第7回 遺伝子発現のしくみ

先週は遺伝子とはどういうものかについて考えましたので、今週は、この遺伝子からどのようにしてタンパク質ができていくのか、できあがったタンパク質はどうなるのかについて概観しました.

若干説明不足だったところもあると思いますが、基本的な転写のしくみ(プリント67〜68ページ)と翻訳のしくみ(71ページ)について説明した図を見ながら、自分の言葉で説明できるようにしておくといいでしょう.

翻訳のしくみでキーとなるのは、「コドン」です.核酸(mRNA)の言葉からタンパク質の言葉へ翻訳する上でのまさに『キー(key)』となっています.

できあがったタンパク質は、単にアミノ酸がつながった状態の化合物(ポリペプチドと言います)では意味がなく、しっかりとした構造を作る必要があります.プリントの27ページにいくつかの代表的なタンパク質の構造を載せていますので、一度見ておいてください.こうした形を作るために、サイトゾルや粗面小胞体、ゴルジ装置には、タンパク質の構造を組み立てるための専門のタンパク質があります.

ミトコンドリアの機能については、『代謝』のところである程度習うと思いますので、詳細は省きました.来週もう一度説明をしますが、構造上の特徴を見直しておいてください.

第6回 ゲノムと遺伝子

ちょっと遅くなりましたが、今週は本筋から外れた話が多かったのですが、遺伝子というものをわかっていただけたでしょうか?

物質的にはDNAであり、DNAを構成しているヌクレオチド鎖のごく一部分にタンパク質のアミノ酸配列の情報が含まれています.重量で考えると、体重のほんのごくわずかな部分を占めているに過ぎないのですが、ここに生命体を存在させ、生命の歴史が営まれてきた核心があると言ってもいいでしょう.

生命が必ず次の世代をつくりながら連続しているということは、細胞が遺伝情報を保ちながら分裂し続けていると言うことです.つまりDNAが正しく複製されているからこそです.時間があればこのDNA複製のしくみを詳しく考えておきたいのですが、残念ながらあまりにも持ち時間が少ないため、半保存的複製という概念だけを説明しました.

セントラルドグマという言葉、考え方を取り上げたのも、遺伝子発現という現象=生命現象が物質的な基盤を持っていると言うことを理解してもらうためです.来週の授業で、転写や翻訳のしくみを概観します.生命現象のキー分子であるタンパク質がどのようにして作られ、そして機能しているのかを理解するきっかけにしてもらえれば幸いです.

遺伝子疾患については来年以降にいろいろと学ぶことになると思います.昨年まで何度か夏休みのレポートのテーマにもしました.興味のある方は自分でいろいろ調べてみてください.

第5回 サイトゾル、細胞骨格、染色体、DNA

先週までで細胞膜の構造と主な機能である物質輸送を学んだので、今週は細胞の中に入りました.

最初にサイトゾルと細胞骨格だけを取り上げました.やや中途半端な感じですが、触れたとおりサイトゾルは細胞全体の容積の半分以上を占めています.言ってみれば細胞の中で最も大きな機能集団ということになります.不定形で、内容的にもややつかみにくい所があるかもしれませんが、この後に出てくるいろんな細胞レベルの機能を考える上で重要です.『サイトゾル』といわれてどんなものかがすぐに思いつくようにしておいてください.

細胞全体が関わっている運動に必須なのが細胞骨格です.3種類あり、構造も細胞内での局在も異なっています.
今後の私の授業との関わりでは、ニューロンの軸索にはニューロフィラメントという中間径フィラメントがあります.また、嗅覚器や聴覚器ではたらいている感覚毛という繊毛のような構造にも微小管が通っています.それぞれ時間があれば少し触れてみたいと思います.

さて、染色体、DNAの構造、そして来週取り上げる遺伝子は、断片的には皆さんもいろんな知識があると思います.「・・・の遺伝子を受け継いでいる」とか「・・のDNA」などと比喩的に使われることも多いのですが、基礎医学を学ぶものとして、あるいは将来の医療人として正確な知識を身につけてください.

DNA
の構造についてやや詳しく説明したのは、『遺伝子』というものが物質的な根拠を持っているものだということをしっかりと認識してもらいたいからです.細かいことはいずれ忘れてもいいのですが、授業で説明しているように考えられるように努力してください.
DNA
の構造的な特徴はプリントの59ページの下にまとめたとおりですが、60、61ページの図を見ながらある程度自分で説明できるようになれれば十分です.

来週はDNAノ複製のしくみを簡単に説明したあと、遺伝子の構造とその特徴をやや詳しく説明したいと思います.

第4回 受動輸送(浸透)と能動輸送、小胞による輸送

今週は始めに受動輸送のうちの浸透を取り上げました.現象自体は単純に説明できると思いますが、溶媒が大きく移動するために大きな圧力が生じます.これが浸透圧ですが、授業でも説明しましたように、その溶液に溶けている溶質の濃度に依存します.ここが重要なところです.

細胞内液や細胞外液にはいろんな物質が溶けています.したがって、その濃度は時々刻々と変化しているため、浸透圧も常に微妙に変化しているはずです.この細胞内外の浸透圧変化を一定の範囲に保つということはホメオスタシスの重要な一部分です.したがって、細胞膜を介して移動しているいろんなイオンやタンパク質、糖類には、移動する必要があって移動している物質と、その物質の移動に伴って生じる浸透圧変化を元に戻すために移動している物質があるということです.

この浸透圧変化を元に戻すためにはたらいているしくみとして最も重要なしくみがナトリウム・カリウムポンプです.一見無駄なようにも見えます.細胞が作るATPの3割もを使って動かしているわけですから、もう少し省エネできるしくみを作れなかったのかなとも思いますが、現在のしくみが、進化の過程でいろんな試行錯誤があった末の最も効率よく省エネできるしくみなのかもしれません.

エンドサイトーシスとエキソサイトーシスは、いくつか例を挙げて説明しましたのでわかってもらえたかと思いますが、今後私の授業でも何度か出てきます.

細胞膜を介した物質輸送は、消化・吸収や内分泌、泌尿器など生理学の広い分野での現象を考える上で非常に重要な知識ですので、今回限りではなく、必要に応じて見直すようにしてください.