2017年度 第10回 活動電位、興奮の伝導と伝達

 今回の内容は前期の中でも特に重要です。これまでに学んだ内容が頭に入っている必要がありますが、一つ一つは難しい内容ではありませんので、不十分なところは前を振り返りながらよく復習してください。特に、細胞内液と細胞外液の組成の違い、細胞膜のイオンチャネルの特徴をよく見直しておく必要があります。
 前回リンクを忘れましたが、静止膜電位については
ここここに詳しい説明をまとめましたので参考にしてください。

 活動電位は刺激依存性イオンチャネルの作用によって生じた脱分極が閾値に達することによって生じます。脱分極が閾値に達すると電位依存性ナトリウムチャネルが開放し、ナトリウムイオンが細胞外から細胞内へ移動するため細胞内がさらに陽性に変化します。あくまでも電位依存性ナトリウムチャネルの近傍に限られますが、細胞内へ入るナトリウムイオンの量が非常に多いため、細胞内のほうが細胞外よりも陽イオンが多い状態、つまりオーバーシュートします。細胞内が細胞外に対して正の状態になると、電位依存性ナトリウムチャネルが閉鎖し、逆に電位依存性カリウムチャネルが開放します。これら2つのイオンチャネルは細胞膜に近接していると考えていいでしょう。この結果、細胞内へ入るナトリウムイオンはなくなり、細胞内から細胞外へカリウムイオンが移動します。この結果、細胞内の正の度合いが低下し、さらには細胞内が負となり静止膜電位を回復します。

 いったん静止膜電位に戻っても、細胞内に入ったナトリウムイオンと細胞外に出ていったカリウムイオンはそのままです。つまり、元々の細胞内外のイオンの濃度は回復していません。単に陽イオンと陰イオンの総量=電位が回復しただけです。したがって、この後で細胞内に入ってきたナトリウムイオンを細胞外へ運び出し、細胞外へ出て行ったカリウムイオンを細胞内へ戻す必要があります。このために、後電位の期間はナトリウム・カリウムポンプが作用しています。

 局所的にはイオンチャネルがはたらき、オーバーシュートしていても、細胞内も細胞外も全体としては、ナトリウムイオン濃度は細胞外が高く、カリウムイオン濃度は細胞内が高い状態です。したがって、ナトリウムイオンを細胞内から細胞外へ移動させ、カリウムイオンを細胞外から細胞内へ移動させるには能動輸送に頼る必要があります。

 活動電位は、2つの電位依存性イオンチャネルのはたらきによって生じる現象です。したがって、これら2つのイオンチャネルが作用している最中に横やりを入れるように刺激依存性イオンチャネルが開放しても、2つのイオンチャネル反応できません。この状態が不応期です。興奮の伝導について考えるときにはこの状態も考慮する必要があります。

 興奮の伝導とは、この活動電位が生じている場所が順に移動していくことと考えていいでしょう。したがって、伝導が生じている細胞膜には上で考えた2つのイオンチャネルがともに存在しています。そして、これらイオンチャネルの隣接する部位で順に開閉していきます。この結果、ある場所が脱分極(オーバーシュート)して、次の瞬間に再分極すると同時に、隣接部位で脱分極(オーバーシュート)が生じています。こうして、活動電位が生じる場所が順に移動していくことを「興奮が伝導する」といいます。

 興奮の伝達は、伝導とは全く異なります。細胞から細胞へと伝わる減少ですから、全く別のしくみが必要です。

 生理学1では主に「化学シナプス」を取り上げます。「電気シナプス」について説明する時間はほとんどないと思いますが、心筋や平滑筋の収縮と弛緩を考える上では必要なしくみです。別の機会に詳しく説明しようと思います。ここでは、化学シナプスについて振り返ります。

 名前が示すとおり、化学物質=神経伝達物質が仲立ちとなっているということが最も重要です。興奮がニューロンの終末まで伝導してくると、終末の細胞膜にある電位依存性カルシウムチャネルが開放します。カルシウムイオンが細胞内(軸索終末内)へ流入するとシナプス小胞のエキソサイトーシスを誘導します。この結果、神経伝達物質がシナプス間隙=細胞外へ放出されます。シナプス間隙での細胞間の距離はわずかではありますが、この部分を伝達物質は拡散によって細胞外液中を広がっていきます。ここでいう「拡散」とは、広義の拡散です。局所的には伝達物質の濃度は非常に高いと考えていいでしょうから、シナプス前角からシナプス後膜に向かって広がり、多くがシナプス後細胞の細胞膜にある受容体と結合します。

 今週、さらに来週の授業でこの先を詳しく取り上げますが、興奮が伝達された結果、シナプス後細胞にどのような変化が生じるのかを考えるのは簡単ではありません。伝達物質に対する受容体はイオンチャネルと一体になっているものとそうでないものがあります。また、イオンチャネルを通過するイオンは陽イオンだけではなく、陰イオンの場合もあります。さらに、陽イオンがシナプス後細胞内へ流入したとしても、簡単に活動電位が生じる=シナプス後細胞が興奮するわけではありません。

 解剖学で「神経組織」はすでに学んだと思います。その中で、ニューロンやグリア、さらに神経線維などが取り上げられています。次回の授業では、復習をかねて概説しますので、改めて見直しておきましょう。