冬休みのレポートについて

  課題の内容は今日説明したとおりです。

夏休みのレポートには、課題としてよんだもの以外にもいろいろ読んでみたいという感想がかなりありました。その後自分で読んでいるのであれば、そのうちから改めて読み直してレポートにすればよいでしょう。

 「科学道100冊」にはいろんなタイプ、ジャンルの内容が選べれています。レポートの課題としては当たり外れが大きいともいますので、実物を手に取ってよく考えたほうがよいでしょう。

 2限目の授業で余ったプリントはどうなったでしょうか? A組が持って行ってしまっているようですが、B組で欠席者がいるので渡しておいて上げて下さい。

第24回 視覚機能(遠近と明るさの調節他)

 今回は視覚機能のうち、水晶体・毛様体と虹彩・瞳孔の機能を考えました。

 構造についてはよく確認しておきましょう。構造の特徴を知ることなくして機能を理解することなくして、機能はできません。

 授業でも強調したように、水晶体は非常に弾性のある構造です。したがって、遠くを見るときに毛様体が収縮すると、毛様体小帯が緩み、水晶体に対して周囲から張力がかからない、あるいはかかっている張力が弱い状態になります。この結果、水晶体は自らの弾性によって自然に縮んで円くなります。したがって、それぞれにとっての近点に焦点を合わせているときが最も縮んだ状態と考えてよいでしょう。

 円くなっていると、そこへ入射した光は大きく屈折をすることになります。この結果、近傍から鋭角で入射した光線でも網膜で焦点を結ぶことができます。

 水晶体の弾性が失われていいくと、縮む度合い、すなわち縮む度合いが小さくなり、入射光を大きく屈折させることができなくなります。この結果、近くの物体に対して焦点が合わなくなります。

 一方、遠くを見るときは毛様体筋が弛緩するため毛様体小帯が伸びた状態となり、これが水晶体を周囲に向けて引っ張ることにつながります。毛様体筋の弛緩の程度が大きいほど毛様体小帯が伸び、水晶体も扁平になります。入射光は水晶体に対して垂直に近い状態で入射するため、屈折角が小さくなります。こうして、遠方の物体に焦点を合わせることができます。

 今日追加で配布したプリントでは、毛様体筋の収縮・弛緩と毛様体小帯の緊張の度合いがわかりやすいと思います。よく見直しておきましょう。

 眼球への入射光の多少を調節するのは瞳孔の大きさですが、この瞳孔の大きさは虹彩を構成する2つの平滑筋の収縮と弛緩によって調節されます。瞳孔括約筋は副交感神経によって支配され、明るいあるいは強い光が入射したときに収縮します。逆に、瞳孔散大筋は交感神経によって支配され、薄暗いあるいは弱い光しか入射していないときに収縮します。

 2つの平滑筋の神経支配と、光の強さによる反応の違いをよく頭に入れておきましょう。

 後半では眼球運動を取り上げました。眼球には6つの外眼筋がついており、3組ずつほぼ対角線上に位置します。支配神経の組合せは複雑ですが、せっかくですのでこの機会に頭に入れてしまいましょう。滑車神経は「滑車」とよばれるところを通過することに由来しますが、滑車(とよばれる構造)をくぐっている上斜筋を支配すると考えれば覚えやすいでしょうか。外転神経は眼球を外転させる外側直筋を支配しています。残りはすべて動眼神経によって支配されています。

 p371上図の左側の一番上が「前頭骨」となっていますが、「滑車」の誤りです。訂正しておいて下さい。

 近視の人も多いでしょうし、老視を感じている人もいることでしょう。それぞれどの様な状態であるのか、自分に引きつけてよく考えてみると理解が進むと思います。


来週は網膜の構造と光に対する反応のしかた、そしてその情報がどのように中枢=一次視覚野へ伝えられるかを考えます。また、色の感覚についても時間の許す限り説明したいと思います。

第23回 聴覚の中枢、平衡感覚、可視光線と眼の構造

 聴覚の一次中枢=一次聴覚野の位置はしっかりと頭に入れておきましょう。また、一次聴覚野とその周辺の連合野は、左右の半球にともに存在しますが、言語機能に関わった機能でもあるため非対称であることが知られています。これについては後期の最後に改めて取り上げます。

 音源定位の機能についてはまだよくわかっていないこともあるようですが、伝導路が左右の並行回路であることがその大きな要因です。

 今週の中心は平衡感覚でした。卵形囊・球形囊=耳石器と半規管の構造と役割分担をしっかりと整理しておきましょう。

 卵形囊は水平方向の加速度を検出します。つまり前後や左右、あるいは水平に斜め方向へ動いた場合に反応します。一方で球形嚢は上下方向の加速度を検出します。したがって、頭部が上下方向に動いた場合に反応しています。頭部を傾ける場合にはおそらく両方が反応しています。

 半規管は、X軸、Y軸、Z軸に対応するように3本の管があり、頭部が回転する(頭部を傾けるような動きも含まれます)動きに伴う加速度を検知します。

 反応の基本的なしくみは全く同様と考えてよいでしょう。卵形囊、球形囊、そして半規管も骨の内部にあるため、頭部の動きに応じてこれらの器官全体が動いています。卵形囊・球形囊では、この動きに応じて比重の大きな平衡斑の耳石が全体の動きに応じた方向へ動きます。耳石は耳石膜の上に層状に集積しているため、耳石の動きは耳石膜を誘導し、同時に耳石膜の中に埋まったようになっている感覚毛を傾斜させます。半規管の場合は、完全体の動きに対して、内部の内リンパには慣性がはたらくため相対的には逆方向に動きます。この結果、膨大部のクプラが半規管の回転方向とは逆方向に倒れ、感覚毛も同じ方向に傾斜します。

 平衡斑と膨大部にある有毛細胞の感覚毛は、コルチ器の感覚毛とやや異なった組合せになっていますが、ある方向に傾斜すると陽イオンチャネルが開放し、その反対方向に傾斜すると陽イオンチャネルが閉鎖するという点では共通しています。このイオンチャネルの開放具合によって、有毛細胞の脱分極が増大したり減少したり、あるいは過分極したりします。

 有毛細胞が脱分極すると感覚神経に対して興奮性伝達物質(グルタミン酸)が放出され、前庭神経の興奮を生じます。

 前庭神経は前庭神経核へ伸び、ここで二次ニューロンと接続しています。しかし、この二次ニューロンの投射先はさまざまで、大脳新皮質から脊髄まで、広がっています。このうち、視床を介して一次体性感覚野へ入力した情報は回転や移動、重力方向の変化に対する知覚を生じます。しかし、これ以外はすべて運動に関する中枢あるいは直接に運動神経とつながっており、眼球や頭部の運動、体幹や四肢の反射性に運動を生じます。これらの反射の運動については第9章で改めて取り上げます。

 今週は最後に視覚機能の適合刺激である可視光線の特徴(あるいは電磁波の特徴)と、視覚器である眼の構造を概観しました。電磁波としては、高等学校の「物理基礎」で取り上げられています。可視光線や視覚機能は「科学と人間生活」でよくまとめられています。時間を作って見直しておくとよいでしょう。

 来週は視覚機能を具体的に考えます。すべてを取り上げることはできないと思いますが、はじめに。眼球前方の構造によって入射光がどのように調節されているかを考えます。

コルチ器の外有毛細胞のはたらきについて

 聴覚における受容器細胞は蝸牛管のコルチ器にある有毛細胞で、ここには内有毛細胞と外有毛細胞の2種類があります。授業では受容器細胞としては内有毛細胞のほうが優位にはたらき、感覚神経のほとんどはこの内有毛細胞とシナプスをしていると説明しました。外有毛細胞については運動神経とシナプスをつくっている説明したのみでした。簡単ですが、補足をしておきます。

 有毛細胞はヒトあるいは哺乳類に限らず、内耳器官を持つすべての動物の感覚受容器細胞として機能していますが、ヒトでは聴覚受容器である蝸牛管だけではなく、平衡感覚受容器である前庭・耳石器並びに半規管に存在します。そして、それぞれの細胞の基底部に神経が伸びてきており、シナプスによって接続しています。

 第Ⅷ脳神経である内耳神経は感覚神経と運動神経の2つの神経成分を含んでいます。解剖学では内耳神経はすべて感覚神経であると学んだかもしれませんが、枝である蝸牛神経も前庭神経も、感覚神経と運動神経の両方を含でいます。(生理学プリント第4章を参照) 

 ここからは蝸牛管基底膜上に、コルチ器の構成細胞として存在する2種類の有毛細胞を考えます。内有毛細胞は約3,500個が1列に並び、外有毛細胞は約20,000個が3列(部分的には4列)に並んでいます。そして、内有毛細胞は、まさに聴覚の受容器細胞として機能しています。しかし、外有毛細胞は聴覚の受容器細胞としての役割は、内有毛細胞と比べて小さく、むしろ、コルチ器の振動によって自身の細胞の長さを変化させるという性質を持っています。もちろん、内有毛細胞と同様に膜電位は変化しますが、これが別の作用を引き起こしています。

 外有毛細胞が脱分極すると細胞の長さをわずかに短縮させ、このことが基底膜の振動を増幅する効果を生むようです。したがって、内有毛細胞の感覚毛に加わる機械的な刺激が増大し、内有毛細胞の受容器としての感度を高める作用を持っていると考えられています。

 さらに、外有毛細胞がシナプスをつくっている神経のほとんどは運動神経です。この運動神経は上オリーブ核(多くは対側)に起源を持つ神経線維で、この運動ニューロンと外有毛細胞との間のシナプスは抑制性シナプスです。したがって、運動神経の興奮は外有毛細胞に過分極を生じ、上で説明した細胞の長さを短縮させるはたらきが抑制されます。この結果、内有毛細胞の感度を低下させていると考えられています。

 残念ながら外有毛細胞自体の運動性と、運動神経からの刺激による外有毛細胞の機能の抑制はうまく結びつけられていないようで、運動神経の作用が聴覚全体にどのような影響を持っているのか、詳細は明らかにされていないようです。

 聴覚の機能にはまだまだ分からないことがたくさん残されています。例えば、今日の授業でも簡単に触れましたが、我々が聞いているヒトの声や楽器の音には多くの倍音が含まれています。つまり、聞こえている音の高さ(音程)の整数倍の周波数の音波がたくさん含まれています。しかし、実際に聞こえている音程は1つ(最も周波数の低い音)だけです。あるいは、大勢の声や多くの音が周りで鳴っているときでも、目の前ので話している人の小さな声を聞き取ることができます。このような現象を「カクテルパーティー現象(または効果)」といいますが、なぜこのような現象が生じるのかよく分かっていません。外有毛細胞のはたらきは、こんなところに関わっているかもしれません。

第22回 聴覚

 今日ははじめに聴覚の適合刺激である音波について概説しました。

 空気を弾性のある媒質と考えたとき、音波は音源からの縦波として考えることができます。もちろん、空気は分子の集合ですから、各分子の集合状態の差、つまり、分子が疎になっている部分と密になっている部分が交互に並んだ(厳密にはそれぞれの状態が連続的に変化した状態で交互に並んだ)疎密波です。疎密の状態をグラフとして可視化する場合には、縦軸に圧力(すなわち分子の密度)をとって横波のようなサインカーブとして描くことができます。

 疎密の程度の差であるグラフの縦軸の幅が波の振幅です。振幅が大きいということは、分子の疎密の程度の差が大きいことを意味しており、これが音量の大小を表します。音源は空気に振動を与える為に圧力をかけています。したがって、音量は圧力として、パスカル単位(Pa)で表せます。しかし、ヒトの聴覚は音源の圧力の大きさに比例したように感じるのではなく、音源の圧力の対数に比例したように感じています。これがフェヒナーの法則です。この実際の感覚に合うように表したのがベル単位(B)です。取り扱いやすい数字の大きさにするために、デシベル(dB)で表記します。

 一方、1つの波を「隣り合った波の同じ状態の部分の間」と考えると、この2つの間の距離が波長です。そして、あるポイントを一定時間内に、一波長分が何回通過するかが周波数で、1秒間あたりに通過する波の数で表します。言い換えると、あるポイントで何回の波が生じているか、つまり分子の疎密が何回繰り返すかと考えてもよいでしょう。1秒あたりの回数をヘルツ単位(Hz)であらわし、これが音の高低を決めています。気がついた人もいると思いますが、周波数は波長の逆数です。(波長や周波数は音波だけではなく、可視光線を含む電磁波を考える場合にも使われる概念ですので良く整理しておきましょう。)

 ベル(デシベル)とヘルツは、それぞれに音波の性質を決める重要な単位ですのでよく頭に入れておきましょう。

 ヒトの可聴域は20〜20,000ヘルツと言われていますが、成人に限ると決して正しくはないことも実感できたでしょう。教科書といえど決して鵜呑みにしてはいけないというよい例です。

 聴覚器としての耳の構造は解剖学でも学ぶはずですので、ここでは詳しく触れません。音波が有毛細胞の反応をどのように生じるかを振り返りながら、必要な構造を考えておきます。

 耳介は複雑な形状をしています。この形状によって周囲からやってくる音波を効率よく外耳道へ集めることができます。そして、空気の振動が鼓膜にあたると、鼓膜の振動を生じます。鼓膜は外耳と中耳の境界で、中耳側でツチ骨と結合しています。したがって、鼓膜の振動はツチ骨の振動を生じます。ツチ骨はキヌタ骨、さらにアブミ骨とつながっていますから、順に振動します。アブミ骨が中耳と内耳(前庭階)の境界である卵円窓と結合しています。このためアブミ骨の振動は卵円窓の振動を生じます。鼓膜から卵円窓までの物体の機械的な振動は徐々に増幅されていて、卵円窓は鼓膜の振動の約20倍の大きさで振動します。この結果、ヒト(あるいは哺乳類)は、小さな振動も音として知覚できるようになりました。

 内耳は側頭骨中の迷路全体を指しますが、聴覚器として機能しているのは蝸牛です。蝸牛は3つの階層に分かれていますが、前庭階と鼓室階は蝸牛頂で連続しているので、内部は同じ組成の液体=外リンパで満たされています。一方、蝸牛管は他の2つとは完全に独立しており、組成の異なる内リンパで満たされています。

 卵円窓の振動は外リンパの振動を生じ、前庭階と鼓室階の内部でともに液体の振動(圧力波)を生じます。圧力波が前庭膜、基底膜を振動させ、コルチ器を上下に動かすことになります。コルチ器は基底膜に載った細胞群と蓋膜が異なった支点で振動するため、間に挟まっている感覚毛が動きます。プリントの図で見ると、振動の具合に応じて左に倒れたり、右に倒れたりしているのがわかるでしょう。

 感覚毛は構造的には微絨毛で、自律的に動くことはできず、蓋膜からの押さえられ方によってどちらに倒れるかが決まります。感覚毛の先端には陽イオンチャネルがあるため、チャネルが開放する方向へ倒れると内リンパからカリウムイオンが細胞内へ流入して脱分極を生じます。大きな振動(大きな音)を受けると、外リンパの振動も大きくなり、コルチ器も激しく運動します。したがって、チャネルの開放の程度が大きくなり、流入するカリウムイオンも多くなるため、より大きな脱分極を生じます。

 有毛細胞には電位依存性カルシウムチャネルがあり、有毛細胞の脱分極に応じて開放します。この結果、細胞外から流入したカルシウムイオンの作用によって神経伝達物質が放出されます。このシナプスは当然興奮性シナプスで、蝸牛神経には比較的簡単に興奮(=活動電位)が生じていると考えると、聴覚が常に生じていることが説明しやすくなると思います。

 有毛細胞には2種類ありました。主要には内有毛細胞がはたらいています。蝸牛神経は内耳神経の枝で、そのほとんどが感覚神経です。そして、内有毛細胞からの神経伝達物質の作用で興奮して、蝸牛神経核へ興奮を伝導します。外有毛細胞の機能はまだよくわかっていません。昨年の授業の記録に補足情報を掲載しましたが、一部を修正して別ページの再録しましたので参考にして下さい。

 聴覚の伝導路はかなり複雑です。この複雑さが、単に音波の振幅や周波数の大小だけにとどまらない聴覚の機能をつくっているとも言えます。来週はその機能の一端を簡単に紹介しようと思います。

 平衡感覚受容器である前庭と半規管(合わせて前庭器官といいます)は、蝸牛と連続した構造で、蝸牛のすぐ隣が前庭で、その先に3つの半規管があります。解剖学的にいう「前庭」はさらに卵形囊と球形囊という2つの部分に分けられます。内耳がつくられる過程では、はじめに卵形囊と球形囊ができ、そこが膨らんで蝸牛と半規管ができてきます。したがって、互いの内部、蝸牛の蝸牛管と卵形囊、球形囊、そして半規管の内部は一つながりの構造です。つまり、いずれも内リンパで満たされています。そして、蝸牛管のコルチ器とよく似た構造が卵形囊、球形囊、そして半規管にも存在します。このことを押さえて、平衡感覚受容器の構造を見直しておきましょう。予習しておきましょう。

 来週は、視覚の適合刺激である可視光線についても説明します。今日の授業で予習用にあらかじめ配布するのを忘れていましたが、「一家に一枚・光マップ(https://stw.mext.go.jp/series.html)」を配布します。簡単にダウンロードできますので、一度見ておくとよいでしょう。

第21回 味覚と嗅覚

 味覚と嗅覚の適合刺激はともに化学物質です。食物も飲料も、そして吸気している空気もすべて化学物質です。あるいは、期せずして口に入ってしまったものやすってしまった気体も化学物質です。これらの化学物質が体内(あるいは器官や組織)に取り込まれる前に、その性質を見極める必要性から、化学物質に対する感覚が発達してきたのでしょう。

 味覚には「基本味(基本感覚)」がありますが、嗅覚には「基本的なにおい」はありません。これは、それぞれの受容体の種類の差に依っています。味覚には授業で説明した5種類の受容体があります。したがって、これら受容体に結合できる物質ごとに、感じる味が決まります。ところが、嗅覚受容体はヒトで約350種類の遺伝子が同定されており、それぞれの遺伝子産物(タンパク質)が異なった構造の化学物質を結合します。

 舌を中心とした味覚器とその周囲の構造、鼻腔と嗅上皮の構造はそれぞれ他の科目でも学んでいると思いますが、改めてよく見直しておきましょう。

 生理学的に重要なポイントは、味細胞や嗅細胞の反応のしかた、そして、それぞれの伝導の特徴です。

 個々の味細胞には特定の受容体だけが発現しています。したがって、大きく5種類に分けてみ物質のいずれかにしか反応できません。しかし、どのタイプの受容体であれ、味細胞に脱分極(受容器電位)が生じると、味細胞が神経伝達物質を放出して味神経を興奮させ、この興奮が中枢へ伝えられることによって感覚が生じます。

 機能的には味神経といいますが、味細胞が舌あるいは口腔内のどこにあるかによって脳神経の分担が異なりますので、よく確認しておきましょう。顔面神経、舌咽神経、迷走神経がいずれも孤束核に入り、二次ニューロンに接続しています。

 嗅細胞も、各細胞が異種類の受容体を発現しています。そして、嗅細胞自体がニューロンであり、閾値濃度以上で嗅物質が受容体と結合すると活動電位を発し、これがインパルスとして嗅神経を伝導して嗅球へ達します。嗅神経も脳神経の1つです。

 特殊感覚は一次ニューロンが脳神経であるということが、ここまででも確認できるでしょう。

 進化に関して何度か触れていますが、味覚と嗅覚を比べると、伝導路も中枢も、味覚の方が他の感覚に近く、嗅覚の方がかなり古い特徴を残していると言えるでしょう。味覚の伝導路は3つのニューロンがつながって構成され、視床を介しています。一次中枢も大脳皮質にはっきりとした領域がその役割を演じています。一方で、嗅覚は二次ニューロンである嗅球のニューロン(僧帽細胞)が一次中枢とも言える梨状皮質に達しています。さらに、扁桃体や眼窩前頭皮質など、いくつかの部分が梨状皮質と同様の位置づけを与えられているようです。ただし、一次味覚野も一次体性感覚野や今後説明する一次聴覚野や一次視覚野のように、大脳新皮質の最外部ではないところから、古い段階で形成された機能であることが推測されます。

 来週は聴覚を取り上げますが、適合刺激である音波についてやや時間をかけて説明します。また、耳の解剖学的な構造をよく予習しておきましょう。

第20回 体性感覚の伝導路と中枢、内臓感覚

 体性感覚の伝導路は、受容器から一次体性感覚野へ向かう3つのルートについて、その共通点と相違点をよくまとめておきましょう。特に、
   受容器の種類(または感覚の種類)、
   一次ニューロンから三次ニューロンまでの細胞体がどこにあるのか、
   それぞれがどこでシナプスをつくっているのか、
   脊髄を通る2つの伝導路では、脊髄のどこを通っているのか、
   さらに交叉するニューロンはどれで、どこで交叉しているのか、
がポイントです。

 勉強するとは、覚えることではなく、こうした内容を自分なりに整理することです。表がよいのか、図がよいのか、あるいは両方か。さらには、それらを文章で表現するとどうなるか、など、いくつかやり方はあると思います。

 三叉神経は脳神経の中でも大型で、ここに含まれる感覚神経は三叉神経節に細胞体があり、3つの枝(眼枝=眼神経、上顎枝=上顎神経、下顎枝=下顎神経)に分かれて顔面を中心に支配しています。脳幹に入って2つの感覚核へ入りますが、脊髄の伝導路と同様の構成で、精密触覚と固有感覚、粗大触覚と痛覚・温度覚と2つに分かれています。

 表在痛覚を担う2つの受容器・神経線維について進化的な説明をしましたが、後索路と脊髄視床路にの2つにも進化的な差があると考えられます。おそらくは脊髄視床路のほうが後索路よりも先に出現したのでしょう。それは、脊髄視床路が担う感覚の方が後索路が担う感覚よりも原始的と考えられるからです。

 痛覚の伝導路は、特に脊髄視床路については途中で分枝して脳幹に入ります。そして、その先に大脳辺縁系と視床下部があり、疼痛が「痛い」という感覚だけではないことを裏付けています。

 皮膚分節は、脊髄の分節性を頭に入れて考える必要がありますが、現象としては単純です。ここまで多くの複雑な構造や機能を学んだと思いますが、このようなわかりやすいしくみもあります。

 脳の感覚中枢として、視床と大脳皮質(中心後回)に分けて説明しました。視床は脳での位置と神経核の集合であり、感覚情報の中継所としての機能を頭に入れておきましょう。来週以降に取り上げる特殊感覚でも、聴覚情報と視覚情報の中継所として改めて触れることになります。

 大脳皮質の領野については解剖学で学ぶはずですが、概要は前期に触れましたので、忘れていれば見直しておきましょう。今日ふれた中心溝を境界として前頭葉と頭頂葉に分けられます。前頭葉には多くの機能がありますが、頭頂葉の機能としては一次体性感覚野だけしか取り上げられないと思います。

 一次体性感覚野は、体部位局在を中心にいくつかの特徴を説明しました。いずれも重要なポイントです。運動機能で一次運動野という、中心溝のすぐ前部(中心前回)の機能を考える機会があります。これら2つの領野には共通点の多く、合わせて考えることによりより理解が深まるでしょう。

 内臓感覚や内臓痛覚は簡単にしか触れられませんでした。生理学2で取り上げあられた内容とかなり重複します。ここで血圧の受容器を復習しておけといってもなかなか時間がとれないと思いますが、化学受容器と合わせて部位や名称だけは見直しておきましょう。温度受容器は体温調節機能のところでふれらると思います。

 関連痛は臨床の科目で学ぶと思います。その際は、内臓器官を中心にして説明されるのではないかと思いますので、体性感覚の伝導路との関わりを忘れないようにしておきましょう。

 追加で配布した「ストレス反応」については、内分泌系の機能の中で取り上げられるようです。侵害刺激は重大なストレッサーです。そのつもりで考えると良く理解できるのではないでしょうか。

 来週は味覚と嗅覚です。適刺激が何であるかそれほど説明は必要ないと思いますが、いくつか例を挙げて説明します。