授業の補足

冬休みのレポートについて

  課題の内容は今日説明したとおりです。

夏休みのレポートには、課題としてよんだもの以外にもいろいろ読んでみたいという感想がかなりありました。その後自分で読んでいるのであれば、そのうちから改めて読み直してレポートにすればよいでしょう。

 「科学道100冊」にはいろんなタイプ、ジャンルの内容が選べれています。レポートの課題としては当たり外れが大きいともいますので、実物を手に取ってよく考えたほうがよいでしょう。

 2限目の授業で余ったプリントはどうなったでしょうか? A組が持って行ってしまっているようですが、B組で欠席者がいるので渡しておいて上げて下さい。

コルチ器の外有毛細胞のはたらきについて

 聴覚における受容器細胞は蝸牛管のコルチ器にある有毛細胞で、ここには内有毛細胞と外有毛細胞の2種類があります。授業では受容器細胞としては内有毛細胞のほうが優位にはたらき、感覚神経のほとんどはこの内有毛細胞とシナプスをしていると説明しました。外有毛細胞については運動神経とシナプスをつくっている説明したのみでした。簡単ですが、補足をしておきます。

 有毛細胞はヒトあるいは哺乳類に限らず、内耳器官を持つすべての動物の感覚受容器細胞として機能していますが、ヒトでは聴覚受容器である蝸牛管だけではなく、平衡感覚受容器である前庭・耳石器並びに半規管に存在します。そして、それぞれの細胞の基底部に神経が伸びてきており、シナプスによって接続しています。

 第Ⅷ脳神経である内耳神経は感覚神経と運動神経の2つの神経成分を含んでいます。解剖学では内耳神経はすべて感覚神経であると学んだかもしれませんが、枝である蝸牛神経も前庭神経も、感覚神経と運動神経の両方を含でいます。(生理学プリント第4章を参照) 

 ここからは蝸牛管基底膜上に、コルチ器の構成細胞として存在する2種類の有毛細胞を考えます。内有毛細胞は約3,500個が1列に並び、外有毛細胞は約20,000個が3列(部分的には4列)に並んでいます。そして、内有毛細胞は、まさに聴覚の受容器細胞として機能しています。しかし、外有毛細胞は聴覚の受容器細胞としての役割は、内有毛細胞と比べて小さく、むしろ、コルチ器の振動によって自身の細胞の長さを変化させるという性質を持っています。もちろん、内有毛細胞と同様に膜電位は変化しますが、これが別の作用を引き起こしています。

 外有毛細胞が脱分極すると細胞の長さをわずかに短縮させ、このことが基底膜の振動を増幅する効果を生むようです。したがって、内有毛細胞の感覚毛に加わる機械的な刺激が増大し、内有毛細胞の受容器としての感度を高める作用を持っていると考えられています。

 さらに、外有毛細胞がシナプスをつくっている神経のほとんどは運動神経です。この運動神経は上オリーブ核(多くは対側)に起源を持つ神経線維で、この運動ニューロンと外有毛細胞との間のシナプスは抑制性シナプスです。したがって、運動神経の興奮は外有毛細胞に過分極を生じ、上で説明した細胞の長さを短縮させるはたらきが抑制されます。この結果、内有毛細胞の感度を低下させていると考えられています。

 残念ながら外有毛細胞自体の運動性と、運動神経からの刺激による外有毛細胞の機能の抑制はうまく結びつけられていないようで、運動神経の作用が聴覚全体にどのような影響を持っているのか、詳細は明らかにされていないようです。

 聴覚の機能にはまだまだ分からないことがたくさん残されています。例えば、今日の授業でも簡単に触れましたが、我々が聞いているヒトの声や楽器の音には多くの倍音が含まれています。つまり、聞こえている音の高さ(音程)の整数倍の周波数の音波がたくさん含まれています。しかし、実際に聞こえている音程は1つ(最も周波数の低い音)だけです。あるいは、大勢の声や多くの音が周りで鳴っているときでも、目の前ので話している人の小さな声を聞き取ることができます。このような現象を「カクテルパーティー現象(または効果)」といいますが、なぜこのような現象が生じるのかよく分かっていません。外有毛細胞のはたらきは、こんなところに関わっているかもしれません。

活動電位や興奮の伝導のアニメーション

 前回の授業ではナトリムカリウムポンプのアニメーションを紹介しました。活動電位や興奮の伝導も時間経過に沿って生じているますから、映像(アニメーション)をみることによって理解しやすくなると思います。
つくっているのはナトリウムカリウムポンプと同じ会社のようで、ナレーションは英語ですが見ているだけでもっっわかるのではないでしょうか。
 以下にありますので、参考までに。
    https://www.youtube.com/watch?v=iBDXOt_uHTQ

 また、生理学Ⅱでは心筋に生じる活動電位についても学んだでしょう。刺激伝導系についても以下にアニメーションがあるので、時間があれば一度見ておくとよいと思います。特に、心周期にともなう心房と心室の収縮、弛緩の具合と心臓内での血液の移動の様子がよく分かります。

    https://www.youtube.com/watch?v=v7Q9BrNfIpQ

    https://www.youtube.com/watch?v=RYZ4daFwMa8
です。

来週の予習範囲について

 先週も触れたので分かっていると思いますが、
第3章5節「ニューロンからの興奮の伝達」⑵ニューロンと筋細胞での興奮の伝達
は一端とばして第4章へ入ります。ここは、第5章の筋細胞の構造と機能を説明する際に改めて触れますので、今回の予習の範囲からは省きます。

 また、今日配布したプリント「中枢神経系と末梢神経系の概略」も来週の授業で簡単に説明しますので、予習しておくように。

宿題

 宿題について改めて掲載します。
 2019年『基礎生物』第1問B問4〜問6について、以下の用に答えなさい。
   問4:なぜブロッコリーの花芽を用いてDNA抽出実験を行ったのか、その理由を考えなさい.
   問5:各選択肢に対して、適当、不適当を判断して理由を答えなさい.
   問6:解答を導く過程をすべて説明しなさい.
 2019年『基礎生物』第2問A、Bは生理学2で既に学んだあるいは今後学ぶ内容であるから、各自で取り組みこと.

レポートの書式は以下の通りとする。
  A4版レポート用紙を使用し、各問ごとに説明を付すこと.必要に応じて図表を付してもよい.
 ・末尾に感想または意見を必ず付すこと.
 ・必ず手書きで、横書き(上下、左右に余白を取ること)、左留めとする.
 ・表紙をつけ、タイトル、クラス、学籍番号、氏名を明記すること.
 ・レポートとして適した体裁や文体、あるいはまとめ方をしているかどうかも評価の対象とする.
 ・参考にした文献等は末尾に明記すること.ただし、Webサイトを引用する場合は専門家が記載したことが確実なサイトの引用のみを認める.

 ブロッコリーの花芽からのDNAの抽出は以下のビデオを参考にするとわかりやすい。
   DNAの抽出実験(https://www.youtube.com/watch?v=t_XIh1JNxFg)

転写と翻訳のアニメーション

 明日の小テストの勉強は進んでいますか? しっかりと予習をして授業を受けていれば、復習はそれほど大変ではないと思います。とは言っても、みたこともない(もちろん、誰もみたことはありません)減少はイメージしにくいもの。
 以下のサイトにちょうどよいアニメーションがあります。参考になるでしょう。


 
DNA transcription and translation [HD animation](https://www.youtube.com/watch?v=2BwWavExcFI)
 
ナレーションは英語ですが、そのままの字幕が表示されています。みているだけでも十分理解できると思います。

『生理学のための化学』訂正

 「生理学のための化学』の次回の小テストの範囲は「第9章脂質の構造と特徴」ですが、一部に誤植がありますので訂正します。
読めばすぐに気がつくことですが、
p62左の11行目中程にある「(a)」を削除します。したがって、11行目は
「や二重結合の数の異なる多種類の脂肪酸が」
です。
 また、同ページの図の説明文には、(a)と(b)の区別がありますが、図中には該当する記号が付していません。上の図が(a)で、下の図が(b)です。上の図の中程に(b)と入っているのは誤植です。

 他に気がついたことがあればご連絡下さい。

フックとレーウェンフック

 「細胞」とは「cell」の訳語としてつくられた語です。そもそも「cell」とはキリスト教の修道院での修道士や修道女たちの個室、あるいは隠遁するための庵を表した語で、ラテン語で「小さな部屋」などを意味する”cella”に由来するそうです。中世には監獄の各房を表す語としても用いられたようですが、17世紀にはハチの巣の房室や植物の構造に対しても用いられていたようです。(参考:Online Etymology Dictionary"https://www.etymonline.com/search?q=cell")

 授業でも触れましたが、「cell」という語を現在の「細胞」に近い意味で使ったのは、イギリスのロバート・フック(Robert Hooke、1635〜1703)です。
フックは最初の顕微鏡を発明してさまざまなものを観察しているほか、バネの伸びに関する弾性の法則(フックの法則)を発見したことでも知られています。彼の顕微鏡を使った観察図を集めた「ミクログラフィア(Micrographia、顕微図譜)」という書物の中に、授業で紹介したコルクのスケッチがあります。ここに描かれた一つ一つの小さな箱のような部分に対してフックは「cell」という語を当てて報告しました。(MicrographiaはWebで閲覧することができます。ここ:http://www.gutenberg.org/files/15491/15491-h/15491-h.htmでひらいて、Schem11 にある図です)

 我々が製品として目にする「コルク」は、コルク樫の樹皮をはいで乾燥させたものです。したがって、フックが顕微鏡で観察した試料が同様のものであるとすると、彼の言う「cell」は、細胞(正確には原形質=細胞質+核)が抜け落ちて周囲の細胞壁だけが残ったもので、「細胞」ではありません。実は、フックは「ワインのビンの栓としてコルクが優れているのはなぜか?」と問われたために、コルク片を顕微鏡で観察したとのこと。そして、コルク片のcellに空気が閉じ込められたために、気密性と弾性が生じていることを見いだしました。生きた細胞ではありませんが、「cell」という言葉を提唱し、意味は変わってもその後も使い続けられているという点で、大きな意義があったと思います。(参考:山科正平 (2009). 細胞発見物語~その驚くべき構造の解明からiPS細胞まで, 講談社.)

 また、フックと同時代に単式顕微鏡を開発したオランダのレーウェンフック(Antonie van Leeuwenhoek、1632~1723)も紹介しました。彼はオランダ南部のデルフトという町で生まれ、おそらく生涯をこの町で過ごしています。彼が顕微鏡を観察している絵を紹介しましたが、どこかで見たことのある雰囲気だと感じた人はいますか? レーウェンフックと同じ年に、同じくデルフトで生まれたヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer、1632〜1675)の絵画(代表作はここにあります:https://www.wikiart.org/en/johannes-vermeer/all-works#!#filterName:all-paintings-chronologically,resultType:masonry)などを意識して描かれているような気がします。レーウェンフックは、フェルメールの友人だったらしく、先に亡くなったフェルメールの遺産管財人を務めています。フェルメール作品の中で、珍しく弾性を描いた『天文学者(The Astronomer)』や『地理学者(The Geographer)』はレーウェンフックがモデルだという説もあるとのことです。

『生理学のための化学』訂正

 『生理学のための化学』は二つの章を次回の小テストの範囲としました。「まじか!」という声も聞こえましたが、今週の授業と重複する部分も多く、復習を兼ねて取り組めます。ただし、濃度などは例題を設けて説明しましたので、改めて自分で取り組んでみること。
 

 『生理学のための化学』のうち、p24の囲み「有効数字」の2行目からの分に誤字がありましたので訂正します。
     自然科学では測定値や仮定値、あうりは平均値など多くの数値を扱い ます。
            自然科学では測定値や仮定値、あるいは平均値など多くの数値を扱い ます。

フィードバック機構について(補足)

 フィードバックの概念を抽象的に説明するのはかえって難しいですが、改めてまとめてみます。

 フィードバック機構(feedback system)はフィードバックループ(feedback loop)とも呼ばれることもあります。生理学的は現象として説明すると、「身体の状態をモニターし、その情報を基に評価し、身体の状態を変化させ、再度モニターする」というサイクルを繰り返す一連の現象です。モニターされる状態には、ホメオスタシスの例として上げた血圧や体温、血糖値、あるいは体液量や体液の組成など、さまざまが状態や現象を考えることができます。それらはいわば変数であり、調節されているために「ある範囲内」に保たれています。そして、これらの変数を変化させるものがすべて「刺激」です。刺激を受けてもなお、ある範囲で一定に保つしくみがホメオスタシスで、そのためにネガティブフィードバック機構がはたらいています。

 「ネガティブ」というのは、刺激によって生じた変化を「逆転させる」ことによって、変数をある範囲に保とうとする作用があるからで、典型例が授業で取り上げた血圧の調節です。調節機能が働くことによって、刺激によって生じた変化(血圧の上昇や低下)を逆転させる、あるいは変化を相殺する結果がもたらされます。繰り返しですが、生理学ではホメオスタシスを維持するために機能する多くの現象・作用を学びます。そのほとんどはネガティブフィードバック機構であると考えてよいでしょう。

 詳しく説明できませんでしたが、ポジティブフィードバック機構(positive feedback system)は、刺激によって生じた変化をさらに増強するしくみですから、ネガティブフィードバックとは反対の効果を生みます。授業では分娩時の子宮収縮を例に挙げましたが、まもなく学ぶ(すでに学んだ?)出血時に作用する血液凝固のしくみにもポジティブフィードバック機構がはたらいています。やや長くなりますが、予習?もかねて説明します。

 血液凝固反応は3段階に分けられますが、その第1段階は2つの機序からなっています。血管と血管周囲組織の障害により、第Ⅲ因子(組織因子、またはトロンボプラスチン)が血管外から血管内へ流入することによって生じる外因性の機序と、血管内皮細胞が障害を受けたことによる膠原線維の露出や血小板の活性化によって第Ⅶ因子(安定因子)が活性化することによって始まる内因性の機序です。いずれも第Ⅹ因子を活性化するところに収束します。活性化した第Ⅹ因子は、カルシウムイオン存在下で第Ⅴ因子(不安定因子)に結合してプロトロンビナーゼができます。プロトロンビナーゼは、活性型第Ⅴ因子と活性型第Ⅹ因子、カルシウムイオン、さらには血小板のリン脂質も含んだ巨大な酵素複合体です。

 異なった経路で始まった血液凝固反応も、プロトロンビナーゼの形成以降は共通した反応経路となり、ここからを第2段階で、プロトロンビナーゼが肝臓で生成される血漿タンパク質であるプロトロンビンの一部を切断します。生じたタンパク質がトロンビンです。

 トロンビンはカルシウム存在下でフィブリノゲンをフィブリンに変換する反応を触媒します。この段階が血液凝固反応の第3段階にあたり、生じたフィブリンは活性型第ⅩⅢ因子(フィブリン安定化因子)の作用によって安定したフィブリン線維を形成します。トロンビンは第ⅩⅢ因子活性化する作用もあります。この結果、血餅が生じます。

 ここまでは特にフィードバックはかかっておらず、カスケード反応として進行していきます。カスケード反応とは「数段階にわたる一連の反応が初発反応の開始によって連続的に順次増強される反応形式」[南山堂医学大辞典第20版]のことを言い、「逐次的反応」と訳されますが、血液凝固反応はその代表例です。

 さて、ポジティブフィードバック機構がかかっているのは、トロンビンを中心としたステップです。第2段階で生じたトロンビンは第1段階で第Ⅴ因子が活性化する過程を促進します。また、第Ⅹ因子が活性化されるためには、活性型第Ⅶ因子から連続的な反応が生じて第Ⅷ因子(抗血友病因子)が活性化される必要があります。トロンビンはこの第Ⅷ因子の活性化のステップも促進することが知られています。さらに、トロンビンはこれら以外にも第1段階のいくつかの反応を促進することが分かっています。この結果、トロンビンの産生量が増加すればするほど、さらにトロンビンを産生する反応が進行するというポジティブフィードバック機構がはたらきます。

 フィブリン線維が形成される過程で、周囲に存在するであろうトロンビンも一緒に血塊中に取り込まれます。この結果、トロンビンが消失していくため、血液凝固反応はどこかの段階で停止します。

第1回授業(補足)

 授業の途中で簡単なテストをしました。答え合わせはあえてしませんが、簡単に講評しておきます。

 単位について
   ・電流の単位は何か。また、その単位を表す記号を記しなさい。
   ・圧力の単位は何か。また、その単位を表す記号を記しなさい。
 『生理学のための化学』の「はじめに」で国際単位系について簡単に説明しました。ここで電流をはじめとした基本単位と、圧力をはじめ基本単位から求められる単位についてまとめています。各自で確認しておくこと。
 『生理学のための化学』の「はじめに」は、小テストの範囲ではありませんが必ず目を通しておくこと。「眼を通す」ということは、読んで既に知っている、理解していると分かればそのままでかまいませんが、知らないこと、理解できないことがある場合は必ず覚えるまたは理解することを意味しています。

 計算問題について
  •   ・attachment
  •   ・attachment(a=に変換せよ)
  ・183秒は何分か?(小数で答えよ)
 分数、文字式、さらに60進法で考える必要がある時間についての簡単な計算問題を考えました。これらは、その計算能力を身につけているということ自体が大切あるいは常識であるというにとどまらず、順序よく物事を考えていくための手段、手順のトレーニングであるという点でも重要です。難しくいえば思考における論理性を身につけるということですが、数学を学ぶ意義はここにあります。

 指数について
  ・“3×10-3”を小数で表しなさい。
 指数は桁の大きな下図を扱う上でよく用いられる表現です。これも実生活で必要となることはまずないでしょうが、物理化学現象を表す上では便利であり、必ずであうものです。一度はどこかで学んでいるはずですから、何らかの手段で必ず思い出しておきましょう。『生理学のための化学』p35でも簡単に解説しました

2月14日の追加プリント《教科書・参考書》

 最後の授業で追加で配布したプリントは、来年度(2019年度)用につくった『教科書・参考書』の一覧です。今年度の初めに配布した内容と一部を修正しています。特に、この2年ほどで一気に広がった電子教科書あるいは電子版が付属している教科書についてを追加しました。

 授業用プリントで引用した図の多くはトートラの二冊からとっている。『人体解剖生理学』は授業の内容とほぼ一致するレベルで、『人体の構造と機能第4版』(1304頁)の簡易版にあたる。もし自分で購入してみようと思うなら、後者がお勧め。やや古い版だが、今から読み返すに足る内容。原書の依り新しい版の翻訳が出版される可の能性もある。上記二冊の電子版はない。

 『人体の正常構造と機能』(879頁)はトートラと比べると、基礎的な内容の説明は省かれているが、分子、細胞レベルでは詳しく且つ平易に解説している。図もわかりやすい。紙媒体の書籍を購入すると電子版をダウンロードできる。ただし、ビューワーの使い勝手は非常に悪く、目次からめざすページに直接移動できる程度の機能しかない。

 上記の教科書が、題名の通り解剖学的内容と生理学的内容をともに含んでいるのに対して、『ガイトン生理学』(1057頁)と『標準生理学』(1140頁)は、純然たる生理学の教科書。ページ数からも分かるように、いずれもかなり大部で辞書的に利用する目的であればよいが、通読するのはたいへんだろう。

 『ガイトン生理学』も『人体の正常構造と機能』と同様に、書籍を購入するとダウンロードできる。ただし、これも電子教科書としての使い勝手は悪い。

 「その他」として紹介した、『グレイ解剖学』と『同アトラス』も、『ガイトン生理学』と同じ出版社で、電子版の扱いは同じ。ただし、これらは電子版のみの購入も可能であるため、使い方しだいでは有用であろう。

 『標準生理学』電子版は、医学書院の標準シリーズ基礎医学系教科書(全10冊)を一括して購入する形でしか手に入らない。これらは医学部の学生を主なターゲットにしているのか、6年間の期限付き。ただし、価格は紙媒体で購入する場合の約半額(といっても約10万円)。

 辞典類として紹介した3種はいずれも電子版が購入できるが、それぞれに価格や電子版の利用方法が異なる。医学書院・医学大辞典はWeb利用による3年または6年契約の使用。南山堂・医学大辞典はスマホやタブレット用にダウンロードして利用する。ステッドマンはPC用とスマホ・タブレット用がある。

  『人体の正常構造と機能』、『ガイトン生理学』、『標準生理学』ならびに医学書院・医学大辞典と南山堂・医学大辞典であれば、それぞれの電子版または電子書籍の実物を紹介することができるので、4月以降にいつでも職員室まで。


 そのほか、Kindleはもちろん、いくつかのビューワー用に多くの教科書が出版されている。多くは決して安い価格ではないから、購入する場合は内容や使い勝手をよく吟味することをお勧めする。

コルチ器の外有毛細胞のはたらきについて

 聴覚における受容器細胞は蝸牛管のコルチ器にある有毛細胞で、ここには内有毛細胞と外有毛細胞の2種類があります。授業では受容器細胞としては内有毛細胞のほうが優位にはたらき、感覚神経のほとんどはこの内有毛細胞とシナプスをしていると説明しました。外有毛細胞については運動神経とシナプスをつくっている説明したのみでした。質問もありましたので補足をしておきます。

 有毛細胞はヒトあるいは哺乳類に限らず、内耳器管を持つすべての動物の感覚受容器細胞として機能しているそうですが、授業でも説明したとおり、ヒトでは蝸牛管と、前庭・耳石器並びに半規管に存在します。そして、それぞれの細胞の基底部に神経が伸びてきており、シナプスによって接続しています。

 第Ⅷ脳神経である内耳神経は感覚神経と運動神経の2つの神経成分を含んでいます。解剖学では内耳神経はすべて感覚神経であると学んだかもしれませんが、枝である蝸牛神経も前庭神経も、感覚神経と運動神経の両方を含でいます。(生理学プリントp182を参照) 

 ここからは蝸牛管基底膜上に、コルチ器の構成細胞として存在する2種類の有毛細胞を考えます。内有毛脂肪はおよそ3,500個が1列に並び、外有毛細胞はおよそ20,000個が3列(部分的には4列)に並んでいます。そして、内有毛細胞は、まさに聴覚の受容器細胞として機能しています。しかし、外有毛細胞は聴覚の受容器細胞としての役割は、内有毛細胞と比べて小さく、むしろ、コルチ器の振動によって内有毛細胞同様に膜電位が変化することにともなって細胞の長さを変化させるという性質を持っています。

 外有毛細胞が脱分極すると細胞の長さをわずかに短縮させ、このことが基底膜の振動を増幅する効果を生むようです。したがって、内有毛細胞の感覚毛に加わる機械的な刺激が増大し、内有毛細胞の受容器としての感度を高める作用を持っていると考えられています。
  
 さらに、外有毛細胞はシナプスをつくっている神経のほとんどは運動神経です。この運動神経は上オリーブ核(多くは対側)に起源を持つ神経線維で、この運動ニューロンと外有毛細胞との間のシナプスは抑制性シナプスです。したがって、運動神経の興奮は外有毛細胞に過分極を生じ、上で説明した細胞の長さを短縮させるはたらきが抑制されます。この結果、内有毛細胞の感度を低下させていると考えられています。

 残念ながら外有毛細胞自体の運動性と、運動神経からの刺激による外有毛細胞の機能の抑制はうまく結びつけられていないようで、運動神経の作用が聴覚全体にどのような影響を持っているのか、詳細は明らかにされていないようです。

 聴覚の機能にはまだまだ分からないことがたくさん残されています。例えば、我々が聞いているヒトの声や楽器の音には多くの倍音が含まれています。つまり、聞こえている音の高さ(音程)の整数倍の周波数の音波がたくさん含まれているのですが、実際に聞こえている音程は1つだけです。あるいは、大勢の声や多くの音が周りで鳴っているときでも、目の前ので話している人の小さな声でも聞き取ることができます。このような現象を「カクテルパーティー現象」といいますが、なぜこのような現象が生じるのかよく分かっていません。外有毛細胞のはたらきは、こんなところに関わっているかもしれません。

宿題(レポート課題)について

 今日は欠席者もいましたので、要項を改めて掲載します。

 問題は以下の通りです。

 2015年『基礎生物』問題Bについて、
  問4:選択肢①~⑦について、適当か否かの判断を理由とともに示すこと.
  問5:この問題の正答は④であるが、他が適当ではない理由を説明すること.
  問6:解答を導く過程をできるだけ詳細に説明すること.
 2018年『生物』問題Bについて、
  問5:解答を導く過程をできるだけ詳細に説明すること.
  問4と問6は『生理学のための化学』「第9章核酸の構造と複製」ならびに、『補遺・遺伝子と遺伝子発現のしくみ』を理解すれば容易に解答できる.

 レポートの形式は
・A4版レポート用紙を使用し、各問ごとに説明を付すこと.必要に応じて図表を付してもよい.末尾に感想または意見を必ず付すこと.
・必ず手書きで、横書き(上下、左右に余白を取ること)、左留めとする.
・表紙をつけ、タイトル、クラス、学籍番号、氏名を明記すること.
・レポートとして適した体裁や文体、あるいはまとめ方をしているかどうかも評価の対象とする.
・参考にした文献等は末尾に明記すること.
です。

 締切は2週間後(6月21日)の授業開始時です。

第2章 学習内容の要点:訂正と注意

第2章の要点のまとめに中にいくつか訂正があります。

問題(51)
 「ヒトのゲノムDNAは約32億対の塩基で構成される。このDNA上の遺伝子は塩基配列という 形でタンパク質の( a )を保存している。ヒトゲノムに保存されている遺伝子数はいく らか。 」
に対して、解答では
a:アミノ酸配列、ヒトのゲノムには約2万個の遺伝子がある。
としています。

 遺伝子の定義をどうするかによって遺伝子数の見積は異なります。タンパク質のアミン酸配列をコードする遺伝子数としては約20,000個ですが、もう少し広くとらえると、先週の授業の最後に簡単に触れたように約40,000個と見積もれますです。この根拠については今週の授業で改めて説明します。

問題(60)
 「粗面小胞体上のリゾソームで産生されたタンパク質は、合成後直ちに粗面小胞体内部へ運ば れる。さらに( a )へ運ばれて加工され、輸送小胞によって細胞膜へと運ばれて膜タン パク質として機能する。 」
の冒頭部分は
「粗面小胞体上のリゾソームで」を
「粗面小胞体上のリボソームで」に訂正します。

『生理学のための化学』訂正

 すでに以下の点を訂正しました。
 『生理学のための化学』のうちの、次回のテスト範囲に一部訂正があります。:22ページ右段、下から5行目から6行目 「水素イオンと水酸化イオンが結合して」➡「水素イオンと水酸化物イオンが結合して」

 さらに、もう1カ所の訂正があります。
 21ページ右下の囲みの14行目、「1モルは 22.95グラム」を「1モルは 22.99グラム」に訂正して下さい。前半からつなげると、
「ナトリ ウム原子は原子量22.99ですから、ナトリ ウム原子は原子量22.99ですから、1モルは 22.99グラムです。 」

 したがって、塩化ナトリウムの分子量は58.44です。

プリントp26下のグラフの縦軸の単位表記について

 先週の授業で、プリント26ページのグラフについて説明した際、縦軸の単位表記についての説明を割愛しましたので、簡単に補足しておきます。

 縦軸には
mEq/liter
と表記されています。
“/“
の前の、mEqは「ミリ当量(mili equivalent)」の意で、”メック”と読みます。水に溶解しているイオン、つまり電解質の量を表す単位として医療の分野で慣例として用いられています。化学分野では全く使いません。

 脱水などの際の点滴が典型的ですが、体液の量や組成に異常が生じた場合や栄養を補給する場合に、非経口的(つまり経静脈的)に水や電解質、栄養素などを投与します。このような治療法を輸液または輸液療法といい、投与される液体が輸液剤です。

 mEq/literは、このような液体の組成を考えるときに用いられる単位で、単に濃度をモル濃度や重量濃度であらわすのではなく、それぞれのイオンの価数を考慮して表しています。一般には溶液1ℓ中の溶質の当量としてあらわし、
物質の濃度(mol/ℓ)×イオンの価数=Eq/ℓ
と計算します。濃度はモル濃度であらわし、イオンは完全に電離したものとして考えます。また、生体でのイオン濃度はmmol/ℓオーダーですから、(mmol/ℓ)×イオンの価数=mEq/ℓで、”メック・パー・リッター”です。
計算のしかたは、例えば、
ナトリウムイオン・Na+は1価のイオンですから、2 mmolのNa+は 2mmol/ℓ × 1価 = 2mEq/ℓ
カルシウムイオン・Ca2+は2価のイオンですから、2 mmolのCa2+は 2mmol/ℓ × 2価 = 4mEq/ℓ
陰イオンでも同様に、
塩化物イオン・Clは1価のイオンですから、1mmolのClは 1mmol/ℓ× 1価 = 1mEq/ℓ
です。

 陽イオンと陰イオンがともに存在する場合でも考え方は同じです。例えば、輸液のベースとして最もよく利用されるであろう生理食塩水の当量濃度をを考えておきましょう。生理食塩水は一般に0.9%食塩水、つまり、0.9%NaCl水溶液です。モル濃度を計算すると、
NaClの分子量は58.44(Na: 22.99, Cl: 35.45)ですから、
0.9%
= 9g/ℓ = 154mmol/ℓ
です。

 NaClは水に溶解してNa+とClに完全に電離しています。したがって、
Na
+:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ、Cl:154mmol/ℓ × 1価 = 154mEq/ℓ
生理食塩水全体では、
154mEq/
ℓ × 2 = 308mEq/ℓ
のイオンが存在します。

 逆に当量濃度が示されているときにそのイオンの実際の濃度を考えてみましょう。プリントp26 のグラフで見たように、血漿中のカルシウムイオンのミリ当量濃度は5mEq/ℓです。カルシウムイオンは2価の陽イオンですから、カルシウムイオンの濃度は
5mEq/ℓ ÷ 2価 = 2.5mmol/ℓ
と計算できます。
 
 また、細胞内液のリン酸イオンのミリ当量濃度は100mEq/ℓです。リン酸イオンは2価の陰イオンですから、実際に存在するリン酸イオンの濃度は

100mEq/ℓ ÷ 2価 = 50mmol/ℓ
です。
(グラフの右端のタンパク質陰イオンのミリ当量濃度が50mEq/ℓですが、タンパク質は1分子当たり多くの電荷をもっているため、実際の濃度はかなり小さく、細胞内液中に存在する陰イオンで最も濃度が高いのはリン酸イオンです。)

 ナトリウムイオンやカリウムイオン、塩化物イオンなど1価のイオンはグラフ中の数字がそのままそれぞれのイオンの濃度をあらわしています。

 医療や医学の分野では国際単位系では使われない単位が慣例としていくつか使われ続けています。血圧をあらわすときの”mmHg”や血糖値を表すときの”mg/㎗”などです。それぞれの単位の意味をよく理解した上で使うようにしましょう。

第7回小テストの解答の訂正

年末に実施した小テストは模範解答を配布しましたが、一部に誤りがありましたので訂正します。

音の大きさは空気の振動の圧力で決まり、音圧の大きさを示す単位を(② デシベル )という。また音の高さは振動の周波数で決まり、1秒間に振動する回数を(③ ヘルツ )という単位で表す。

練習問題の訂正

先週配布してもらった《生理学の要点と確認》第5章「筋の構造と機能」に一部誤りがありましたので訂正します。

(34)筋形質膜に活動電位が発生し、筋線維が収縮するまでを興奮収縮連関といい、以下のような連続した過程である。
(a) 運動ニューロンの軸索終末から放出された伝達物質が運動終板にある受容体と結合すると筋形質膜に筋活動電位が生じる。
(b) 筋活動電位がT細管に沿って伝導し、筋小胞体にある( a )イオン放出チャネルを開口すると、筋形質内に( a )イオンが放出され広がっていく。
(c) ( a )イオンが筋原繊維の細いフィラメント上にあるトロポニンと結合すると、フィラメントの構造が変化してアクチンタンパク質上にある( b )タンパク質との結合部位を露出させる。
(d) 筋の収縮がおこる。この際、( b )頭部が( c )の分解によって生じたエネルギーを使って細いフィラメントを引き寄せる。
(e) 筋小胞体の( a )イオン放出チャネルが閉じると同時に、筋小胞体の( d )のはたらきによって( a )イオンが筋小胞体内へ取り込まれ、筋形質内の( a )イオンの濃度が弛緩時の濃度もどる。
(f) アクチンタンパク質と( b )タンパク質がかい離し、筋が弛緩する.

解答は 
a:カルシウム(イオン)、b:ミオシン、c:ATP、d:カルシウムポンプ
です。

また、(53)の解答は
a:S(型)、b:FF(型)
です。
大変失礼いたしました。

膜電位と平衡電位(発展版)

 見かけ上イオンの移動がない状態のイオン濃度の差から計算した電位を「平衡電位、equilibrium potential」といいましたが、実際のイオンの濃度で計算します。

 それぞれのイオンの移動はいろんな影響を受けて変化しますが、ある特定のイオンの濃度差によってつくられる平衡電位は、他のイオンの濃度などの影響を受けないとして考えます。この仮定に基づいて考えたのが、ドイツの化学者であるネルンストで
     平衡電位 E(ion)=RT/zF × ln([ion]out/[ion]in)
という式で求めます。

 ここで、R=気体定数(8.31J/mol/K)、T=絶対温度(℃+273)、z=イオンの荷数、F=ファラデー定数(1molあたりの電荷、96500クーロン/mol)、lnは自然対数、[ion]out=細胞外のイオン濃度、[ion]in=細胞内のイオン濃度です。

 哺乳類の細胞でのカリウムイオンやナトリウムイオンの平衡電位を考えると、イオンの荷数(1個のイオンの正あるいは負の電荷の数)は1(z=1)、絶対温度は310ケルビン(T = 37+273)ですから、計算できるところを計算してしまうと、
     E(ion)=26.7 × ln([ion]out/[ion]in)
となります。

 ニューロンの平衡電位の計算によく使われる値が

     細胞外 K
+; 5.5mM, Na+; 135mM, Cl; 9mM
     細胞内 K
+; 150mM, Na+; 15mM, Cl; 125mM

です。この濃度を入れて計算すると、

     カリウムイオンの平衡電位  EK = 26.7 ln(5.5/150) = −88.27mV
     ナトリウムイオンの平衡電位  ENa = 26.7 ln(135/15) = +58.67mV

 特定のイオンにだけ注目して考えると、見かけ上イオンの移動がなくなっている状態でこのような電位差があるということです。

 さて、授業で「静止膜電位はカリウムイオンの平衡電位とほぼ等しい」といいました。しかし、上で計算したようにナトリウムイオンの平衡電位は大きく正になっています。単純に足し算すると、マイナスの程度がだいぶ小さくなってしまいます。これはどう考えればいいのでしょうか?
 繰り返しになりますが、平衡電位は見かけ上イオンの移動が停止した状態の電位差です。言い換えると、このような電位差(膜電位)になるまでイオンが移動するとも言えます。カリウムイオンは膜電位が−88mVになるまで(細胞内から細胞外へ)、ナトリウムイオンは+59mVになるまで(細胞外から細胞内へ)移動し続けようとします。ところがそれぞれのイオンが自由に細胞膜を通れるわけではないため、単純に足し算したようにはいきません。

 来週の授業で取り上げますが、ニューロンに活動電位が発生するとき、脱分極が閾値を超えると電位依存性ナトリウムチャネルが開きます。ナトリウムイオンの細胞膜内外の移動は自由になり、細胞外から細胞内へ大量に流入します。その結果、膜電位は+59mVにむかって上昇していきます。これがオーバーシュートの正体です。その後ナトリウムチャネルが閉じ、代わって電位依存性カリウムチャネルが開くと、今度はカリウムが細胞外へ出て行き、膜電位が-88mVに向かって下がっていきます。したがって再分極相に続いて一過的な過分極が生じてしまうのです。ネルンストの式の結果はこういう特殊な状態でしか実現しません。

 もう一度平衡電位に話を戻しますが、ネルンストの式で求めたイオンごとの平衡電位をどう計算しても、実際の膜電位は出てきません。イオンの種類によって細胞膜の透過性が異なっているからです(つまり、それぞれのイオンを透過させるイオンチャネルの数や性質が異なっている)。このことを考慮して、できるだけ実際に近い状態で計算しようとしたのがゴールドマンという人で

     膜電位Em =RT/F ln(PK[K
+]out + PNa[Na+]out + PCl[Cl-]in)/ (PK[K+]in + PNa[Na+]in + PCl[Cl-]out)

という計算方法を考案しました。

 ここでは細胞膜を透過するイオンとして、最も主要なK
+、Na+、Cl-だけを考えています。また、この式の中のPK、PNa、PCl、はそれぞれのイオンの膜の透過性を表す係数(透過係数)で、PK : PNa : PCl = 1 : 0.04 : 0.45であることがわかっています(膜電位を計算するだけであれば実測値は必要なく、比がわかっていればよい)。また、[K+]out、[Na+]out、[Cl-]inなどはそれぞれのイオンの細胞内(in)、細胞外(out)の濃度のことで、既知の値です。陽イオンと陰イオンでは
分子、分母が逆になっています。

 計算すると、

     膜電位Em = -70.15mV

と、ほぼ実測値に等しくなります。

 参考になったでしょうか? 本当は、ネルンストの式やゴールドマンの式がどうして導かれたかとか、もっと難しい理論が
あるのですが、正直言って不勉強で理解できていません。悪しから ず。m(_ _"m)

静止膜電位について

 静止膜電位の説明は毎年いろいろ考えるのですが、なかなかいい説明ができないままです。もともと電気生理学的なことが苦手だということもありますが。少し授業の時とは少し違った説明を考えて見ます。

 まず確認ですが、細胞内外には様々なイオンの分布に差があります。そして、細胞膜を構成する脂質二重層はイオンを通さないため、いったんできた濃度差は簡単には解消されません。例えば、細胞外には100個の陽イオンがあり、細胞内には60個の陽イオンがある場合、その差である40個分の正の電荷の差が細胞膜を挟んで存在しています。実際には陰イオンもありますから、陽イオンと陰イオンの電荷の合計の差をもとに計算されたのが電位差(単位はV、ボルト)で、膜電位といいます。

 膜電位はあくまでも細胞外を基準にして、つまり細胞外を0Vとして、細胞内がどれくらい正か負か、と考えます。言い換えると、正と負はあくまでも相対的なもので、どちらがより正の電荷(つまり陽イオン)が多いのか、あるいはより負の電荷(つまり陰イオン)が多いのかと考えればいいわけです。

 ではどうしてイオンの分布に差ができるのでしょうか? それを担っているのがイオンポンプとイオンチャネルで、特に大切なのが、これらポンプやチャネルのはたらきによって生じるカリウムイオンとナトリウムイオン(この他に塩化物イオンを一緒に考えることもよくあります)の濃度差です。
 
 基本的に細胞内外のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度差はナトリウム・カリウムポンプによって維持されています。細胞内にあるナトリウムイオンは細胞外へ移動し、細胞外にあるカリウムイオンは細胞内へ取り込まれます。その結果、細胞外にはナトリウムイオンが多く、細胞内にはカリウムイオンが多いという状態が作り出されています。しかも、ナトリウム・カリウムポンプは3個のナトリウムイオンと2個のカリウムイオンをセットにして輸送しますので、このポンプのはたらきだけを考えれば細胞外の陽イオンが多くなってしまいます。

 次に、いったんイオンポンプによって濃度差がつくられると、その濃度差にしたがってイオンがチャネルを通って移動します。細胞膜にあるカリウムチャネルにはいろんな種類がありますが、その中のカリウム漏洩チャネル(K
+ leakage channel、漏出チャネルともいいます)は常時開口しています。したがって、細胞内のカリウムイオンは濃度勾配に従って細胞外へ移動します。ところが、ある程度の量が流出すると、今度は細胞内が負になってしまうため、陽イオン(正の電荷を持っている)であるカリウムイオンを引きつけます。その結果、細胞内のカリウムイオンは細胞外へは移動しなくなります。こうして濃度勾配と電気的勾配(あわせて電気化学的勾配)のつり合った状態=平衡状態になります。(ただし、移動が完全に止まったのではなく、流出量と流入量が等しくなり、見かけ上移動が止まっているだけです)。このように見かけ上イオンの移動がない状態のイオン濃度の差(電荷の差)から計算した電位が「平衡電位」です。

 一方、ナトリウムイオンのチャネルにもいろんな種類があり、細胞膜にはナトリウム漏洩チャネルがあります。しかし、カリウム漏洩チャネルに比べて圧倒的に数が少ないようで、細胞外から細胞内へ移動するナトリウムイオンは細胞外へ移動するカリウムイオンに対して極めて少量です。このように、すべてのイオンポンプとイオンチャネルのはたらきによって作り出された細胞膜内外のイオンの濃度差から計算されたのが静止(膜)電位です。

電解質の濃度:mEq/Lについて

電解質の濃度について説明しませんでした。プリント19ページのグラフの縦軸の意味を簡単に説明します。

「mEq/liter、メック・パー・リットル」という単位はたぶん始めてみたのではないでしょうか? この単位で示される稜は電解質濃度といい、溶液に含まれるイオンの濃度を表します。「原子」の量とその「荷電」の量を合わせて考え、医学・生理学分野でよく用いられます。体液中で、そのイオンがどのくらいの電荷を運ぶことができるのか、を比較できるようにするために汎用されています。

この単位である「Eq」はequivalentの略で「当量」と訳されます。この場合であれば「1リットル当たりの量」いうほどの意味ですが、1リットル中にあるそのイオンの持っている荷電量を示します。例えば、ナトリウムイオンは1価の陽イオンですから、ナトリウムイオンが1モル/リットルの濃度であれば1当量/リットル=1 Eq/L、カルシウムイオンは2価の陽イオンであるため、カルシウムイオンが1モル/リットルであれば2当量/リットル=2 Eq/Lと考えます。mEqの「m」は「ミリ」つまり、1/1,000の意です。

したがって、グラフ中で血漿中のナトリウムイオンの濃度は142mEq/Lと示されていますが、これは142mmol/Lと同義です。また、血漿中のカルシウムイオン濃度が5mEq/Lということは実際のカルシウムイオン濃度は2.5 mmol/Lです。リン酸化物イオン(HPO42-)の細胞内濃度は100mEq/Lですから、実際の濃度は50mEq/Lです。

小テスト第14回の解答訂正

本日実施した第14回小テストの問題番号に一部誤りがありました.問題で⑭のあとにかなりの食い違いがあり、14番以降17番までの通し番号に訂正します.従って、合計で21点満点です.

また、配布した解答の一部に誤りがありました.先生から説明があったと思いますが、

副交感神経が交感神経に対してゆういに活動すると消化器系の器官の活動は全般に( ⑯-2 )する.の空欄は( ⑰ )で、
「更新、または増加」
です.

では、前期試験をがんばってください、Good Luck!!

参考文献の一部訂正

このサイトを見てくださった学生から早速返事をいただきました.ありがとうございます.

ご指摘の通り、出版社のHPの変更でリンク先がなくなっていた文献がありました.訂正しました.
また、プリントに掲載した、あるいはこのHPの参考し一覧に掲載した書籍のうち重要ないくつかで新版が出版されていますので、訂正して補足します.

もしなにか教科書を買い足したいと思う場合には、古くともこの3年以内に出版された本を選んでください.基本的な内容がまちがっていることはありませんが、科学は日進月歩、日々内容が更新されるとともに、「本」としてみた場合にも新しい方がより見やすく、読みやすく工夫されています.

標準生理学:プリントでは第7版を紹介しましたが、HPには旧版にリンクしたままでした.たぶん本屋さんでは旧版はもう手に入らないと思いますが、もし買うなら新版を買ってください.

生理学テキスト(大地陸夫著)と人体の構造と機能(トートラ著)は、いずれも今年に入ってから新版が出ました.本屋さんにはこまめに通っているつもりでしたが気がつきませんでした.申しわけありません.値段は旧版と同じですが、いずれもややページ数が増え、たぶん図表なども変更されていると思います.早速学校でも買ってもらえるように御願いをしてみます.HPも更新しましたので入ってみてください.

細胞の分子生物学が昨年末に新版の日本語訳が出ました.すでに授業のプリントにも図表を使っています.出版社のHPだけを観てもわかりにくいですが、大学で生物系学び、研究する者にとってはバイブルの様な一冊です.

ナトリウム/カリウムポンプのアニメーション

以前の授業で使ったナトリウム/カリウムポンプのアニメーションですが、サイトをおもいだしました.
ここhttp://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0090c/contents/b1102f.html)を見てください.

これは、独立行政法人科学技術振興機構(文部科学省の外郭団体?)がつくっている「
理科ねっとわーく<一般公開版>(http://rikanet2.jst.go.jp/)」という理科教育・授業用につくられたデジタル素材のサイトの「神経とホルモン〜細胞間の情報伝達」というコンテンツ(http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0090c/start.html)に入っています高校生向けにつくられていますが、実写映像やアニメーションなどで構成されていて、けっこう参考になると思います.ビデオ画像などダウンロードできる映像は授業でも使っていく予定ですが、アニメーション画像はFlashで作ってあるためWeb接続状態でないとお見せできません.ぜひ一度ごらん下さい.

第3回小テスト

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ナトリウムポンプのアニメーション

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第2回小テスト

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はしかは大丈夫?

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細胞培養に関する質問がありました

授業でいくつか培養細胞の写真を見ました.その中で特にHeLa細胞について説明しましたが、関連していくつか質問がありましたのでお答えします.

Q. HeLa細胞がシャーレの中で何百万個も集まったら肉眼で見えるか?
A. 培養細胞はどんなにたくさん集まっても組織のような形状を呈することはないので(例外はありますが)、肉眼的に特別な形として見えることはありません.ただ、シャーレ一面に細胞がびっしり詰まっていれば、何もない状態のサーレに比べて、光の反射具合などが異なるので「何かある」ということはわかります.

Q. 細胞培養はどのようにするのか? 生きている人でもできるか?
A.  一言では説明できませんが、栄養分が十分に含まれた細胞外液に相当する組成の培養液の中につけておきます.これを摂氏37度に保たれた容器(インキュベーターといいます)内に置きます.細胞外液の性質として特に重要なのが、水素イオン濃度(pH)です.一般的な培養液は「炭酸—重炭酸緩衝系」を利用し、容器内に一定濃度(通常5%)の二酸化炭素を充満させて培養液内のpHを安定化しています.また、2番目の質問は「生きているヒトから取った細胞も培養できるか」という意味と解しますが、たぶん普通は生きたヒトから(手術などで)摘出した(病気の)組織をばらして細胞を採取していると思います.

Q. 「1951年に始めて培養された」ということだが、その時の最初の細胞はまだ生きているか?
A. 細胞培養には大きく2種類あり、「初代培養」と「株化培養」といいます.前者は採取した細胞をその細胞の本来の寿命の限り培養するもので、通常は数回の細胞分裂を経るだけで終わってしまいます(細胞の種類によって期間は異なります).これに対して後者の培養に用いられる細胞は「不死化細胞」ともいい、初代培養していた細胞のうちから何らかの理由によって永久に細胞分裂を続けることができるようになった細胞です.その起源はおそらくただ1個の細胞だと思います.質問に答えるなら、この1個が等価な2つの娘細胞に分裂するところから始まり、さらに分裂を続けていった結果なので、最初の細胞が分裂したところでその細胞が無くなったと考えれば、最初の細胞はありません.また、分裂によって常に等価な細胞がつくり続けられていると考えれば、今も昔のままの細胞が生きています.

小テストの採点をしました.

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