2018年度 第22回 味覚と嗅覚

 今回から特殊感覚に入りました。冒頭でも繰り返したように、受容器が頭部の限局した部位にあり、感覚神経が脳研歯頸に含まれている点が一般感覚に対して異なっています。

 味覚と嗅覚には適合刺激がともに化学物質であり、化学感覚としてまとめられるため、連続して取り上げます。また、順応性、ヒトにとっての情報量や鋭敏さなど、共通点が多いのも特徴です。ただし、受容体の種類という点では、味覚が基本的に5種類にまとめられるのに対して、嗅覚は数百種類あるとされています。したがって、基本的な味は考えられますが、基本的なにおいを考えることはできません。

 話は少しそれますが、ヒト以外の哺乳類では嗅覚受容器は1000種類以上あるものが多く、ヒトは元々持っていた受容体遺伝子の多くが偽遺伝子化してしまっているようです。偽遺伝子とは、「既知の機能遺伝子と塩基配列の上で高度の類似性があり、それとの相同性がはっきり認められるにもかかわらず、遺伝子としての機能を失っているDNAの領域」(岩波生物学事典第5版)のことです。したがって、全く発現しないか、発現してもそのタン パク質がすぐに分解されてしまい、事実上機 能しないと考えられます。ヒトにとっての嗅覚の重要性が低いことを示しています。

 受容体の構造や機能についてはかなり難易度が高いと思いますので、説明されて分かれば十分です。しかし、味細胞や嗅細胞の膜タンパク質が刺激となる化学物質に対する受容体として機能していること、さらには、化学物質の結合(またはイオンチャネルを通過すること)が受容器細胞の電位変化を引き起こすことを理解しておきましょう。基本的には、脱分極や活動電位が生じるしくみと同一です。

 受容体の存在部位は、味細胞では味毛=微絨毛ですが、嗅細胞では嗅線毛(嗅毛)=線毛です。いずれも細胞の一部が突出した構造ですが、周囲は細胞膜で覆われています。

 受容器細胞が興奮すると、インパルスが感覚神経を伝導します。味覚の受容器は味細胞ですが、味細胞はニューロンではなく独立して機能する感覚受容器細胞ですから、シナプスを介して感覚神経と接続しています。この感覚神経は受容器の部位によって異なっています。よく問われる点ですからしっかりと確認しておきましょう。これに対して、嗅覚の受容器である嗅細胞は、これ自体がニューロンであり、軸索をもっています。この軸索が視神経を構成しています。

 それぞれの伝導路を考えてみると、いずれも脳神経部分が一次ニューロンにあたり、それぞれ延髄は嗅球で二次ニューロンに交代します。味覚の伝導路は視床を経由し、大脳皮質新皮質(前頭弁蓋と島)へと至るルートで、他の感覚の伝導路をよく似ています。しかし、嗅覚の伝導路は嗅球という、大脳辺縁系に属する部分から、同じく辺縁系の一部である梨状皮質に入ります。大脳の成り立ちを考えると新皮質の法が進化的に新しい領域で、辺縁系は古い領域です。つまり、より高度な機能を獲得している動物ほど新皮質が発達しています。したがって、味覚に比べると嗅覚はより原始的であるということでしょう。

 来週は聴覚を取り上げます。