第27回 視覚2

今年最後の授業でした.

始めに追加で取り上げた「両眼視差」はヒト(あるいは動物一般)が2つの眼を使って対象を立体的に見ることができる根拠です.プリントのステレオグラムや3D映像もこの視差がある故にできることです.授業では触れませんでしたが、ステレオグラムを簡単に立体的に見るための眼鏡もあります.

さて、感覚器の最後に視覚の受容器、つまり光をとらえる網膜のしくみを考えました.直接光エネルギーに反応する細胞は2種類、杆状体細胞と錐状体細胞で、それぞれの外節にある特殊なタンパク質が光エネルギーを受け取ると構造変化を生じます.この構造変化が細胞内のたくさんの化学反応を誘導して、最後に細胞を過分極状態にします.詳細は省きましたが、プリント309頁の図をよく見ておいてください.視細胞の過分極がグルタミン酸の放出を抑制し、双極細胞の興奮を引き起こします.双極細胞の興奮は神経節細胞を刺激して視神経をインパルスが伝導していきます.

ロドプシンを「感光色素」と表現するのは、光が当たることによってロドプシンが構造変化するが、光がなくなると(レチナールがあれば)元に戻る(=再生する)からです.杆状体細胞が暗いところでよく反応するというのは、昼間の光は強すぎてロドプシンの再生が間に合わ内からです.これに対して、錐状体細胞が持っている3つの感光色素は昼間の明るさでも十分に再生して機能します.したがって昼間はたらいているのはほとんど錐状体細胞の方です.

先週の授業で暗順応と明順応を説明しましたが、明るさが急激に低下すると、杆状体細胞の持っているロドプシンが再生して反応し始めますが、この再生にかなりの時間がかかることが、順応に時間が必要な要因の1つです.

視覚の伝導路は視交叉での交叉のしかたがやや複雑で、試験にはよく出題されます.わかりにくい場合は何度も自分で図を描いて確認してください.しかし、より根本的には、視野と一次視覚野が左右入れ替わっているということではないかと思います.体性感覚と同様で、無駄をしないはずの生き物(あるいは進化)が、どうしてこのような構造をつくったのか非常に不思議です.

色の感覚についてはもう少し説明したかったのですが、時間切れでやや中途半端になってしまいました.広告や標識など、身の回りには色によって区別することを強いているものがたくさんあります.しかし、色盲・色弱の場合には、その区別がつきにくく、非常に不便、あるいは不都合を来すことも多々あるようです.近年、「カラー・ユニバーサルデザイン」という考え方で、色を上手に使って色弱者にもうまく情報が伝えられるようにしようという運動が始まっています.興味のある方はここ(http://www.cudo.jp/cud_nani/index.html)を参考にしてください.なぜ色盲、色弱の症状が出てしまうのか、遺伝子レベルでも説明もあります.

皆さん、よい年をお迎えください.

第26回 視覚1

今週は学会出張があり、遅くなってしまいました.

今週と来週で視覚機能について取り上げます.他の感覚器官では、適合刺激がどのように受容器細胞に受容器電位(脱分極)を生じるかというテーマを考えることに終始したのですが、視覚器=眼球では可視光線を受容する場である網膜にたいして、その可視光線をどのよに届けるのかという調節も大きな意味を持っています.今週は可視光線が網膜に届く前の段階について取り上げました.

ポイントは、遠近の調節と明るさの調節です.

遠近の調節のしくみは、冒頭で少し説明をした光(光線)は通過する媒体が変化すると屈折するという性質を利用しています.膜膜と水晶体の両方で屈折していますが、調節能力としては水晶体が中心.毛様体筋の収縮と弛緩によって水晶体の厚みが変化させられ、この結果前方から入射してくる光の屈折率が変化して、網膜に結像=焦点のあった像を造ります.いくつか図を使って説明しましたので、よく見直しておいてください.また、視力について、近視や遠視、あるいは老眼がどのような原因によるのか、それらを矯正するためにはどのような工夫が必要かについても触れました.すでに近視や老眼の矯正眼鏡を使っている人には当たり前のようなことですが、改めていろいろ調べてみるといいでしょう.

明るさの調節は虹彩を構成している2種類の筋の収縮と弛緩によって調節されます.いずれも平滑筋ですから、自律神経系によって支配され、交感神経と副交感神経のいずれが優位にはたらくかによって拮抗的に作用します.

眼球の運動についてはあまり触れられませんでした.小テストでは平衡感覚との関わりで外眼筋を支配する脳神経の名称を出題しましたが、それぞれの神経がどの筋を支配しているのかも改めて復習しておいてください.年明けに運動機能について取り上げますが、ここでもう一度考えることになると思います.

第25回 平衡感覚

今日は平衡感覚について取り上げました.

動物にとって最も原始的な感覚、つまり進化的に最も早く獲得された感覚ではないかと思います.同時に、検知した情報を直ちに運動につなげる必要があるため、新皮質をほとんど使わずに、直接運動神経とつながっています.したがって、単一の「平衡感覚中枢」のような場所はなく、前庭器官から伸びた神経(=前庭神経)を一次ニューロンとして、二次ニューロンにあたる神経が運動神経核につながっています.

さて、前庭器官は大きく2つに分けて説明しました.内リンパの流れを有毛細胞の興奮に変換しているというしくみは全く同じです.さらに授業では、聴覚器である蝸牛・コルチ器と比較して説明をしました.共通する構造や機能を持っていて.空気の振動と重力に対する変化を内リンパという液体の動き(振動)に変化させているという点で共通します.同じ場所にあり、基本的に同じしくみを使って刺激を受容し、ニューロンの興奮に変えています.
半規管と卵形嚢・球形嚢が、身体、あるいは頭部のどのような動きに対して反応するのかを先ず理解しておいてください.構造的には、両者のの相異点をはっきりさせれば、試験で問われるような重要な構造が何であるかはすぐにわかってくるでしょう.

最後に、光について簡単に説明をしました.視覚器はこれまでに学んだ感覚器官とくらべると、しくみがやや複雑です.聴覚が音波(空気の振動)という物理的な現象をニューロンの興奮という生物学的な現象に変換していたように、視覚器は光線という、これも物理的な現象を受容しています.したがって、その実体についても一通りの理解が必要だと思います.