2018年度第3回 体液のpH、フィードバック機構、化学反応

 今回はやや幅広く取り上げましたが、要点ははっきりしています。よく考えれば重要なポイントを外すことはないでしょう。

  体液のpHを維持するしくみである緩衝系については呼吸器系や泌尿器系と合わせても説明されると思います。この場合、酸塩基平衡という言葉が使われるかもしれません。

炭酸重炭酸緩衝系(炭酸二酸化炭素緩衝系)の機能が最も重要で、全体として
     CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-
という反応式であらわされます。水素イオン濃度が高いときには、泌尿器系のはたらきによって水素イオンそのものを尿中へ排泄したり、あるいは上の反応が全体として右から左に向かって進み、生じた二酸化炭素を呼吸器系のはたらきによって排出することによって過剰の水素イオンを解消しています。逆に、水素イオン濃度が低いときには、上の反応は右から左に進み、二酸化炭素の排出が減少して水素イオンが増加します。重炭酸イオンの濃度も同時に変化しますが、そのことが緩衝作用の中心でもあります。

 今回は『生理学のための化学』で「酸と塩基、pH」について自習することになりますから、ちょうど復習になると思います。一度は学んでいることが中心ですが、忘れていることも多いでしょうからじっくりと取り組みましょう。

 フィードバック機構を理解しておくことはホメオスタシスを具体的に考えていくことに結びつきます。概念は理解できたと思いますが、具体的に考えていくときには、構成要素である受容器、中枢、効果器の3つをしっかりと確認するようにしましょう。また、それぞれについて説明するときは曖昧な部分をつくらないようにすることが大切です。声に出したり文にして書いてみたり、さらにはそれぞれを他人に確認してもらいながら取り組むといいでしょう。

 化学反応についても同様です。合成反応=同化、分解反応=異化、化学反応全体=代謝とただ覚えるだけではなく、例えば、今回例示したアミノ酸からペプチド(タンパク質)の間の合成と分解のように、それぞれの反応が同化にあたるのか異化にあたるのか、あるいは今自分が考えている現象を代謝の中でどのように位置づけるのかを考えるようにしましょう。

 次回から生体の機能について本格的に考え始めます。生理学Ⅰでは、生体の基本単位である細胞について、分子レベルでの現象を中心に構造と機能を考えます。まずは細胞の基本的な構造と、細胞を構成する各部分の機能について考えます。

 また、『生理学のための化学』のうちの、次回のテスト範囲に一部訂正があります。:22ページ右段、下から5行目から6行目 「水素イオンと水酸化イオンが結合して」➡「水素イオンと水酸化物イオンが結合して」

プリントp26下のグラフの縦軸の単位表記について

 先週の授業で、プリント26ページのグラフについて説明した際、縦軸の単位表記についての説明を割愛しましたので、簡単に補足しておきます。

 縦軸には
mEq/liter
と表記されています。
“/“
の前の、mEqは「ミリ当量(mili equivalent)」の意で、”メック”と読みます。水に溶解しているイオン、つまり電解質の量を表す単位として医療の分野で慣例として用いられています。化学分野では全く使いません。

 脱水などの際の点滴が典型的ですが、体液の量や組成に異常が生じた場合や栄養を補給する場合に、非経口的(つまり経静脈的)に水や電解質、栄養素などを投与します。このような治療法を輸液または輸液療法といい、投与される液体が輸液剤です。

 mEq/literは、このような液体の組成を考えるときに用いられる単位で、単に濃度をモル濃度や重量濃度であらわすのではなく、それぞれのイオンの価数を考慮して表しています。一般には溶液1ℓ中の溶質の当量としてあらわし、
物質の濃度(mol/ℓ)×イオンの価数=Eq/ℓ
と計算します。濃度はモル濃度であらわし、イオンは完全に電離したものとして考えます。また、生体でのイオン濃度はmmol/ℓオーダーですから、(mmol/ℓ)×イオンの価数=mEq/ℓで、”メック・パー・リッター”です。
計算のしかたは、例えば、
ナトリウムイオン・Na+は1価のイオンですから、2 mmolのNa+は 2mmol/ℓ × 1価 = 2mEq/ℓ
カルシウムイオン・Ca2+は2価のイオンですから、2 mmolのCa2+は 2mmol/ℓ × 2価 = 4mEq/ℓ
陰イオンでも同様に、
塩化物イオン・Clは1価のイオンですから、1mmolのClは 1mmol/ℓ× 1価 = 1mEq/ℓ
です。

 陽イオンと陰イオンがともに存在する場合でも考え方は同じです。例えば、輸液のベースとして最もよく利用されるであろう生理食塩水の当量濃度をを考えておきましょう。生理食塩水は一般に0.9%食塩水、つまり、0.9%NaCl水溶液です。モル濃度を計算すると、
NaClの分子量は58.44(Na: 22.99, Cl: 35.45)ですから、
0.9%
= 9g/ℓ = 154mmol/ℓ
です。

 NaClは水に溶解してNa+とClに完全に電離しています。したがって、
Na
+:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ、Cl:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ
生理食塩水全体では、
154mEq/
ℓ × 2 = 308mEq/ℓ
のイオンが存在します。

 逆に当量濃度が示されているときにそのイオンの実際の濃度を考えてみましょう。プリントp26 のグラフで見たように、血漿中のカルシウムイオンのミリ当量濃度は5mEq/ℓです。カルシウムイオンは2価の陽イオンですから、カルシウムイオンの濃度は
5mEq/ℓ ÷ 2価 = 2.5mmol/ℓ
と計算できます。
 
 また、細胞内液のリン酸イオンのミリ当量濃度は100mEq/ℓです。リン酸イオンは2価の陰イオンですから、実際に存在するリン酸イオンの濃度は

100mEq/ℓ ÷ 2価 = 50mmol/ℓ
です。
(グラフの右端のタンパク質陰イオンのミリ当量濃度が50mEq/ℓですが、タンパク質は1分子当たり多くの電荷をもっているため、実際の濃度はかなり小さく、細胞内液中に存在する陰イオンで最も濃度が高いのはリン酸イオンです。)

 ナトリウムイオンやカリウムイオン、塩化物イオンなど1価のイオンはグラフ中の数字がそのままそれぞれのイオンの濃度をあらわしています。

 医療や医学の分野では国際単位系では使われない単位が慣例としていくつか使われ続けています。血圧をあらわすときの”mmHg”や血糖値を表すときの”mg/㎗”などです。それぞれの単位の意味をよく理解した上で使うようにしましょう。

2018年度 第2回 生体の階層性と恒常性

 今回は先週に引き続き、生体がどのような階層で成り立っているのか、内部環境の恒常性が維持されるとはどういうことであるかを考えました。

 階層の重なり方は小テストでも問いましたが、常に頭に入れておくべきことです。簡単ですが、非常に縦横なポイントですので改めて確認をしておきましょう。

 最も小さい階層である化学物質(原子や分子)ですが、これらは「化学」で学んだという意識が強いでしょう。生命現象は物質の相互作用として説明することができ、膨大な知識の蓄積があります。したがって、生命現象のメカニズムを学ぶためには避けて通れません。

 授業で取り上げた元素の名称や記号は化学的な現象を考える上での基本です。配布した周期表も参考にして改めて確認しておきましょう。また、それぞれの分子の特徴、特に高分子の構造と機能は授業の進捗に合わせて少しずつ解説をしますが、各自で『生理学のための化学』を順に取り組んでいくこと。

 細胞内にはさまざまな多くの分子や分子が集まってできた構造体(=細胞小器官)があります。しかし、これら単独では『生命現象』を営んでいるとはいえないため、生物学的な特徴を持つ構造的、機能的な最小単位は細胞です。人体には大きく分けても200から300種類の細胞が存在します。それぞれごとに、形態も機能も、またその細胞がどこにどれくらいの数あるかも異なっています。解剖学では形態の面から、生理学では機能の面から、これら細胞について考えていきます。プリントの「カタログ」に掲載された210種類は、いずれも何らかの形で取り上げられるでしょう。

 部位に応じて同種の細胞が集まり、一定の構造と機能を持った状態が組織です。細胞どうしが密に集まっている組織もあれば、粗になっている組織もあります。説明した4種類の名称と特徴をよく頭に入れておきましょう。授業では胃を例に挙げました。プリントの「参考:消化器系~」でも胃を取り上げ、p20に胃壁の構造を組織ごとに示し、さらに内腔側の粘膜=上皮組織については細胞の構成を図示しました。胃粘膜の中でも胃腺は多種類の細胞が組み合わされて構成されていますが、いずれも上皮組織に分類される細胞種です。

 組織が、器官としてまとまると固有の形態を持ちます。器官を「器管」と間違えるケースによくであいますが、言葉や字の意味をよく考えましょう。英語では”organ”で、語源などはここを参考にして下さい。

 器官がいくつか集まって、器官系をつくります。消化器がよい例です。「消化」器といいますが、消化器系の機能は大きく分けると、食物の摂取、消化液の分泌、食物の混合と移送、食物の消化、栄養素の吸収、排便と六段階に分けられます。これら一連の機能を全うするためには一つの器官では不十分で、いくつかの器官の機能を合わせることによってはじめて実現します。

 やや長くなりましたが、生理学1では、生体の機能単位である「細胞」について、できるだけ分子レベルでの現象を中心にして考えるところから始めます。

 後半で取り上げた「恒常性」、「ホメオスタシス」は、それぞれの考え方を提唱したベルナール、キャノンの名前とともに、概念を言葉で説明できるようにしておきましょう。これらの概念は多くの具体例によって裏付けられています。生理学を学ぶということは、これらの具体的な事実を順に身につけていくということに他なりません。

 今回は、その基本となる体液について簡単に説明しました。細胞外液と細胞内液、さらには間質液と血漿の組成や量がどのように維持されているのかは声帯全体のホメオスタシスを考える上で最も重要なしくみです。多くの器官系の機能が関わっていますので、説明は簡単ではありません。まずは、その量や組成の基本的な事柄を頭に入れておきましょう。

 小テストの模範解答と簡単な解説を別途掲載したので各自で確認すること。

2018年度 第1回 イントロ、階層性と恒常性

 入学後1週間、初めての授業が続いていますがいかがでしょうか? 

 第1回目の授業ということで、やや‘心構え’を説きすぎてしまった気がします。最初から力を入れすぎては疲れるだけですが、押さえるべきところは押さえておきましょう。

 今回の要点は生理学を学ぶ上での重要な柱である「生体の階層性」と「生体の恒常性」をいう言葉と、その意味するところを理解することです。具体性がないとなかなか理解しにくいですが、「階層性」については、生体を構成する階層がどのように積み重なっているのかをプリントの図を見ながら見直しておきましょう。「恒常性」はいくつかの具体例を挙げていますので、それらのうちのいくつでもいいので自分に引きつけて考えてみましょう。高等学校で学んだ生物の内容を思い出せるとよりわかりやすくなると思います。

 来週は、階層性についてもう少し具体的に説明します。また、恒常性・ホメオスタシスについては、内部環境である細胞を取り巻く液体について考えてみます。

 『生理学のための化学』では、第2項の「生体を構成する物質:元素と原子、分子、イオン」を小テスト範囲としますが、一部語句の訂正をしておきます。4ページ左16行目の「準主要元素」を「少量元素(準主要元素)」にして下さい。文中の表の表現に合わせるとともに、授業のプリントで用いている表現も併記します。

 プリントの各章末には『要点のまとめ』として穴埋めを中心としたドリルを設けました。必ずしも授業の進捗にしたがっているわけではありませんが、章ごとに整理するには便利だと思いますので、適宜利用して下さい。