周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語

 今週の後半で周期表に関するメンデレーエフの業績について説明しましたが、彼の前後にも周期表をつくっていく上で重要な研究成果を挙げた研究者たちはたくさんいました。150周年・国際周期表年を記念して、自然科学系の雑誌では多くの特集が組まれています。

 そのなかで、イギリスのNature誌が日本国内向けに出しているニュース雑誌"Nature ダイジェスト"では「周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語」と題する記事を掲載しています。有名なマリー・キュリーをはじめ、教科書などではほとんど触れられることのない多くの女性科学者の業績が紹介されています。圧倒的に男性上位社会であった19〜20世紀(残念ながら現在も)の科学界で、諦めることなく真理を探究し続けた女性たちのドラマが描かれています。

 残念ながら有料記事で自由に読むことができませんが、申し出てもらえればお渡しいたします。

『生理学のための化学』訂正

 『生理学のための化学』は二つの章を次回の小テストの範囲としました。「まじか!」という声も聞こえましたが、今週の授業と重複する部分も多く、復習を兼ねて取り組めます。ただし、濃度などは例題を設けて説明しましたので、改めて自分で取り組んでみること。
 

 『生理学のための化学』のうち、p24の囲み「有効数字」の2行目からの分に誤字がありましたので訂正します。
     自然科学では測定値や仮定値、あうりは平均値など多くの数値を扱い ます。
            自然科学では測定値や仮定値、あるいは平均値など多くの数値を扱い ます。

フィードバック機構について(補足)

 フィードバックの概念を抽象的に説明するのはかえって難しいですが、改めてまとめてみます。

 フィードバック機構(feedback system)はフィードバックループ(feedback loop)とも呼ばれることもあります。生理学的は現象として説明すると、「身体の状態をモニターし、その情報を基に評価し、身体の状態を変化させ、再度モニターする」というサイクルを繰り返す一連の現象です。モニターされる状態には、ホメオスタシスの例として上げた血圧や体温、血糖値、あるいは体液量や体液の組成など、さまざまが状態や現象を考えることができます。それらはいわば変数であり、調節されているために「ある範囲内」に保たれています。そして、これらの変数を変化させるものがすべて「刺激」です。刺激を受けてもなお、ある範囲で一定に保つしくみがホメオスタシスで、そのためにネガティブフィードバック機構がはたらいています。

 「ネガティブ」というのは、刺激によって生じた変化を「逆転させる」ことによって、変数をある範囲に保とうとする作用があるからで、典型例が授業で取り上げた血圧の調節です。調節機能が働くことによって、刺激によって生じた変化(血圧の上昇や低下)を逆転させる、あるいは変化を相殺する結果がもたらされます。繰り返しですが、生理学ではホメオスタシスを維持するために機能する多くの現象・作用を学びます。そのほとんどはネガティブフィードバック機構であると考えてよいでしょう。

 詳しく説明できませんでしたが、ポジティブフィードバック機構(positive feedback system)は、刺激によって生じた変化をさらに増強するしくみですから、ネガティブフィードバックとは反対の効果を生みます。授業では分娩時の子宮収縮を例に挙げましたが、まもなく学ぶ(すでに学んだ?)出血時に作用する血液凝固のしくみにもポジティブフィードバック機構がはたらいています。やや長くなりますが、予習?もかねて説明します。

 血液凝固反応は3段階に分けられますが、その第1段階は2つの機序からなっています。血管と血管周囲組織の障害により、第Ⅲ因子(組織因子、またはトロンボプラスチン)が血管外から血管内へ流入することによって生じる外因性の機序と、血管内皮細胞が障害を受けたことによる膠原線維の露出や血小板の活性化によって第Ⅶ因子(安定因子)が活性化することによって始まる内因性の機序です。いずれも第Ⅹ因子を活性化するところに収束します。活性化した第Ⅹ因子は、カルシウムイオン存在下で第Ⅴ因子(不安定因子)に結合してプロトロンビナーゼができます。プロトロンビナーゼは、活性型第Ⅴ因子と活性型第Ⅹ因子、カルシウムイオン、さらには血小板のリン脂質も含んだ巨大な酵素複合体です。

 異なった経路で始まった血液凝固反応も、プロトロンビナーゼの形成以降は共通した反応経路となり、ここからを第2段階で、プロトロンビナーゼが肝臓で生成される血漿タンパク質であるプロトロンビンの一部を切断します。生じたタンパク質がトロンビンです。

 トロンビンはカルシウム存在下でフィブリノゲンをフィブリンに変換する反応を触媒します。この段階が血液凝固反応の第3段階にあたり、生じたフィブリンは活性型第ⅩⅢ因子(フィブリン安定化因子)の作用によって安定したフィブリン線維を形成します。トロンビンは第ⅩⅢ因子活性化する作用もあります。この結果、血餅が生じます。

 ここまでは特にフィードバックはかかっておらず、カスケード反応として進行していきます。カスケード反応とは「数段階にわたる一連の反応が初発反応の開始によって連続的に順次増強される反応形式」[南山堂医学大辞典第20版]のことを言い、「逐次的反応」と訳されますが、血液凝固反応はその代表例です。

 さて、ポジティブフィードバック機構がかかっているのは、トロンビンを中心としたステップです。第2段階で生じたトロンビンは第1段階で第Ⅴ因子が活性化する過程を促進します。また、第Ⅹ因子が活性化されるためには、活性型第Ⅶ因子から連続的な反応が生じて第Ⅷ因子(抗血友病因子)が活性化される必要があります。トロンビンはこの第Ⅷ因子の活性化のステップも促進することが知られています。さらに、トロンビンはこれら以外にも第1段階のいくつかの反応を促進することが分かっています。この結果、トロンビンの産生量が増加すればするほど、さらにトロンビンを産生する反応が進行するというポジティブフィードバック機構がはたらきます。

 フィブリン線維が形成される過程で、周囲に存在するであろうトロンビンも一緒に血塊中に取り込まれます。この結果、トロンビンが消失していくため、血液凝固反応はどこかの段階で停止します。

第3回 pH、フィードバック、化学反応

 今回取り上げたうち、水素イオン濃度とpHについては『生理学のための化学』第5章で取り上げていますので、ここで中途半端な説明をするよりも酸と塩基の性質とともに考えた方がわかりやすいでしょう。炭酸−重炭酸緩衝系についても合わせて説明しています。

 フィードバック、特にネガティブフィードバック機構については、エアーコンディショナーを例にして基本的な仕組みを説明しました。別途改めて説明を付しましたので、改めて考えてみましょう。

 授業でも触れたように、血圧の調節は循環器系の仕組みを理解する上で重要なポイントになる内容です。フィードバック機構の考え方のみならず、心臓と血管の構造と機能がよく分かっていないと、血圧調節の全体像をしっかりと説明することはできません。理解した内容を自分の言葉で説明するという意味でもよいモデルですから、生理学2で学ぶときには改めて思い出すようにしましょう。

 ポジティブフィードバック機構については、別途例も挙げました。生理学で取り上げられる大きな現象は子宮筋収縮・子宮頚部拡大だけかもしれませんが、細胞内の現象としてはいくつか考える予定です。

 化学反応については、合成=同化、分解=異化、そして、合成+分解=化学反応全体=代謝=同化+異化 としてまずは用語の意味を頭に入れましょう。そして、同化の過程と異化の過程でエネルギーがどのように移動するのかを理解しておきましょう。

 生体で生じる化学反応のほとんどは交換反応であり、可逆的反応です。アミノ酸の結合と分解を例にして説明しました。『生理学のための化学』第12章前半でもほぼ同様の内容を説明しています。アミノ酸以外の例も取り上げて説明しましたので、合わせて読むと理解が深まるでしょう。

 生体での化学反応にかかわるエネルギーを考えるには、アデノシン三リン酸を抜きに説明することはできません。今後はATPと略しますが、名称と略号を自由に使えるようにしておきましょう。同化と異化の過程でATPの分解と産生がどのように関わっているのかをよく考えましょう。

第2回 階層性と恒常性

 少しは学校に慣れてきましたか? 生理学の授業としてはここまでは助走で、次回からは少しペースアップして進めていきます。したがって、助走のうちに自分なりの勉強のしかたをつくれるようにしておきましょう。

 生体における階層構造は、これ自体を理解するのは簡単です。しかし、今後学ぶ内容に当てはめて考えていく必要がありますので、必要に応じて振り返るようしましょう。

 生理学の教科書の目次を見れば分かるように、器官系ごとに、さらに器官ごとに、その機能を考えていきます。機能は構造に依存しますので、その都度器官の構造を、組織の積み重なり方などとともに学びます。器官の機能は組織、さらには細胞のはたらきに依っています。外皮系と消化器系について、例題のつもりで簡単にまとめていますので、必ず目を通しておきましょう。

 分子については、来週以降の授業で順に取り上げていきますが、元素と原子、そして複数の原子が結合して分子ができることについては『生理学のための化学』をはじめ、必要に応じて高等学校の科学の教科書などを見直しておきましょう。

 授業中に指摘してくれたように、『生理学のための化学』p10表2-2で、マグネシウムイオンのイオン式が”Mg+”となっていますが、"Mg2+"に訂正します。各自で直しておいて下さい。

 生体の恒常性は、具体的に考えていかないとわかりにくいでしょう。今回は体液の量と組成、特に電解質の組成を中心に考えてみました。細胞内液と細胞外液の組成、特にそれぞれで最も多い陽イオンと陰イオンについては、前期を通じて常に頭に入れておくべき重要事項です。

 体液のバランスの調節については、1日あたりの水の出納という形でしか説明しませんでした。単純なことではありますが、これも覚えておくべき数字です。内訳については、数字まで記憶するのは難しいですが、それぞれで最も多いものは頭に入れておきましょう。取する方では飲水、排出する方では尿とその生成のしくみを後期に詳しく学ぶはずです。

 来週は恒常性の具体例として、体液中の水素イオン濃度を考えます。さらに、恒常性維持する上での基本的かしくみを、これも概念だけですが考えておきます。さらに、今日は代謝水にて簡単に説明しましたが、生体で生じる化学反応についても概略を説明します。

 来週は第2章に入る予定をしていますので、「はじめに」の部分まで予習しておくように。また、『生理学のための化学』の範囲を説明し忘れたクラスがありますが、「第3章:水」の範囲から出題します。

第1回授業(補足)

 授業の途中で簡単なテストをしました。答え合わせはあえてしませんが、簡単に講評しておきます。

 単位について
   ・電流の単位は何か。また、その単位を表す記号を記しなさい。
   ・圧力の単位は何か。また、その単位を表す記号を記しなさい。
 『生理学のための化学』の「はじめに」で国際単位系について簡単に説明しました。ここで電流をはじめとした基本単位と、圧力をはじめ基本単位から求められる単位についてまとめています。各自で確認しておくこと。
 『生理学のための化学』の「はじめに」は、小テストの範囲ではありませんが必ず目を通しておくこと。「眼を通す」ということは、読んで既に知っている、理解していると分かればそのままでかまいませんが、知らないこと、理解できないことがある場合は必ず覚えるまたは理解することを意味しています。

 計算問題について
  •   ・attachment
  •   ・attachment(a=に変換せよ)
  ・183秒は何分か?(小数で答えよ)
 分数、文字式、さらに60進法で考える必要がある時間についての簡単な計算問題を考えました。これらは、その計算能力を身につけているということ自体が大切あるいは常識であるというにとどまらず、順序よく物事を考えていくための手段、手順のトレーニングであるという点でも重要です。難しくいえば思考における論理性を身につけるということですが、数学を学ぶ意義はここにあります。

 指数について
  ・“3×10-3”を小数で表しなさい。
 指数は桁の大きな下図を扱う上でよく用いられる表現です。これも実生活で必要となることはまずないでしょうが、物理化学現象を表す上では便利であり、必ずであうものです。一度はどこかで学んでいるはずですから、何らかの手段で必ず思い出しておきましょう。『生理学のための化学』p35でも簡単に解説しました

第1回 イントロ、階層性と恒常性

 第1回目の授業はいかがでしたか。久しぶりの学校生活で、「こんなはずでは」と感じることも多いかもしれません。あまり先を見てもしょうがないので、まずは目先のことを一つ一つ解決していきましょう。

 授業の方針については繰り返しませんので、必要があればプリントをよく見直しておきましょう。また、2年生や3年生に知り合いがいれば尋ねてみるとよいでしょう。よい評判も悪い評判も、いろいろ耳にすることができるはずです。

 さて、生理学がカバーする領域は幅広く、基礎医学においては解剖学とともに車の両輪のような役割を果たします。医学部などでは生化学という科目がありますが、広くは生理学に含まれていると考えてよいでしょう。こうした点でも、狭い意味での生物学の延長としてではなく、正常な人体の機能を考える上では幅広い自然科学の知見、高等学校までに学んだ内容でいえば理科と数学の知識と考え方を前提とします。

 生理学を学んでいく上であらかじめ知っておくべきは、生体(生物)には階層性と恒常性があることです。同時に、生体に階層性があり、恒常性があるとはどういうことかを1年間かけて学んでいくと思っていいでしょう抽象的ではあっても概念として知っておき、さらに、1年間かけてそれがどういうことなのかを具体的に考えられるようにしていくのが生理学の学習です。

 現象を考える上で必要な用語や状態を示す数字(と単位)が次から次へと取り上げられます。医学あるいは最も広く生命科学の学習は、数学や物理学のように演繹的な思考で考えるというよりも、知識を順に積み上げていく帰納的な手法が必要な分野です。そして、全体の中から大きな法則性を見いだしていくところに醍醐味があります。

 今回は階層性に関してせつめいしました。途中までしかできませんでしたが、ここでも用語とその意味・概念、そしてそれぞれの間の関係をしっかりと理解しておきましょう。理解するというのは、単に覚えるということではなく、これまでに自分が身につけている知識や体験と結びつけて、それらを自由自在に説明できるということです。それぞれについての具体例を挙げられることもその1つです。

 来週は階層性と恒常性について、概念とともにいくつか必要な具体例を考えてみます。また、『生理学のための化学』では、階層性の最も低位に位置する物質の基本概念を確認します。