第28回 姿勢の調節、小脳と大脳基底核の機能

 今回取り上げた小脳と基底核の機能は、マクロには多くの知見が得られていますが、細胞や組織、あるいは個々の神経核のレベルでは他の器官ほどに十分な機能が解明されていません。したがって、障害を例にして機能を推測したり、ヒト以外の動物での実験から得られた結果から外挿するしかありません。したがって、非常に抽象的な説明に終始しました。わかりにくかったかもしれません。

 とはいっても、小脳はかなり研究が進んできています。ヒトはもちろん、実験動物においても運動失調を生じる例が多数あるため、近年注目されています。

 「随意運動を協調させる」ということの意味が実感できれば、小脳がそのための調整役として機能していることもイメージしやすいでしょう。熟練を要するをよく言われますが、授業中にも例を挙げたように、手指を使ったさまざまな作業はその典型です。見ているだけではすぐにはできず、自分で何度も同じことを繰り返すことによってはじめてスムーズに動かせるようになります。この過程で、大脳皮質から筋に伝えられる内容と実際の運動に関する情報をともに得て比較し、さらに、比較した結果を大脳皮質へフィードバックするのが小脳の機能です。

 構音、すなわち、下顎や舌、口蓋などの運動によって咽頭や口腔の形を変化させて言語音をつくりだすことも非常に高度な熟練を要します。ヒトは成長過程でこの高度なトレーニングを積んでいるために、自由自在に話すことができます。

 実験動物は小脳がなくても生きてはいけます。ヒトでは生存はできるかもしれませんが、生活はできないでしょう。

 大脳基底核は、解剖学的な定義と運動機能に関わっている神経核との間に食い違いがありますので、注意しましょう。プリントでも「大脳基底核とその周辺の神経核」という言い方をしているのはそのためです。

 神経核間の連絡、例えば、線条体から淡蒼球内節・黒質網様部へ抑制性に接続するなどは、授業で説明したとおり、基本的に明らかになっています。しかし、それでどのような機能が実現しているのかを具体的に説明することは難しいようです。そこで、特定の神経核あるいはニューロンが変性・脱落した場合にどのような症状を呈するのかを、疾患を例にして説明しました。YouTubeなどでは患者さんの症状を示す映像を見ることもできると思いますので、時間のあるとき探してみるとよいでしょう。

 来週は大脳新皮質、中枢の中の中枢の機能とそこからの情報がどのように骨格筋に伝えられるのかを考えます。さらに第10章、自律神経系の機能に入ります。前期に取り上げた内容をかなり重複しますので、余裕があれば簡単に見直しておきましょう。