プリントp26下のグラフの縦軸の単位表記について

 先週の授業で、プリント26ページのグラフについて説明した際、縦軸の単位表記についての説明を割愛しましたので、簡単に補足しておきます。

 縦軸には
mEq/liter
と表記されています。
“/“
の前の、mEqは「ミリ当量(mili equivalent)」の意で、”メック”と読みます。水に溶解しているイオン、つまり電解質の量を表す単位として医療の分野で慣例として用いられています。化学分野では全く使いません。

 脱水などの際の点滴が典型的ですが、体液の量や組成に異常が生じた場合や栄養を補給する場合に、非経口的(つまり経静脈的)に水や電解質、栄養素などを投与します。このような治療法を輸液または輸液療法といい、投与される液体が輸液剤です。

 mEq/literは、このような液体の組成を考えるときに用いられる単位で、単に濃度をモル濃度や重量濃度であらわすのではなく、それぞれのイオンの価数を考慮して表しています。一般には溶液1ℓ中の溶質の当量としてあらわし、
物質の濃度(mol/ℓ)×イオンの価数=Eq/ℓ
と計算します。濃度はモル濃度であらわし、イオンは完全に電離したものとして考えます。また、生体でのイオン濃度はmmol/ℓオーダーですから、(mmol/ℓ)×イオンの価数=mEq/ℓで、”メック・パー・リッター”です。
計算のしかたは、例えば、
ナトリウムイオン・Na+は1価のイオンですから、2 mmolのNa+は 2mmol/ℓ × 1価 = 2mEq/ℓ
カルシウムイオン・Ca2+は2価のイオンですから、2 mmolのCa2+は 2mmol/ℓ × 2価 = 4mEq/ℓ
陰イオンでも同様に、
塩化物イオン・Clは1価のイオンですから、1mmolのClは 1mmol/ℓ× 1価 = 1mEq/ℓ
です。

 陽イオンと陰イオンがともに存在する場合でも考え方は同じです。例えば、輸液のベースとして最もよく利用されるであろう生理食塩水の当量濃度をを考えておきましょう。生理食塩水は一般に0.9%食塩水、つまり、0.9%NaCl水溶液です。モル濃度を計算すると、
NaClの分子量は58.44(Na: 22.99, Cl: 35.45)ですから、
0.9%
= 9g/ℓ = 154mmol/ℓ
です。

 NaClは水に溶解してNa+とClに完全に電離しています。したがって、
Na
+:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ、Cl:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ
生理食塩水全体では、
154mEq/
ℓ × 2 = 308mEq/ℓ
のイオンが存在します。

 逆に当量濃度が示されているときにそのイオンの実際の濃度を考えてみましょう。プリントp26 のグラフで見たように、血漿中のカルシウムイオンのミリ当量濃度は5mEq/ℓです。カルシウムイオンは2価の陽イオンですから、カルシウムイオンの濃度は
5mEq/ℓ ÷ 2価 = 2.5mmol/ℓ
と計算できます。
 
 また、細胞内液のリン酸イオンのミリ当量濃度は100mEq/ℓです。リン酸イオンは2価の陰イオンですから、実際に存在するリン酸イオンの濃度は

100mEq/ℓ ÷ 2価 = 50mmol/ℓ
です。
(グラフの右端のタンパク質陰イオンのミリ当量濃度が50mEq/ℓですが、タンパク質は1分子当たり多くの電荷をもっているため、実際の濃度はかなり小さく、細胞内液中に存在する陰イオンで最も濃度が高いのはリン酸イオンです。)

 ナトリウムイオンやカリウムイオン、塩化物イオンなど1価のイオンはグラフ中の数字がそのままそれぞれのイオンの濃度をあらわしています。

 医療や医学の分野では国際単位系では使われない単位が慣例としていくつか使われ続けています。血圧をあらわすときの”mmHg”や血糖値を表すときの”mg/㎗”などです。それぞれの単位の意味をよく理解した上で使うようにしましょう。