2018年度 第7回 遺伝子発現

 やや遅くなりましたが、先週の授業の内容を簡単に振り返ります。

 「遺伝子」や「DNA」は日常会話でも使われるようになってきました。ただし、テレビなどで話されているような使い方は、本来の生物学的な意味からはやや外れています。遺伝子とはタンパク質やRNAの構造を決める上方であり、その物質的な実体がDNAです。基礎医学に関わる概念や用語については厳密に考えるようにしましょう。

 さて、配布した『ヒトゲノムマップ』はよく見ておきましょう。これまでの人類の科学の到達点であると同時に、今後の学習にも役立つはずです。また、ヒトゲノムの塩基配列が明らかになったことによって、遺伝子の構造も具体的になってきました。授業ではその一端に触れたつもりですが、タンパク質のアミノ酸配列を決めている遺伝子の数、tRNAを初めとしたRNAの塩基配列を決めている遺伝子の数については概数を頭に入れておきましょう。

 さらに、タンパク質のアミノ酸配列を決めている遺伝子については、転写と翻訳のしくみを簡単に説明しました。転写は二本鎖DNAの一方を鋳型としてRNAを合成し、翻訳はmRNAを鋳型としてタンパク質を合成する反応のことです。

 転写とは、鋳型とするDNA鎖を構成するヌクレオチドの各塩基に対して相補的な塩基を持つRNAヌクレオチドを順に結合(ホスホジエステル結合)することによって一次転写産物がつくらることです。DNAの複製とほぼ同様の反応が生じています。一次転写産物(pre-mRNA)に対するスプライシングを初めとする加工(プロセシング)も重要ですが、授業では簡単に済ませました。この部分は『補遺:遺伝子と遺伝子発現のしくみ』に少し詳しく説明をしましたので、各自で自習するように。

 転写が必ず核内で生じるのに対して、翻訳は必ず細胞質のリボソームの機能によって生じます。tRNAの塩基配列をアミノ酸の配列に置き換えていく現象であるため、『翻訳』とよばれています。そして、その鍵となっているのが遺伝コードともよばれる「コドン」です。tRNAの連続する3塩基の配列を一組として1つのアミノ酸を指定します。我々は「読み枠」などともいい、「コドンを(アミノ酸に)読んでいく」という言い方をします。読み枠はtRNAの初めからではなく、途中のAUGから始まります。このコドンはメチオニンを指定するため、タンパク質のアミノ酸配列はメチオニンから始まります。翻訳のしくみも『補遺:遺伝子と遺伝子発現のしくみ』に詳しく説明をしました。

 合成されたタンパク質は、そのままでは機能することはできません。「タンパク質」と言うためには、機能できる状態、つまり、しかるべき構造をつくり、さらに機能するべき場所へ運ばれる必要があります。授業では細胞膜タンパク質や細胞外で機能するタンパク質を例にして説明をしました。膜タンパク質は、今週以降の授業でもたびたび取り上げますので、どのように運ばれていくのかについてもよく考えるようにしましょう。