第26回 視覚2

今日はもう少し進んで、第9章に入りたかったのですが、ちょっと余談が多かったでしょうか?(-_^;)

さて、今日は視細胞の中でどのようにして光刺激がニューロンの興奮伝達に変換されるのかということと、明るさや色を感じるに当たって視細胞がどのような役割を果たしているかということ学習しました.

授業中にも触れたように、哺乳類がもともと夜行性であったということから、網膜には杆体細胞が圧倒的にたくさんあります.視細胞の構造的な特徴をよく理解した上で、感光物質であるロドプシンの役割を考えてください.ロドプシンの反応はある程度波長に依存せずに調べることができることもあってか、よく研究されています.モノグラフ的な読み物もでていると思いますので、興味を持った方はぜひ勉強してみてください.

光刺激による視細胞の反応はやや戸惑った方もいると思いますが.前期の最後に取り上げた神経回路の応用問題だと思ってよく押さえておいてください.そして、光刺激が視神経の興奮につながり、大脳皮質一次視覚野へ情報が伝えられます.

視覚の伝導路は、網膜上の位置と視交叉での交叉の仕方がポイントです.最後に説明した視路障害にともなう視覚異常が自分で説明できるようになれば、十分です.1つ1つ確認してください.

色の感覚と色盲については、概略を説明致しました.遺伝子変異が実際にどのように生じるかなどは、先週の追加プリントを参考にぜひ自分で考えてみてください.必ずしも定説となっている内容ばかりではありませんが、進化は実験できませんので、あくまで推測です.分かりにくいところもあると思いますので、気軽に質問してください.

来週から第9章「運動機能の調節」に入ります.分子レベルでの話題に乏しいので、何となく表面をなぞったような授業になるかもしれません.あしからず・・・(゚〇゚;)

第25回 視覚1

今日も構造がある程度理解できているという前提で話を進めました.不十分なところは自分で補ってください.

さて、視覚の機能として、

1.遠近の調節:毛様体筋の収縮による水晶体の厚みを変化させる
2.明るさの調節:瞳孔散大筋と瞳孔括約筋の収縮によって虹彩を調節して瞳孔の大きさを変化させる

を取り上げました.

1は近視や遠視、老眼などの障害・異常のしくみを併せて考えてください.2は自律神経系によって調節を受けているということをよく理解してください.自律神経系の章でもう一度取り上げます.


また、視野や視力、両眼視については特に試験で問われるような内容ではないかもしれませんが、医療従事者の常識として身に付けてください.

来週は網膜にある視細胞の構造と機能、そして視覚の伝導路について取り上げます.

第24回 聴覚と平衡感覚

今日は内示に受容器を持つ二つの感覚、聴覚と平衡感覚を一気に進めました.解剖学的な内容を1つ1つ取り上げていると時間がかかってしまうのですが、生理学的に重要なポイントに絞ってお話しましたので、スムーズにいきました.

先週、聴覚の基本的な特徴をを取り上げました.ヒトがどれくらいの周波数範囲の音を聞くことができるのか、漠然とでいいので頭に入れておいてください.興味のある人は他の動物、例えばコウモリなどはどうだろうと調べてみるのもいいかもしれません.最近はゾウも人には聞こえない超音波を使って情報交換しているということがわかってきています.

今週もポイントは、音波が聴覚受容器細胞である有毛細胞へどのように伝わっていくのか、です.構造をよく理解した上で説明できるようにしておいてください.授業でもいいましたが、空気の振動である音波を神経細胞での電気的な情報に変換するというしくみは、実によくできています.生物がいつ聴覚を獲得したのかよく知りませんが、40億年にわたる進化のたまものです.

また、聴覚の伝導路は非常に複雑ですが、大切なのは両側性の並行経路で、視床内側膝状体などの神経角を経て両側の大脳皮質に投射するということです.

平衡感覚はなかなか実感できませんが、受容器細胞に興奮が生じるしくみは聴覚と共通点が多いのがおわかりいただけたでしょうか? こちらの方がずっと原始的な感覚だと思うのですが、ひょっとすると聴覚は進化の過程で平衡感覚が発展してできたのかもしれません.

耳石(=平衡砂)は、構造物としては結構有名ですが、実体は無機物(炭酸カルシウム)の結晶です.

平衡感覚の伝導路は結構複雑です.次の運動のしくみの章でところでもこの平衡感覚について取り上げることがありますので、併せて理解してください.

ヒトES細胞からの脳組織の再生

一昨日、また理化学研究所(神戸)のグループから重要な研究が報告されました.ヒトのES細胞から大脳皮質の組織を構築したという論文です.
理化学研究所のプレスリリースはここです.また、先日紹介した凍結マウスからのクローン作製についてもプレスリリースはここです.)

ES細胞、胚性幹細胞は受精卵が少し分裂した後の状態の細胞から作った培養株化細胞で、からだを構成するあらゆる細胞に分化する能力を持っています.したがって、ニューロンに選択的に分化させることも可能です.しかし普通にシャーレ上で培養しているだけではただの同じ種類の細胞の塊に過ぎず、組織ということはできません.

今回の研究の素晴らしいところは、ES細胞から分化させた細胞を使って、実際のからだ・器官を構成している状態の組織を構築できたことにあります.最も高度な組織といってもいい大脳皮質組織を作れたということは画期的です.解剖学で習ったと思いますが、大脳皮質は6層構造で、各層ごとに構成するニューロンの性質が異なっています.胎児期には4層構造のようですが、この各層のニューロンの特徴を持った細胞群によって構成される組織ができたと報告されています.

しかもこの組織は大脳特有の神経ネットワークを作っている上に、大脳皮質のいろんな領野、感覚野や運動野に特徴的なニューロンへの分化を制御できる方法も見つけたということです.

大脳を構成しているいろんなニューロンの性質を調べていく上でも重要なツールを提供していますし、治療という観点からも神経系の再生医療に大きく道を開く研究だと思います.

ES細胞でできるということは、おそらくiPS細胞でもできるようになるでしょう.iPS細胞でできるということは、治療されるべき患者さん本人の、例えば皮膚の細胞などを使えるということです.また、脳が作れるということは他の組織も作れるようになるであろうという展望がひらかれたわけで、今後一気に研究が進むでしょう.

凍結マウスからのクローン作製

昨日の新聞に、理化学研究所(神戸)の研究グループが凍結保存したマウスからクローンを作ったという報道がありました.すでに論文も発表されているようなのでそのうち読んでみようと思っていますが、ちょっとだけコメントを(*⌒O⌒*)

このグループは数年前にクローンマウスを初めて報告しました.もちろんこのときは生きたマウスの細胞から核を採り出して使っています.今回は16年間マイナス20度で保存されていたとのこと.この温度では細胞そのものは壊れてしまいます.細胞はほとんどが水ですから、凍れば容積は増えます.したがって細胞膜を壊してしまいます.ところが細胞核は結構丈夫なので壊れずに残っているものがあったのでしょう.

報道にあるように、他の動物にも応用ができれば、特にホストとドナーが異種動物であってもできるようになればマンモスの復活も夢ではありません.個人的にはタスマニアタイガーをやって欲しいですね*^_^*

マイナス20度というのは家庭の冷凍庫よりやや低い程度の温度です.ただ実験室で使っている冷凍庫は『霜取』をしません.『霜取』をするということはいったん温度が上がるということを意味します.そうすると一日の中で保存温度が上下するということですから、保存条件としては実はあまりいいとは言えません.ですから家庭の冷凍庫で保存された松阪牛(のお肉)があっても使えないでしょう、多分.<(^^)

さて、細胞膜を壊すときは、授業でやったように極端な低張にすればいいわけです.実際、サイトゾル中のタンパク質を抽出するときには、まず最初に低張液で処理します.しかしこの条件では細胞核はつぶれないので核内のDNAは出てきません.DNAを抽出するためには高張にしたり、界面活性剤を入れたりします.界面活性剤は脂質二重膜を壊す作用があるので、核膜も簡単に壊れてしまいます.

さて、新聞などで出ていたクローンマウスの写真ですが、やや茶色っぽい毛色でした.隣にいるマウスの毛色は白く目も赤い色でした.この茶色は、アグーチ色といって、マウス(ハツカネズミ)の本来の毛色です.白はアルビノと言って、メラニン色素を作れないマウスの毛色です.したがって、目の網膜の色素細胞もメラニンを持たないので、血管の色がそのまま出てしまうので赤くなります.よく家庭などで飼われている兎の眼が赤いのも同じです.

では、論文を読んだら感想を掲載します.

第23回 味覚と嗅覚

感覚については自分の経験を振り返りながら、あるいは勉強したことを考えながら触ったり、見たり聴いたりすることによっていろいろと発見があるのではないでしょうか?

さて、味覚と嗅覚は化学感覚という点では共通しています.基本的な味や匂いを感じさせる物質があったり、閾値が速かったり.また、受容器となっている細胞もともに微絨毛(味毛や嗅毛を持っていて、そこに受容体タンパク質があるということも共通しています.時として毒物にさらされることもあるので寿命が短かったり、危険から身を守るための役割を果たしていたりと.

しかし、味細胞が軸索を持っていないのに対して嗅細胞は軸索をもち、また、味覚が複数の脳神経によって伝えられる感覚であるのに対して嗅覚は嗅神経という非常に短い神経によって中枢へ伝えられています.さらに、味覚は大脳皮質の新皮質に一次中枢がありますが、嗅覚は旧皮質に相当する大脳辺縁系などを中心とした領域に分散しています.

今回は受容体遺伝子と進化について触れました.われわれヒトがいかに長い時間と偶然の産物であるかということを少しでも理解してもらえればと思って取り上げました.もう少し時間があるとゆっくり説明できるのですが、ちょっと残念です.