2016年度 第14回 交感神経系と副交感神経系

 1週間たってしまい、皆さんはすでに夏休み期間に入っていますね。遅くなりましたが、先週の授業の内容を簡単にまとめます。

 交感神経と副交感神経は血管を含めた内臓器官のはたらきを調節する神経系です。生理学2で学ぶ、各器官系の神経性調節を担っています。本当は内臓求心性神経の働きも加える必要がありますが、勉強の中心はやはり、遠心性神経ということになるでしょう。

 交感神経系と副交感神経系が器官機能を調節するしくみは、3つの特徴を押さえて考える必要があります。二重神経支配、拮抗支配、そして自発性活動です。これらの意味が分かって、2つの神経系それぞれの作用を知れば、後は組み合わせて当てはめていくだけです。すでに学んだ循環器系(心臓と血管)、呼吸器系(肺、気管・気管支)のについて、よく考えてみましょう。特に、2つの神経系の作用によって血圧がどのように調節されるのか、考え方を理解し、説明のしかたを考えていく上でよいモデルになると思いますので、各自で取り組んでみましょう。

 合わせて、神経伝達物質についても、どこで何がはたらいているのかを見直しておきましょう。興奮性シナプスと抑制性シナプス(授業では興奮性の場合を取り上げました)についても、合わせて当てはめてみましょう。

 夏休み明けは、骨格筋について取り上げます。筋細胞の構造を理解した上で、筋が収縮・弛緩するしくみを筋細胞の細胞小器官のはたらきや微細構造のレベルで考えます。さらに、筋細胞は大量のエネルギーを消費します。つまり、他の細胞よりも多くのATPを要求します。このATPをどのようにまかなっているのか、を考えます。

 夏休み中もこれまで同様に随時質問を受けますが、休暇を取っていて出勤しない日も多いため、返事は遅くなるかもしれません。あしからず。

2016年度 第13回 伝達物質と受容体、神経回路、体性神経系と自律神経系

 今回は最初に化学的シナプスにおける興奮伝達の主人公である神経伝達物質とその受容体を取り上げました。シナプス前ニューロンは1種類の神経伝達物質を産生し、シナプス小胞に貯蔵しています。代表的な神経伝達物質を取り上げて、名称を物質としての性質を簡単に説明しました。いずれも、今後神経系の機能を考えていく上で、伝達物質の名称を挙げて説明することがありますので、よく覚えておいておくように。

 その神経伝達物質が興奮性シナプスのシナプス前ニューロンで産生されるのか、あるいは抑制性シナプスのシナプス前ニューロンで産生されるのか、ある程度決まっている物質もあります。しかし、そのシナプスが興奮性シナプスであるのか、抑制性シナプスであるのかは神経伝達物質受容体(とイオンチャネル)の機能によって決まります。したがって、単に伝達物質の名称とシナプスの性質を結びつけるのではなく、受容体の機能も一緒に考えられるようにしておきましょう。

 神経伝達物質受容体は大きく2つに分けられます。これらの違いは、伝達にかけられる時間やしくみの多様さの違いによって使い分けられています。夏休み明けの授業で、ニューロンと骨格筋がつくるシナプス(神経筋接合部)について考えますが、ここではできるだけ速く興奮を伝達する必要があるため、イオンチャネル形受容体がはたらいています。

 興奮性シナプスと抑制性シナプスでの興奮伝達は、神経回路を考えるとよく分かると思います。授業では簡単なしくみをいくつか例題として考えましたが、これらのしくみを考えながら、シナプスでの興奮伝達の実際をよく理解しましょう。

 中枢神経系の構造と機能はすべて割愛しました。すでに解剖学で学んでいる内容とオーバーラップしているという理由もありますが、後期には感覚機能や運動機能の中枢、自律神経系の中枢、そして大脳皮質を中心とした高次機能(統合機能)のはたらきについて取り上げていきます。あらかじめ頭に入っていた法外胃部分もたくさんありますので、各自で取り組んでください。

 授業では末梢神経系、特に自律神経系の構成と機能を取り上げます。生理学2ですでに循環器系や呼吸器系の神経性調節として自律神経系の作用、特に交感神経系と副交感神経系のはたらきを学んでいると思います。それぞれに対する作用を個別に学ぶことが基本ですが、全体としてどのような特徴があるのかをつかんでおくとより理解しやすくなると思います。来週の授業で、これら2つの神経系について、その特徴を考えます。

2016年度 第12回 興奮の伝導と伝達

 前回まででニューロンでの興奮の伝導と伝達に関する基本的な構造としくみ概観しました。小テストに向けた勉強でそれぞれ復習したことと思います。残念ながら十分に理解できていない、あるいはとりあえず丸暗記でしのいだという答案も見受けられました。自分の理解がどの程度であるかは自分がよく分かっていると思います。今回の内容の復習を通じて改めてよく見直すように。

 前半は興奮伝導のしくみが有髄神経線維と無髄神経線維でどのように異なっているのかを考えました。無髄神経で生じる逐次伝導は前々回の授業で説明した興奮の伝導のしくみそのままです。ある部位で活動電位が生じる(=興奮する)と、さらに隣接部位に活動電位が生じ(=興奮する)、これが次々と伝播していくことです。言い換えると、隣接部位に順次脱分極と再分極を起こしていきます。この現象が生じるためには、細胞膜が全面にわたって細胞外液と接している必要があります。つまり、細胞膜を隔てて電位差が生じていなければいけません。ところが、有髄線維は軸索を髄鞘が覆っているため、細胞膜が細胞外液と接している部分がランビエの絞輪に限られます。したがって、活動電位は絞輪部分でしか生じず、隣接する絞輪へ伝わっていきます。これが跳躍伝導であり、逐次伝導に比べて同じ時間の間により遠くまで興奮を伝えることができます。

 神経線維での興奮の伝導はこのように逐次伝導であるか跳躍伝導であるか、すなわち、無髄神経線維であるか有髄神経線維であるかによって伝導速度に大きな差があります。そもそも、伝導速度は軸索の直径が大きいほど大きく、一般には有髄神経線維を構成している軸索の法が無髄神経線維を構成している軸索よりも直径が大きいですから、有髄神経線維のほうがより伝導速度が大きくなります。

 後半は興奮の伝達についてさらに詳しく説明しました。シナプス前からシナプス後へ興奮が伝達されるということは、活動電位の発生という現象が隣接する細胞に伝えらるというだけのことではなく、複雑な調節メカニズムによっています。それは、この伝達が生じるシナプスが化学シナプスであるということ、つまり、化学物質(=神経伝達物質)が作用することによって興奮が伝達されるというしくみに依存します。

 伝達物質とその受容体については来週の授業で取り上げますが、これら二つの組合せによってシナプス後細胞に脱分極が生じるのか、過分極が生じるのかが決まります。この脱分極を興奮性シナプス後電位といい、過分極を抑制性シナプス後電位といいます。伝達物質の作用によってシナプス後ニューロンに興奮性シナプス後電位を生じるシナプスが興奮性シナプスであり、シナプス後ニューロンに抑制性シナプス後電位が生じるシナプスが抑制性シナプスです。また、興奮性ニューロン、抑制性ニューロンという言葉も今後よく使います。日本語の語感から判断すると、「興奮しやすい、あるいはされやすいニューロン」、「抑制しやすい、あるいはされやすいニューロン」という意味にとれますが、両者はシナプス前ニューロンの性質を表しています。あるいは、そのニューロンがシナプス後ニューロンとして興奮性シナプスを構成するのか、抑制性シナプスを構成するのか、によって命名されます。

 単一のシナプスで興奮が伝達されても、それだけでシナプス後ニューロンに活動電位が発生するわけではありません。興奮性シナプスといえども、単一シナプスで生じる脱分極(=EPSP)は非常に小さく、とても閾値には達しません。1つのニューロンでは樹状突起を中心に多くのシナプスがあり、常にどこかで興奮が伝達されていると考えていいでしょう。したがって、同時に、あるは非常に短い時間間隔でEPSPやIPSPが生じており、これらがニューロンの軸索の根元に当たる軸索小丘に集まって加重されます。加重の結果、電位変化が閾値を超えるとはじめて活動電位が発生します。そして、いったん活動電位が発生すると、軸索小丘から軸索終末に向かって伝導していきます。

ニューロンの構造

 授業ではニューロンとニューロンがシナプスをつくって接続していると説明しました。「シナプス;synapse」とはギリシャ語のsynapsis(接続の意)に由来し、1897年にイギリスの神経生理学者であるチャールズ・スコット・シェリントン(Charles Scott Sherrington, 1857-1952)によって命名されました。ニューロンとニューロンがつくるシナプスは、20~40nmほどのシナプス間隙を挟んで成立しています。

 ニューロンが脳で発見された当初、ニューロンは細胞体に当たる部分から多くの突起が出ていることも同時に見いだされました。そして、この特殊な形態をもつ細胞に対して「ニューロン;neuron」の語が当てられました。

 これはギリシャ語のneuro-に由来していますが、もともとは「腱」や「綱」、「弦」を意味する語で、ここからnerveという語が生まれ、さらにneuronとなったようです。

 さて、多くの突起をもつニューロンが互いにどのように接続しているかについて、2つの異なった考えがありました。一方は「細胞どうしは互いに突起によってつながっている」という考え(網状説とよばれる)と、「それぞれの細胞は独立していて、直接つながっているわけではない」という考え(ニューロン説とよばれる)です。

 前者を唱えたのがイタリアのカミロ・ゴルジ(Camillo Golgi、1843ー1926)です。ゴルジは硝酸銀と重クロム酸カリウムという2つの物質を使うことによってニューロンの細胞体、軸索、樹状突起のすべてを染色して顕微鏡下で可視化することに成功。詳細に研究し、脳や脊髄にニューロンどうしが接続した複雑なネットワークがあることを示しました。この染色方法は「ゴルジ染色」とよばれ、今日でも研究に利用されています。だたし、シナプスの構造を詳細にみることはできないため、ニューロンどうしは突起でつながっているように見えたのでしょう。したがって、ニューロンは非常に大きな多核の細胞であると考えることになります。

 一方、後者の考えを主張したのがスペインのサンティアゴ・ラモン・イ・カハール(Santiago Ramon y Cajal、1852ー1934)です。カハールもゴルジが開発した染色法を使って研究したのですが、到達した結論は全く異なるものでした。カハールは当時すでに受け入れられていた「細胞説」の立場に立って、ニューロンはいずれも単核の細胞であり、それらが伸ばした突起が互いに接触していると考えました。

 二人の神経系の構造に関する研究は高く評価され、1906年にそろってノーベル医学・生理学賞を受賞しました。しかし、上記のように全く異なる考えにたっていたため、今日では考えられないことですが、正反対の立場の受賞講演を行ったそうです。

 二つの考え方の対立に決着をつけたのは電子顕微鏡を使った観察結果でした。電子顕微鏡は1931年に開発され、これを利用して神経系の構造が詳しく研究され、1950年代にニューロンどうしは直接つながっているのではない、すなわちシナプス間隙があることが証明されました。軍配はカハールの「ニューロン説」に上がったわけです。

2016年度 第11回 興奮の伝達、ニューロンとグリア、神経線維

 今回は最初に先週に引き続き、「興奮の伝達」のしくみを考えました。化学シナプスは伝達物質が仲立ちとなって興奮が伝達されるところが最大の特徴です。したがって、受容体が必要であり、興奮はシナプス前からシナプス後に一方向に伝わり、シナプス間隙も必要です。伝達に時間がかかるというのも伝達物質がはたらいているが故です。

 生理学2で学んだように、心筋は隣り合った心筋細胞どうしが介在板で結合し、そこにはギャップ結合があるため、イオンが行き来することができます。これがイオン電流となって心房、心室がそれぞれ機能的合胞体になっています。こうしたしくみは電気的シナプスといいます。化学シナプスとは全く異なる構造的、機能的特徴を持っています。

 ここまでで、興奮性細胞、特にニューロンに刺激が加わることによって電位変化が生じ、それが活動電位となること、さらに、その活動電位が生じるという状態(すなわち興奮)が同一細胞内を伝導し、さらに他の細胞にまで伝達されることを学びました。今後生理学1&3では興奮性細胞とこれらの細胞が中心になってつくりあげている組織や器官、器官系の働きを順に学んでいきます。ここまでの理解が不十分だとこの先のあちこちでつまずくことになりますから、しっかりと復習をしておくこと。また、途中で分からないことが出てきたときに、分からないままで済ませるのではなく、必ず元に戻って見直してから先に進むようにしましょう。

 さて、今回の後半では神経系を構成する主要な細胞であるニューロンとグリアを取り上げました。ニューロンは興奮性であるということが最も大きな特徴ですから、すでに学んでいるわけですが、個々の細胞の構造やどのように集まって組織を作り上げているのかを順に考えていきます。そして、ニューロンが集まって作る組織の構造や役割を考えていく上でグリアの性質もよく理解しておく必要があります。グリア細胞には多くの種類がありますが、授業では特に重要な細胞、今回は神経線維をつくる細胞を説明しました。

 神経線維はその構造から2種類に分類できます。どこがどのように異なっているのか、各自でよく整理しておくようにしましょう。来週の授業で、その構造の違いが興奮の伝導に対してどのように影響するのかを考えます。生物の組織の変化がどのように機能に結びつくのかを考える上でも重要なヒントになると思います。