第7回 遺伝子発現のしくみ

先週の染色体、DNAに続いて、今週は遺伝子とは何か、遺伝子が発現するとはどういうことでそのしくみはどうなっているのかとについて考えました.

「遺伝子」とは決して抽象的なものではなく、物質的な存在であり、自然科学の法則によって説明できるものであることを理解してもらいたくて、やや詳しく説明をしました.プリントの76ページと78ページの図は、うまくつくってあると思います.よく見ながら、今日の授業内容をしっかりと復習してください.

遺伝子発現に関して、セントラルドグマという言葉は教科書には全く記載されていませんが、20世紀の生命科学が確立した重要な命題です.しかし、そのしくみは非常に複雑です.もちろん、未だにすべてが明らかになっているわけではありません.授業では
遺伝子がどのような形式で存在しているか.
転写のしくみ
翻訳のしくみとコドン
と分けて説明をしました.ヒト(を含めた動物、植物)の遺伝子の構造は、一見無駄な部分が多いようにも見えます.しかし、単に役割がわかっていないだけであったり、あるいはいろんな選択の余地を残すという意味で、大きなゲノムサイズを持つに至ったのかもしれません.

最後に鎌形赤血球症について触れました.そこで説明したように、DNA上の塩基配列、転写されたできたmRNAの塩基配列、をしてタンパク質のアミノ酸配列(こうした「配列」も構造のうちで分子の一次構造といいます)と、分子の高次構造(立体構造と考えてください)や細胞あるいは個体レベルに反映される機能を結びつけて生命機能を論じる学問分野を「分子生物学」といいます.

現在の(おそらく今後の)生命科学は、こうした分子生物学的な知見を重要な土台として考えていくことが基本です.今後の授業でも、時間の許す限り取り上げていきたいと思います.

第6回 細胞核、DNAと染色体

更新が遅くなり、申しわけありませんでした.原稿をはつくってあったのですが、アップするのを忘れておりました.

今回は細胞核とそこにある核酸、
DNAについて取り上げました.

「遺伝子」や「DNA」という言葉はもうありふれすぎていて、いとも簡単に使っている方も多いのですが、生物学的に正しく意味を理解して、あるいはどんなものかわかって使っているヒトは非常に少ないように思います.
専門的に学んでいないのであれば許されることであっても、高等教育として医学や医療、あるいは生命科学を学ぶ(学んだ)ものとして、これらの正しい姿をしっかりと理解することが求められると思います.

さて、授業の内容についてですが、核の構造と、染色体と染色質、そしてデオキシリボ核酸の構造的な関係を、プリントの図をよく見ながら頭に入れておいてください.また、染色体の数は常識のうちににも入らない知識ですが、改めて見直しておくように.

DNA
の構造と複製に潰えも触れました.構造の詳細を問うようなことはありませんが、二本鎖でラセン構造をつくっている(二重ラセン構造)こと、この二本鎖をつくるために互いに水素結合している塩基の組み合わせ(相補的な塩基の組み合わせ)をよく確認しておいてください.複製方法は、この二重ラセン構造であるということを反映し、遺伝学的な伝達を保証するために、半保存的複製という独特の方法をとっています.これも合わせて覚えておいてください.

生理学の範疇として染色体異常を問われることはありませんが、来年の病理学などでもう少しいろんな疾患を学ぶことになると思います.

第5回 能動輸送、小胞による輸送、サイトゾルと細胞骨格

今週は能動輸送、小胞による輸送、そしてサイトゾルと細胞骨格を取り上げました.

能動輸送は大きく2種類に分けられますが、授業でも強調したようにナトリウム・カリウムポンプに代表される一次性能動輸送(ポンプ)がメインです.

ナトリウム・カリウムポンプが輸送するイオンの数にバランスを欠いているのは、たぶん細胞内へ入ってくるナトリウムイオンの方が、細胞から出ていくカリウムイオンよりも多いからでしょう.いずれにしても、このポンプの作用によって、細胞内液、細胞外液の浸透圧維持に最も大きなウエイトを占めているナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度差が維持されています.

エンドサイトーシスとエキソサイトーシスは細胞が何かを取り込んだり、あるいは分泌したりするときの重要な手段です.前期後半に取り上げるニューロンの興奮伝達や生理学2&4で学ぶ内分泌器官などの機能を考える上でも必須です.

さて、授業の後半から細胞質、特にサイトゾルについて取り上げました.サイトゾルをサイトゾルとして説明することはもうないと思いますが、細胞にとっての重要な化学反応の場です.たぶん後期に肝臓の細胞の機能を中心として、細胞が持っている代謝反応について学ぶと思いますが、そこで取り上げられる多くの反応、合成、分解の化学反応の多くは細胞質で生じます.

サイトゾルは、化学反応が進む液体部分であると同時に、細胞の形や運動を司っているタンパク質が豊富に存在する場でもあります.細胞骨格という言葉自体を初めてきいた方も多いかと思いますが、単純な構成であるにもかかわらず、今なおホットな研究分野の1つです.アクチンでできた微小繊維とチューブリンでできた微小官が中心です.

来週は染色体、DNAと遺伝子についてです.

第4回 受動輸送

更新が遅くなってしまい、申し訳ありません.

今回は細胞膜の受動輸送を取り上げました.

広い意味での「拡散」という現象は、濃度(あるいは電気化学的)勾配の高い方から低い方へ物質(分子)が移動することをいいます.したがって、細胞膜を介した狭義の「拡散(溶質の移動)」も「浸透」も、注目している物質が、その物質の濃度の高い方から低い方へ移動するということです.この原則を正しく理解してもらえれば、物質によって具体的な通路が異なるというだけの問題と考えていいでしょう.

4月に、水分子を例に挙げて「分子の極性」という性質を説明しました.化学をあまり勉強しなかった方はちょっと戸惑ったかもしれませんが、生物が水を溶媒として成り立っている以上、つまり生物が存在する(あるいは発生した)以上、「水」の性質を忘れて生命現象を論じることはできません.プリントの16ページ以降(差し替え版を配布済み)をよく読んで理解してください.

さて、具体的に見てみると、単純拡散、膜チャネルを介した拡散、促進拡散の3種類の区別をしっかりと理解することが体節です.特に、すぐ後のニューロンや筋細胞の性質を学ぶ上で、膜チャネルの性質はきわめて重要です.それぞれのところでも少しずつ補足しながら授業を進めますが、膜タンパク質が作る通路で、イオンのような極性ある分子を通すものであるという基本は、今回の復習でしっかりと頭に入れておいてください.

浸透と浸透圧は、高校までの化学や生物の授業でされている説明が必ずしも正確ではないということもあり、やや時間をとって説明をしました.わかっていただけたでしょうか?
冒頭に書いた、広義の「拡散」を理解してもらえればわかりやすいはずです.生理学を学ぶ上では、膜を隔てた液体成分の間で、どちらが浸透圧が高いか低いか、ということを問題にすることが多いと思います.単純に、注目する溶質濃度の高い方が浸透圧が高くなります.血液や泌尿器の機能を学ぶ上で必要な知識です.