2017年度 第5、6回 細胞小器官、細胞分裂、DNAとその複製、遺伝子

 前回分のまとめをうっかりと忘れておりましたので、まとめて掲載します。

 細胞小器官は種類が多く、先週の授業の内容だけではその役割がなかなかピンとこないかもしれません。ややもすると丸暗記したくなりますが、その細胞がどのような細胞小器官を多く備えているのかということは、その細胞の機能とよく一致します。名称と簡単な構造と機能は覚えないとどうしようもありませんが、他の科目で学んだ(あるいはこれから学ぶ)内容などと結びつけて理解するようにしましょう。

 例えば、生理学2で学んだ好中球やマクロファージは食作用(貪食作用)を発揮して、広く生体の防御に関わっています。これらの細胞は、微生物や外来異物を小胞に包まれた状態で細胞内へ取り込みます。その後、小胞は細胞質のリソソームと融合し、リソソーム内に含まれている分解酵素の作用によって取り込んだものを分解・消化します。マクロファージは寿命に達した赤血球や血小板を取り込んで分解するためにも機能しています。このような作用についても来週の授業で取り上げます。

 オートファジーは同じリソソームが関わった機能でも、多くの細胞に共通しています。

 授業で紹介した膵臓外分泌細胞は、膵臓の大部分を占めており、大量の消化酵素、すなわちタンパク質を産生して細胞外へ分泌しています。分泌された消化酵素は、膵臓から十二指腸へ排出されて消化管内で食物の分解・消化に与かります。従って、粗面小胞体とその表面にあるリボソーム、さらにはゴルジ装置を多く含んでいます。生理学2の消化器系で取り上げられるでしょう。また、来週の授業では、このような分泌タンパク質の合成と細胞内での輸送について取り上げます。

 また、前期の最後で筋細胞の構造と機能について考えます。筋細胞が収縮、弛緩するときには大きなエネルギーが必要です。このエネルギーの源になっているのはATPです。したがって、筋細胞は大量のATP
を産生する能力を持っています。そのうち、サイトゾルでは解糖系とローマン反応という化学反応によっていますが、さらに、ミトコンドリアを大量に備えており、ここでATPを産生しています。

 中心体と微小管の役割については今日の授業で少し触れました。細胞が分裂するときに、染色体を誘導するために必須です。また、微小管は別の機会にも触れることがあると思いますので、それらと合わせて細胞骨格の役割を理解しましょう。

 さて、今日の授業の中心は染色体とDNAでした。『生理学のための化学』に詳説したので不要だったかもしれませんが、現在の生命科学における常識といっていいでしょう。十分に理解しておく必要があると思いますので、今日の授業の内容と『生理学のための化学』あるいは他の成書を合わせて自学自習しましょう。

 DNAの構造を理解する上でポイントになるのは、相補的な塩基同士が向かい合って二重ラセンをつくっているということです。塩基の構造は詳しく説明できませんでしたが、相補的な塩基同士がかみ合うように水素結合をつくっています。DNAはヌクレオチドが多く連続していますから、非常に長い二重ラセン構造をつくっています。ヒトゲノムが全部で約34億塩基対として、染色体1本当たり約1億5千万塩基対ということですね。1細胞分のDNAが単純にゲノム2セット分とすると、全部を1本につなぐとおよそ2mです。

 ところで、生理学は生体の機能を考える学問ですが、いきなり機能を考えられるわけではなく、あくまでも構造を基礎にして考えていきます。分子レベルでの現象を考える上でも同様で、DNAの構造について毎年同じ説明をして、説明を重ねるほどにそのみごとな構造に驚嘆します。DNAの複製のしくみ、さらに来週取り上げるDNAからRNAへの転写のしくみを考える上で欠かせない知識ですので、よく復習しておくように。

 最後に遺伝子についてとりあげました。説明したように、いくつかの定義がありますが、授業ではタンパク質の構造(具体的にはアミノ酸配列)とRNAの配列(同様に、RNAを構成する塩基の配列)を決める情報にあたる部分を合わせて『遺伝子』とします。今後の授業ではタンパク質の機能に焦点を当てた説明が多くなりますが、DNAの塩基配列という形で多くの情報が保存されていると理解しておきましょう。

 今日配布した『ゲノムマップ』は、『周期表』や『細胞』と同様に、『一家に一枚』シリーズです。相変わらず小さな持ちで見にくいと思いますが、余裕があればダウンロードして拡大して見てください。他のチャートと同様に、科学館のミュージアム・ショップで販売されていると思います。ピックアップして説明されているのは、いずれも有名なタンパク質のアミノ酸配列を保存した遺伝子ばかりです。ヘモグロビンやABO式血液型に関わる酵素、今日取り上げたDNAポリメラーゼ、今後の授業で取り上げるアクチンやミオシン、ロドプシン、神経伝達物質の受容体、さらに消化酵素であるアミラーゼ、インスリンやプロラクチン、これらホルモンの受容体、そして免疫グロブリン、いくつかの疾患の原因となるタンパク質など、幅広く取り上げられています。

 分子レベルで生じている現象を実際に目できることはできません。授業で使っている図は数ある教科書類の中で分かりやすいものを選んでいます。想像力を働かせましょう。

 来週は遺伝子発現を実現している転写と翻訳という2つの現象、そして産生されたタンパク質が細胞内でどのように運搬されていくのかを考えます。その後、改めて細胞膜について、構造だけではなく機能について考えていきます。