第7回 DNAの複製、遺伝子の構造とDNAの転写

先週から来週は「細胞の増殖と分化」を考えるために、また、これから個々の細胞の機能を考えていく上で不可欠な「遺伝子」と「遺伝子の発現」を取り上げています。

まず最初に取り上げたのは「DNAの構造と複製のしくみ」でした。DNAはヌクレオチドのポリマーとして考えることができ、2本の相補的なヌクレオチド鎖=相補的な塩基が向かい合って塩基対をつくっているヌクレオチドどうしで二重らせん構造をつくっています。『生理学のための化学』にもまとめましたが、DNAの構造が明らかになったことが現在の医学・生物学の発展につながっています。今は高等学校の生物でも当たり前のように取り上げられている内容で、生き物、そして生きているということを考える上で基本的な知識の一つです。

DNAは相補的な塩基どうしが向かい合った二本鎖であるがからこそ、半保存的複製によって完全に複製することができます。つまり、構造と複製のしくみは切り離して考えることはできません。授業の説明では、できるだけ簡単に説明するために、二重らせん構造や複製のしくみの詳細は省きました。『生理学のための化学』にある程度詳しくまとめましたので、時間を作って目を通しておくように。

授業中にも触れたように、「〜の遺伝子」とか「〜のDNA」などと、かなり気安く使われているような気がしますが、「遺伝子」という概念は決して分かりやすいものではありません。来週の授業で詳しく説明しますが、DNAの塩基配列(つまり、転写されたRNAの塩基配列)がタンパク質のアミノ酸の配列を決めており、あるタンパク質のアミノ酸配列を決めているDNAの塩基配列部分を「一つの遺伝子」とします。この遺伝子をヒトはおよそ20,000個持っていて、これら遺伝子とその遺伝子の発現を調節する情報をあわせてゲノムといいます。したがって、物質的にはゲノム=DNAと考えていいでしょう。

DNAが染色体をつくっていますから、染色体に遺伝子があるということです。したがって、今日配布したような「ゲノム・マップ(Genome Map)」がつくられました。大判を見たい場合はここ(http://stw.mext.go.jp/series.html)

遺伝子からタンパク質をつくるためのステップに、転写と翻訳があります。今日は転写のみを説明しました。DNAの複製の仕組みが理解できれば、転写はほぼ同様の理屈で分かると思います。DNAとRNAでは含まれている塩基の種類が一つだけ違いますので注意してください。プリントの転写を描いた図をよく見ながら自分で説明してみるといいでしょう。

来週は翻訳のしくみと合成されたタンパク質がどのように目的の場所へ運ばれていくのかを取り上げます。また、後半では細胞膜を介した物質輸送の概略を説明します。

第6回 細胞小器官と細胞分裂、染色体

今回は細胞小器官と細胞分裂、そして染色体を取り上げました。

リソソーム、ペルオキシソーム、プロテアソームはいずれも何かを分解するための小器官です。これら小器官は細胞内に多数あり、それぞれが独自の酵素によって対象物を消化、分解しています。リソソームとペルオキシソームはともに膜構造でできています。また、食細胞などの機能を考える上でリソソームは非常に重要です。

ミトコンドリアはATPを産生するための小器官で、多の小器官と異なり二重の膜でつくられています。ATP産生にはサイトゾルで生じる解糖系の他に、このミトコンドリアが持っているクエン酸回路と電子伝達系という2つのしくみが必要です。1反応あたりの産生ATP数はミトコンドリア内での反応の方が圧倒的に多く、効率的です。

また、授業では割愛しましたが、ミトコンドリアにはDNAがあり、いくつかの遺伝子を保存しています。この理由については場を改めて取り上げようと思います。

後半では細胞分裂のしくみを簡単に説明しました。来週の授業で遺伝子と遺伝子発現について取り上げますが、そのイントロとして染色体についても簡単に説明しました。

体細胞は分裂する場合に、必ずいったん丸くなります。そして、分裂して2個の娘細胞になると、間期の間に細胞内を元の状態に戻してから次の分裂に入ります。分裂中の核と染色体の振る舞いを中心に見直しておきましょう。また、今回はしっかりと説明できませんでしたが、間期に核内のDNAをすべて複製し、全く同じ塩基配列を持ったDNAを2セットにしてから分裂します。来週は、最初にDNAの複製という現象について説明します。『生理学のための化学』の「9.核酸の構造と複製」をよく読んで授業に臨んでください。

染色体は中学校や高等学校の生物でも必ず取り上げられる内容ですから、すでに分かっているという人も多かったと思います。生物の種ごとに固有の染色体数があり、標本化してギムザ染色するとそれぞれが特有の染色パターンを示します。ヒトの染色体の構成、常染色体と性染色体の数、組合せ、そして、倍数体と半数体の違いについてしっかりと見直しておくように。

生命大躍進

前々回の授業で紹介したNHK特集『生命大躍進』をご覧になりましたか?

『眼』、番組では「目」としていましたが、生物学的に器官としてみるときには『眼』です。1つの感覚器官が進化の過程でどのように形成、あるいは獲得されていったのかを分かりやすく説明していました。そして、進化を考える上で最も重要なキーワードは『遺伝子』であり『DNA』です。最新の成果がいくつか紹介されていました。私も遺伝子があるとき4倍化したということは具体的には知らなかったことであり、非常に参考になりました。

また、『眼』がもともと植物の仲間から動物の仲間に取り込まれたということもつい最近発表されたばかりの成果です。学会内でどの程度コンセンサスが得られているのか分かりませんが、この考え方が正しいとすれば『コペルニクス的転換』かもしれません。この話題の中で紹介されていた日本人の研究者(五条堀さん)はもともと静岡県・三島にある国立遺伝学研究所というところにいた方(たぶん)。定年された後、サウジアラビア(?)に移られたのでしょうか? 番組中でデータの紹介のところで論文が引用されていましたので早速調べてみました。
"Function and evolutionary origin of unicellular camera-type eye structure (Plos One, March 3, 2015) "と題する論文(「単細胞生物が持つカメラ眼構造の機能と進化」とでも訳せばいいでしょうか。)で
PLOS ONE: Function and Evolutionary Origin of Unicellular Camera-Type Eye Structure
でオンライン(free access)で原著論文を読むことができます。

次回は6月の第一日曜日。同名の展覧会が7月から東京・上野の国立科学博物館で始まりますが、10月から名古屋市立科学館でも開催されます。乞う御期待というところでしょうか。

第5回 細胞膜、核、サイトゾル、細胞骨格、細胞小器官(小胞体、リボソーム、ゴルジ装置)

少し遅くなってしまいました。皆さんの復習は順調に進みましたか?

細胞膜の構造は細胞レベルで考えていく上での基本です。「流動モザイクモデル」とは、先週取り上げたリン脂質とコレステロール、そして糖脂質が構成する脂質二重膜が基本となって、そこにタンパク質がモザイク状に分布する構造です。機能は構造に裏打ちされているといっていいでしょう。したがって、今後、膜タンパク質を中心にして細胞膜の機能を取り上げていきますが、すべて流動モザイクモデルを頭に置いて考えるとわかりやすくなると思います。


構造を理解するためには、何よりも自分で描いてみることです。自分なりにわかりやすい図を描いて、学んだことを一つ一つ書き込んでいくといいでしょう。

細胞核とDNAや細胞分裂については来週触れます。今週は、これも構造、特に角膜の構造を考えました。細胞膜同様に脂質二重膜でできていますが。細胞膜との違いは、二重の膜になっているということ。また、非常に大型の孔(=穴)があいています。これも非常に重要な特徴です。

細胞内にある多くの構造、つまり細胞小器官は膜でつくられています。この膜の構造は細胞膜同様に脂質二重膜を基本構造とした流動モザイクモデルで考えられる構造です。小器官の内外も水溶液です。したがって、細胞と同様で、水を含んだ袋が水の中で構造を維持するためには脂質二重膜を基本とした膜構造が最も理にかなっているのでしょう。

細胞質の構成は非常に複雑で、大きくサイトゾルと細胞小器官に分けて考えます。

サイトゾル=細胞質の液体(水溶液)部分は形がないために構造を考えることはできません。機能もあまりにも多様で、今回は具体的には示しませんでした。今後多くの細胞機能を学んでいきます。その機能に細胞小器官が関わっている場合にはその旨説明があると思いますから、限定がない場合はすべてサイトゾルがその機能を果たす場になっていると考えていいでしょう。

細胞骨格は細胞小器官というよりは、サイトゾル中にあるタンパク質でできた構造と考えたほうがわかりやすいかもしれません。細胞そのものの運動や形態に関わっているだけではなく、繊毛や微絨毛など構造や運動にも重要です。これらの構造が出てきたときに思い出してください。

粗面小胞体とリボソーム、ゴルジ装置はいずれもタンパク質の生成に関わっている細胞小器官です。来週、再来週の授業で改めて取り上げますが、それぞれの構造をよく頭に入れておいてください。

滑面小胞体は細胞ごとに機能が大きく異なっているため、すべての機能を知ることはとうてい無理です。生理学の授業では、今回触れたように肝細胞(肝臓の機能の中心なっている細胞)や筋(特に骨格筋)細胞の2つを知っていればいいと思います。

今秋の授業では小テストの解説をした後、今週の続きで細胞小器官を取り上げ、さらに細胞分裂とDNAの複製(あわせてDNAの構造)、そして遺伝子と遺伝子発現にすすみます。『生理学ための化学」の最後の項目「核酸の構造と複製」をよく読んでおくとわかりやすいでしょう。

第4回 化学反応、細胞と細胞膜

GWの最終日である昨日はなぜ休日であったか、知っていますか? 職員室では知らない方が大勢いるようでした。GW開けて2日間だけ授業というのもやや中途半端ではありますが、頭をはっきりさせて本格始動させていきましょう。

さて、今回は前半で「化学反応」の基本的な考え方を説明しました。「同化」と「異化」は少しずつですが出てくると思います。あるいは、これらの言葉は使わずとも、物質が合成されたり分解されたりという化学反応は少しずつ取り上げられますので、考え方をしっかりと身につけておきましょう。また、ATP(アデノシン三リン酸)とその分解によって生じるエネルギーを利用した化学反応は、今後よく取り上げます。

後半で「細胞の構造と機能」に入りました。いよいよ、生理学らしい内容なりますが、授業のテンポを上げていく予定ですので、予習と復習を怠りなく授業に臨んでください。

細胞が分裂する様子を見てもらいましたが、このような現象にもエネルギーは必要です。したがって、細胞内では大量のATPがつくられ、そして分解されています。

人体を構成する細胞の数や種類、そして「増殖」と「分化」という概念はしっかりと頭に入れておきましょう。これらが分かっているからといって、細胞の構造や機能の詳細が理解できるわけではありませんが、基本の中の基本です。そして、細胞膜の構造を理解することは、細胞全体のの構造と機能を考える上で最も重要です。来週の授業でも触れますが、細胞内にある核や多くの細胞小器官がすべて細胞膜と同様に脂質二重膜でつくられています。そして、何よりも、細胞というものがなぜ、どのようにできあがったのかを知る上で、細胞膜の構造を理解することは不可欠です。