくる通路を通過します。分子の大きさの比較がしにくいかもしれませんね。ナトリウムイオンなどの単原子のイオンは所詮原子1個ですが、グルコースのように24個の原子からなる分子は明らかに単原子よりも大きいです。したがって、グルコースが通過できるようなチャネルがあると、細胞膜にかなり大きな「穴」が空いていることになり、一緒にいろんな物質が通過してしまいます。そこで、やや特殊なしくみができあがったのではないでしょうか。

 浸透、浸透圧は生理学では非常に大切な概念です。もし理解しにくい場合はいつでも質問を受けます。できるだけ早めに頭に入れてしまいましょう。細胞内外には細胞膜の厚みや面積に比して、大量の液体(水溶液)が存在し、それぞれの溶質濃度はいずれも非常に低いと考えていいでしょう。したがって、溶質の拡散を考えるときに同時に溶媒である水の拡散(=浸透)を考える必要はありません。しかし、水が細胞膜を通過する現象を考える場合には、溶質濃度(脂肪膜を通過できない溶質濃度)を考慮に入れて、水が移動する方向を考えます。『生理学のための化学』での最後にふれた「膠質浸透圧」がその一例です。

 授業では最後に溶血のビデオを見ました。何らかの理由で赤血球が破壊されることを一般に「溶血」といいます。ここでは、赤血球が極端な低張液(水)に曝されたことによって破裂されています。これが血液中への注射液を水でつくってはいけない、生理食塩水を使わなければいけない理由です。

 来週は、能動輸送、小胞による輸送を概観し、その後第3章へ入ります。