2016年度 第12回 興奮の伝導と伝達

 前回まででニューロンでの興奮の伝導と伝達に関する基本的な構造としくみ概観しました。小テストに向けた勉強でそれぞれ復習したことと思います。残念ながら十分に理解できていない、あるいはとりあえず丸暗記でしのいだという答案も見受けられました。自分の理解がどの程度であるかは自分がよく分かっていると思います。今回の内容の復習を通じて改めてよく見直すように。

 前半は興奮伝導のしくみが有髄神経線維と無髄神経線維でどのように異なっているのかを考えました。無髄神経で生じる逐次伝導は前々回の授業で説明した興奮の伝導のしくみそのままです。ある部位で活動電位が生じる(=興奮する)と、さらに隣接部位に活動電位が生じ(=興奮する)、これが次々と伝播していくことです。言い換えると、隣接部位に順次脱分極と再分極を起こしていきます。この現象が生じるためには、細胞膜が全面にわたって細胞外液と接している必要があります。つまり、細胞膜を隔てて電位差が生じていなければいけません。ところが、有髄線維は軸索を髄鞘が覆っているため、細胞膜が細胞外液と接している部分がランビエの絞輪に限られます。したがって、活動電位は絞輪部分でしか生じず、隣接する絞輪へ伝わっていきます。これが跳躍伝導であり、逐次伝導に比べて同じ時間の間により遠くまで興奮を伝えることができます。

 神経線維での興奮の伝導はこのように逐次伝導であるか跳躍伝導であるか、すなわち、無髄神経線維であるか有髄神経線維であるかによって伝導速度に大きな差があります。そもそも、伝導速度は軸索の直径が大きいほど大きく、一般には有髄神経線維を構成している軸索の法が無髄神経線維を構成している軸索よりも直径が大きいですから、有髄神経線維のほうがより伝導速度が大きくなります。

 後半は興奮の伝達についてさらに詳しく説明しました。シナプス前からシナプス後へ興奮が伝達されるということは、活動電位の発生という現象が隣接する細胞に伝えらるというだけのことではなく、複雑な調節メカニズムによっています。それは、この伝達が生じるシナプスが化学シナプスであるということ、つまり、化学物質(=神経伝達物質)が作用することによって興奮が伝達されるというしくみに依存します。

 伝達物質とその受容体については来週の授業で取り上げますが、これら二つの組合せによってシナプス後細胞に脱分極が生じるのか、過分極が生じるのかが決まります。この脱分極を興奮性シナプス後電位といい、過分極を抑制性シナプス後電位といいます。伝達物質の作用によってシナプス後ニューロンに興奮性シナプス後電位を生じるシナプスが興奮性シナプスであり、シナプス後ニューロンに抑制性シナプス後電位が生じるシナプスが抑制性シナプスです。また、興奮性ニューロン、抑制性ニューロンという言葉も今後よく使います。日本語の語感から判断すると、「興奮しやすい、あるいはされやすいニューロン」、「抑制しやすい、あるいはされやすいニューロン」という意味にとれますが、両者はシナプス前ニューロンの性質を表しています。あるいは、そのニューロンがシナプス後ニューロンとして興奮性シナプスを構成するのか、抑制性シナプスを構成するのか、によって命名されます。

 単一のシナプスで興奮が伝達されても、それだけでシナプス後ニューロンに活動電位が発生するわけではありません。興奮性シナプスといえども、単一シナプスで生じる脱分極(=EPSP)は非常に小さく、とても閾値には達しません。1つのニューロンでは樹状突起を中心に多くのシナプスがあり、常にどこかで興奮が伝達されていると考えていいでしょう。したがって、同時に、あるは非常に短い時間間隔でEPSPやIPSPが生じており、これらがニューロンの軸索の根元に当たる軸索小丘に集まって加重されます。加重の結果、電位変化が閾値を超えるとはじめて活動電位が発生します。そして、いったん活動電位が発生すると、軸索小丘から軸索終末に向かって伝導していきます。