2016年度 第26回 筋のエネルギー産生と筋収縮の調節

 今回で今年は最後、あまり締めになるような授業ではありませんでした。前期にやり残しではありますが、筋線維あるいは筋の特徴を考える上で重要な内容ですので、しっかりと復習しておいてください。

 筋線維を分類する考え方はいくつかあるようですが、一般的な分類方法を採り上げて説明しました。

 赤筋線維と白筋線維、または遅筋線維と速筋線維という分け方は筋線維の見た目の特徴(色)と筋線維の収縮速度がほぼ一致するところから、筋線維を大きく2つに分けています。国家試験でもこの分類に随ってそれぞれの特徴を問う問題が出題されています。なぜそのような色をし、なぜ収縮速度に差が生じるのかを考えると、それぞれのATPの産生方法の違いを考えることにつながってきます。したがって、ATPの産生方法に従って3つに分ける考え方は、現実的だと思います。この3つに分ける考え方が、現在最もよく使われており、筋線維内の構造的な特徴や収縮に関する特徴を合わせて考えることができます。

 プリントには簡単な一覧表を入れましたが、必ず自分なりの手書きの一覧表をつくって、どこが重要であるかをよく考えるようにしましょう。

 運動単位は、筋線維の集合体としての筋がどのように収縮しているかを考える上で必要な考え方です。筋線維の種類と運動ニューロンの特徴を合わせて考えるようにしましょう。それぞれの筋の役割を考えると、その筋がどのような収縮のしかたを求められているかが分かると思いますが、神経支配比を考慮することはこの筋の特徴を考える上で有効です。

 また、単収縮と強縮も試験で問われることの多い分野です。運動単位と一緒にしてよく見直しておくように。

 授業の最後に、反射について簡単に説明しました。年明けの授業では、脊髄や脳幹を反射中枢とした反射についていくつか事例を挙げて考えます。反射弓の構成をしっかりと頭に入れておいてください。

2016年度 第25回 視覚

 今日の授業では視覚の受容器としての視細胞の機能と、中枢への伝導路を取り上げました。

 杆状体細胞(杆体細胞)と錐状体細胞(錐体細胞)の光に対する反応性はほとんど同じです。したがって、より詳しく研究され、かつ、単純な杆状体細胞を例にして説明しました。視物質であるロドプシンの構造の特徴と、光を受けたときの変化のしかた、そして、光が当たったことによって細胞内でどのような現象が生じるかをよく考えましょう。

 また、錐状体細胞の性質と色の感覚についても説明しました。錐状体細胞は含まれている視物質によって3種に分けられること、それぞれが異なった波長域の光に反応すること、3種の反応性の違いによって色を感じていることなどが分かれば、色盲や色弱がどのようなしくみで生じるかも理解できるでしょう。

 視細胞は光が当たることによって過分極が生じ、このことが神経節細胞の興奮を引き起こし、この興奮が視神経を伝導します。

 伝導路を考える上では、網膜には視野の上下左右が逆さまになった像が移っていることに注意した上で、視交叉での交叉のしかたをしっかりと理解しましょう。これが分かれば、後は順番に考えていけば簡単です。左右の一次視覚野へ送られる情報と、実際の視野の関係を理解しておきましょう。

 来週の小テストは平衡覚と視覚についてです。最後に触れた筋のエネルギー産生については来週の授業分と一緒にします。

2016年度 第24回 視覚(遠近と明るさの調節他)

 先週は授業後に学会出張があり、そのまま横浜に行ったため授業の記録がアップできませんでした。質問に先に答えてしまい、順番が前後しますが、簡単にまとめます。

 入射する光は角膜と水晶体で屈折しますが、角膜は厚みや曲率(丸みの度合い)を変えることができませんから、遠近調節のために変化するのは水晶体だけです。水晶体の周囲の構造について、プリントでは断面図しかないためややわかりにくいと思いますので、この部分について補足します。まだ十分に解明されていないしくみがあるようですが、わかりやすさを優先して説明します。

 前方から見ると水晶体はほぼ円形で、その周囲を毛様体筋が取り囲んでいます。毛様体筋には輪状の筋線維と放射状の筋線維があります。ちょうど虹彩と同じで、内側(水晶体側)にあるのが輪状筋、外側にあるのが放射状筋です。そして、毛様体筋から水晶体に向けて毛様体小帯(チン小帯とも言います)が伸びています。毛様体小帯は弾性繊維などを中心にしてできた結合組織性の構造です。ここで、重要なのは毛様体筋を構成する輪状筋と毛様体小帯です。

 プリントの図の毛様体筋の部分をよく見ると輪状筋と放射状筋の様子が分かると思います。

 近くを見るときには輪状筋が収縮するため、毛様体筋全体は水晶体に向かって閉じていきます。したがって、毛様体小帯は緩み、水晶体は自らが持っている弾性によって丸みを帯びたような形状に変化します。遠くを見るときには輪状筋が弛緩して毛様体筋全体が水晶体から遠ざかるようになります。その結果、毛様体小帯に張力がかかって水晶体を周囲に向かって引っ張るため、水晶体は扁平になります。

 虹彩の変化のしかたとよく似ています。それぞれが遠近、あるいは明暗に応じてへに平滑筋の収縮状態を変化させて調節していることが分かると思います。

 最後に、網膜の構造を簡単に説明しました。明日の授業でも改めて考えますが、視細胞を中心とした光に対する反応のしかたを理解する上でどうしても必要な知識ですから、よく見直しておくようにしてください。

遠近両用メガネとは?

 先週の授業で近視、遠視、そして老視のメカニズムを説明しました。授業後に「遠近両用メガネは遠視と近視の両用なのか?」というような意味の質問を受けました。すでに使っている人にとってはなぜこのような疑問がわくのか不思議でしょう。簡単にしくみを説明します。

 遠視と近視の両方の症状を示す人はいません。「遠近両用」と言った場合の「遠」とは「近視の人が遠方を見るのに適している」、「近」とは近視の人が老視になったときに「近傍(手元)を見るのに適している」という意味です。したがって、「遠近両用メガネ」を使うのは元々近視の人だけです。近視ではない、つまり正眼視の人が老視になった場合には、授業で説明したとおり凸レンズによる老視用メガネ(シニアグラスとか、リーディンググラスなどという場合もあります)を利用して近傍を見やすくします。拡大鏡、つまり虫眼鏡を代用して本や新聞を読む場合もありますね。

 「遠近両用メガネ」では1枚のレンズの上方が「遠方」用、つまり、通常の近視の人が矯正のために必要なレンズです。その人が遠方を見るために必要な、いわゆる「度数」になっているはずです。最近は「中近」と言って、室内、あるいはデスクの先のパソコンの画面くらいまでに焦点を合わせられるようにしたレンズもあります。これに対して、下方が「近傍」用です。ただし、近視と老視の程度によってこの部分がどのような形状になっているかは異なります。

 老視ですから当然近点が大きくなる、つまり、近傍が見にくくなるため、対象物を眼から離す必要があります。ただし、あまり離してしまっても焦点が合いません(近視ですから)。あくまでもメガネをかけた状態で、つまりレンズを通して近くを見るために、近視用(凹型)の「度数」を下げて、10m先は見にくいが、25cm先は見やすくなるという形状にします。近視の程度が低く、かつ、老視の程度が高いと、たぶん凸型になるでしょう。ただし、1枚の上下で度数あるいは形状を変えたレンズですから、単独の度数、形状のレンズに比べると非常に高価で、およそ2倍の価格です。

 私は年相応に老視ですが、裸眼では10cm先にしか焦点が合いません。それだけ眼球が長いと言うことでしょう。当然、これより近くなっても焦点はあいません。したがって、25cm先はぼけて見えるため、非常に弱い近視用レンズ、つまり中心部分のへこみが小さい凹レンズを使います。眼鏡屋さんには、「近視の度合いが非常に強いため、老視が近視を追い越すことはない(つまり、遠近両用レンズの下方が凸レンズになることはない)」と言われています。ちなみに、授業時にかけているメガネは、一側に上下2枚のレンズを入れてあり、上方が遠方用、下方が近傍用です。老視になるような年齢では近視はほとんど進行せず、老視だけが年齢に応じて進行していきます。このとき、老視用レンズだけを入れ替えればいいため、安上がりです(フレームはやや高価ですが)。