2017年度 第13回 自律神経系の構造と機能

 やや遅くなりましたが、夏休み前最後の授業で取り上げた自律神経系を簡単にまとめてみます。

 構造は解剖学で学んでいるはずですので割愛しました。交感神経系では交感神経幹神経節と椎前神経節が使い分けられています。また、交感神経幹神経節の前後をどうやって通過していくのか、標的とする器官の部位によって異なっています。プリントp153の図(解剖学の教科書にも同様の図があります)をよく見て確認しておきましょう。副交感神経系は脳神経、骨盤神経と大きく分かれており、それぞれの支配領域もある程度はっきりと分かれています。分かりやすいと思いますが、それだけに抜けなく頭に入れておきましょう。

 また、それぞれで作用している伝達物質も押さえておくように。ほとんど例外がないため簡単だと思います。そして、これら伝達物質の作用、特に節後ニューロンから標的器官への作用によって、器官の機能が調節されています。授業では、みんながすでに学んでいる循環器系や呼吸器系を例に挙げて説明しましたが、今後学ぶ消化器系、泌尿器系に対しても神経性調節を考えていく必要があります。交感神経系と副交感神経系のいずれが優位となったときにどのように変化するのかを、授業で説明したような一般的な傾向とともに各器官、器官系の機能が具体的にどう変化するのかをよく考えるようにしましょう。生理学を学んでいく上で特に重要な内容です。

 夏休みの宿題について、何か分からないことがあればいつでも質問してください。できるだけ速く返事をするようにします。合わせて、ここまで学んだ細胞の構造と機能についてもよく復習しておきましょう。プリントに練習問題も入れています。重要事項のまとめを兼ねていますので、是非参考にしてください。

 夏休み明けで骨格筋の構造と機能を取り上げます。

2017年度 第12回 興奮の伝達


 今週はニューロンからの興奮の伝達について、2種類のシナプス、興奮性シナプスと抑制性シナプスの性質を中心に考えました。

 興奮性シナプスとは、興奮性ニューロンをシナプス前ニューロンとして、その終末とシナプス後細胞との間でつくられるシナプスです。興奮性ニューロンの神経終末まで興奮(神経インパルス)が伝導すると、シナプス小胞からエキソサイトーシスによって興奮性伝達物質がシナプス間隙に放出されます。興奮性伝達物質はシナプス後細胞の細胞膜(シナプス後膜)にある自身に対する受容体と結合し、イオンチャネルが開放します。この結果、シナプス間隙からイオンがシナプス後細胞に流入し、脱分極=興奮性シナプス後電位(EPSP)が生じます。単一のEPSPでは閾値を超えないため、多くのEPSPが加重されて閾値を超えると、シナプス後細胞に活動電位が生じます。

 抑制性シナプスに関しては、上の内容を参考にして各自で説明を考えてみましょう。

 シナプス後電位が加重されることを考慮して現象を考えることはあまりないかもしれませんが、シナプス伝達の重要な特徴の1つです。

 神経伝達物質として機能する物質やペプチドは数多く同定されています。まずは有名な物質を取り上げました。来週の授業では自律神経系ではたらく伝達物質であるアセチルコリンのノルアドレナリンについて取り上げます。生理学2&4でも必要に応じて物質名に触れられると思いますが、出てきたらすぐに頭に入れてしまいましょう。

 また、受容体のはたらきは非常に複雑で、現在も神経科学分野における重要な研究対象の1つです。イオンチャネル型受容体と代謝調節型受容体の2つの使い分けについては後期の最後に、自律神経系の機能に関わって改めて取り上げます。

 神経回路は、知識を正しく身につけて、それらを使って論理的に考えられるかどうかの練習です。つまり、興奮性ニューロンと抑制性ニューロン、興奮性シナプスと抑制性シナプス、興奮性伝達物質と抑制性伝達物質の区別がきちんとついているかどうか、そして、これらの知識を使って順序立てて考えられるかどうかです。じっくりと考えてみましょう。声に出して説明してみる、さらに、文にしてみると、どれだけ分かっているのかが分かると思います。できれば他人に聞いてもらったり、見てもらったりして、評価をしてもらうと尚いいでしょう。

 最後に触れたように、来週は、中枢神経系に関する構造と機能は割愛して、末梢神経系に関して取り上げます。解剖学で学んだ内容を見直しておくと、理解しやすいと思います。

2017年度 第11回 ニューロンとグリア、神経線維、跳躍伝導

 今回は、冒頭で神経系の機能を3つに分けて簡単にまとめました。具体的には後期に取り上げますが、第4章では、神経系の機能を担っている細胞であるニューロンとグリア、そして、その作用を受けて運動機能の発揮に必要な骨格筋細胞・組織を取り上げます。

 ニューロンは、存在する部位や形態によって詳細に分類することができます。第1章で見た「成人のからだを構成する細胞のカタログ」でも「ニューロン」でひとまとめにしながらも「莫大な種類--分類は不十分」となっています。今後の授業では多くの種類のニューロンを取り上げていきます。特に重要なはたらきをするニューロン、例えば感覚器系では、感覚受容器として機能する多くのニューロンを取り上げ、具体的に構造と機能を説明します。

 グリアは構造や機能からいくつかに分類されています。他の科目でも触れられると思いますが、今回は神経線維を構成する3種類だけを取り上げました。アストロサイトは中枢神経系で無髄神経線維をつくる以外に血液脳関門を構成していますので注意してください。

 髄鞘の構造と神経線維の様子は図や写真を見ながらよく頭の中でイメージをつくっておくように。生理学で取り上げる神経線維、特に末梢神経系の神経線維のほとんどが有髄線維です。したがって、跳躍伝導によって興奮は非常に速く伝導します。このことが大きな身体であっても素早く反応できる要因でしょう。

 プリントの中に一部誤字がありますので訂正します。
129ページの下段、「跳躍伝導」の説明の3行目「したがって、活動電流はランビエ絞輪から」の「活動電流」は「活動電位」の誤りです。
また、130ページの跳躍伝導の説明の図(右側)の下段の囲みの中の矢印はやや不正確でした。来週冒頭で改めて示しますので、訂正してください。

 神経「線維」は神経「繊維」している場合もあります。医学関連の教科書や辞書では前者が多いと思いますが、高校の教科書の他、生物学の教科書などでは後者が用いられています。日本医学会の用語辞典では前者が採用されていますので、授業では神経「線維」で進めます。

 次回は、シナプスと興奮の伝達について、改めて詳しく考えます。

2017年度 第10回 活動電位、興奮の伝導と伝達

 今回の内容は前期の中でも特に重要です。これまでに学んだ内容が頭に入っている必要がありますが、一つ一つは難しい内容ではありませんので、不十分なところは前を振り返りながらよく復習してください。特に、細胞内液と細胞外液の組成の違い、細胞膜のイオンチャネルの特徴をよく見直しておく必要があります。
 前回リンクを忘れましたが、静止膜電位については
ここここに詳しい説明をまとめましたので参考にしてください。

 活動電位は刺激依存性イオンチャネルの作用によって生じた脱分極が閾値に達することによって生じます。脱分極が閾値に達すると電位依存性ナトリウムチャネルが開放し、ナトリウムイオンが細胞外から細胞内へ移動するため細胞内がさらに陽性に変化します。あくまでも電位依存性ナトリウムチャネルの近傍に限られますが、細胞内へ入るナトリウムイオンの量が非常に多いため、細胞内のほうが細胞外よりも陽イオンが多い状態、つまりオーバーシュートします。細胞内が細胞外に対して正の状態になると、電位依存性ナトリウムチャネルが閉鎖し、逆に電位依存性カリウムチャネルが開放します。これら2つのイオンチャネルは細胞膜に近接していると考えていいでしょう。この結果、細胞内へ入るナトリウムイオンはなくなり、細胞内から細胞外へカリウムイオンが移動します。この結果、細胞内の正の度合いが低下し、さらには細胞内が負となり静止膜電位を回復します。

 いったん静止膜電位に戻っても、細胞内に入ったナトリウムイオンと細胞外に出ていったカリウムイオンはそのままです。つまり、元々の細胞内外のイオンの濃度は回復していません。単に陽イオンと陰イオンの総量=電位が回復しただけです。したがって、この後で細胞内に入ってきたナトリウムイオンを細胞外へ運び出し、細胞外へ出て行ったカリウムイオンを細胞内へ戻す必要があります。このために、後電位の期間はナトリウム・カリウムポンプが作用しています。

 局所的にはイオンチャネルがはたらき、オーバーシュートしていても、細胞内も細胞外も全体としては、ナトリウムイオン濃度は細胞外が高く、カリウムイオン濃度は細胞内が高い状態です。したがって、ナトリウムイオンを細胞内から細胞外へ移動させ、カリウムイオンを細胞外から細胞内へ移動させるには能動輸送に頼る必要があります。

 活動電位は、2つの電位依存性イオンチャネルのはたらきによって生じる現象です。したがって、これら2つのイオンチャネルが作用している最中に横やりを入れるように刺激依存性イオンチャネルが開放しても、2つのイオンチャネル反応できません。この状態が不応期です。興奮の伝導について考えるときにはこの状態も考慮する必要があります。

 興奮の伝導とは、この活動電位が生じている場所が順に移動していくことと考えていいでしょう。したがって、伝導が生じている細胞膜には上で考えた2つのイオンチャネルがともに存在しています。そして、これらイオンチャネルの隣接する部位で順に開閉していきます。この結果、ある場所が脱分極(オーバーシュート)して、次の瞬間に再分極すると同時に、隣接部位で脱分極(オーバーシュート)が生じています。こうして、活動電位が生じる場所が順に移動していくことを「興奮が伝導する」といいます。

 興奮の伝達は、伝導とは全く異なります。細胞から細胞へと伝わる減少ですから、全く別のしくみが必要です。

 生理学1では主に「化学シナプス」を取り上げます。「電気シナプス」について説明する時間はほとんどないと思いますが、心筋や平滑筋の収縮と弛緩を考える上では必要なしくみです。別の機会に詳しく説明しようと思います。ここでは、化学シナプスについて振り返ります。

 名前が示すとおり、化学物質=神経伝達物質が仲立ちとなっているということが最も重要です。興奮がニューロンの終末まで伝導してくると、終末の細胞膜にある電位依存性カルシウムチャネルが開放します。カルシウムイオンが細胞内(軸索終末内)へ流入するとシナプス小胞のエキソサイトーシスを誘導します。この結果、神経伝達物質がシナプス間隙=細胞外へ放出されます。シナプス間隙での細胞間の距離はわずかではありますが、この部分を伝達物質は拡散によって細胞外液中を広がっていきます。ここでいう「拡散」とは、広義の拡散です。局所的には伝達物質の濃度は非常に高いと考えていいでしょうから、シナプス前角からシナプス後膜に向かって広がり、多くがシナプス後細胞の細胞膜にある受容体と結合します。

 今週、さらに来週の授業でこの先を詳しく取り上げますが、興奮が伝達された結果、シナプス後細胞にどのような変化が生じるのかを考えるのは簡単ではありません。伝達物質に対する受容体はイオンチャネルと一体になっているものとそうでないものがあります。また、イオンチャネルを通過するイオンは陽イオンだけではなく、陰イオンの場合もあります。さらに、陽イオンがシナプス後細胞内へ流入したとしても、簡単に活動電位が生じる=シナプス後細胞が興奮するわけではありません。

 解剖学で「神経組織」はすでに学んだと思います。その中で、ニューロンやグリア、さらに神経線維などが取り上げられています。次回の授業では、復習をかねて概説しますので、改めて見直しておきましょう。