コラーゲン繊維はなせ「膠原繊維」?

 授業で「コラーゲン繊維(繊維束とも言います);collagen fiber」を取り上げました。コラーゲンというタンパク質が幾重にも巻きついて繊維状になった構造ぶとをさしてこのように呼びますが、日本語では「膠原繊維」と言います。「膠原」とはどういうことでしょうか。

 “colla”はギリシャ語の”κόλλα (=kólla)”で、「膠(にかわ)」を意味します。”-gen”は「作りださせるもの」を意味する接尾辞で、自然科学用語によく用いられます。つまり、”collagen”とは「膠を作り出すもとになるもの」というような意味です。ところで、「膠」はご存知でしょうか?

 にかわ【膠】〔煮皮,の意〕
獣魚類の骨皮などを石灰水に浸してから煮て濃縮,冷やして固めたもの。褐色ないし暗褐色。粗製のゼラチン。接着剤とし,また,絵の具や画布の製造に用いる。(大辞林)
です。

”organ”の語源

 第2回目の授業とかかわらせて、「器官」を意味する"organ"の語源を少しだけ考えてみましょう。

 器官は英語では”organ”、ドイツ語でも”Organ”、フランス語では”organe”、イタリア語では”organo”です。
これらすべて同じ言葉「道具、装置」を意味するラテン語の”organum”、さらに遡るとギリシャ語の”όργανο(=organon)”に由来しています。このギリシャ語の”όργανο”は”ἔργον(=ergon)「はたらく」の意”から派生したようです。

 日本語では胸腔や腹腔、骨盤腔にある器官を特に「内臓」といいますが、これに当たる英語は”viscus(複数形はviscera)”、または”visceral organ”といいます(“internal organ”と言い方もあります)。ラテン語に”visceralis”、古いフランス語に”viscéral”などの用例があるようですが、その起源はわからないようです。

 楽器のオルガンも「器官;organ」と同様の言葉に由来し、4世紀には””organaというラテン語として使われていたようです。「オルガン」は英語では”organ”で「器官」の意と同じ綴りですが、ドイツ語では”Orgel”、フランス語では”orgue”、イタリア語では”organo”です。

(Online Etymology dictionaryなどを参考にしました)

2016年度第2回 生物の階層性

 今週は生物の階層性、つまり生体の構成レベルについて概略を説明しました。外皮系という、生理学ではまとめて取り上げることのない器官系をモデルにしましたが、どのように構成されているのかは分かったと思います。

 生理学では器官系ごとに分けて、それぞれがどのような機能を果たしているのかを考えていきます。器官系を構成する器官を順に取り上げ、それぞれどの様な大きさ、構造をしていて、そのような組織によって形作られているのか。器官の機能を発揮するために特に重要な組織は何か、その組織はどんな細胞で構成されているのか。それぞれの細胞はどんな機能を持っているのか。そして、細胞がそれぞれの機能を発揮するために、細胞内のどんな構造や分子が重要であるのか。こうしたことを一つ一つ確認しながら学んでいくことによって、そのとき学んでいる器官系がなぜそのような階層構造になっているのか、理解できるようになっていくと思います。

 物質レベルの説明はあまりしませんでしたが、今後の授業の中では頻繁に取り上げます。「生理学のための化学」は内容も分かりやすさも十分なものではありませんが、少しでも理解するように努力してください。また、今回は皮膚に存在するコラーゲンタンパク質とエラスチンタンパク質について簡単に説明しました。真皮は皮膚の伸展性や弾力性を担っている部分です。物質の性質とその細胞や組織の機能の関わりも少しずつ見えるようになっていくと思います。

 授業では多くの用語が出てきますが、できるだけ日本語と英語を併記するようにしています。決して、英語を覚えなさいという意味ではありません。日本語の医学用語もすべて外国語の訳としてつくられています。もちろんすべてが英語からというわけではなく、むしろ基本的な用語の場合には他の言語の訳としてつくられた言葉の方が多いかもしれません。しかし、言葉の意味や概念を理解していくためには、その起源や成り立ちを考えることは少なからず役立ちます。日本語だけを見ていては分からないことがたくさんありますので、代表的な外国語として英語を併記するようにします。

2016年度 第1回:授業の記録 イントロ、階層性と恒常性

 医学は、あるいは人体とはどのようなものか、何となく感触をつかめたでしょうか。1限目のクラスは文字通り初めての授業であり、学校での勉強も久しぶりという方も多いことでしょう。90分間1つのことに集中するというのはなかなか難しいことです。授業中にも触れましたが、何となくきいていると何も分からないうちに時間が過ぎ、気がつくと意識が遠くなっているということになりかねません。どのように臨めばいいのか、自分のやり方、ペースをつかむように考えましょう。

 さて、今回は生理学がどのような学問、科目であり、何を目標に勉強していくのか考えてみました。やや抽象的な説明に終始しましたが、来週からは具体的に取り上げていきます。今後学んでいく内容、知識は、高校で学んだ内容とそれほど変わらないという人もいるかもしれません。事実、それほど詳細で難解なものではありませんが、「生物の階層性」と「生体の恒常性」という2つの概念を深く結びつけながら、疾患や治療を前提として「人体」を学ぶという点では、高校までの学習とはだいぶん異なってくるはずです。

 来週は「階層性」を改めて考えます。モデルとして外皮系を取り上げますが、分子、細胞、組織、器官、器官系とどのように積み上がっていくのかがポイントです。