第10回 脱分極、活動電位と興奮の伝導

今週は静止膜電位、脱分極、活動電位、興奮の伝導という興奮性細胞の特徴的な性質を取り上げました。

はじめに説明した膜電位自体はすべての細胞が持っている性質ですが、特に断りがなければニューロン、筋細胞(生理学2&4では腺組織を構成する細胞に対しても説明されるかもしれません)についてとりあげる静止膜電位のことです.

さて、静止膜電位の「静止」とは、脱分極や過分極が生じていない状態をさします。授業では脱分極や過分極を説明する前に静止膜電位という言葉が出てくるので、やや説明しづらいのですが、細胞が刺激を受けて脱分極が生じる、あるいは過分極が生じるという現象が分かると、静止状態も理解しやすいと思います。ニューロンや筋は興奮=活動電位が生じてこそ機能を発揮できるので、静止状態からどのような変化が生じていくのかを理解することが重要です。

細胞(ニューロン)が刺激を受けて、刺激依存性イオンチャネルが開口して、細胞外のイオンは細胞内へ流入すると、それまでカリウムイオンの移動を中心として成立していた静止膜電位が変化します。陽イオンが流入して生じる変化が脱分極で、陰イオンが流入して生じる変化が過分極です。授業でグラフを示しましたが、自分でみながら説明できるようにしておくといいでしょう。

細胞に対する刺激が大きいと、開口する刺激依存性イオンチャネルの数が多くなったり、開いている時間が長くなります。この結果、流入するイオンの量が増えます。陰イオンが流入した場合には、流入するイオンの量に比例して過分極の程度が大きくなります。陽イオンが流入した場合には、流入するイオンの量に比例して大きくなった脱分極があるところ=閾値を越えると、別の種類のイオンチャネル=電位依存性ナトリウムチャネルが開口します。この電位依存性ナトリウムチャネルは細胞内電位が閾値を超えると開口し、脱分極の程度が大きくなればなるほど(細胞内電位が陽性方向に変化すればするほど)開口するイオンチャネルの数が増えていきます。この結果、流入するナトリウムイオンがどんどん増加し、もともと府だった細胞内電位が正に変化してしまいます。この状態がオーバーシュートです。

ここでいう細胞内電位は、あくまでも膜電位としての細胞内側、つまり細胞膜近傍の電位です。したがって、サイトゾル全体が変化するわけではありません。

オーバーシュート、つまり「行き過ぎてしまう」と電位依存性ナトリウムチャネルが閉じてしまい、ナトリウムイオンの細胞内への流入が止まります。変わって、電位依存性カリウムチャネルが開口します。この結果、細胞内のカリウムイオンが細胞外へどんどん流出していき、正になってしまった細胞内電位は低下して負になり、さらに低下して静止膜電位まで戻ります。

このような変化全体を活動電位といいます。後電位も含めて考えるのが本来ですが、まずはここまでのところを理解して下さい。プリントにいくつかの図やグラフがあります。自分でみながら声に出して説明していて下さい。途中で分からなくなったり、説明がしどろもどろになったり、ごまかしたりせずに最後までしっかりとできれば大丈夫でしょう。さらに、他人に説明して、相手が分かってくれるかどうか、1度試してみるといいと思います。

後半に取り上げた「興奮の伝導」は、言い換えれば「活動電位の発生する部位が順に移動していく」ということです。移動していく方向が大切で、最初に活動電位が発生した部位からどんどん離れていく方向へ移動していき、元の場所には戻ってきません。この性質を考える上では、活動電位が生じた直後の細胞膜では、電位依存性チャネルの状態や細胞内外のイオンの分布が静止状態とは異なっているため、簡単には活動電位が発生しにくい=不応期になっていることを理解して下さい。

授業ではニューロンを題材にして説明をしました。細胞の形態や電位変化の大きさは異なりますが、筋細胞でも全く同様のことが起こっています。したがって、心筋細胞の収縮の引き金になっている活動電位も同様です。ただ、心筋はかなり特殊で、特殊心筋は静止膜電位が維持できないために自律的に興奮し、固有心筋はオーバーシュートした状態でプラトーが維持されるなどの違いがあります。

来週は興奮の伝達について概観した後、神経系の構造と機能に入ります。

第9回 能動輸送、小胞輸送、膜電位

今週は能動輸送と小胞による輸送、そしてニューロンなど興奮性細胞の性質を考える上で重要な静止膜電位について取り上げました。

能動輸送は2種類説明しましたが、何よりも先ず一次性能動輸送、つまりポンプについて理解して下さい。簡単な教科書では、能動輸送=一次性能動輸送としていることが多く、れだけに重要なしくみであるということです。濃度勾配に逆らって輸送するために「エネルギーを使う」というところが能動輸送の最大の特徴ですが、ATPを分解して生じたエネルギーを利用しているため、わかりやすいと思います。中でも「ナトリウム/カリウムポンプ」はほぼすべての細胞がもっていて、細胞内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度を維持する上で必須のしくみです。今後の学習の中でも取り上げられると思いますので、よく頭に入れておいて下さい。授業ではアニメーションを見てもらいました。プリントに記したURLで同じものをみることができます。時間があれば1度ゆっくりと見て、そのしくみを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

二次性能動輸送の説明にあたっては、図がプリントに入れてありませんでした。失礼いたしました。国家試験で問われるような知識ではないと思いますが、前回配布した小腸吸収上皮細胞でも栄養素の吸収のために利用されています。また、腎臓での尿の産生過程でも利用されている方法です。

エンドサイトーシスとエキソサイトーシスも、すでに学んでいる血液系・免疫系の細胞のほか、このあと取り上げるニューロンなどの細胞が本来の機能を発揮するために必要なしくみです。特に、エンドサイトーシスのうちの「食作用」と「エンドサイトーシス=開口放出」は今後も何度か使うと思いますので、よく理解しておいて下さい。また。言葉だけを上げた「受容体依存性エンドサイトーシス」も非常に重要なしくみで、いろんな細胞が使っているのですが、今回は省略しました。改めてまとめてますので、でき次第追加で配布します。

ここまで、細胞自体の構造と機能を少し時間をかけて説明してきました。最初の授業でも説明したように、細胞は「生体を構成する基本単位」です。したがって、たとえ個体レベルでの現象であっても、どこかの細胞に何らかの変化が生じています。生理学や今後学ぶ病理学など、常に細胞レベルの変化を意識しながら勉強していって下さい。

さて、このさきは少しずつ「生き物らしい」現象を考えていきましょう。
はじめに、全身にさまざまな情報を伝える役割を果たしている神経系を取り上げます。すでに解剖学でも習っていると思いますが、その生理学的な特徴を考えてみたいと思います。また、個々まで細胞の構造と機能を考えてきたので、神経系を構成する細胞である「ニューロン」について、特にその特殊な機能、あるいは能力を考えてみます。

細胞膜が電気的な性質を持っているといわれても、やや取っつきにくいと感じるかもしれません。ニューロンが情報を伝える上で利用している方法は、生物らしからぬ非常に物理学的な現象です。そんなに難しく考える必要なないと思いますが、順序立てて理解していって下さい。特に、今週取り上げた内容は細胞内外のイオンの分布やイオンチャネルに関する復習です。先週までの授業内容をもう一度思い出しながらよく見直しておいてください.

第8回 受動輸送

今週と来週で細胞内外への物質移動を取り上げます。「細胞膜を介した」という表現をよく使いますが、物質が「細胞膜を通過する」という意味です。

1回で終われればと思ったのですが、毎年のことですが、やはり無理でした。化学や物理の基本的な概念は分かっていればどうということはないのですが、理解できていないと丸暗記になってしまうので、やや時間をかけて説明をしました。

さて、今回は受動輸送、つまり拡散と浸透という2つの方法を説明しました。体液は水溶液です。したがって、溶媒である水に電解質やタンパク質が溶質として溶けているわけです。細胞膜を通って、細胞の内から外へ、あるいは細胞の外から内へ、溶媒である水が移動することを浸透といい、、溶質が移動することを拡散といいます。

浸透では、常に水分子が水チャネルと通過すると考えて下さい。一つ一つの水分子ごとに見ると、細胞の内から外へ移動している水分子もあれば、細胞の外から内へ移動している水分子もあります。しかし、見かけの移動方向、つまりどちら向きに移動している水分子が多いのかは細胞外液の浸透圧に依存します。つまり、細胞外液が等張であるのか、低張であるのか、高張であるのかということによって見かけの移動方向が決まります。赤血球を使った実験の説明やビデオをよく思い出してみるといいでしょう。

浸透圧という言葉は今後何度か出てくると思います。血液や細胞内液について、「浸透圧」といったときには普通は電解質の濃度に依存した浸透圧を考えます。また、血液中のタンパク質濃度に依存した「浸透圧」を考えることもあります。この場合には、「膠質浸透圧」という言い方をしますので、注意して下さい。

溶質の移動である拡散には3種類の方法があります。これらは、どういう性質、あるいは特徴を持った分子が、どの方法で移動するのかをおさえて下さい。特に、単純拡散とチャネルタンパク質を通過する拡散の2つをしっかりと理解して下さい。この2つの移動方法が理解できれば、このあと取り上げていくいろんな現象も考えやすくなると思います。例えば、膜チャネル、特にイオンチャネルは、このあとニューロンや筋細胞の性質を考える上で特に大切です。また、配布した追加プリントでも説明しているとおり、栄養素の吸収過程でも単純拡散は多用されています。

総合診療医ドクターGという番組をご存知でしょうか。

総合診療医ドクターGという番組をご存知でしょうか。
NHK
総合で毎週金曜日の夜10時から放映しています。4月から始まっていて、多分今月か来月いっぱいまでです。今年で3年目か4年目です。HPはここ.

やや診断の難しい患者さん、あるいは症状を想定して(実在のモデルがいるようです)、ベテランの医師のリードで研修医が議論しながら病名を探っていくという番組です。もちろん、登場するのは本当の医師たち。

ややバラエティーに流れすぎている気はしますが、サスペンスドラマのようなところもあり、知識のない人にも飽きさせないようにうまく作っています。

豊富な知識としっかりとした考え方を持っていることが以下に大切であるかということがよくわかります。また、診断を下す過程で、患者さんに対してどのように接して行くのか。問診や検査に対する考え方、態度なども学ぶべきところがあると思います。時間のある方はぜひ一度見てみるといいと思います。

第7回 遺伝子発現

今日は遺伝子発現について概観しました。

授業でも何度か説明したプリントp63の図が全体をうまくまとめています。この図を見ながらそれぞれのステップでどんなことが起こっているのか、キーワードは何かがさっと浮かぶようにしておきましょう。

「遺伝子」という言葉はいろんな場面で使われています。遺伝子の構造はややわかりにくかったかもしれませんが、転写、翻訳を経て機能するタンパク質がつくられるための情報の一単位です。したがって、数えることができます。「DNA」もほぼ同義で用いられていることもありますが、これは物質です。また、今回考えたように、遺伝子とはセントラルドグマに沿って発現してはじめて意味を持ってくるものです。単なる物質は区別して下さい。また、実体であるDNAは塩基配列を明らかにし、さまざまな生物間で比較することもできます。現在までの多くの生物でゲノムを構成するDNAの塩基配列が明らかにされ、さまざまな研究に利用されています。

転写と翻訳は一連の現象としてまとめて理解して下さい。いくつか重要な言葉、概念がありますが、順序よく考えていけばそれほど難しくはないと思います。p69の図の左下の塩基の名称のうち、一番下の六角形のなかにUと書いてあるのは「グアニン」ではなく「ウラシル」です。訂正しておいて下さい。また、p72の図にあわせて授業中に使ったスライドの図は、メッセンジャーRNAを構成する塩基やトランスファーRNAのアンチコドンの部分の塩基がやや具体的に描かれており、わかりにくかったかもしれません。プリントの図のほうが簡易的でコドンやアンチコドンについて考えやすいと思います。

来週は、細胞膜を介して物質輸送について取り上げます。先週配布した「浸透圧」に関する内容も含まれますので、予習をかねてよく読んできて下さい。