左手のピアニスト(番組の感想)

土曜日に放送されたNHKのETV特集:「左手のピアニスト〜もう一つのピアノ・レッスン」の感想はここに掲載しました。

第21回 体性感覚の中枢、内蔵感覚、痛覚他

今回ははじめに体性感覚の中枢を取りあげました。一次体性感覚野の特徴は3つあります。いずれも表在感覚を中心とした体性感覚の感覚点や受容器の分布に関する特徴、伝導路の特徴とつながっていますので、一緒にして考えられるようにしておきましょう。

内臓感覚については、循環器系や呼吸器系、消化器系、泌尿器系で取りあげられた内容とオーバーラップしているので簡単に済ませてしまいました。

特に、血圧を検知する圧受容器(機械的刺激に反応する)、血液中の化学組成、特に酸素分圧や二酸化炭素分圧、水素イオン濃度を検知する化学受容器(化学的刺激に反応する)の2つは非常に重要ですから必ず自分で復習をしておいて下さい。

また、関連痛(放散痛)は臨床的には重要な意味を持つ現象です。2年生の授業で取りあげられると思いますが、内臓通の伝導路の特徴とあわせて理解しておきましょう。

後半は痛覚に関連する内容を取りあげました。やや雑駁な説明になりましたが、生体の防御に関わる感覚であるだけにいろんな側面をもっていて、しくみは複雑です。疼痛が引き起こす全身性の反応などについては他の科目で学ぶ内容などもあわせてよく考えてみて下さい。また、内因性鎮痛物質(オピオイド)や痛覚過敏は非常に有名な特徴です。

左手のピアニスト:ジストニアという病気を知っていますか?

ジストニアという病気をご存知でしょうか?

先天性と後天性があり、また、全身性と局所性があります。先天性全身性ジストニアは非常にシビアな疾患で、日常生活もかなり大変です。後天性局所性ジストニアは体の一部にだけ症状が出るため外見的にはわかりにくいですが、日常生活に支障が出たり、職業によってはその職を諦めなければならないこともあります。

授業でも「運動機能」に関わって取り上げます。

実は演奏家には(演奏家でない方に比べて)比較的頻度の高い疾患です。指や口、声帯など特定の筋あるいは運動機能を酷使するため、その一部が、演奏態勢に入った時に自由を失ってしまいます。プロフェッショナルとして致命的な疾患です。

今回紹介するのは、右手が不自由になり左手だけで演奏しているピアニストです。先週土曜日のNHK教育テレビのETV特集で智内威雄(ちない・たけお)さんというピアニストを紹介していました。(実はこの日は帰りが遅くなり視ることができませんでした(>_<) 今度の土曜日に再放送がありますので、興味のある方は是非ご覧ください。(HPはここ

関連する話題をここ(〈趣味のページ〉)にも入れましたので、興味のある方はどうぞ。

第20回 固有受容器のはたらき、体性感覚の伝導路

今週は最初に固有感覚の受容器である筋紡錘と腱器官のはたらきを、神経活動とあわせて考えました。

2つの受容器がどんな刺激に反応するのかを改めて確認して下さい。そして、これら受容器からの興奮を伝える感覚神経の活動について、授業で使った図を見ながら自分で説明できるようにしておきましょう。特に、筋紡錘のはたらきは重要です。筋の長さは長さの変化に伴ってどのように興奮が発せられるのか、じっくりと考えてみましょう。

筋以外の部位の固有感覚や振動感覚については国試で問われることはないと思いますが、機械的な刺激に反応する受容器は触圧覚の受容器と同じものが働いていますので、あわせて確認して下さい。

痛覚は表在感覚、深部感覚、そして来週ふれる内臓感覚のいずれにも共通する感覚です。これは、痛覚だけの特徴といってもいいと思います。C線維の自由神経終末、ポリモーダル受容器が主要な役割を果たしています。伝導路にも他の感覚とは異なる特徴があります。脊髄の伝導路の分枝である脊髄網様体路の存在は侵害刺激がヒト(あるいは動物)にとって「ストレッサー」になっているということを示すものでもあります。来週の授業でも少し触れることになると思います。

今週の後半は体性感覚の伝導路について一通り説明しました。

授業でも触れたように、最も重要な伝導路は脊髄の後索路と脊髄視床路です。それぞれがどのような刺激あるいは受容器からの興奮を伝えるルートなのかをしっかりとおさえた上で、一次ニューロン、二次ニューロン、三次ニューロンの特徴を理解して下さい。一次ニューロンと三次ニューロンは共通点が多いですが、二次ニューロンに大きな違いがあります。必ず自分なりに一覧表や図をつくってまとめるようにしましょう。さらに、三叉神経視床路は脊髄の伝導路と比較しながらまとめるとわかりやすくなると思います。

脊髄小脳路は運動機能を学ぶときに改めて触れると思います。

第19回 温度覚、痛覚、固有感覚(筋紡錘)他

今回は表在感覚のうち、温度感覚、痛覚とかゆみ、くすぐったさ、また、深部感覚の受容器として筋紡錘を取りあげました。

前回取り上げた触圧覚と温度覚、痛覚に関する知識は国試でもいろんな形で問われています。また、2年生、3年生になってからも他の科目でこれらの知識が必要です。もちろんその後も。したがって、しっかりと復習して下さい。

それぞれの刺激を受ける受容器の実体、少なくとも被包神経終末であるのか自由神経終末であるのか、さらに、触圧覚の場合はそれぞれも名称と構造についてもおさえておきましょう。また、それぞれの神経終末からの神経線維の種類もあわせてまとめておきましょう。

表在感覚と深部感覚について、

受容器の構造と名称、分布、機能:受容器がどのような刺激をうけるのか、受容器からの神経線維、順応性

を一覧にしてみるといいと思います。

痛覚については特に重要だと思いますので、2種類の感覚についてそれぞれの特徴を自分の言葉でしっかりと説明できるようにしておきましょう。

深部感覚については、感覚自体についてはうまく説明できませんでしたが、筋紡錘という感覚受容器は「運動機能」でも取りあげます。筋線維について改めて確認するとともに、図をよく見て構造をしっかりと頭に入れて下さい。筋紡錘の機能を考えるためには、錘内筋の中央に巻き付いているⅠa線維が重要で、この神経線維への機械的な刺激(伸展刺激)が興奮を引き起こし、筋の長さや長さの変化する速度をモニターすることにつながります。機能については来週の授業でも改めて説明しますが、基本的な特徴を見直しておきましょう。

ところで、表在感覚や深部感覚に関わる受容器の構造や神経線維をながめてみると、受容器構造の複雑さや神経線維の構造や伝導速度の大きさに特徴があります。

侵害刺激は生命維持に関わる基本的な刺激ですが、それだけに進化的には非常に早い段階で獲得したと考えられます。特に、幅広く刺激を受けるポリモーダル侵害受容器の最大の特徴はどんな刺激に対しても反応するということですが、最初はこのような受容器1つですべてをまかなったと考えると、この受容器が自由神経終末で、神経線維がC線維=無髄線維である、つまり、進化のより早い段階で生じたものであることが納得できます。また、機械的な刺激に対しても自由神経終末の受容器が反応し、神経線維はAδ線維、また温度感覚という環境変化に関わる刺激についても同様に自由神経終末で、C線維やAδ線維が使われています。つまり、いずれもより原始的な形態をもった受容器で、無髄線維や有髄線でも伝導速度の小さい線維です。

これに対して、触圧覚(これらは精密触覚を含んでいます)や筋紡錘や腱器官(筋の状態を細かくコントロールするために必要です)は受容器自体も非常に特殊な形態をしていて、Aβ線維やAα線維を使っています。これらが時間をかけてつくられてきた=進化に伴って変化してきたことが明らかです。

このように、進化の頂点にいるヒトには生物の歴史=進化の成果が詰まっています。私たちは個人として、あるいは家族とともに人生を歩んでいるだけでなく、生命が歩んできた数十億年の蓄積の上に生きているのです。