遠近両用メガネとは?

 先週の授業で近視、遠視、そして老視のメカニズムを説明しました。授業後に「遠近両用メガネは遠視と近視の両用なのか?」というような意味の質問を受けました。すでに使っている人にとってはなぜこのような疑問がわくのか不思議でしょう。簡単にしくみを説明します。

 遠視と近視の両方の症状を示す人はいません。「遠近両用」と言った場合の「遠」とは「近視の人が遠方を見るのに適している」、「近」とは近視の人が老視になったときに「近傍(手元)を見るのに適している」という意味です。したがって、「遠近両用メガネ」を使うのは元々近視の人だけです。近視ではない、つまり正眼視の人が老視になった場合には、授業で説明したとおり凸レンズによる老視用メガネ(シニアグラスとか、リーディンググラスなどという場合もあります)を利用して近傍を見やすくします。拡大鏡、つまり虫眼鏡を代用して本や新聞を読む場合もありますね。

 「遠近両用メガネ」では1枚のレンズの上方が「遠方」用、つまり、通常の近視の人が矯正のために必要なレンズです。その人が遠方を見るために必要な、いわゆる「度数」になっているはずです。最近は「中近」と言って、室内、あるいはデスクの先のパソコンの画面くらいまでに焦点を合わせられるようにしたレンズもあります。これに対して、下方が「近傍」用です。ただし、近視と老視の程度によってこの部分がどのような形状になっているかは異なります。

 老視ですから当然近点が大きくなる、つまり、近傍が見にくくなるため、対象物を眼から離す必要があります。ただし、あまり離してしまっても焦点が合いません(近視ですから)。あくまでもメガネをかけた状態で、つまりレンズを通して近くを見るために、近視用(凹型)の「度数」を下げて、10m先は見にくいが、25cm先は見やすくなるという形状にします。近視の程度が低く、かつ、老視の程度が高いと、たぶん凸型になるでしょう。ただし、1枚の上下で度数あるいは形状を変えたレンズですから、単独の度数、形状のレンズに比べると非常に高価で、およそ2倍の価格です。

 私は年相応に老視ですが、裸眼では10cm先にしか焦点が合いません。それだけ眼球が長いと言うことでしょう。当然、これより近くなっても焦点はあいません。したがって、25cm先はぼけて見えるため、非常に弱い近視用レンズ、つまり中心部分のへこみが小さい凹レンズを使います。眼鏡屋さんには、「近視の度合いが非常に強いため、老視が近視を追い越すことはない(つまり、遠近両用レンズの下方が凸レンズになることはない)」と言われています。ちなみに、授業時にかけているメガネは、一側に上下2枚のレンズを入れてあり、上方が遠方用、下方が近傍用です。老視になるような年齢では近視はほとんど進行せず、老視だけが年齢に応じて進行していきます。このとき、老視用レンズだけを入れ替えればいいため、安上がりです(フレームはやや高価ですが)。