2018年度第27回 脊髄反射

 今回はスクリーンを2つ使って授業をしましたが、初めてでやや戸惑いながらでした。わかりにくかったところもあったかもしれません。

 運動機能はおおきく分けて5つある中枢、脊髄、脳幹、小脳、大脳基底核、大脳皮質(全体ではなく、運動性皮質と呼ばれる前頭葉の一部)に分けて、その機能を考えていきます。それぞれの構造は解剖学で学んでいると思いますのでよく見直しておきましょう。また、反射の機能や反射弓を理解する上では、筋紡錘、腱器官、さらにはα運動ニューロンなど、忘れていることがあれば必ず身につくまで復習を繰り返すこと。自分で何度も図を描き、構造や機能の特徴を声に出して説明する練習をしておきましょう。

 脊髄では運動機能を調節する最も下位の中枢です。意志が関わるような機能ではなく、反射の中枢として機能しています。運動という点ではすべての髄節の機能が等しいわけではありません。上肢と下肢を支配している領域が重要ですが、脊髄の頸膨大とよ腰膨大はニューロンの数も多く、より複雑な機能を営んでいます。

 今回は脊髄を中枢とするいくつかの反射を取り上げました。反射弓の考え方に慣れるということもありますし、そのために前期半ばで考えた神経回路の考え方を実際に活用していく必要があります。少しじっくりと説明をしたつもりです。

 伸張反射は単シナプス反射であり、また伸筋の多くに生じるという点で最もよく取り上げられます。除脳動物(多くは中脳のレベルで切断して回復させる)で、筋を伸張すると、その筋に張力が発生します。この筋に発生した張力は後根を切断すると消失するため、この作用が脊髄を介した反射によることが示されています。

 関節の伸展をともなうため、伸筋の拮抗筋である屈筋の弛緩が同時に生じます。これが拮抗抑制です。このように、拮抗筋の活動が抑制されることを相反性抑制といいますが、拮抗抑制はその典型です。それぞれの分野における典型的なものを正確に理解しておけば、いろんな応用が利きます。それぞれに必要な用語や語法も合わせて、伸張反射と拮抗抑制はくどいくらいに復習をしておきましょう。

 自原抑制(自原性抑制ともいいます)は、伸張反射/拮抗抑制よりは一段階高度ではありますが、おおきくこれら2つの反射によって筋の長さと張力の変化を補償し、姿勢の維持に貢献しています。

 屈曲反射と交叉性伸展反射は関わっている筋が多くなるため、反射弓全体を説明することはなかなか大変です。プリントでは、屈筋、伸筋とやや一般化して説明しました。その分理解しやすいと思いますので、これも自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

 今後も、今回のようにスクリーンを2つ使って授業を進めていく予定ですが、座席の都合で見にくい場合には、席を替わってかまいません。

 よい新年をお迎え下さい。

2018年度第26回 光受容のしくみと視覚の伝導路

 小テストの問題と解答のPDFファイルがこわれていたのか、うまく開かなかったようです。修正しましたので確認して下さい。また、第8章の「要点のまとめ」のうち、p388(50)に誤りがありましたので以下のように訂正します。
  誤:網膜の中心窩付近は杆状体細胞が集中するため( a )が強く、周辺部は( b )が強い。
  
  正:網膜の中心窩付近は錐状体細胞が集中するため( a )が強く、周辺部は( b )が強い。

 今回取り上げた光受容のしくみはかなり複雑です。まだまだ十分に解明されていないところもあるようですが、基本的な部分をできるだけわかりやすく説明したつもりです。ヒトにとって最も情報量の多い感覚ですから、多くの量の情報をより的確に認識できるように複雑なしくみがあるのでしょうか。

 網膜は、眼球壁の最も内側で硝子体と接しています。色素上皮層と神経層からなり、色素上皮層が脈絡膜と接しています。神経層はさらに3つの細胞層に分けてその機能を考えます。

 視細胞は、杆状体細胞と錐状体細胞の2種類があり、機能に違いがあります。この機能の違いは外節に含まれている視物質のはたらきによってつくられています。また、機能の違いはそれぞれの細胞の網膜での分布にも表れ、さらに、網膜の部位による色彩感覚や明暗認識の能力の差となっています。

 視物質のはたらきと、光刺激を受けたときの細胞内で生じる現象を理解するには、かなり分子レベルでの知識を求められます。授業ではかなり簡略化して説明しましたが、オプシンタンパク質とレチナールが結合したロドプシンタンパク質がしくみの鍵を握っています。光刺激を受けるとロドプシンタンパク質の機能が変化して、杆状体細胞ないが過分極します。このことが、双極細胞を興奮(正確には脱分極のみで活動電位は出ません)させ、さらには神経節細胞を興奮させます。神経節細胞の軸索は視神経を構成し、インパルスが視神経を視床外側膝状体へ向かって伝導していきます。

 A組の授業では触れましたが、プリントp378の下図⒝明所での反応の中で、外節円板膜に挿入されているロドプシンタンパク質に組み込まれているレチナールは、図中では「cis-レチナール」となっていますが「trans-レチナール」の誤りですので、訂正します。

 ロドプシンと相互作用するトランスデューシンというタンパク質について簡単に付け加えておきます。嗅覚の受容体の説明で簡単にGタンパク質に触れました。嗅物質受容体と結合していて、状態に嗅物質が結合すると構造が変化して、近傍にある酵素(アデニル酸シクラーゼ)を活性化する役割を演じるタンパク質です。トランスデューシンも同様にGタンパク質で、光刺激を受けて構造変化したロドプシンの作用によって活性化します。杆状体細胞内でのGタンパク質であるトランスデューシンの役割は近傍の酵素であるcGMPホスホジエステラーゼを活性化することです。このcGMPホスホジエステラーゼはcGMPを分解します。cGMPは杆状体細胞の細胞膜にある陽イオンチャネルがに作用して、イオンチャネルを開放する作用を発揮しています。cGMPホスホジエステラーゼの活性化によってcGMPが減少するため、陽イオンチャネルが閉鎖します。

 錐状体細胞内でのフォトプシンの作用も、杆状体細胞内でのロドプシンの作用を同じと考えていいでしょう。色の判別のしかたはかなり複雑なしくみがはたらいています。

 神経節細胞が興奮すると、インパルスは視神経を伝導して視床へ伝えられます。この途中にある視交叉での神経線維の交叉のしかたは、伝導路を理解する上での重要なポイントです。視野が左右反転して網膜に投影していることとともに、自分で図を描くなどして、よく見直しておきましょう。

 来週で年内は最後です。第9章に入り、中枢が末梢での運動をどのように調節しているかを考えます。最初は脊髄を中枢とした機能調節のしくみを取り上げますが、脊髄の構造についてよく復習しておきましょう。

2018年度第25回 視覚:遠近と明るさの調節

 先週は、授業後にそのまま学会出張に出てしまったため、更新が遅くなりました。簡単にまとめておきます。
視覚機能は、これまでの感覚と異なり、適合刺激が受容器に達する前に調節機構があります。先週は、この部分を取り上げました。可視光線に対する受容器は眼球全体と考えてもよいのですが、直接反応する視細胞を受容器細胞とすると、角膜から水晶体にかけても部分は受容器に含めるよりはその前の調節機構と考えておきましょう。

 遠近の調節は毛様体筋と水晶体の関係を中心に考えておきましょう。近くを見るときと遠くを見るときとで、互いがどのように反応するのかを考えられる様にしておきましょう。決して丸暗記をするのではありません。

 明るさの調節は虹彩を構成する2つの平滑筋のはたらきとそれらを支配する神経の組合せを正しく理解しておきましょう。宿題は、検証できる様な答えのある問ではありませんが、一度考えてみると、たとえそのアイデアが誤ったものであったとしても自分なりに理解するきっかけとなるでしょう。

 視覚がヒトにとって重要な感覚であることの表れなのか、眼球周りには筋も神経もたくさん分布しています。また、涙腺などの免疫に関する器官も存在します。解剖学ではこれらについても学ぶはずですので、機能と結びつけて頭に入れていきましょう。

 来週は網膜の構造と機能、さらに、視神経から一次視覚野へ至る伝導路を取り上げます。時間があれば、第9章へ入ります。