2018年度第32回 中枢神経系の統合機能

 最終回は尻切れトンボで終わってしまいました。今回は簡単にまとめて、一部は後日追加しようと思います。

 はじめに、大脳新皮質について構造や機能局在について簡単に説明しました。機能局在は、これまでに感覚機能や運動機能で取り上げてきたこととオーバーラップする部分もあります。プリントp508のような外観図がすぐに頭に思いつくようにしておきましょう。

 一次感覚野や一次運動野の機能はわかりやすいですが、それ以外の感覚野などは授業でも詳しく取り上げませんでした。二次体性感覚野は一次体性感覚野と連合野を結びつける役割を負っていたり、それぞれの感覚独自の記憶を司る役割があります。連合野は脳の中でも最もおそくできあがる部分で、それだけ高次の機能を担っていると考えられます。感覚に関わる連合野は、各感覚の記憶や、いくつかの感覚を結びつけて生じる認識をつくりだすと考えられています。

 前頭葉の連合野は授業でも触れた人格や社会性をつくりだすために必須の領域です。まだまだ分かっていないことが多すぎて、すっきりとした説明はありませんが、「ヒトを人たらしめている」場所であることは間違いないでしょう。

 ところで、新皮質の構造は、この部分が発生、成長過程でどのように形作られるかということと密接に関わっています。このことは、ヒトとマウスを比較したことから分かるように、進化によって、あるいは動物の種間によって大きな差があることを示しています。機会があれば、このブログでも取り上げてみようと思います。来年度以降も思いついたときに開いてみて下さい。

 大脳のうち、新皮質と比べてより原始的な機能を持っているのが辺縁系です。情動脳とも呼ばれ、情動行動の他、本能行動の形成に与っています。しかし、基本的な記憶機能や意志決定、意欲の醸成にも大きく関わっているため、その機能は無視できません。

 脳波は基本的な四つのパターンの特徴を頭に入れておきましょう。そして、これらを通じて睡眠状態の変化を考えられるようにしておきましょう。

 睡眠については、多くの人々が少なからぬ関心を持っているようです。ときに誤った情報も流布されていますが、基本的な特徴をよく理解しておきましょう。自律神経系や内分泌系のはたらきも大きく関わっていますので、基礎医学の教育を受けていない一般に方々にはわかりにくいことも多いでしょう。みんなはしっかりと考えられるように。

 言語中枢は、二つあり、それぞれの機能に特徴があります。臨床の科目では言語障害なども取り上げられるかと思いますので、関連させて見直すといいでしょう。

2月14日の追加プリント《教科書・参考書》

 最後の授業で追加で配布したプリントは、来年度(2019年度)用につくった『教科書・参考書』の一覧です。今年度の初めに配布した内容と一部を修正しています。特に、この2年ほどで一気に広がった電子教科書あるいは電子版が付属している教科書についてを追加しました。

 授業用プリントで引用した図の多くはトートラの二冊からとっている。『人体解剖生理学』は授業の内容とほぼ一致するレベルで、『人体の構造と機能第4版』(1304頁)の簡易版にあたる。もし自分で購入してみようと思うなら、後者がお勧め。やや古い版だが、今から読み返すに足る内容。原書の依り新しい版の翻訳が出版される可の能性もある。上記二冊の電子版はない。

 『人体の正常構造と機能』(879頁)はトートラと比べると、基礎的な内容の説明は省かれているが、分子、細胞レベルでは詳しく且つ平易に解説している。図もわかりやすい。紙媒体の書籍を購入すると電子版をダウンロードできる。ただし、ビューワーの使い勝手は非常に悪く、目次からめざすページに直接移動できる程度の機能しかない。

 上記の教科書が、題名の通り解剖学的内容と生理学的内容をともに含んでいるのに対して、『ガイトン生理学』(1057頁)と『標準生理学』(1140頁)は、純然たる生理学の教科書。ページ数からも分かるように、いずれもかなり大部で辞書的に利用する目的であればよいが、通読するのはたいへんだろう。

 『ガイトン生理学』も『人体の正常構造と機能』と同様に、書籍を購入するとダウンロードできる。ただし、これも電子教科書としての使い勝手は悪い。

 「その他」として紹介した、『グレイ解剖学』と『同アトラス』も、『ガイトン生理学』と同じ出版社で、電子版の扱いは同じ。ただし、これらは電子版のみの購入も可能であるため、使い方しだいでは有用であろう。

 『標準生理学』電子版は、医学書院の標準シリーズ基礎医学系教科書(全10冊)を一括して購入する形でしか手に入らない。これらは医学部の学生を主なターゲットにしているのか、6年間の期限付き。ただし、価格は紙媒体で購入する場合の約半額(といっても約10万円)。

 辞典類として紹介した3種はいずれも電子版が購入できるが、それぞれに価格や電子版の利用方法が異なる。医学書院・医学大辞典はWeb利用による3年または6年契約の使用。南山堂・医学大辞典はスマホやタブレット用にダウンロードして利用する。ステッドマンはPC用とスマホ・タブレット用がある。

  『人体の正常構造と機能』、『ガイトン生理学』、『標準生理学』ならびに医学書院・医学大辞典と南山堂・医学大辞典であれば、それぞれの電子版または電子書籍の実物を紹介することができるので、4月以降にいつでも職員室まで。


 そのほか、Kindleはもちろん、いくつかのビューワー用に多くの教科書が出版されている。多くは決して安い価格ではないから、購入する場合は内容や使い勝手をよく吟味することをお勧めする。

2018年度第31回 自律神経系の中枢

 後期試験後の授業分のまとめがでいていませんでしたので、遅ればせながら簡単にポイントを挙げておきます。先ずは先週の分を。

 自律神経系の中枢として特に重要な部位は、言うまでもなく脳幹と視床下部です。授業ではかなりとばしたところがありますが、時間をつくって必ず見直しておきましょう。

 循環器系(心臓血管系)、呼吸器系に関する中枢機能は、血圧や呼吸のリズムの調節を考える上で必須です。脳幹については、運動機能の中枢としての役割も取り上げましたが、恒常性維持という観点から考えると、脳幹の最重要機能はこれら2つの器官系の中枢としての役割です。

 生理学2または4で「神経性調節」として学んだ内容です。圧受容器や化学受容器の部位、求心性神経である脳神経、そして遠心性神経(交感神経か副交感神経か)、さらに効果器である心臓(心筋)、血管(平滑筋)、呼吸筋の作用を自分なりにまとめてみましょう。プリントには一覧表にしていますが、フローチャートなどを改めてつくってみるといいのではないでしょうか。

 さらに、排尿反射や嚥下反射の中枢としての役割も忘れてはいけません。排尿反射は、脊髄を中枢とする反射として学んでいると思いますが、上位である脳幹から修飾がかかります。

 対光反射という場合には瞳孔括約筋の収縮を中心に考えます。視覚器で取り上げた明暗の調節機能と合わせて、瞳孔あるいは虹彩の機能として見直しておきましょう。

 視床下部の機能も生理学2または4で学んだ内容とオーバーラップしていると思いますが、見方を変えると気がつくこともあると思います。なかでも、体温調節中枢、そして割愛しましたが、飲水中枢としての機能は、恒常性維持という点で欠かすことができません。自律神経系の最高中枢として、多くの器官、器官系の機能を統一的に調節しています。

 体温調節のしくみは、体温を上昇させる機能と体温を低下させる機能にわけて、自律神経系の作用を中心に説明しました。内分泌系の作用や体性神経系の作用も、視床下部が制御していますので、忘れないように。こうした複数の器官系にまたがる機能を理解することは、「生体の恒常性」を考える上で最も大切なことです。

 飲水中枢としての機能は、視床下部に浸透圧受容器があることと不可分です。視床下部を通過する血液(血症)の浸透圧を検知しています。肝臓などにも同様の受容器がありますが、それらの情報はすべて視床下部に集中しています。浸透圧が上昇していると、飲水欲求が発生します。少し外れますが、腎臓傍糸球体装置は腎動脈圧を検知し、血圧が低下していると傍糸球体細胞からレニンが分泌され、レニン・アンジオテンシン系が活性化します。アンジオテンシンⅡも視床下部に作用して、飲水欲求の発生に寄与します。プリントには脱水を始まりとして、飲水欲求の発生にかけてどのような現象が生じているのかを示すフローチャートのような図を入れました。互いの関わり方をよく見ておきましょう。

 摂食に関する機能も、消化器系の作用、さらには代謝に関わるホルモンの作用と密接に結びついています。いくつかのホルモンの名前を挙げましたが、分泌部位や機能がすぐにピンとこなかったものがあれば、よく復習しておきましょう。

 最後に、内分泌系の最高中枢としての視床下部の機能にもふれました。生理学4で取り上げられた内容を重なっています。名称や略号、分泌部位など、覚えることもたくさんありますが、下垂体前葉への作用と下垂体後葉からの分泌はしくみが全く異なることをまずはじめに押さえておきましょう。前葉と後葉は、下垂体として1つになっているといっても、元々全く別の組織からできてきて、たまたま一体になっただけです。

 最後に、ストレス応答に関する図を使って説明しました。視床下部が交感神経系と下垂体ー副腎、甲状腺、肝臓(GHの標的は他にもありますが代表させています)へ、ともに作用していることを示しています。視床下部が自律神経系と内分泌系の両方の中枢として機能していることがよく分かると思います。

 自律機能とそれを担う器官・器官系に対する神経性調節は、恒常性維持機構の要です。生理学2&4で学んだことを振り返りながら、「自律神経系の機能」という切り口でよく見直しておきましょう。来年度に学ぶ病理学や内科学ではこれらの理解が求められます。