Myth Busters

 前回の紹介と順序が逆ですが、WHO公式サイトには"Myth busters"というページがあります。Q&Aで解説されている内容とも共通するところが多いので、まずはこの部分を紹介しましょう.

 "Myth busters"をうまく日本語に訳すことはできなませんが、かつてオーストラリアで同名のテレビ番組があったようで、「怪しい伝説」というタイトルで日本のCS放送で放映されたそうです。“myth”は神話あるいはつくり話、“buster"は破壊する人またはもの。したがって、myth bustersとは「一般に流布されている言説、またはは一見真実あるいは科学的でかのように信じられていることが、いかに誤っているのかを示す人物や書物」という意味で使われています。

 COVID-19およびSARS-CoV2について、日本国内はもとより世界中で多くの誤った情報=デマ(デマゴギー;demagogy、またはデマ宣伝;demagogism, demagoguery)が広がっているようです。感染の拡大を最小限に食い止め、感染者を死亡や重症にいたらないようにするには、これらの影響を排除する必要があります。WHOの危機感の表れです。

 時間経過とともに、流布される言説が変化しているようで、WHOサイト(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters)でも表示される内容が変化しています。ここでは、これまにで説明されていた内容も含めて紹介します。以下はWebサイトに記された要点を訳し、簡単に解説を加えました。

 最新のMythは「COVID-19は5Gモバイルネットワークで広まる」ということらしい.もちろん、電波でウイルスが拡散するはずもない.コンピューターウイルスはプログラムであるからデジタル情報として、すなわちネットワーク(インターネット)を介して伝播されるが、生物に感染するウイルスは物質である.

 さて、以下は古典的なエセ科学の焼き直しもあるが、どんな情報が人々の心に浸入するかを知っておく上で意味があるだろう.
 ・SARS-CoV2は高温多湿の地域を含む、すべての地域で感染する可能性がある.
 ・太陽や25℃以上の高温に曝されてもCOVID-19は防ぐことはできない。
 ・寒冷気候や雪がSARS-CoV2を殺すことはできない.
 ・熱いお風呂に入ってもSARS-CoV2による疾患を防ぐことはできない.
   最初の頃はCOVID-19は夏になればおさまるという見方が一部にありました。しかし、COVID-19は世界中のすべての地域で感染する可能性がある。寒冷地域だけではなく、熱帯や乾燥地域でも感染が広がっている。ヒトの体温は36〜37℃であり、この温度がSARS-CoV2にとっての適温である。多くの哺乳動物の体温もほぼ同様である。
 ・SARS-CoV2は蚊に刺されても感染しない(少なくとも、その様な証拠はない)
   このウイルスは飛沫感染、すなわち、感染したヒトの発声や咳、くしゃみによって発生する唾液の飛沫や鼻からの分泌物によって広がる。
 ・ハンドドライヤーはSARS-CoV2を殺すのに効果があるか?  No.
 ・紫外線ランプはSARS-CoV2を殺すことができるか?   No.
 ・アルコールや塩素を全身にスプレーするとSARS-CoV2を殺すことができるか?  
   SARS-CoV2は熱や紫外線に対しては耐性である。むしろ、高温や紫外線は皮膚に障害を生じる可能性がある。考えられる最も可能性の高い感染路は、SARS-CoV2のついた手指で自らの口、鼻、眼などに触れることによって、SARS-CoV2が体内に入ることである。したがって、手指を石けんやアルコールベースの消毒液でしっかりと洗うことが最も効果的である。消毒のためのアルコールはエタノールであり、70%以上の濃度であることが望ましい。また、次亜塩素酸などは同度が高いと皮膚や粘膜に障害を生じる可能性がるので、注意すること。
 ・エタノールや消毒液は表面の消毒には効果的だが、体内に入ったウイルスを殺すことはできない.
 ・COVID-19は罹患しても回復します。一端SARS-CoV2に感染しても生涯感染が続くわけではない。
   いったん感染しても、そのウイルスは排除することができる。したがって、症状がある場合には、いったん医療機関に電話で連絡し、その指示に従って診断、治療を受けることが重要である。
 ・ニンニクを食べると新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできるか?  No.
 ・ごま油を塗ると新型コロナウイルスの侵入を防げるか?  No.
   特定の食品が何らかの疾患の予防や治癒に効果があるかのような言説は常に存在し、疑似科学あるいはエセ科学の典型である。しかし、食品は所詮は「食品」であり、「医薬品」のかわりにはならないことを肝に銘じること。
 ・アルコール飲料によってCOVID-19は防げない。
   頻繁なあるいは大量のアルコール摂取は明らかに有害。アルコール飲料=お酒はたとえどんなに少量であっても人体によい影響を与えること、すなわち健康の維持と増進に貢献することはない。アルコール摂取がストレス発散などの効果をもたらすことがあるとすれば、そのストレス状態になっていることが問題である。
 ・10秒間(またはそれ以上)息を止めることができればCOVID-19や他の肺疾患に感染していない。   No.
   COVID-19の典型的な症状は、乾いた咳、倦怠・疲労感、発熱です。中には重症の肺炎に移行する場合もある。医療機関を受診して正しい検査を受けることが重要。
 ・生理的食塩水で鼻を定期的にすすぐと新型コロナウイルスの感染を防ぐことができるか?  No.
   このような証拠は得られていない。花粉症予防であれば多少の効果は期待できるかもしれないが、ウイルスを除去することはできないだろう。
 ・サーマルスキャナーは新型コロナウイルスに感染した人を検出するのにどれくらい効果があるか?
   サーマルスキャナーは発熱した人を検出することはできるが、感染しているが発熱していない人を検出することはできない.発熱するまでに2~10日かかる.
 ・飼っているペットはSARS-CoV2を伝染する可能性があるか?
   初期にはコンパニオンアニマル/ペットへの新型コロナウイルスの感染は否定されていたものの、ウイルス遺伝子、特にSARS-CoV2のようなRNAウイルスの遺伝子の変異は非常に速いため、ヒトから犬やネコに感染するタイプが出現する可能性は指摘されていた。事実、ヒトの周囲にいる動物への感染が報告されている。
 ・肺炎に対するワクチンでSARS-CoV2への感染を防ぐことはできるか?  No.
   肺炎に対するワクチンは、肺炎球菌などに対して効果はあるが、SARS-CoV2に対する効果はない.現在、アメリカやヨーロッパそして日本を中心にワクチン開発が進められているが、実用化には1年以上かかると見込まれている。
 ・SARS-CoV2は高齢者に影響をおよぼすか? あるいは若年者も感染するか?  Yes.
   すべての年齢のヒトが自らが感染者であるかもしれないという自覚のもとに行動する必要がある。特に、日本国内での患者数は、50歳未満の方が50歳以上よりも多い.高齢者や基礎疾患(喘息、糖尿病、心疾患)をもっている人は重症化の可能性がある。自身がそうである場合だけではなく、身近に高齢者や基礎疾患を患っている人がいる場合にはとりわけ注意が必要である。
 ・抗生物質はSARS-CoV2を防いだり、治療したりする効果があるか?  No.
   抗生物質(antibiotics)は細菌に対してのみ作用する。多くの風邪あるいはインフルエンザも同様であり、ウイルスに対して抗生物質は効果がない。しかし、ウイルス感染症の発症によって体調が悪くなっている場合、同時に細菌感染を生じる可能性があるため、抗生物質を処方される(投与される)ことがある。したがって、COVID-19と診断された場合にも、同時感染を防ぐ目的で抗生物質が投与または処方されることがあるだろう。
 ・SARS-CoV2を防いだり治療したりする特別の医薬品はあるか?
これまでのところ、予防あるいは治療に効果のある医薬品は見つかっていない.