第24回 聴覚の構造と機能

今日は聴覚器(耳)の構造と機能と考えました.先週の授業で音(音波)が空気(の分子)の振動=縦波であることを説明しましたが、この空気の振動がどのようなしくみで生物学的な機能=細胞(ニューロン)の電気的な興奮に変換されていくのかを理解してください.

構造の詳細は解剖学で学んだことも含めて、改めて見直しておいてください.生理学として重要なのはプリントp279~281の図でまとめた、

外耳道に入ってきた空気の振動が

鼓膜、耳小骨、卵円窓の機械的な振動へ変換された後、
内リンパ(前庭階、鼓室階)の液体の振動(圧力波)となり、
さらに、基底膜や前庭膜の振動へ変換され、有毛細胞の不動毛(感覚毛)を押し倒す(これも機械的な振動です)
そして、カリウムチャネルを開いて脱分極を引き起こす

この一連の流れです.


授業の始めにも触れましたが、構造があって初めて機能を考えることができます.聴覚器は構造と機能を結びつけて考える上で格好の例題でもあります.よく復習してください.

これまでに学んだいろんな感覚受容器のしくみに比べると、刺激の入力から細胞の興奮に至るまでの過程がやや複雑です.例えば、味覚や嗅覚の場合には、化学物質が受容体タンパク質に結合(あるいはイオンチャネルを通過)すれば、直ちに脱分極が生じると考えればよかったわけです.空気の振動という現象があまりにも抽象的というか、特異性がないというか、単純な「受容体」では区別して受け取れないような刺激であるために、こんな回りくどい方法を作り上げてしまったのかもしれません.

聴覚の伝導路も、左右の並行経路であるという点で独自の特徴があります.しかし、他の多くの感覚同様に視床が重要な中継所として機能していますので、これは見落とさないでください.

音源定位のしくみや音程の聞き分けなど、複雑すぎて十分に勉強できていないところがたくさんあります.また、そのほかまだ未解明なところも多く、今後大いに発展していく分野だと思います.

第23回 嗅覚の伝導路、音波の特徴

今日は前半で嗅覚の伝導路を取り上げました.これまでに取り上げた体性感覚や味覚と比べると、新皮質に一次野がない、伝導路が視床を経由したシンプルか構成になっていないなど、嗅覚が原始的=哺乳類などが登場する以前から動物に備わっていた感覚であることを示すいい例だろうと思います.

授業ではあまり触れられませんでしたが、嗅覚情報が視床下部や辺縁系に入力しているということは、情動行動とも密接につながっているということです.快・不快に伴うさまざまな反応や性的な行動などに嗅覚が深く関わっていることの証です.

このあと聴覚や視覚の伝導路についても取り上げますが、いずれも視床を経由して味覚などと同様の構成をしています.これに対して、嗅覚と平衡感覚は大部様子がことなっていて、いずれも原始的な感覚であることがわかると思います.

後半では、聴覚の適合刺激である音=音波について、少し詳しく説明しました.空気の振動としての物理的な性質だけではなく、できるだけ聴覚の特性とも関わらせて説明したつもりですがいかがでしたか? 狭義の「生理学」の範疇は超えていますが、自然現象を刺激として受容しているわけですから、ある程度の知識は必要ですし、できるだけ幅広く、また本質をつかんだ勉強ができるように取り上げました.

第22回 味覚と嗅覚

今日の最初に説明した「痛みによる反応」は、抽象的な説明しかしなかったのでわかりにくかったかもしれません.来年以降の臨床の講義ではもう少し具体的な内容に触れられると思います.また、今日も少し説明しましたが、生理学4:内分泌で「ストレス」についてある程度触れられるのではないかと思います.

以下に簡単に説明します.
ストレスとは、ハンス・セリエによって提唱された概念で、何らかの刺激によって声帯にゆがみが生じた状態を指し、視床下部を刺激して交感神経系の活動を惹起したり、視床下部/下垂体系に対して副腎皮質刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモンの分泌を促すような反応が生じます.そして、このストレス源(ストレッサーといいます)の代表といってもいいのが侵害刺激です.急性の反応(W
.キャノンが「闘争か逃走反応:fight-orflight response」と表現しました)として、交感神経系を介して脳を覚醒状態に保ちながら骨格筋の運動を保障するような全身性の反応、例えば心臓血管系の活動が活発になったり、逆に消化器系や泌尿器系の活動が低下したりします.また、比較的長期にわたる内分泌系の反応の結果、脂質分解や糖新生、グルコース分解が亢進します.
以下の図のように簡単にまとめることができます.

ストレス反応概要



さて、特殊感覚は5種類あり、今日を含めて4〜5回にわたって取り上げます.

味覚と嗅覚は、ともに化学物質に対する感覚である点が共通するため、連続して取り上げられることが多いようです.受容器細胞に微絨毛あるいは樹状突起があり、ここに化学物質に対する受容体タンパク質があるという点でも共通しています.

味物質に対する受容体は大きく5種類.したがって、味覚も5種類に分類して考えます.
(3年ほど前に6番目としてカルシウムイオンに対する受容体が、これまでにわかっている5種類とは全く独立したものとして報告されました)
しかし、嗅物質に対する受容体の遺伝子はヒトで約400種類報告されており、非常に多くの物質に対して独立した感覚=臭いを生じることがわかっています.ここは同じ化学物質に対する感覚といっても、大きな相異点です.


また、味細胞は自身で軸索を持たず受容器細胞に特化していますが、嗅細胞は嗅毛の反対側から嗅神経を伸ばしており、伝導路を考える上で重要な相異点です.


さらに、味覚は視床を中継地として、大脳皮質に一次味覚野がありますから、体性感覚と同じように一次ニューロンからの興奮の伝達を考えていくことができます.嗅覚の伝導路は来週取り上げますが、嗅覚はの中枢は新皮質よりも原始的な旧皮質にあり、そこへ至るニューロンのつながり方も複雑です.嗅覚が進化的に非常に古い段階で獲得されたことを示していると同時に、ヒトで必ずしも重要に扱われていないということの表れかと思います.

来週は、嗅覚の伝導路、味覚や嗅覚についての進化的な特徴を最初に取り上げます.その後、聴覚に進みますが、最初に聴覚の適刺激である「音=音波」の性質について取り上げます.

第21回 体性感覚の中枢、内蔵感覚

遅くなってしまいました.

今週始めに取り上げた三叉神経視床路は、支配領域が顔面や口腔に限定されていますが、基本的な構成が後索路、脊髄視床路と同じであることがわかっていれば解剖学的な特徴を抑えてしまえば十分でしょう.

今回のメインは中枢、特に大脳皮質の一次体性感覚野です.体部位局在の特徴をしっかりとおさえておいてください.伝導路との関わりも忘れずに.

内臓感覚は飛ばしてしまいました.内臓痛覚も詳しく触れることができませんでしたが、原因とともに痛覚としての特徴をつかんでおきましょう.また、関連痛や痛覚過敏は臨床的には重要だと思います.興味のあるヒトは是非自分で勉強してみてください.