2016年度 第22回 聴覚

 今回は前半で空気の振動である音、音波とはどのようなものであるかを簡単に説明しました。

 横波は水面の波ですからわかりやすいですが、縦波はわかりにくいですね。Wikipediaの英語版で”Longitudinal wave”を引くと縦波のアニメーションがあります。

 縦波といえど、グラフにするときにはサインカーブのように横波のように描きます。このグラフの縦方向は空気の分子の疎密の程度(言い換えると、空気の圧力)を表し、横方法は波の進行方向または時間を表します。縦方向を振幅といい、この大きさ、つまり空気分子の疎密の程度によって音の大きさが表されます。一方、横方向の周期の頻度=周波数、つまり空気の分子の疎密の幅によって音の高さが表されます。それぞれ、ベル(Bel、またはデシベル;dB)とヘルツ(Hz)という単位で表記します。

 音の大きさは、数デシベルから100デシベルくらいまではほぼ聞き分けることができます。音の高さは20Hz前後から1万数千Hzまで十分聞き取れます。おおよその目安として知っておくといいでしょう。ただし、聞き取れる音の高さの範囲、詰まる周波数は教科書的には20~20,000です。

 耳の構造については、今回は聴覚器としての生理機能を考える上でどうしても必要な部分に絞って説明しました。解剖学で学んだ内容を改めて見直しておくように。

 さて、音波が聴覚受容器である内耳の有毛細胞までどのように伝わっていくのか、改めて考えてみます。全体として重要なことは、空気の振動が、耳の構造を通過する中で、物体である鼓膜や耳小骨のほか、有毛細胞の感覚毛などの機械的振動や内耳の液体の振動に順に変換されて、最後にニューロンの電気的な興奮が発生するということです。

 空気の振動である音波は耳介で集められて外耳道へ入ります。ここでは、音源の発した周波数と音圧によって空気の分子が振動しています。音波が鼓膜に達すると、音圧の強さと周波数に応じて鼓膜を振動させます。つまり、空気の振動が固体の機械的振動に変換されます。さらに、鼓膜の振動は耳小骨に伝えられ、これら機械的振動を繰り返す中で増幅されます。この部分の説明を省略したのでややわかりにくいかもしれませんので、来週もう一度説明します。

 耳小骨のうち、アブミ骨は卵円窓と結合しており、アブミ骨の振動はそのまま卵円窓の振動を引き起こします。卵円窓は前庭階内の外リンパと接していますから、外リンパ、すなわち液体が振動します。液体は、振動するという減少については空気と同じであると考えて差し支えありませんので、外リンパの振動とは、つまりここでも縦波が生じます。空気よりも液体のほうが波のつくり出す圧力が大きいため、特に圧力波という言い方をすることがあります。

 外リンパの振動は、途中で前庭膜を振動させながら前庭階内を伝わっていくはずです。前庭膜は鼓膜と同じように、縦波の振動に呼応して前庭階内と蝸牛管内を往復するように振動します。当然、蝸牛管内の内リンパが振動します。この結果、前庭膜と反対側に当たる基底膜を上下させるように振動させます。基底膜が振動するとコルチ器も一緒になって動きます。

 コルチ器が上下に振動するときに、有毛細胞の感覚毛が蓋膜にあたります。外膜にあたった感覚毛が曲げられると、感覚毛の先端にあるカリウムチャネルが開放し、内リンパ内のカリウムイオンが細胞内へ流入します。この結果、有毛細胞に受容器電位が生じ、閾値を超えれば活動電位が生じます。

 驚くほどによくできたしくみです。

 有毛細胞が興奮すると、蝸牛神経とのあいだでシナプス伝達が生じて、蝸牛神経に神経インパルスが発生します。

 牛神経は延髄の蝸牛神経核に投射し、その後、左右に分かれた並行回路として左右の視床内側膝状体へ入ります。この後、左右それぞれの大脳皮質側頭葉にある一次聴覚野に興奮が伝えられて聴覚が発生します。

 来週は平衡感覚を説明した後、視覚に入ります。