2016年度 第9回 小胞による輸送、膜電位、脱分極

 少し遅くなりましたが、前回の授業内容のまとめです。

 小胞による輸送としてまとめた内容は、エネルギーの消費(ATPの分解)を伴いますので、この意味では能動輸送です。しかし、一次性能動輸送、二次性能動輸送とは全くしくみが異なります。

 細胞には、細胞膜に限らず脂質二重膜によってつくられた袋状の構造が多数あります。小胞体やミトコンドリアなどの小器官もそうですし、ここで取り上げた輸送に関わっている小胞も数え切れないくらい存在していることでしょう。これら膜構造の特徴の一つは、膜どうしが融合し合えるということです。したがって、細胞膜と小胞が融合することもできるし、細胞膜の一部がちぎれるようにとれても、残った部分が融合したり、ちぎれた部分だけで新たな小胞を作ることができます。

 エンドサイトーシスとエキソサイトーシスはこうした脂質二重膜特有の性質に依拠しています。受動輸送や能動輸送として取り上げた方法と同様に、何らかの目的があって生じる現象です。したがって、今後学ぶ(あるいはすでに学んだ)多くの現象においてどこでどのようにはたらいているのか、よく考えるようにしましょう。

 好中球やマクロファージが食作用を発揮することはすでに学んだと思います。また、破骨細胞も食作用を発揮することができます。飲作用が具体的に取り上げられることはほとんどないと思いますが、毛細血管の内皮細胞が行うエンドサイトーシスは飲作用であると考えて差し支えありません。

 エキソサイトーシスはたくさんの例があり、生理学1でもニューロンの神経伝達物質の放出を取り上げます。また、小腸吸収上皮細胞や内分泌細胞におけるホルモンの分泌(前回の授業では膵臓β細胞のインスリン放出を取り上げました)なども典型的なエキソサイトーシスです。


 2週にわたって取り上げた細胞膜を介した物質の輸送に関する知識は、前期の残りの期間に取り上げる興奮性細胞(ニューロンと筋細胞)の性質を考える上で必須です。今回の授業では静止膜電位がどのようにして生じるのかを説明しました。その中で、いくつものイオンチャネルの名前を挙げました。これらのイオンチャネルが常に機能することによって細胞の性質や機能が維持されています。

 静止膜電位を考える必要があるのは、興奮性細胞であるニューロンや筋細胞が「興奮する」という現象を考えるためです。心筋についてはすでに学んだと思いますが、『静止状態」があるからこそ、そこから逸脱した「興奮状態」があり、この『興奮状態』が細胞にとって意味を持つ、あるいは何らかの役割を与えることができます。

 静止状態から興奮状態へ直ちに変化するのではなく、静止状態を壊すような小さな変化がいったん生じます。これが脱分極であり、過分極です。来週改めて説明しますが、この小さな変化をきっかけにして大きな変化=活動電位が生じます。来週の授業は前期の中でも大きな山場です。決して簡単な内容ではありませんし、ここでの理解がその後のさまざまな現象の理解に結びつきます。しっかりと予習をして臨むように。

 静止膜電位が生じるしくみはそんなに複雑ではありませんが、一度きいただけではなかなかわかりにくいかもしれません。以前に作った資料に手を加えた説明文を一緒に掲載しますので、参考にしてください(ここです)