第30回 自律神経系の伝達物質と受容体、中枢の機能

 試験前最後の授業で、やや駆け足になったところもありました。重要なポイントは授業中にもいくつか触れましたが、改めて指摘しながら、まとめてみます。

 交感神経系と副交感神経系ではたらく伝達物質は2種類しかありません。このうち、受容体、特に効果器あるいは標的細胞がもつ受容体は、いずれも代謝調節型です。ムスカリン性アセチルコリン受容体は2種類が使い分けられています。アドレナリン受容体は、授業で説明した4種類がよく知られ、分布や作用がそれぞれ異なります。

 アドレナリン受容体の分布と作用について、やや詳しく説明しました。簡単に繰り返すと、交感神経活動が増加し、その影響が全身に及んでいるとき、
 α1受容体とβ1受容体を発現する各器官、組織の働きは亢進しています。α2受容体とβ2受容体を発現する各筋、組織の働きは低下します。
 例えば、心臓(β1)は心拍数や心収縮力が増大し、皮膚血管(α1)は収縮します。この結果、血圧が上昇し、血液循環が進みます。瞳孔散大筋(α1)も収縮します。一方で骨格筋や心臓の血管(β2)は弛緩して血流が増大します。

 同時に、消化器系の機能は低下しており、消化管壁の平滑筋の収縮(β2)は低下するとともに括約筋(α1)は収縮します。膵臓外分泌腺(α2)からの消化液の分泌や膵島ベータ細胞(α2)からのインスリン分泌も抑制されます。
 泌尿器系では、膀胱管壁(β2)は弛緩する一方でない尿道括約筋(α1)は収縮して蓄尿が促進あるいは排尿が抑制されます。腎臓傍糸球体細胞(β1)からのレニン分泌は増加し、尿産生は低下します。

 視床下部の作用として体温調節に触れました。体温を上昇させる場合には交感神経系が活発になり、その作用によって、皮膚血管の収縮(α1)、褐色脂肪組織(β3)での脂肪分解が生じます。さらに、副腎髄質ホルモンの分泌も促進されます。副腎髄質ホルモンの作用は交感神経系の作用とほぼ一致します。同じ物質の作用ですから当然ですが、副腎髄質(ニコチン性アセチルコリン受容体)も交感神経節前ニューロンの直接の作用を受けています。

 いろんな角度から考えることができますので、機会を捉えて見直してみるとよいでしょう。

 自律神経系の中枢のはたらきは、脳幹、視床下部、そして大脳辺縁系の3つに分けて考えました。

 時間の都合もあり、脳幹についてはかなり簡単な説明にしましたが、生理学4では泌尿器系の機能が取り上げられているはずですから、蓄尿や排尿に関する交感神経、副交感神経の作用はよく見直しておきましょう。

 排尿反射としての中枢は腰仙髄ですが、ここの作用を上位から調節しているのが橋にある中枢です。大脳皮質からの意思が伝えられてことによって橋の排尿中枢が興奮すると、その情報が脊髄を下行して、骨盤神経(副交感神経)を活性化して膀胱壁が収縮するとともに、下腹神経(交感神経)の活動がよわまって内尿道括約筋が弛緩します。もちろん、外尿道括約筋が弛緩する必要がありますから、随意的に外尿道括約筋を弛緩させます。この結果、排尿が生じます。

 対光反射は、視覚機能と関わっていますので、視細胞・視神経の機能や瞳孔括約筋・瞳孔散大筋のはたらきとともに、よく見直しておきましょう。

 視蓋前野は、視運動性反応でも視神経の入力部として触れました。この反射は、眼球を運動させるという反射ですが、受容器と求心路は対光反射と共通しています。混乱しないようにしましょう。

 視床下部は自律神経系の最高中枢として機能し、今日取り上げた体温調節や摂食・血糖調節、飲水や概日リズムの調節に関する機能は特に有名です。

 飲水中枢としての視床下部の機能が発揮されるためには、体液、特に血液量の減少や血圧の低下、血液浸透圧の上昇に関する情報が伝えられる必要があります。血液量の減少は心房伸展受容器で、血圧の低下は動脈の圧受容器で、浸透圧の上昇は視床下部の浸透圧受容器で検知されています。また、血圧低下によって腎臓糸球体輸入細動脈の血圧が低下するため、これが刺激となって傍糸球体細胞からレニンが分泌されてレニン・アンジオテンシン系が活性化するとアンジオテンシンⅡつくられて視床下部を刺激します。これらの作用の結果、飲水中枢が渇き感覚を生じさせ、飲水行動を取らせます。プリントでは「脱水」としましたが、調子が悪くなるほどの状態をさすわけではなく、日常の中での飲水欲求も、体液量や浸透圧のわずかな変化によって生じています。

 概日リズムの中枢としての機能が視床下部にあることは古くから知られています。これは視神経の一部が視床下部、特に視交叉上核に入力していることに依っています。

 情動に関する機能はわかりにくいところも多かったかもしれません。事実、ヒトにおける研究が不十分なようで、動物実験でははっきりしないことも多いのでしょう。ただ、大脳辺縁系と視床下部とのつながりにおいて、大脳辺縁系の一部である扁桃体が大きな役割を演じていることは間違いないようです。後期の前半で疼痛の定義を紹介しました。「不快な感覚と不快な情動体験」でした。この情動とそれにともなって生じる自律機能の変化は、脊髄網様体路から大脳辺縁系、視床下部に情報が伝えられることによって引き起こされます。試験勉強では、侵害受容器の種類や神経線維の種類、感覚の特徴などを見直すと思いますが、合わせて自律機能の変化にも結びつけておきましょう。


 気がついているとは思いますが、授業中に指摘した部分以外にもプリントに誤りがありますので、訂正します。以下の通りです。

 自律神経系の構造と機能
  P470 3段目 4行目 粘膜か神経叢 → 粘膜下神経叢
         11行目 運動野分泌 → 運動や分泌
  P497 下段 9行目 排尿(diuresis) → 抗利尿(diuresis)


 後期試験の範囲は第6章から第10章までです。既に過去の期末試験問題に取り組んでいるかと思いますが、それらからわかるように、出題されるポイントや問われている内容はいずれも重要なポイントばかりです。一部に詳細な知識を問う部分もありますが、決して用語を丸暗記するわけではなく、理解する=内容を自分の言葉で説明できるようにすることができるかどうかを試しています。
 今回の試験範囲は大きくは感覚機能と運動機能ですが、伸長反射や前庭動眼反射、視運動性反応に見られるように、両者は互いに結びついている部分もたくさんあります。また、今日の授業でもわかるように、他の科目とも密接に関わっています。できるだけ、互いを関連させながら考えると、より理解が進むでしょう。