第11回 筋の微細構造と筋収縮のしくみ

今日は筋原線維の微細構造をベースに、筋収縮のしくみを興奮収縮連関まで含めて分子レベルで考えてみました.

筋節(サルコメア)の構造は自分で描いてみて、細いフィラメントと太いフィラメント、明帯、暗帯、H帯、Z帯(Z盤)などを描き入れてみるといいとうもいます.同時に、筋収縮=フィラメントの滑走にともなってそれぞれの位置関係がどのように変化するのかを考えてみるといいでしょう.

筋収縮のサイクルは興奮収縮連関でのカルシウムイオンの役割と合せて理解しておくといいと思います.言葉だけで理解しようとするのではなく、ATPの役割をしっかりと押えた上で、ミオシンの頭部とアクチンの結合/運動の様子をイメージしてみてください.その上で改めて自分の言葉で説明できるようにしてください.
Toutube
で筋収縮あるいはmuscle contructionといれるといろんなアニメーションが見つかると思いますので探してみてください.授業で使ったビデオより分かりやすいものがあったらぜひ教えてください.

第10回 跳躍伝導、神経線維と伝導速度、骨格筋の特徴

先週興奮の伝導のしくみを考えましたが、合わせて今日最初に取り上げた「伝導の特徴」をよく頭に入れておいてください.

神経線維については必ずしも解剖学で学んでいないようですが、髄鞘と髄鞘を構成しているグリア細胞について解剖学教科書の26ページを参考にしてください.
興奮の伝導のしくみを理解していれば跳躍伝導は分かりやすいと思います.組織・細胞レベルで、構造によって機能が決定されている非常にわかりやすい事例です.
もともとは無髄線維だけで構成されていたはずで、ヒトのからだの中では、進化的により古いと考えられる機能にのみ、無髄線維が残っています.進化の過程で、より効率良く情報を伝えるために有髄線維/跳躍伝導を獲得してきたのでしょう.

神経線維の分類・名称は今後何度も出てきます.必要に応じて復習しますが、一度ここでしっかりと約束事を覚えておいてください.(時間があれば「デルタ地帯」も調べてみてください.(・・;))

さて、骨格筋についてはまだ解剖学で学んでいないようですが、運動機能を考える上では骨格系も筋系も、そして神経系もいずれも重要です.今週と来週、再来週で骨格筋の細胞レベルでの特徴を取り上げていきます.特に筋収縮のしくみについては分子・細胞レベルで考えたいと思います.


第9回 静止膜電位、活動電位、興奮の伝導

今日は関連する内容だったということもあり、非常にヘビーな内容を一気にやってしまいました.

まず静止膜電位ですが、一昨年のブログで以下のような解説をしましたので再録(一部改変)します.このしくみがしっかりと理解できれば、活動電位の発生や興奮の伝導もわかりやすくなるのではないでしょうか.(^^)

そもそも細胞内外にはイオンの分布に差があります.そして、細胞膜を構成する脂質二重層はイオンを通しませんから、いったんできた濃度差は簡単には解消されません.例えば細胞外には100個の陽イオンがあり、細胞内には60個の陽イオンがある場合、その差である40個分のプラスの電荷の差があることになります.実際には陰イオンもありますから、陽イオンと陰イオンの電荷の合計の差をもとに計算された数字が電位差(単位はV、ボルト)で、膜電位といいます.

膜電位はあくまでも細胞外を基準にして、つまり細胞外を
0 Vとして、細胞内がどれくらいプラスかマイナスか、と考えます.

ではどうしてイオンの分布に差ができるのか? それを担っているのが以前に取り上げた
イオンポンプイオンチャネルで、特に大切なのがカリウムイオンとナトリウムイオン(この他に塩化物イオンCl-を一緒に考えることもよくあります)の濃度差です.

基本的に細胞内外のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度差はナトリウム・カリウムポンプによって維持されています.細胞内にあるナトリウムイオンは細胞外へ出され、細胞外にあるカリウムイオンは細胞内へ取り込まれます.その結果、細胞外にはナトリウムイオンが多く、細胞内にはカリウムイオンが多いという状態が作り出されます.しかも、以前にやったように、ナトリウム・カリウムポンプは3個のナトリウムイオンと2個のカリウムイオンを1セットにして輸送しますので、単純に考えれば細胞外のプラスイオンが多くなるようにはたらいています.

次に、いったんイオンポンプによって濃度差がつくられると、その濃度差にしたがってイオンがチャネルを通って移動します.細胞膜にあるカリウムチャネルにはいろんな種類がありますが、その中に
カリウム漏出チャネル(K+ leakage channel、漏洩チャネルともいいます)と呼ばれるチャネルがあり、常時開口しています.したがって、細胞内のカリウムイオンは濃度勾配に従って細胞外へ出て行きます.ところが、ある程度でていってしまうと、今度は細胞内がマイナスになってしまうので、+イオンであるカリウムイオンを引きつけます.その結果、細胞内のカリウムイオンは細胞外へは移動しなくなります.こうして、濃度勾配と電気化学勾配のつり合った平衡状態になります.(ただし、移動が完全に止まったのではなく、出て行く量とはいってくる量が同じになって、見かけ上移動が止まっているだけ)

このように見かけ上イオンの移動がない状態、そういう状態のイオン濃度の差(電荷の差)から計算した電位が「平衡電位」です.

一方、ナトリウムイオンのチャネルにもいろんな種類がありますが、ナトリウム漏出チャネルはカリウム漏出チャネルに比べて圧倒的に数が少ないようで、細胞内へ入ってくるナトリウムイオンは、細胞外へ出て行くカリウムイオンに対して極めて少量です.

このように、イオンポンプとイオンチャネルのはたらきによって作り出された細胞膜内外のイオンの濃度差から計算されたのが
静止(膜)電位です.

次に、「電位」を計算して見ようと思います.;-)

見かけ上イオンの移動がない状態のイオン濃度の差から計算した電位を「
平衡電位、equilibrium potential」といいましたが、実際のイオンの濃度で計算します.

それぞれのイオンの移動はいろんな影響を受けて変化しますが、ある特定の種類のイオンの濃度差によってつくられる平衡電位は他のイオンの濃度などの影響を受けないとして考えます.この仮定に基づいて考えたのが、ドイツの化学者であるネルンストで
平衡電位 E(ion)=RT/zF × ln([ion]out/[ion]in)
という式で求めます.
ここで、R=気体定数(8.31J/mol/K)、T=絶対温度(℃+273)、z=イオンの荷数、F=ファラデー定数(1molあたりの電荷、96500クーロン/mol)、lnは自然対数、[ion]out=細胞外のイオン濃度、[ion]in=細胞内のイオン濃度です.

ホ乳類の細胞でのカリウムイオンやナトリウムイオンの平衡電位を考えると、イオンの荷数は1(z=1)、絶対温度は310ケルビン(T = 37+273)なので、計算できるところを計算してしまうと、
E
(ion)=26.7 × ln([ion]out/[ion]in)
となります.

ニューロンの平衡電位の計算によく使われる値が
細胞外 K+; 5.5mM, Na+; 135mM, Cl-; 9mM
細胞内 K+; 150mM, Na+; 15mM, Cl-; 125mM
です.この濃度を入れて計算すると、
カリウムイオンの平衡電位 EK = 26.7 ln(5.5/150) = -88.27mV
ナトリウムイオンの平衡電位 ENa = 26.7 ln(135/15) = +58.67mV

特定のイオンにだけ注目して考えると、見かけ上イオンの移動がなくなっている状態でこのような電位差があるということです.

さて、授業で「静止膜電位はカリウムイオンの平衡電位とほぼ等しい」といいました.確かにその通りですが、ナトリウムイオンの平衡電位は大きくプラスになっています.これはどう考えればいいのでしょうか?

繰り返しになりますが、平衡電位は
見かけ上イオンの移動が停止した状態の電位差です.いいかえると、このような電位差(膜電位)になるまでイオンが移動するとも言えます.カリウムイオンは膜電位が-88mVになるまで、ナトリウムイオンは+59mVになるまで移動し続けようとします.ところがそれぞれのイオンが完全に自由に細胞膜を通れるわけではないので、実際の膜電位とは食い違ってきます.

ニューロンに活動電位が発生するとき、脱分極が閾値を超えると
電位依存性ナトリウムチャネルが開きます.ナトリウムイオンの細胞膜内外の移動は自由になり、細胞外から細胞内へ一気に流入します.その結果、膜電位は+59mVにむかって上昇していきます.これがオーバーシュートの正体です.その後ナトリウムチャネルが閉じ、代わって電位依存性カリウムチャネルが開くと、また一気にカリウムが細胞外へ出て行き、膜電位が-88mVに向かって下がっていきます.したがって再分極相に続いて一過的な過分極が生じてしまうのです.

もう一度平衡電位に話を戻しますが、ネルンストの式で求めたイオンごとの平衡電位をどう計算しても、実際の膜電位は出てきません.イオンの種類によって細胞膜の透過性が異なっているからです.このことを考慮して考えたのがゴールドマンという人で
膜電位Em = RT/F ln(PK[K+]out + PNa[Na+]out + PCl[Cl-]in)/ (PK[K+]in + PNa[Na+]in + PCl[Cl-]out)
という計算方法を考案しました.

とりあえず細胞膜を透過するイオンとして、K+、Na+、Cl-だけを考えています.また、この式の中のP
K、PNa、 PCl、はそれぞれのイオンの膜の透過性を表す係数(透過係数)で、PK : PNa : PCl = 1: 0.04 : 0.45であることがわかっています.(膜電位を計算するだけであれば実測値は必要なく、比がわかっていればよい)また、[K+]out、[Na+]out、[Cl-]inなどはそれぞれのイオンの細胞内(in)、細胞外(out)の濃度を入れる.陽イオンと陰イオンでは分子、分母が逆になっています.
計算すると、
膜電位Em = -70.15mV
と、ほぼ実測値に等しくなります.


活動電位がどのように発生するかということについても、同様に詳しい解説を書こうと思っているのですが、なかなか時間がつくれず実現できていません.あしからず.:-(

プリント#のグラフ(あるいはもっときれいなアニメーションを作れる人がいたらぜひつくってください)を見ながら、ぜひ一度声に出しながら説明をしてみるといいとうもいます.
しっかりと理解できていれば、言葉が詰まることなく説明できるはずです.
時間があれば、友達同士で黒板にグラフを書きながら説明しあうのもいいでしょう.

ポイントは「全か無かの法則」というのがあるように、脱分極が閾値を超えれば常に同じ大きさの電位変化が生じるということです.そして活動電位発生直後の細胞膜は、電位変化ということに関して非常に不活性な状態=不応期にあるということも理解しておいて下さい.
これが理解できていれば、最後に取り上げた興奮の伝導のしくみ、つまり活動電位がどのようにして細胞膜を広がっていくのかということも分かりやすくなると思います.

来週改めて「興奮の伝導」を見直した後、神経線維の種類と伝導速度の関係を概観し、次の「骨格筋」に入ります.

第8回 細胞小器官、ニューロン

今日はやや雑ぱくな内容になってしまいました.

ミトコンドリアは、クエン酸回路や電子伝達系によって大量のATPをつくっているということをしっかりと頭に入れておいてください.これらの化学反応については生理学Ⅱ or Ⅳで取り上げられると思いますので、その時しっかりと学んでください.

滑面小胞体もそれぞれの細胞ごとに役割が異なっているため、出てきたときにということになりますが、生理学Ⅰ or Ⅲでは、筋細胞がどのように収縮するかというしくみの中で、滑面小胞体(特に筋小胞体といいます)を取り上げます.

その他は今後出てくることはないかもしれませんが、プリントの41,六拾九ページの図を見ながらそれぞれの小器官を確認Hしておいてください.
また、破骨細胞がリソソームをたくさん持っているということに触れましたが、プリント389ページに破骨細胞の写真があります.忘れておりました.

さて、今日から新しく「ニューロン」に入りました.少しずつ具体的な生体機能に触れていくことになりますが、この小で取り上げている電気生理学的な内容はやや理解しにくい人もいるかもしれません.特に難しい物理学の知識を使わないようにして説明するつもりですが、いくつかのことを同時に考えないと分かりにくいと思いますので、復習はもちろん、できるだけ事前にプリントをよく見ておくようにしてください.

今日はニューロン=神経細胞の大ざっぱな構造と細胞膜には内外に電位差があるんだというところで終わってしまいましたが、来週は静止膜電位、脱分極、活動電位と本格的にニューロンの性質を考えていきます.

第7回 遺伝子発現とタンパク質の修飾・輸送

更新が遅くなってしまいました.

今週は遺伝子の転写から翻訳、おして翻訳後のタンパク質がどのように輸送・修飾されるかを概観しました.先週の最後に見ていただいたDVDの復習ですが、生体反応の主役であるタンパク質がどのようにして作られているのかを何となくわかってもらえたでしょうか?

非常に複雑なしくみですが、実に見事に無駄なく機能しています.これらはすべて40億年に渡る進化のたまもの.歴史が少しでも違っていたらわれわれは人類はいなかったかも知れません.

さてポイントは、というより、遺伝子発現のしくみを順に追いかけていきながら、DNAにコードされた遺伝情報がどのように他の物質、RNAやタンパク質に変換されていくのか、そしてそれらがどこをどのように運ばれていくのかを自分なりの言葉で表現できるようにしておくといいでしょう.昨年の小テストの問題などはできるだけ流れを理解してもらえるようにとつくっています.授業でもいいましたように、ここの知識は必要なときに本を読めばわかりますが、基本的なものの考え方は簡単には身に付きません.授業では、この最も基本的なところをわかってもらえるようにと願っております.