授業の記録

第32回 中枢神経系の高次機能

 最後の授業では高次機能として、睡眠と覚醒、言語、そして記憶と学習に関する機能を取り上げました。時間の都合で一部の説明を割愛しましたが、要点だけをまとめておきます。

 睡眠については、どのように睡眠に導入さて、その状態が維持されているのか、あるいは、レム睡眠とノンレム睡眠がどのように切り替えられてるのかなど、まだ十分にコンセンサスを得られる経過は出ていないようです。単行本として詳細を解説したものはありますが、多くの研究者がどこまでを受け入れているのは不明なところもあります。

 しかし、睡眠がどのような状態であるのかはかなり解明されてきています。今回はその一端を紹介しました。ノンレム睡眠は脳波の状態によって特徴付けられています。また、レム睡眠中に生じる現象はノンレム睡眠と比較するとよくわかると思います。

 覚醒状態を生じるまたは維持するための神経回路についても詳細がわかりつつあるようです。脳幹とそこから大脳皮質、特に新皮質への働きかけが重要であるところがポイントだと思います。

 言語機能はヒトに特徴的な機能であり、文化の源でもあります。概略的な説明しかできませんでしたが、二つの言語中枢の機能の違いをよく把握しておきましょう。また、多くのヒトでは左半球優位であることも忘れてはいけません。

 最後に記憶と学習について取り上げました。これらの機能あるいはメカニズムについての研究は、近年飛躍的に進んでいます。正直言ってとても追いつけませんが、海馬の機能が注目されていることに変わりはなく、また、シナプスの可塑性が鍵を握っていることは間違いないでしょう。授業では興奮の伝達機能が増強される現象、つまりLTPに注目して記憶との関わりを説明しました。特に、伝達物質受容体の数が増加することによって記憶が保持される点に触れました。既に合成された受容体タンパク質が細胞膜に運ばれて、まく受容体の数が増加することによって短期記憶が生じ、遺伝子発現のレベルが上昇して、恒常的に受容体数が増加すると長期記憶を生じます。

 逆に、長期にわたってシナプス伝達が抑制される長期抑圧という現象も知られており、小脳の学習機能に関わっているとして研究が進められています。小脳の機能として説明したように、トレーニングをつんて熟練した運動技能を身につけるためには、間違った動きを無くしていく必要があります。このために、あるシナプスの興奮伝達の効率を低下させているようです。

 さて、生理学は人体の正常な機能を研究し学ぶ学問です。それを通じて、ヒトの健康がいかにして維持されているのかを理解できるようにしたつもりですが、どうでしたか? 合わせて、授業の内容のみならず、小テストや期末試験、あるいはレポート課題などを通じて、物事を理解する、下世話にいえば何かを勉強するということはどういうことで、どうすればよいのかがわかるようなすすめてたつもりです。

来年度以降は病理学をはじめ、疾患や臨床について学んでいくわけですが、正常機能からの逸脱であるとして考えてるとわかりやすくなることがあるはずです。

 来年度も木曜日に1年生の授業を受け持ちます。毎回お昼休みが終わる頃までは職員室にいると思いますので、質問があればいつでもどうぞ。このWebサイトは引き続き掲載し、メールアドレスにも変更はありません。

第31回 大脳新皮質と大脳辺縁系の構造と機能

 試験後に2回授業ができますので、最終章『中枢神経系の統合機能』を一通り取り上げることができます。

 前半は大脳の構造と機能について、新皮質と辺縁系に分けて考えました。これまで取り上げてきたことや解剖学で学んだ内容とかなり重複していると思いますが、よくい確認になるでしょう。

 新皮質が回と溝によって入り組んだ構造になっているのは、頭蓋によって閉ざされたスペースの中で細胞が増殖して大きな体積(あるいは表面積)を獲得した結果です。したがって、見た目以上に、大量のニューロンが存在し、そのおかげで高度な機能を獲得しました。

 その代表が前頭連合野における知性や理性でしょう。授業では最新のデータを紹介するというよりも、古典的な実験を紹介したにとどまりました。しかし、他の動物との比較から、人の脳がいかに優れているのかがわかったのではないでしょうか。なによりも、今こうしてインターネットに接続した機器を使って文章を読んでいることが、その証拠です。

 辺縁系は構成がわかりにくいため説明もしづらいですが、情動と記憶という、生物にとっても基本的な機能を担っています。来週取り上げますが、記憶といっても出来事記憶ですから、ややプリミティブで、その意味では情動と同じ領野が担っているということは理にかなっていると思います。

 扁桃体は、試験前の授業で取り上げた自律神経系への作用が重要ですが、情動の評価を担っている部位です。また、合わせて報酬系についても触れました。依存症の一つの根拠ともなるしくみですので、時間があれば調べてみるとよいでしょう。

 最後に取り上げた大脳の電気活動、脳波については来週改めて触れますので、各波形の特徴を頭に入れておきましょう。

第30回 自律神経系の伝達物質と受容体、中枢の機能

 試験前最後の授業で、やや駆け足になったところもありました。重要なポイントは授業中にもいくつか触れましたが、改めて指摘しながら、まとめてみます。

 交感神経系と副交感神経系ではたらく伝達物質は2種類しかありません。このうち、受容体、特に効果器あるいは標的細胞がもつ受容体は、いずれも代謝調節型です。ムスカリン性アセチルコリン受容体は2種類が使い分けられています。アドレナリン受容体は、授業で説明した4種類がよく知られ、分布や作用がそれぞれ異なります。

 アドレナリン受容体の分布と作用について、やや詳しく説明しました。簡単に繰り返すと、交感神経活動が増加し、その影響が全身に及んでいるとき、
 α1受容体とβ1受容体を発現する各器官、組織の働きは亢進しています。α2受容体とβ2受容体を発現する各筋、組織の働きは低下します。
 例えば、心臓(β1)は心拍数や心収縮力が増大し、皮膚血管(α1)は収縮します。この結果、血圧が上昇し、血液循環が進みます。瞳孔散大筋(α1)も収縮します。一方で骨格筋や心臓の血管(β2)は弛緩して血流が増大します。

 同時に、消化器系の機能は低下しており、消化管壁の平滑筋の収縮(β2)は低下するとともに括約筋(α1)は収縮します。膵臓外分泌腺(α2)からの消化液の分泌や膵島ベータ細胞(α2)からのインスリン分泌も抑制されます。
 泌尿器系では、膀胱管壁(β2)は弛緩する一方でない尿道括約筋(α1)は収縮して蓄尿が促進あるいは排尿が抑制されます。腎臓傍糸球体細胞(β1)からのレニン分泌は増加し、尿産生は低下します。

 視床下部の作用として体温調節に触れました。体温を上昇させる場合には交感神経系が活発になり、その作用によって、皮膚血管の収縮(α1)、褐色脂肪組織(β3)での脂肪分解が生じます。さらに、副腎髄質ホルモンの分泌も促進されます。副腎髄質ホルモンの作用は交感神経系の作用とほぼ一致します。同じ物質の作用ですから当然ですが、副腎髄質(ニコチン性アセチルコリン受容体)も交感神経節前ニューロンの直接の作用を受けています。

 いろんな角度から考えることができますので、機会を捉えて見直してみるとよいでしょう。

 自律神経系の中枢のはたらきは、脳幹、視床下部、そして大脳辺縁系の3つに分けて考えました。

 時間の都合もあり、脳幹についてはかなり簡単な説明にしましたが、生理学4では泌尿器系の機能が取り上げられているはずですから、蓄尿や排尿に関する交感神経、副交感神経の作用はよく見直しておきましょう。

 排尿反射としての中枢は腰仙髄ですが、ここの作用を上位から調節しているのが橋にある中枢です。大脳皮質からの意思が伝えられてことによって橋の排尿中枢が興奮すると、その情報が脊髄を下行して、骨盤神経(副交感神経)を活性化して膀胱壁が収縮するとともに、下腹神経(交感神経)の活動がよわまって内尿道括約筋が弛緩します。もちろん、外尿道括約筋が弛緩する必要がありますから、随意的に外尿道括約筋を弛緩させます。この結果、排尿が生じます。

 対光反射は、視覚機能と関わっていますので、視細胞・視神経の機能や瞳孔括約筋・瞳孔散大筋のはたらきとともに、よく見直しておきましょう。

 視蓋前野は、視運動性反応でも視神経の入力部として触れました。この反射は、眼球を運動させるという反射ですが、受容器と求心路は対光反射と共通しています。混乱しないようにしましょう。

 視床下部は自律神経系の最高中枢として機能し、今日取り上げた体温調節や摂食・血糖調節、飲水や概日リズムの調節に関する機能は特に有名です。

 飲水中枢としての視床下部の機能が発揮されるためには、体液、特に血液量の減少や血圧の低下、血液浸透圧の上昇に関する情報が伝えられる必要があります。血液量の減少は心房伸展受容器で、血圧の低下は動脈の圧受容器で、浸透圧の上昇は視床下部の浸透圧受容器で検知されています。また、血圧低下によって腎臓糸球体輸入細動脈の血圧が低下するため、これが刺激となって傍糸球体細胞からレニンが分泌されてレニン・アンジオテンシン系が活性化するとアンジオテンシンⅡつくられて視床下部を刺激します。これらの作用の結果、飲水中枢が渇き感覚を生じさせ、飲水行動を取らせます。プリントでは「脱水」としましたが、調子が悪くなるほどの状態をさすわけではなく、日常の中での飲水欲求も、体液量や浸透圧のわずかな変化によって生じています。

 概日リズムの中枢としての機能が視床下部にあることは古くから知られています。これは視神経の一部が視床下部、特に視交叉上核に入力していることに依っています。

 情動に関する機能はわかりにくいところも多かったかもしれません。事実、ヒトにおける研究が不十分なようで、動物実験でははっきりしないことも多いのでしょう。ただ、大脳辺縁系と視床下部とのつながりにおいて、大脳辺縁系の一部である扁桃体が大きな役割を演じていることは間違いないようです。後期の前半で疼痛の定義を紹介しました。「不快な感覚と不快な情動体験」でした。この情動とそれにともなって生じる自律機能の変化は、脊髄網様体路から大脳辺縁系、視床下部に情報が伝えられることによって引き起こされます。試験勉強では、侵害受容器の種類や神経線維の種類、感覚の特徴などを見直すと思いますが、合わせて自律機能の変化にも結びつけておきましょう。


 気がついているとは思いますが、授業中に指摘した部分以外にもプリントに誤りがありますので、訂正します。以下の通りです。

 自律神経系の構造と機能
  P470 3段目 4行目 粘膜か神経叢 → 粘膜下神経叢
         11行目 運動野分泌 → 運動や分泌
  P497 下段 9行目 排尿(diuresis) → 抗利尿(diuresis)


 後期試験の範囲は第6章から第10章までです。既に過去の期末試験問題に取り組んでいるかと思いますが、それらからわかるように、出題されるポイントや問われている内容はいずれも重要なポイントばかりです。一部に詳細な知識を問う部分もありますが、決して用語を丸暗記するわけではなく、理解する=内容を自分の言葉で説明できるようにすることができるかどうかを試しています。
 今回の試験範囲は大きくは感覚機能と運動機能ですが、伸長反射や前庭動眼反射、視運動性反応に見られるように、両者は互いに結びついている部分もたくさんあります。また、今日の授業でもわかるように、他の科目とも密接に関わっています。できるだけ、互いを関連させながら考えると、より理解が進むでしょう。

第29回 大脳皮質、随意運動の伝導路、自律神経系

 今日はまず大脳新皮質のうち、運動性皮質の特徴を取り上げました。それぞれの場所をよく確認しておきましょう。

 三つの部位のうち、最も重要なのは一次運動野です。この部位の特徴はよく見直して、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。特に、伝導路の特徴と組み合わせて、対側半身を支配していることを忘れないように。

 補足運動野と運動前野は、いずれも実験例を示して、どのような機能があるかを推測しました。改めて考えてみましょう。最初に示したディスプレイをタッチさせる実験では、一次運動野が随意運動の際に常に活動しているのに対して、補足運動野と運動前野は、視覚刺激に応じた運動時に活動するのか、あるいは記憶に依存した運動時に活動するのか、相違点がはっきりしていましたので、わかりやすいでしょう。

 伝導路は、錐体路が中心です。2つの皮質脊髄路と皮質延髄路は自分で図を描いて確認しておきましょう。特に皮質脊髄路はそこで交叉をするのか、どこの筋の運動を支配しているのか(あるいはシナプスしている運動ニューロンがどの部位の骨格筋を支配しているのか)をはっきりと説明できるようにしておきましょう。

 錐体外路は分かりにくいと思いますが、前庭脊髄路は前回、前々回の授業で取り上げた内容とも重複するので機能を考えやすいと思います。反射を含めてさまざまな現象、運動を説明するためには、錐体路だけでは不十分であることを理解する必要があると思います。

 後半では自律神経系について、前期の復習のような内容で説明をしました。かなり駆け足でしたが、交感神経と副交感神経の構成、それぞれの伝達物質、そして受容体をよく確認しておきましょう。

 A組の授業ではアドレナリン受容体の分布と作用について、交感神経優位な場合での全身の反応と合わせて説明しました。もう一度自分で考えなおしておきましょう。これまでに他の科目、特に生理学Ⅱ&Ⅳで学んだ内容をよく思い出しておく必要があります。

 来週は、交感神経系と副交感神経系のはたらきのバランスを調節している脳幹、視床下部、大脳辺縁系の機能を取り上げます。BC組の授業では受容体、特にアドレナリン受容体の機能についてももう一度考えてみます。交感神経優位なときの内臓器官の状態をおさらいしておくとよいでしょう。

第28回 姿勢の調節、小脳と大脳基底核の機能

 今回取り上げた小脳と基底核の機能は、マクロには多くの知見が得られていますが、細胞や組織、あるいは個々の神経核のレベルでは他の器官ほどに十分な機能が解明されていません。したがって、障害を例にして機能を推測したり、ヒト以外の動物での実験から得られた結果から外挿するしかありません。したがって、非常に抽象的な説明に終始しました。わかりにくかったかもしれません。

 とはいっても、小脳はかなり研究が進んできています。ヒトはもちろん、実験動物においても運動失調を生じる例が多数あるため、近年注目されています。

 「随意運動を協調させる」ということの意味が実感できれば、小脳がそのための調整役として機能していることもイメージしやすいでしょう。熟練を要するをよく言われますが、授業中にも例を挙げたように、手指を使ったさまざまな作業はその典型です。見ているだけではすぐにはできず、自分で何度も同じことを繰り返すことによってはじめてスムーズに動かせるようになります。この過程で、大脳皮質から筋に伝えられる内容と実際の運動に関する情報をともに得て比較し、さらに、比較した結果を大脳皮質へフィードバックするのが小脳の機能です。

 構音、すなわち、下顎や舌、口蓋などの運動によって咽頭や口腔の形を変化させて言語音をつくりだすことも非常に高度な熟練を要します。ヒトは成長過程でこの高度なトレーニングを積んでいるために、自由自在に話すことができます。

 実験動物は小脳がなくても生きてはいけます。ヒトでは生存はできるかもしれませんが、生活はできないでしょう。

 大脳基底核は、解剖学的な定義と運動機能に関わっている神経核との間に食い違いがありますので、注意しましょう。プリントでも「大脳基底核とその周辺の神経核」という言い方をしているのはそのためです。

 神経核間の連絡、例えば、線条体から淡蒼球内節・黒質網様部へ抑制性に接続するなどは、授業で説明したとおり、基本的に明らかになっています。しかし、それでどのような機能が実現しているのかを具体的に説明することは難しいようです。そこで、特定の神経核あるいはニューロンが変性・脱落した場合にどのような症状を呈するのかを、疾患を例にして説明しました。YouTubeなどでは患者さんの症状を示す映像を見ることもできると思いますので、時間のあるとき探してみるとよいでしょう。

 来週は大脳新皮質、中枢の中の中枢の機能とそこからの情報がどのように骨格筋に伝えられるのかを考えます。さらに第10章、自律神経系の機能に入ります。前期に取り上げた内容をかなり重複しますので、余裕があれば簡単に見直しておきましょう。

第27回 脊髄反射、脳幹を中枢とする反射

 BCとAで進捗が異なりますので、両者を合わせた内容で記します。

 プリント中に「伸張反射」の記載が一部で「伸長反射」となっているところがあります。誤りですので訂正してください。たいへん失礼しました。


 自原抑制は腱器官が反応してはじめて生じる反射で、伸張反射を生じた同名筋を弛緩させる反射という意味で命名されています。伸張反射と連続して生じるということを頭に入れておくと、より理解しやすくなると思います。

 例に挙げた膝関節の伸張反射(膝蓋腱反射)・拮抗抑制に連続する膝関節の屈曲は、同名筋と拮抗筋をともに考えました。中枢である脊髄には興奮性介在ニューロンと抑制性介在ニューロンが存在し、感覚神経であるⅠb線維と運動ニューロンの間に介在しています。このことによって、拮抗筋が収縮するとともに、同名筋が弛緩します。

 誘発筋電図は実際に実験できるとよいのですが、簡単なものですからYouTubeなどで配信されているかもしれません。授業ではヒラメ筋を例にしましたが、他の筋でも同様のはずです。時間があれば探してください。

 H波は感覚神経が刺激されて反射弓と同様の回路を通じて生じている筋収縮を示していますが、M波は筋を支配する運動神経線維は直接刺激されて生じています。グラフに示された時間差に注目すると、反射経路がをインパルスが伝わる様子が想像できるかもしれません。

 屈曲反射と交叉性伸展反射は、それぞれがいくつかの筋の収縮、弛緩をともなう大きな現象です。この点では伸張反射、拮抗抑制とは異なります。反射弓もすべてを説明するのは難しいですが、
  屈曲反射は屈筋が収縮して伸筋が弛緩する
  交叉性伸展反射は伸筋が収縮して屈筋が弛緩する
と考えれば、両者が対側肢に対して同時に生じるものとして単純に理解できるでしょう。

 中枢では興奮性介在ニューロンと抑制性介在ニューロンが関わり、さらに、これらの介在ニューロンが髄節をまたいで感覚神経線維と運動ニューロンをつないでいます。

 皮膚反射の例は教科書にもいくつか示されていますので、時間のあるときにフォローしておきましょう。また、四肢間反射は歩行に関する脊髄の役割については2年生の運動学などで取り上げられるかもしれません。

 後半は囊を構成する部位の中で最も脊髄に近い脳幹を取り上げました。解剖学的には脊髄は大脳、小脳などに比べると特徴のない構造ですが、機能は多彩です。今日取り上げた運動機能だけではなく、自律機能の中枢として、また、高次機能にも関わっていますので、年明けの授業で順次触れることになります。

 脳幹が中枢としての役割を演じている運動機能として特に重要なのが、前庭を受容器とする反射です。嚥下なども医療的には極めて重要な機能ですが、姿勢の調節に関わる機能がまず第一でしょう。

 眼球運動はいろんなカテゴリーに分けて考えることができ、とてもすべてを説明することはできません。授業では前庭動眼反射と視運動性反応を取り上げました。

 具体的な反射弓はもちろんですが、まずはこれら2つの反射の相違点を押さえておきましょう。前庭動眼反射は、頭部の素早い動きに前庭器官、特に半規管が反応することによって生じます。一方、視運動性反応は、ゆっくりとしたまたは等速の運動に対して網膜が反応して生じる反射です。したがって、求心路は前庭神経と視神経という違いがあります。ただし、中枢以降、遠心路と効果器は同様です。前庭神経核から興奮性介在ニューロンと抑制性介在ニューロンを介して、外眼筋を支配する運動ニューロンが興奮または抑制された結果、筋が収縮または弛緩します。

 前庭動眼反射については、授業で説明した水平半規管が刺激を受容したモデルで、反射弓を考えてみましょう。

 姿勢を調節するしくみとしては、前庭頸反射と頸反射の2つを取り上げました。前者は前庭が受容器となり、効果器は頸筋です。後者は固有受容器が受容器となって四肢が効果器です。

 年明けの授業では
  3.脳幹による運動調節のうち、6.歩行運動の調節
は割愛します。そして、小脳、大脳基底核に入ります。それぞれの構造と機能の外力を頭に入れておきましょう。

第26回 視覚の伝導路、脊髄反射(伸張反射と拮抗抑制、自原抑制)

 今回ははじめに視覚の伝導路について、特に、左右の眼球からの視神経が視交叉でどのように交叉するのかについて説明しました。

 まず、見ている対象の像は網膜に上下左右が逆転した状態で映っていることをよく確認しておきましょう。ここがわかっていないと、交叉と一次視覚野へ投影の状態が理解できません。

 視交叉については異なった書き方の図を2つ載せていますので、どちらか自分のわかりやすい方を使って、声に出して説明してみましょう。途中でつかえるところがあるようなら分かっていないということです。

 左右の網膜から伸びる視神経のうち、いずれも内側(鼻側)が交叉をして対側の外側膝状体へ、外側(耳側)は交叉せずに眼と同側の外側膝状体へ入ります。この結果、左右の網膜に映っている右側視野(視野の右半分)の情報が左一次視覚野へ、左側視野(視野の左半分)の情報が右一次視覚野へ入ります。

 一次視覚野には網膜状の部位局在があることが知られています。詳細な説明は省きましたが、機会があれば資料を配付します。

 後半は運動機能、特に脊髄反射のうち伸張反射と拮抗抑制を取り上げました。

 脊髄の構造については各自でよく復習しておくこと。体性感覚の伝導路を理解する上でも必要でしたが、脊髄反射そして随意運動の伝導路を理解する上でも必須です。

 また、反射についても一般論の説明をしましたが、第9章で考えるのは体性-運動反射です。第10章「自律神経系の機能」で自律神経反射を考えますが、反射の一般論は全く同じですので、しっかりと頭に入れておきましょう。

 反射はいずれも反射弓を理解し、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。特に、伸張反射は単シナプス反射であるため、中枢の構造が単純です。反射を理解していく上での基本です。一般的なセオリーとともに、今回の授業で説明した上腕二頭筋での伸張反射を具体的に説明できるようにしておきましょう。

 拮抗反射も同様です。屈筋と伸筋という互いに拮抗する関係にある筋の一方で伸張反射が生じれば、他方では拮抗抑制が生じているはずです。関節の動きを理解する上でも役立つことでしょう。

 屈筋と伸筋の説明はプリントにはまとめていませんが以下の通りです。

  屈筋:関節を構成する骨に対して、両骨間の角度を小さくする運動(関節が屈曲する運動)を行う筋.
  伸筋:関節を構成する骨において、両骨間の角度を大きくする運動(関節が伸展する運動)を行う筋.


 来週で年内は最後です。なんとか脳幹の機能を説明してしまいたいと思います。予習の範囲は
  2.脊髄レベルでの運動調節、(10)四肢間反射
までと、
  3.脳幹による運動調節、(3)脳神経が関わる反射
までです。

第25回 網膜の構造と視細胞の機能

 今日は視覚機能のうち、直接光に反応する視細胞を中心に取り上げました。

 網膜は色素上皮を除き、ニューロンが集まってつくられています。実際にはグリアもたくさんあるのですが、今回は特に触れませんでした。こうした構造からも想像できるように、網膜は神経系、特に脳の一部と考えることができます。実際、脳の一部が突き出すようにしてつくられていきます。

 中でも重要なのは視細胞と神経節細胞です。

 2種類ある視細胞は構造が大きく異なっているところから名付けられましたが、機能的にも違いがあります。桿状体細胞(桿体細胞)はロドプシンを持ち、可視光線が入射しているのか否かによって反応性が異なります。光が当たるとレチナールの構造が変化して、オプシンタンパク質も変化させて、桿体細胞内の状態を変化させます。この結果、ナトリウムチャネルが閉鎖し、細胞内が過分極または弱い脱分極状態となり、桿体細胞からの抑制性伝達物質の放出を抑制または減少させます。この伝達物質を受け取る双極細胞は興奮しやすい状態にあると考えておきましょう。そうすると、抑制性伝達物質の作用がなくなることによって興奮し、これが神経節細胞に伝わることによって視神経にインパルスが発生します。

 レチナールは色素上皮細胞が提供しており、ロドプシンが再生します。授業では触れませんでしたが、レチナールの元になっているビタミンAの摂取不足によってレチナールが不足し、この結果、ロドプシンの産生が低下すると、暗いところでの視覚機能が低下します。いわゆる「鳥目」です。

 錐状体細胞のもっている3種類のフォトプシンは、光があたったとき、ロドプシンとよく似た反応をします。しかし、それぞれ反応できる光の波長が異なっているため、眼に入る光の波長によって反応のしかたが異なります。この違いを脳が処理することによって、我々は異なる色を検知するがきます。

 錐状体細胞が網膜中心窩付近に集中しているのに対して、桿状体細胞は網膜の中心窩の外側に分布しています。この結果、中心窩付近は色彩感覚に優れています。同時に、視細胞の密度も高いため、周辺に比べると視力も高くなります。一方、周辺では桿状体細胞しかないため、明暗しか判別できません。先週取り上げた視野の図を見直してみるとわかりますが、色を判別できる視野は明暗を判別できる視野よりも小さくなっています。

 盲点は各自で試しておきましょう。ふしぎな気分になります。

 フォトプシンと色覚に関しても遺伝子の発現や変異の問題を詳しく取り上げられると、より理解が進むと思いますが、時間の都合で割愛しました。色のシミュレーターはここにあります:https://asada.website/cvsimulator/j/index.html

 来週は第9章に入ります。運動機能について4〜5回にわたって考えます。来週は脊髄を中枢とする反射について取り上げますが、脊髄の構造を復習しておきましょう。また、最初に取り上げる伸張反射は筋紡錘を受容器としています。体性感覚のうちの深部感覚あるいは固有感覚の受容器として取り上げました。ここも見直しておきましょう。さらに、伸張反射として上腕や大腿の筋の反射を例に挙げます。プリントには上腕と大腿の筋についても簡単に図をつけて説明しましたので、ここもよく見ておきましょう。

第24回 視覚機能(遠近と明るさの調節他)

 今回は視覚機能のうち、水晶体・毛様体と虹彩・瞳孔の機能を考えました。

 構造についてはよく確認しておきましょう。構造の特徴を知ることなくして機能を理解することなくして、機能はできません。

 授業でも強調したように、水晶体は非常に弾性のある構造です。したがって、遠くを見るときに毛様体が収縮すると、毛様体小帯が緩み、水晶体に対して周囲から張力がかからない、あるいはかかっている張力が弱い状態になります。この結果、水晶体は自らの弾性によって自然に縮んで円くなります。したがって、それぞれにとっての近点に焦点を合わせているときが最も縮んだ状態と考えてよいでしょう。

 円くなっていると、そこへ入射した光は大きく屈折をすることになります。この結果、近傍から鋭角で入射した光線でも網膜で焦点を結ぶことができます。

 水晶体の弾性が失われていいくと、縮む度合い、すなわち縮む度合いが小さくなり、入射光を大きく屈折させることができなくなります。この結果、近くの物体に対して焦点が合わなくなります。

 一方、遠くを見るときは毛様体筋が弛緩するため毛様体小帯が伸びた状態となり、これが水晶体を周囲に向けて引っ張ることにつながります。毛様体筋の弛緩の程度が大きいほど毛様体小帯が伸び、水晶体も扁平になります。入射光は水晶体に対して垂直に近い状態で入射するため、屈折角が小さくなります。こうして、遠方の物体に焦点を合わせることができます。

 今日追加で配布したプリントでは、毛様体筋の収縮・弛緩と毛様体小帯の緊張の度合いがわかりやすいと思います。よく見直しておきましょう。

 眼球への入射光の多少を調節するのは瞳孔の大きさですが、この瞳孔の大きさは虹彩を構成する2つの平滑筋の収縮と弛緩によって調節されます。瞳孔括約筋は副交感神経によって支配され、明るいあるいは強い光が入射したときに収縮します。逆に、瞳孔散大筋は交感神経によって支配され、薄暗いあるいは弱い光しか入射していないときに収縮します。

 2つの平滑筋の神経支配と、光の強さによる反応の違いをよく頭に入れておきましょう。

 後半では眼球運動を取り上げました。眼球には6つの外眼筋がついており、3組ずつほぼ対角線上に位置します。支配神経の組合せは複雑ですが、せっかくですのでこの機会に頭に入れてしまいましょう。滑車神経は「滑車」とよばれるところを通過することに由来しますが、滑車(とよばれる構造)をくぐっている上斜筋を支配すると考えれば覚えやすいでしょうか。外転神経は眼球を外転させる外側直筋を支配しています。残りはすべて動眼神経によって支配されています。

 p371上図の左側の一番上が「前頭骨」となっていますが、「滑車」の誤りです。訂正しておいて下さい。

 近視の人も多いでしょうし、老視を感じている人もいることでしょう。それぞれどの様な状態であるのか、自分に引きつけてよく考えてみると理解が進むと思います。


来週は網膜の構造と光に対する反応のしかた、そしてその情報がどのように中枢=一次視覚野へ伝えられるかを考えます。また、色の感覚についても時間の許す限り説明したいと思います。

第23回 聴覚の中枢、平衡感覚、可視光線と眼の構造

 聴覚の一次中枢=一次聴覚野の位置はしっかりと頭に入れておきましょう。また、一次聴覚野とその周辺の連合野は、左右の半球にともに存在しますが、言語機能に関わった機能でもあるため非対称であることが知られています。これについては後期の最後に改めて取り上げます。

 音源定位の機能についてはまだよくわかっていないこともあるようですが、伝導路が左右の並行回路であることがその大きな要因です。

 今週の中心は平衡感覚でした。卵形囊・球形囊=耳石器と半規管の構造と役割分担をしっかりと整理しておきましょう。

 卵形囊は水平方向の加速度を検出します。つまり前後や左右、あるいは水平に斜め方向へ動いた場合に反応します。一方で球形嚢は上下方向の加速度を検出します。したがって、頭部が上下方向に動いた場合に反応しています。頭部を傾ける場合にはおそらく両方が反応しています。

 半規管は、X軸、Y軸、Z軸に対応するように3本の管があり、頭部が回転する(頭部を傾けるような動きも含まれます)動きに伴う加速度を検知します。

 反応の基本的なしくみは全く同様と考えてよいでしょう。卵形囊、球形囊、そして半規管も骨の内部にあるため、頭部の動きに応じてこれらの器官全体が動いています。卵形囊・球形囊では、この動きに応じて比重の大きな平衡斑の耳石が全体の動きに応じた方向へ動きます。耳石は耳石膜の上に層状に集積しているため、耳石の動きは耳石膜を誘導し、同時に耳石膜の中に埋まったようになっている感覚毛を傾斜させます。半規管の場合は、完全体の動きに対して、内部の内リンパには慣性がはたらくため相対的には逆方向に動きます。この結果、膨大部のクプラが半規管の回転方向とは逆方向に倒れ、感覚毛も同じ方向に傾斜します。

 平衡斑と膨大部にある有毛細胞の感覚毛は、コルチ器の感覚毛とやや異なった組合せになっていますが、ある方向に傾斜すると陽イオンチャネルが開放し、その反対方向に傾斜すると陽イオンチャネルが閉鎖するという点では共通しています。このイオンチャネルの開放具合によって、有毛細胞の脱分極が増大したり減少したり、あるいは過分極したりします。

 有毛細胞が脱分極すると感覚神経に対して興奮性伝達物質(グルタミン酸)が放出され、前庭神経の興奮を生じます。

 前庭神経は前庭神経核へ伸び、ここで二次ニューロンと接続しています。しかし、この二次ニューロンの投射先はさまざまで、大脳新皮質から脊髄まで、広がっています。このうち、視床を介して一次体性感覚野へ入力した情報は回転や移動、重力方向の変化に対する知覚を生じます。しかし、これ以外はすべて運動に関する中枢あるいは直接に運動神経とつながっており、眼球や頭部の運動、体幹や四肢の反射性に運動を生じます。これらの反射の運動については第9章で改めて取り上げます。

 今週は最後に視覚機能の適合刺激である可視光線の特徴(あるいは電磁波の特徴)と、視覚器である眼の構造を概観しました。電磁波としては、高等学校の「物理基礎」で取り上げられています。可視光線や視覚機能は「科学と人間生活」でよくまとめられています。時間を作って見直しておくとよいでしょう。

 来週は視覚機能を具体的に考えます。すべてを取り上げることはできないと思いますが、はじめに。眼球前方の構造によって入射光がどのように調節されているかを考えます。

第22回 聴覚

 今日ははじめに聴覚の適合刺激である音波について概説しました。

 空気を弾性のある媒質と考えたとき、音波は音源からの縦波として考えることができます。もちろん、空気は分子の集合ですから、各分子の集合状態の差、つまり、分子が疎になっている部分と密になっている部分が交互に並んだ(厳密にはそれぞれの状態が連続的に変化した状態で交互に並んだ)疎密波です。疎密の状態をグラフとして可視化する場合には、縦軸に圧力(すなわち分子の密度)をとって横波のようなサインカーブとして描くことができます。

 疎密の程度の差であるグラフの縦軸の幅が波の振幅です。振幅が大きいということは、分子の疎密の程度の差が大きいことを意味しており、これが音量の大小を表します。音源は空気に振動を与える為に圧力をかけています。したがって、音量は圧力として、パスカル単位(Pa)で表せます。しかし、ヒトの聴覚は音源の圧力の大きさに比例したように感じるのではなく、音源の圧力の対数に比例したように感じています。これがフェヒナーの法則です。この実際の感覚に合うように表したのがベル単位(B)です。取り扱いやすい数字の大きさにするために、デシベル(dB)で表記します。

 一方、1つの波を「隣り合った波の同じ状態の部分の間」と考えると、この2つの間の距離が波長です。そして、あるポイントを一定時間内に、一波長分が何回通過するかが周波数で、1秒間あたりに通過する波の数で表します。言い換えると、あるポイントで何回の波が生じているか、つまり分子の疎密が何回繰り返すかと考えてもよいでしょう。1秒あたりの回数をヘルツ単位(Hz)であらわし、これが音の高低を決めています。気がついた人もいると思いますが、周波数は波長の逆数です。(波長や周波数は音波だけではなく、可視光線を含む電磁波を考える場合にも使われる概念ですので良く整理しておきましょう。)

 ベル(デシベル)とヘルツは、それぞれに音波の性質を決める重要な単位ですのでよく頭に入れておきましょう。

 ヒトの可聴域は20〜20,000ヘルツと言われていますが、成人に限ると決して正しくはないことも実感できたでしょう。教科書といえど決して鵜呑みにしてはいけないというよい例です。

 聴覚器としての耳の構造は解剖学でも学ぶはずですので、ここでは詳しく触れません。音波が有毛細胞の反応をどのように生じるかを振り返りながら、必要な構造を考えておきます。

 耳介は複雑な形状をしています。この形状によって周囲からやってくる音波を効率よく外耳道へ集めることができます。そして、空気の振動が鼓膜にあたると、鼓膜の振動を生じます。鼓膜は外耳と中耳の境界で、中耳側でツチ骨と結合しています。したがって、鼓膜の振動はツチ骨の振動を生じます。ツチ骨はキヌタ骨、さらにアブミ骨とつながっていますから、順に振動します。アブミ骨が中耳と内耳(前庭階)の境界である卵円窓と結合しています。このためアブミ骨の振動は卵円窓の振動を生じます。鼓膜から卵円窓までの物体の機械的な振動は徐々に増幅されていて、卵円窓は鼓膜の振動の約20倍の大きさで振動します。この結果、ヒト(あるいは哺乳類)は、小さな振動も音として知覚できるようになりました。

 内耳は側頭骨中の迷路全体を指しますが、聴覚器として機能しているのは蝸牛です。蝸牛は3つの階層に分かれていますが、前庭階と鼓室階は蝸牛頂で連続しているので、内部は同じ組成の液体=外リンパで満たされています。一方、蝸牛管は他の2つとは完全に独立しており、組成の異なる内リンパで満たされています。

 卵円窓の振動は外リンパの振動を生じ、前庭階と鼓室階の内部でともに液体の振動(圧力波)を生じます。圧力波が前庭膜、基底膜を振動させ、コルチ器を上下に動かすことになります。コルチ器は基底膜に載った細胞群と蓋膜が異なった支点で振動するため、間に挟まっている感覚毛が動きます。プリントの図で見ると、振動の具合に応じて左に倒れたり、右に倒れたりしているのがわかるでしょう。

 感覚毛は構造的には微絨毛で、自律的に動くことはできず、蓋膜からの押さえられ方によってどちらに倒れるかが決まります。感覚毛の先端には陽イオンチャネルがあるため、チャネルが開放する方向へ倒れると内リンパからカリウムイオンが細胞内へ流入して脱分極を生じます。大きな振動(大きな音)を受けると、外リンパの振動も大きくなり、コルチ器も激しく運動します。したがって、チャネルの開放の程度が大きくなり、流入するカリウムイオンも多くなるため、より大きな脱分極を生じます。

 有毛細胞には電位依存性カルシウムチャネルがあり、有毛細胞の脱分極に応じて開放します。この結果、細胞外から流入したカルシウムイオンの作用によって神経伝達物質が放出されます。このシナプスは当然興奮性シナプスで、蝸牛神経には比較的簡単に興奮(=活動電位)が生じていると考えると、聴覚が常に生じていることが説明しやすくなると思います。

 有毛細胞には2種類ありました。主要には内有毛細胞がはたらいています。蝸牛神経は内耳神経の枝で、そのほとんどが感覚神経です。そして、内有毛細胞からの神経伝達物質の作用で興奮して、蝸牛神経核へ興奮を伝導します。外有毛細胞の機能はまだよくわかっていません。昨年の授業の記録に補足情報を掲載しましたが、一部を修正して別ページの再録しましたので参考にして下さい。

 聴覚の伝導路はかなり複雑です。この複雑さが、単に音波の振幅や周波数の大小だけにとどまらない聴覚の機能をつくっているとも言えます。来週はその機能の一端を簡単に紹介しようと思います。

 平衡感覚受容器である前庭と半規管(合わせて前庭器官といいます)は、蝸牛と連続した構造で、蝸牛のすぐ隣が前庭で、その先に3つの半規管があります。解剖学的にいう「前庭」はさらに卵形囊と球形囊という2つの部分に分けられます。内耳がつくられる過程では、はじめに卵形囊と球形囊ができ、そこが膨らんで蝸牛と半規管ができてきます。したがって、互いの内部、蝸牛の蝸牛管と卵形囊、球形囊、そして半規管の内部は一つながりの構造です。つまり、いずれも内リンパで満たされています。そして、蝸牛管のコルチ器とよく似た構造が卵形囊、球形囊、そして半規管にも存在します。このことを押さえて、平衡感覚受容器の構造を見直しておきましょう。予習しておきましょう。

 来週は、視覚の適合刺激である可視光線についても説明します。今日の授業で予習用にあらかじめ配布するのを忘れていましたが、「一家に一枚・光マップ(https://stw.mext.go.jp/series.html)」を配布します。簡単にダウンロードできますので、一度見ておくとよいでしょう。

第21回 味覚と嗅覚

 味覚と嗅覚の適合刺激はともに化学物質です。食物も飲料も、そして吸気している空気もすべて化学物質です。あるいは、期せずして口に入ってしまったものやすってしまった気体も化学物質です。これらの化学物質が体内(あるいは器官や組織)に取り込まれる前に、その性質を見極める必要性から、化学物質に対する感覚が発達してきたのでしょう。

 味覚には「基本味(基本感覚)」がありますが、嗅覚には「基本的なにおい」はありません。これは、それぞれの受容体の種類の差に依っています。味覚には授業で説明した5種類の受容体があります。したがって、これら受容体に結合できる物質ごとに、感じる味が決まります。ところが、嗅覚受容体はヒトで約350種類の遺伝子が同定されており、それぞれの遺伝子産物(タンパク質)が異なった構造の化学物質を結合します。

 舌を中心とした味覚器とその周囲の構造、鼻腔と嗅上皮の構造はそれぞれ他の科目でも学んでいると思いますが、改めてよく見直しておきましょう。

 生理学的に重要なポイントは、味細胞や嗅細胞の反応のしかた、そして、それぞれの伝導の特徴です。

 個々の味細胞には特定の受容体だけが発現しています。したがって、大きく5種類に分けてみ物質のいずれかにしか反応できません。しかし、どのタイプの受容体であれ、味細胞に脱分極(受容器電位)が生じると、味細胞が神経伝達物質を放出して味神経を興奮させ、この興奮が中枢へ伝えられることによって感覚が生じます。

 機能的には味神経といいますが、味細胞が舌あるいは口腔内のどこにあるかによって脳神経の分担が異なりますので、よく確認しておきましょう。顔面神経、舌咽神経、迷走神経がいずれも孤束核に入り、二次ニューロンに接続しています。

 嗅細胞も、各細胞が異種類の受容体を発現しています。そして、嗅細胞自体がニューロンであり、閾値濃度以上で嗅物質が受容体と結合すると活動電位を発し、これがインパルスとして嗅神経を伝導して嗅球へ達します。嗅神経も脳神経の1つです。

 特殊感覚は一次ニューロンが脳神経であるということが、ここまででも確認できるでしょう。

 進化に関して何度か触れていますが、味覚と嗅覚を比べると、伝導路も中枢も、味覚の方が他の感覚に近く、嗅覚の方がかなり古い特徴を残していると言えるでしょう。味覚の伝導路は3つのニューロンがつながって構成され、視床を介しています。一次中枢も大脳皮質にはっきりとした領域がその役割を演じています。一方で、嗅覚は二次ニューロンである嗅球のニューロン(僧帽細胞)が一次中枢とも言える梨状皮質に達しています。さらに、扁桃体や眼窩前頭皮質など、いくつかの部分が梨状皮質と同様の位置づけを与えられているようです。ただし、一次味覚野も一次体性感覚野や今後説明する一次聴覚野や一次視覚野のように、大脳新皮質の最外部ではないところから、古い段階で形成された機能であることが推測されます。

 来週は聴覚を取り上げますが、適合刺激である音波についてやや時間をかけて説明します。また、耳の解剖学的な構造をよく予習しておきましょう。

第20回 体性感覚の伝導路と中枢、内臓感覚

 体性感覚の伝導路は、受容器から一次体性感覚野へ向かう3つのルートについて、その共通点と相違点をよくまとめておきましょう。特に、
   受容器の種類(または感覚の種類)、
   一次ニューロンから三次ニューロンまでの細胞体がどこにあるのか、
   それぞれがどこでシナプスをつくっているのか、
   脊髄を通る2つの伝導路では、脊髄のどこを通っているのか、
   さらに交叉するニューロンはどれで、どこで交叉しているのか、
がポイントです。

 勉強するとは、覚えることではなく、こうした内容を自分なりに整理することです。表がよいのか、図がよいのか、あるいは両方か。さらには、それらを文章で表現するとどうなるか、など、いくつかやり方はあると思います。

 三叉神経は脳神経の中でも大型で、ここに含まれる感覚神経は三叉神経節に細胞体があり、3つの枝(眼枝=眼神経、上顎枝=上顎神経、下顎枝=下顎神経)に分かれて顔面を中心に支配しています。脳幹に入って2つの感覚核へ入りますが、脊髄の伝導路と同様の構成で、精密触覚と固有感覚、粗大触覚と痛覚・温度覚と2つに分かれています。

 表在痛覚を担う2つの受容器・神経線維について進化的な説明をしましたが、後索路と脊髄視床路にの2つにも進化的な差があると考えられます。おそらくは脊髄視床路のほうが後索路よりも先に出現したのでしょう。それは、脊髄視床路が担う感覚の方が後索路が担う感覚よりも原始的と考えられるからです。

 痛覚の伝導路は、特に脊髄視床路については途中で分枝して脳幹に入ります。そして、その先に大脳辺縁系と視床下部があり、疼痛が「痛い」という感覚だけではないことを裏付けています。

 皮膚分節は、脊髄の分節性を頭に入れて考える必要がありますが、現象としては単純です。ここまで多くの複雑な構造や機能を学んだと思いますが、このようなわかりやすいしくみもあります。

 脳の感覚中枢として、視床と大脳皮質(中心後回)に分けて説明しました。視床は脳での位置と神経核の集合であり、感覚情報の中継所としての機能を頭に入れておきましょう。来週以降に取り上げる特殊感覚でも、聴覚情報と視覚情報の中継所として改めて触れることになります。

 大脳皮質の領野については解剖学で学ぶはずですが、概要は前期に触れましたので、忘れていれば見直しておきましょう。今日ふれた中心溝を境界として前頭葉と頭頂葉に分けられます。前頭葉には多くの機能がありますが、頭頂葉の機能としては一次体性感覚野だけしか取り上げられないと思います。

 一次体性感覚野は、体部位局在を中心にいくつかの特徴を説明しました。いずれも重要なポイントです。運動機能で一次運動野という、中心溝のすぐ前部(中心前回)の機能を考える機会があります。これら2つの領野には共通点の多く、合わせて考えることによりより理解が深まるでしょう。

 内臓感覚や内臓痛覚は簡単にしか触れられませんでした。生理学2で取り上げあられた内容とかなり重複します。ここで血圧の受容器を復習しておけといってもなかなか時間がとれないと思いますが、化学受容器と合わせて部位や名称だけは見直しておきましょう。温度受容器は体温調節機能のところでふれらると思います。

 関連痛は臨床の科目で学ぶと思います。その際は、内臓器官を中心にして説明されるのではないかと思いますので、体性感覚の伝導路との関わりを忘れないようにしておきましょう。

 追加で配布した「ストレス反応」については、内分泌系の機能の中で取り上げられるようです。侵害刺激は重大なストレッサーです。そのつもりで考えると良く理解できるのではないでしょうか。

 来週は味覚と嗅覚です。適刺激が何であるかそれほど説明は必要ないと思いますが、いくつか例を挙げて説明します。

第19回 深部感覚、伝導路

 はじめに周辺抑制について取り上げました。本来は第4章で説明した神経回路の一つとして扱うべきテーマですが、表在感覚の受容野で説明するのが最も分かりやすいと思います。

 表在感覚のように、刺激を受けた部位の局在をはっきりさせる必要がある場合、よりコントラストをつけた状態で情報を中枢へ運ぶことができます。したがって、それほど強い刺激ではなくとも、周囲との感覚の差がつきます。よくできたしくみだと思います。これまで国試で取り上げられたことはありませんが、受験勉強として全体を復習する場合には他の神経回路と一緒におさらいしておくとよいでしょう。

 さて、今回の中心は固有感覚の受容器、特に筋紡錘と腱器官です。いずれも、筋の状態を検知する受容器で、全身の筋と腱に分布します。

 筋紡錘は、筋線維の構造と感覚神経の種類を整理してまとめるとよいでしょう。特に重要なのは、Ⅰa群線維と核袋線維、核鎖線維がつくる一次終末です。静止状態(安静状態)の筋線維でⅠa線維はわずかにインパルスを発しており、これよりも長くなることによってより頻度高く興奮します。逆に、筋が収縮して短縮すると興奮の頻度が低下していきます。これに対して、腱器官は筋に張力が発生しているときに、同時に腱に張力が生じると反応します。プリントの図で、両者の反応性を比較した実験を示しました。非常に簡単なしくみで考えてよいと思いますが、よく見直しておきましょう。

 「見直す」とよく言いますが、決して「見ている」だけでは「直した」ことにはなりません。図を見ながら、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。

 例えば、等張力性収縮の場合、あるいは等尺性収縮の場合に、筋紡錘と腱器官がどのように反応するのか、考えてみましょう。

 痛覚は来週改めてまとめますが、運動後筋痛についても、十分にコンセンサスの得られた説明はまだないようで、表在痛覚に比べると深部痛覚はまだわかっていないことが多いようです。

 後半で、体性感覚の伝導路について説明しました。クラスによって差が出ましたが、一次ニューロン、二次ニューロン、三次ニューロンと三つのニューロンが連続して情報を中枢で伝えます。中心は後索路、脊髄視床路、三叉神経視床路で、受容器の位置や種類によって伝導路が異なります。しかし、それぞれに共通点と相違点がはっきりしているため、きちんと整理すればわかりやすくなります。

 来週はさらに体性感覚の伝導路と伝導路の終着点である中枢について取り上げます。脊髄や脳に関してはの基本的な理解が必要ですから、前期・第4章(p163〜)で説明した内容や、第Ⅴ脳神経である三叉神経について、その構造や特徴について予習あるいは復習として改めてよく見直しておきましょう。

第18回 皮膚感覚

 今日とりあげた皮膚感覚(表在感覚)は、適合刺激がどのようなものであるか、そして、生じる感覚についても説明する必要は無いでしょう。常に体験しているとおりです。

 5種類に分けて説明しましたが、触圧覚、温度覚、痛覚の3つが重要であり、絶対に頭に入れておく必要があることはいうまでもありません。それぞれの受容器の構造と反応の特性、神経線維の種類をよく整理しておきましょう。また、痛覚については2種類の異なる感覚について、受容器を分けてしっかりと説明できるようにしておきましょう。期末試験では、何らかの形で毎年出題しています。

 触圧覚を例にして説明した二点弁別閾はも、表在感覚の特徴として重要です。温度覚や痛覚では部位による閾値に差がありますので、興味があれば是非調べてみましょう。

 ところで、受容器と受容体は混乱しやすいと思います。いずれも英語では"receptor"で区別しませんが、なぜか日本語では区別して考えます。「受容器」といった場合には組織、または細胞あるいは細胞の一部分をさしていいます。したがって、パチニ小体であれば、被包に包まれた部分全体が受容器、自由神経終末であれば樹状突起の各部位または全体が受容器です。先週は味覚受容器に触れました。多分早ければ再来週の授業で取り上げますが、味細胞を受容器と考えます。これに対して、「受容体」は今日の授業で触れたTRPチャネルのようなイオンチャネルまたは膜タンパク質(ホルモンの場合は細胞内にもあります)つまり、刺激に対して反応している分子を指します。二つの用語を区別して用いるので注意しましょう。

 最後に、「掻痒」を含む四字熟語を調べておくように。

第17回 運動単位の分化、感覚総論


 後期最初の授業ですが、前期のやり残しを簡単に説明して、感覚機能に共通する特徴を概観しました。

 単一の運動単位の収縮が単収縮で、運動単位の特徴(その多くの部分は構成する筋線維の性質に依存します)に応じて収縮速度や張力に大きな差があります。

 追加で配布したプリントは、1973年に発表された論文に掲載された図の抜粋です。運動単位の特徴が非常によくわかる実験で、教科書にも引用された部分です。実験の説明は改めて要約して掲載しようと思いますが、まずは自分でよく見直しておきましょう。また、原文を読んでみたいのであれば、コピーを渡します。

 さて、後期の前半は感覚機能を取り上げます。説明したように、体性感覚、特殊感覚の順で考えていきますが、どんな感覚も受容器が適合刺激を受けることからすべてが始まります。

 各受容器の適合刺激が具体的にどのようなものであるのか、いくつかの刺激についてはわかりにくいかもしれません。いずれも物理的、化学的に説明できるべきものですが、その都度必要な範囲で概説します。

 来週取り上げる表在感覚については簡単でしょう。皮膚あるいは体表への機械的な刺激や温度変化が中心です。化学物質を適合刺激とする受容器もあります。これらの刺激により、触覚や圧覚、温度感覚などが生じます。

 感覚器系の構成をそれぞれ一言で言うならば、受容器、伝導路、中枢の三つです。授業でも触れたように、常にこの3つを意識しながら考えていくと整理しやすいでしょう。

 伝導路と中枢については、脊髄や脳の構造に触れることになります。解剖学でも学んでいるかと思いますが、不十分であると思ったならば自分でよく復習しておきましょう。また、特殊感覚の伝導路では脳神経も取り上げます。感覚神経を含む脳神経としていくつか取り上げられたはずです。これらも見直しておきましょう。

 感覚の中枢の機能を考える上では、感覚の投射という現象も押さえておきましょう。授業では「目から火花が散る」という例を挙げましたら、プリントには「幻肢痛」も取り上げました。投射の例としてはやや不適切ですが、中枢が機能しているからこそ感覚が生じるということを理解する上では、分かりやすいと思います。

 刺激の強さとそれによって生じる感覚の大きさの関係は、単純ではありません。しかし、刺激の強さがある範囲内であれば、ウェーバーの法則が成立し、刺激強度と弁別閾の間にはきれいな比例関係があります。まずは、このことをよく頭に入れておきましょう。

 順応は日常的に体験することですから、現象としては説明する必要も無いでしょう。特に、嗅覚の順応は分かりやすいと思ったので、例として取り上げました。

 来週からは各感覚受容器の構造を具体的に考えていきますが、大きくは今日の最後に説明した3つのいずれかのタイプです。体性感覚受容器は自由神経終末や被包神経終末が多く、特殊感覚受容器は独立した細胞が受容器として機能することが多いですが、一次感覚ニューロンから、二次、三次と順に興奮を伝達して各感覚の中枢へ情報が伝えられるという点は共通しています。

 来週は表在感覚を取り上げますが、今日の授業で割愛した「感覚単位」や「側方抑制」にも触れますので、第6章と、できれば第4章のプリントも忘れないように。

第16回 筋でのエネルギー産生と筋線維の種類、運動単位

 既に試験問題をつくってしまっていたのでやや駆け足になりました。

 冒頭で等張力性収縮と等尺性収縮の説明とともに、収縮が単に筋線維の短縮ではなく張力を発生することであると説明しました。時に区別せずに使うこともありますが、張力を発するが故に大きなエネルギーを消費すると考えるとわかりやすいでしょうか。

 プリントには「参考」として、筋線維の長さと張力の関係について触れました。試験が終わった後に目を通しておきましょう。

 今回の中心の1つは、筋線維でどのようにATPを産生しているかということでした。3種類に分類しました。
1)ローマン反応
2)解糖系(または非有酸素反応)
3)有酸素反応(または酸化的リン酸化、あるいはクエン酸回路+電子伝達系)
のように整理しました。

 生理学2の進捗と整合性がないクラスもありますが、一般的な細胞では2)と3)によってATPを産生します。2)の反応に関わっている酵素はすべて細胞質(筋の場合は筋形質)に存在します。3)に関わる酵素(酵素でないタンパク質も関わっていますが、省略して考えます)はすべてミトコンドリア内にあります。もちろん、ミトコンドリアのない赤血球は2)のみです。

 筋細胞には1)の反応に関わるクレアチンキナーゼが筋形質にあるため、ローマン反応が常に生じています。授業では触れませんでしたが、ローマン反応の進行(どちら向きの反応であっても)に酸素は必要ありませんので、広い意味では非有酸素反応に含めます。したがって、ⅡB型筋線維にはクレアチンキナーゼが多量に存在します(p236表参照)。このため、ⅡB型筋線維は素早く大きな張力を発揮することができます。

 筋線維を分類する考え方もいくつか示しましたが、上でも触れているように、現在はⅠ型、ⅡA型、ⅡB型という3種類に分類して考えるのが一般的で、多くの教科書で採用されています。プリントの表に示したように、筋線維の構造や機能を考える上での特徴はたくさんあります。多くの特徴の相違をうまく説明するのがこの3種類の分類方法です。赤筋と白筋、遅筋と速筋という分類ではうまく説明しきれません。

 表の中には授業では触れなかった項目もありますので、それらは試験後に自分で考えてみましょう。

 最後に取り上げた運動単位も、筋の収縮を考える上で忘れてはならない考え方です。筋は単に筋線維の集合ではなく、運動ニューロンによって支配された(神経筋接合部で運動ニューロンから興奮の伝達を受ける)筋線維のグループ(=運動単位)が集合したものと考えるとよいでしょう。そして、1つのグループ=運動単位には、上で分類した3種類の内のいずれか1種類の筋線維だけが集まっています。したがって、筋線維の分類と運動単位の分類は一致します。名称の付け方が全く異なりますので注意しましょう。

 筋が収縮する場合、同一運動単位に属する筋線維は一緒に収縮します。しかし、すべての運動単位が同時に収縮しているわけではなく、かかっている負荷の大きさに応じて収縮して売る運動単位と収縮していない運動単位があります。また、収縮を持続させるような場合には、いくつかの運動単位が抗体で収縮して、全体として収縮を持続させています。

 神経支配比という考え方は運動単位の考え方と切り離さないようにしましょう。単一の運動ニューロンが興奮を伝達する筋線維数は、筋の種類によって全く異なります。プリントに例を挙げましたが、それぞれの筋の機能に依存しています。

 期末試験は今日の授業の内容までを試験範囲とします。これまでの内容と合わせてよく見直しておきましょう。

第15回 筋線維の構造、筋収縮のしくみ、神経筋接合部での興奮伝達と興奮収縮連関

 夏休み明けでいきなり実技試験があり、落ち着かないかもしれませんが、期末試験の勉強にも直接結びつきますのでしっかりと復習をしましょう。

 今回ははじめに筋線維の構造を考えました。一般的な細胞が持つ特徴に加えていくつかの大きな特徴があります。細胞の大きさはもとより、多核であること、細胞膜が陥入していること、細胞質の構成としてタンパク質性の線維成分が大きな割合を占めていることなどです。それぞれ、具体的な構造、その名称、そして筋収縮における役割が明確になるように押さえましょう。

 細胞質の構成としてのタンパク質性の線維成分とは、すなわち筋原線維のことです。筋収縮の主役ですから、構造は必ず説明できる=図が描けるようにしておきましょう。筋節の構造がわかれば、これが繰り返されているわけですから簡単でしょう。

 筋収縮のしくみは、筋原線維(あるいは筋節)のレベルでの滑走機構をまずしっかりと理解すること。ミオシンとアクチンが結合すること、ATPの分解によって生じるエネルギーが利用されていること、そして、このエネルギーを使ってミオシン分子が構造を変化させていることがポイントです。これらの結果、太いフィラメントと細いフィラメントが互いに滑走するように動くことで各筋節が収縮します。各筋節が収縮するということは筋原線維全体が収縮するということです。筋原線維の両端は筋形質膜と結合していますから、筋原線維の収縮は筋線維の収縮を引き起こします。すべての筋繊維が収縮すれば、筋が収縮します。

 骨格筋は随意筋です。つまり、体性神経系運動神経からの興奮の伝達を受けて収縮します。ここで重要なポイントは、神経筋接合部での興奮の伝達とその後の興奮収縮連関です。

 運動ニューロンと骨格筋線維がつくるシナプスである神経筋接合部はよく研究されており、図で説明したとおり、構造もしくみもよくわかっています。運動終板側の構造が特徴的で、興奮の伝達によって生じたEPSPが加重されて必ず活動電位が生じるための工夫が凝らされています。

 筋活動電位は筋形質膜を伝導します。ここで重要なことは、T細管の存在です。筋小胞体終末槽とほとんど接しています。したがって、T細管を興奮が伝導すると筋小胞体の膜タンパク質である電位依存性カルシウムチャネルが開放します。筋小胞体内には高濃度のカルシウムイオンが貯蔵されているため、チャネルが開放すると同時にカルシウムイオンが筋形質へ放出されます。

 筋形質内のカルシウムイオン濃度は低いため、カルシウムイオンは拡散によって広がります。そして、細いフィラメントを構成するトロポニンと結合します。

 トロポニンはトロポミオシンと結合していますが、さらにカルシウムイオンが結合することで細いフィラメント全体の構造が変化します。この結果、アクチンタンパク質のミオシン結合部位が露出し、アクチンとミオシンが結合できるようになります。

 ミオシンはATPを分解する活性を持っていますが、アクチンと結合した状態でないとうまくATPを結合できないようです。したがって、トロポニンにカルシウムイオンが結合していない状態(興奮が伝達されていない状態)ではミオシンはATPを分解することはなく、筋収縮は生じないと考えてよいでしょう。

 神経筋接合部での興奮伝達が終わった、あるいはない状態では興奮収縮連関は生じません。つまり、カルシウムイオンは筋小胞体から放出されません。したがって、アクチンとミオシンが結合することはありません。

 筋小胞体には能動輸送体であるカルシウムポンプが存在し、常に稼働しています。したがって、電位依存性カルシウムチャネルが閉じられると、このポンプの作用によって筋形質ないのかルシウムイオンは筋小胞体内へ移動していきます。そして、筋形質内のカルシウムイオン濃度が低下すると、トロポニンに結合していたカルシウムイオンも遊離します。

 この結果、アクチンとミオシンの結合は維持できなくなり、細いフィラメントと太いフィラメントの間にはたらいていた引っ張り合いがなくなります。したがって、両フィラメントは収縮時とは逆方向に滑走します。これが弛緩です。

 プリントには多くの図を入れました。それぞれを見ながら順に説明してみましょう。言葉が詰まったり、しどろもどろになったりせずに説明できればわかっているということです。もちろん、自分で勝手に判断するのではなく、誰かに聞いてもらって判断してもらうのがよりよいでしょう。

 プリントp221のずはすべてを網羅したすですから、この図が説明できるようになることを目標にするとよいでしょう。また、筋節レベルでの滑走機構はp217や218を使うとよいでしょう。

 筋収縮には莫大なエネルギーが必要です。つまり、多くのATPが消費されています。来週は、このATPをどのようにまかなっているのかについて考えます。また、筋線維はATPの産生方法の得手不得手によっていくつかの種類に分類することができます。これも非常に重要なテーマです。しっかりと予習しておきましょう。

第14回 自律神経頚の構成と機能

 今回は自律神経系、特に遠心性神経である交感神経系と副交感神経系の構成とはたらきを簡単にまとめました。自律機能のうち特に重要な機能である循環器系や呼吸器系の機能を学んでいるので理解しやすいでしょう。また、それぞれの神経性調節を考えるにあたって、交感神経系と副交感神経系の特徴を押さえておくとわかりやすなるはずです。

 交感神経系と副交感神経系の構成は図を見ながら各自でよくおさらいしておくこと。詳細は解剖学でも取り上げられるはずですが、概略だけでもよいので早めに頭に入れてしまいましょう。ポイントは、節前ニューロンの細胞体がどこにあるか(言い換えると節前線維がどこから出ているか)、自律神経節がどこにあるのか(言い換えると節後ニューロンの細胞体がどこになるのか)の2点です。特に、交感神経系はやや複雑なところもありますので、いくつかピックアップして自分でなぞってみましょう。また、副交感経を含んでいる4つの脳神経は直ちに頭に入れておくように。

 交感神経系と副交感神経系による調節には3つの特徴がありました。用語も重要ですが、何を意味しているのか、具体的に考えられるようにしておきましょう。授業では心臓、特に血圧の調節機能を例に挙げて説明しました。心臓そのものを理解していることが前提ですが、交感神経優位あるいは副交感神経優位な状態がつくられたときに刺激伝導系や固有心筋がどのような反応を示すのかをよく考えられるようにしておきましょう。

 血圧が上昇した場合の調節については生理学Ⅰプリントp31に、ネガティブフィードバックのよい例としてフローチャートがあるので必要であれば参考にすること。

 夏休み明けには筋、特に骨格筋細胞の構造と機能を取り上げます。ニューロンと並ぶ興奮性細胞の代表です。すでに学んだ心筋の機能とも共通するところがあるので、単に骨格筋として予習するだけでなく、心筋について復習するつもりで全体を見ておくと、より理解が深まるでしょう。

 前期のポイントは細胞の構造と機能、特に細胞膜を介した物質の移動です。そして、この物質移動は、単に細胞の生存のためというだけではなく、それぞれの細胞機能を実現する上で必須です。膜電位の変化、例えば活動電位がそのよい例です。そして、この活動電位が生じるからこそ、膜電位が変化するからこそ、ニューロンに興奮が生じ、この興奮によって神経系は全身の器官機能を調節することができます。

 細胞膜を介した物質移動を考えるためには、細胞膜の構造はもちろん、膜タンパク質、さらに遡ってタンパク質とはどのようなものかなどを理解している必要があります。また、輸送の方法にもいくつかの種類がありますが、その違いを理解するには輸送される物質の構造や性質を知っている必要があります。

 どこを入口にしてもよいですが、そこから内容を広げて一つ一つをしっかりとおさえていきましょう。他人の書いたもの、つくったものを眺めていても頭には入りません。何かを覚えるためには、何を覚えるのかを自分ではっきりさせて、どうすれば覚えやすいかを考え、さらに、覚えやすいものあるいは状態を自分でつくることです。これら一連の作業が勉強するということであり、その結果理解がうまれます。

第13回 神経伝達物質と受容体、神経回路、中枢神経系の特徴と体性神経系の構成、自律神経系の特徴

 今週ははじめに神経伝達物質の種類やはたらきを確認しました。アセチルコリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、GABA、グリシン、そしてアドレナリンとノルアドレナリン、さらにドーパミンは頭に入れておきましょう。早速ですが、来週はアセチルコリンとノルアドレナリンを取り上げます。

 受容体には2種類あると説明しました。ただし、ほとんどの伝達物質に対して2種類の受容体があります。違いははっきりしていますが、アセチルコリン受容体など具体的に区別して考えなければならない現象もあります。

 Gタンパク質は今回紹介したように、細胞外からのシグナル分子に対する受容体と共役して(カップルして)作用するタンパク質です。具体的な機能の違いから数種類が知られていますが、いずれも他のタンパク質の機能を変化させるはたらきをします。機能を発揮するためにGTP(guanosine tirphospate;グアノシン三リン酸)が必要であることからGTP結合タンパク質と呼ばれ、略してGタンパク質といいます。図にあるように小型のタンパク質の三量体です。

 ニューロンは他の細胞との間で興奮を伝えたり受け取ったりしています。神経回路を考えることは、ニューロンとその相手との関係を見ることです。単シナプス結合でのつながりが基本ではありますが、授業で考えた2シナプス結合、つまり3個のニューロン間の接続を考えられるようにしましょう。それぞれのシナプス前ニューロンの反応のしかた、どのような伝達物質がどうなるのか(放出されるのか否か)、そしてシナプス後細胞の状態がどう変化するのか、一つ一つ順に説明できるようにしましょう。必ず声に出してみること。かかれば文を読んでいるようにスムーズに説明できれば、同じをことを書けと言われてもすぐにできます。説明の途中でしどろもどろになっているようでは書いて説明することはできません。

 発散回路と収束回路は具体的にイメージできるようにしておきましょう。閉塞回路と促通回路も概念的に理解していればよいと思います。

 解剖学の進捗がよく分からないので、脳と脊髄に共通する特徴を簡単に説明しました。脳の構造については、プリントで説明した程度は頭に入れておきましょう。生理学2では脳幹に循環機能や呼吸機能の中枢があることが取り上げれらていると思います。プリントp176には脳幹を延髄、橋、中脳のいくつかの断面で、神経核や脳-脊髄間の伝導路の位置を示しました。ややわかりにくい順に並んでいますが、参考になると思います。

 また、脊髄神経は脊髄分節ごとに出ていますから、分節の場所(番号)で区別しますが、脳神経には固有名詞がついていて、その多くは脳幹に出入りします。それぞれの神経の構成や機能に特徴があり、生理学全体の理解にも関わります。プリントp177には脳神経の出入りの様子と脳神経核(脳神経を構成するニューロンの細胞体が存在する)を図示しました。また,
P180以下にそれぞれの構成と機能を一覧にしました。生理学Ⅰ&Ⅲで具体的に触れるのは後期に入ってからですが、他の科目で取り上げられるはず。例えば、既に循環機能や呼吸機能を学ぶ中では舌咽神経と迷走神経の説明があったはず。気がついたところから翌頭に入れておきましょう。
 
 体性神経系は、解剖学的には脳神経と脊髄神経にまたがっています。機能については後期に、感覚器機能や運動機能と合わせて取り上げます。それぞれが、感覚神経、運動神経の機能を抜きには説明できないためです。


 自律神経系も末梢の自律機能と合わせて考えた方がわかりやすいため、それぞれの器官や器官系の神経性調節として取り上げられるはずです。一方、ある程度全体的なことが分かっていた方が、個々の調節機能もわかりやすいでしょう。既に循環器系や呼吸器系を学んでいるため、考え方の基本的なことは分かっていると思いますので、自律神経系が果たしている役割を全身性に考えておこうと思います。あわせて、具体的な機能調節に伝達物質や受容体がどのように関わっているのかについても触れます。

 自律神経神経系については、生理学Ⅱ&Ⅳを一通り学んだ後、つまり後期の最後に、それぞれの中枢機能を合わせて改めて考え直します。

第12回 跳躍伝導、興奮性シナプスと抑制性シナプス、シナプス後電位の加重、伝達物質

 昨日は、研究室に戻った後でWebinarの予定があったため、遅くなりました。

 グリア細胞はニューロンの機能を支える役割があります。これは軸索を包んで神経線維を構成するというだけではなく、今回取り上げたアストロサイトのような機能も含まれます。

 血液脳関門については構造的には解剖学で取り上げられるかもしれませんが、それ以外ではほとんど触れられることはないかもしれません。しかし、脳の機能を維持する上で欠かせないしくみです。

 有髄線維と無髄線維は構造が異なるだけではなく、伝導のしくみに大きな違いがあります。授業でも触れたように、伝導速度が大きいほど生存には有利です。したがって、高等動物ほど、進化の過程で後の時代に出現した動物ほど、その動物の神経線維の中での有髄神経線維の割合が高いようです。しかし、発生上やむを得ないのか、ヒトでも無髄神経線維の部分がいくつかあります。神経線維の一覧表でC線維の機能の例で示したような古くからある機能を担っている神経線維は未だ無髄神経線維です。

 跳躍伝導のしくみはそれほど難しくないと思います。伝導速度の大きさとともに、エネルギー消費の違いについてもより進んだしくみであることが分かるでしょう。

 神経線維は伝導速度によって分類し、それぞれに名称が与えられています。今後の授業では特に説明することなくこれらの名称で呼び表して進めていきます。

 また、興奮伝導の三原則についても触れましたが、こうした特徴は決して丸暗記をするのではなく、構造と機能を考える文脈の中で説明できるようにしておくこと。

 後半では興奮伝達のしくみを改めて考えました。化学シナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスに分けることができます。来週説明する伝達物質と受容体の組合せによって、シナプス後細胞に脱分極が生じるのか、過分極が生じるのかが決まります。脱分極が生じるということは、より活動電位が生じやすい=興奮しやすい状態になっているということです。一方で、過分極が生じているということは活動電位が生じにくい=興奮しにくい状態になっているということです。

 図で見たように、ニューロン(シナプス後ニューロン)は多くの軸索終末との間でシナプスをつくっています。そして、ここのシナプスで生じたEPSPとIPSPの総和がどうなるかによって、活動電位が生じるかどうかが決まります。多くのIPSPが集中することによって、一過的に大きな過分極が生じることもあり得るわけです。

 個々のニューロンについての複雑な加重現象を考える機会はありませんが、EPSPやIPSPが生じる現象を取り上げる機会は運動機能を考える場合など何度かあると思います。また、来週は伝達物質や受容体の機能と組み合わせて、そのシナプスが興奮性であるのか抑制性であるのかについても考えます。

 神経伝達物質の種類はそれほど多いわけではなく、その中でも授業で取り上げるのは数えるほどです。取り上げられた順に確実に頭に入れていきましょう。来週の授業ではそれほど詳しく説明しませんが、各器官の生理機能を考える上でより重要なのは受容体です。


 来週の予習範囲ですが、神経回路のうちの「周辺抑制(側方抑制)」は除きます。後期に改めて説明するので、今回は簡単に触れますが、うだけにします。また、第4章5の「中枢神経系の構造と機能」はプリントに加えた図をよく見ながら構造の特徴を中心にしっかりと頭に入れておくこと。ただし、「脳神経」の一覧表も中枢神経系の一部のような位置に入っていますが、この内容は省きます。

 また、『生理学のための化学』第12章「化学反応」には数カ所の誤字脱字があります。前後の文脈から意味は十分にとれると思いますので、特に訂正はしません。分からない部分があれば連絡して下さい。

第11回 興奮の伝達、神経系の構成、ニューロンとグリア、神経線維と跳躍伝導

 今回も前半のクラスと後半のクラスでやや進捗が異なりますが、両方をカバーするようにまとめます。

 ニューロンからニューロンへの興奮の伝達はすべて化学シナプスによっています(例外もありますが、無視してもよいでしょう)。また、前期の最後に取り上げるニューロンと骨格筋細胞との間での興奮伝達も同様に化学シナプスです。したがって、化学シナプスによる興奮伝達は、ニューロンの機能を考える上で非常に重要度の高く、神経系の機能全体を考えていく上でも欠かせません。

 プリントにあるような図を実際に描き、さらにしくみを説明できるようにしておきましょう。ポイントは、神経インパルスが軸索終末へ伝導することによって電位依存性カルシウムチャネルが開放することと、このチャネルを通して細胞内(軸索終末内)へ流入したカルシウムイオンの作用によってシナプス小胞がシナプス前膜と融合してシナプス小胞内の神経伝達物質がシナプス間隙へエキソサイトーシスによって放出されることです。この二つを理解すれば、伝達物質がシナプス後膜の受容体に結合して生じる現象は、脱分極と活動電位が生じるしくみを思い出せばよいでしょう。

 今回は化学物質依存性イオンチャネルが受容体である例を挙げました。伝達物質と受容体については来週(または再来週)の授業でもっと詳しく説明します。細胞によって組合せが異なり、この違いによって細胞の反応のしかたが変わってきます。さまざまな生理現象を考える上で大切なところですが、基本的な仕組みが理解できていないと応用が利きません。化学シナプスの構造と伝達のしくみは納得がいくまで繰り返し復習しましょう。

 神経系の構成は解剖学で取り上げられる分野ですが、授業の進捗に整合性がとれていませんので簡単に説明しました。プリントではさらに詳しく説明している部分がありますが、再来週以降に各自で取り組んでもらうことになります。

 神経機能を概観して説明しました。ここでも、神経系全体の構成を少し頭に入れておく必要があります。やや抽象的な説明でしたが、後期に取り上げる感覚機能や運動機能、そして中枢神経系の高次機能などを一通り学ぶと実感がわいてくるでしょう。

 神経系を構成する器官としては、脳や脊髄、あるいは大脳、小脳、間脳、脳幹と考えていくことができます。組織的にはやや曖昧で、上皮組織はないと考えてよいですし、もちろん筋組織はありません。結合組織はありますが、機能的には考える必要は無いでしょう。したがって、機能を担っているのはニューロンとグリアの2種類の細胞です。ニューロンが断然重要であることはいうまでもありません。

 ニューロンとグリアの関わりとしては、ニューロンの軸索の周囲をグリアが覆ってつくる神経線維の構造をよく見直しておきましょう。特に髄鞘の成り立ちと、髄鞘の有無による構造の違いを理解しておくことが重要です。神経線維の外観と断面の電子顕微鏡写真を見ながらイメージを膨らませておきましょう。

 中枢神経系と末梢神経系では髄鞘をつくっている細胞が異なります。また、無髄神経で軸索を覆っている細胞も中枢神経系と末梢神経系では違いがありますので、差をはっきりさせて頭に入れておきましょう。

 さて、髄鞘の有無は単に構造が異なっているというだけではなく、興奮の伝導のしくみにも違いがあります。これが逐次伝導と跳躍伝導の違いです。無髄神経で生じる逐次伝導は前回の授業で説明した、興奮伝導のしくみと全く同様です。むしろ、先週は軸索に特別な仕掛けがない場合に生じる伝導として説明しました。これが逐次伝導です。一方、有髄線維では軸索が髄鞘によって覆われているために、軸索の細胞膜が細胞外液と接することができません。また、電位依存性ナトリウムチャネルもありません。したがって、髄鞘で覆われた部分では活動電位が生じることはなく、ランビエ絞輪の部分でだけ活動電位が生じます。この結果、活動電位=興奮は、ランビエ絞輪の部分を跳ぶようにして順に伝わっていくことになります。これが跳躍伝導です。

来週はすでに学んでいる伝導と伝達について、そのしくみをさらに詳しく考えます。

第10回 静止膜電位、脱分極と活動電位、興奮の伝導と伝達

 1限目のクラスと2限目のクラスでやや進捗に差がありますが、両方まとめてしまいます。

 静止膜電位がどうして生じるのかについては、以前に配布したプリントを改めて見直しましょう。授業でも、プリント以上の説明をしたわけではありません。カリウムイオンの細胞内外での移動がポイントです。カリウムイオン漏洩チャネルは、ニューロンの細胞膜には多量に存在するため、常時一定数のチャネルは開放されていると考えてよいでしょう。したがって、濃度勾配と電気化学的勾配の両方の影響によって、カリウムイオンはこのチャネルを通過します。濃度勾配によって細胞内から細胞外へ移動する量と、電位勾配によって細胞外から細胞内へ移動する量が等しい状態が維持されるため、電位差が生じます。

 ナトリウムイオンの影響にも触れましたが、ナトリウムイオン漏洩チャネルは量が少ないために、ナトリウムイオンの移動による影響は小さいと考えら得ます。ただし、濃度勾配と電位勾配のために、細胞外から細胞内へ一方向性に移動します。したがって、放っておくと細胞内のナトリウムイオン濃度が高くなってしまいます。これを解消するためにナトリウムカリウムポンプがはたらいていると考えてよいでしょう。カリウムイオンも細胞内へ過去ばれますが、上で説明したカリウムイオン漏洩チャネルを通過する量が多いため、ポンプによる輸送量は完全に相殺されます。

 今日取り上げた活動電位や興奮の伝導、伝達が生じるしくみは、前記の内容の中でもとりわけ重要です。この仕組みを理解するためには、細胞膜を介したイオンの輸送、つまりイオンチャネルやイオンポンプについて正しく理解する必要があります。もちろん、その前に細胞膜についても分かっていなければなりません。さらには、細胞内外の電解質組成や電流、電圧に関する基本的な知識も必要です。膜タンパク質である受容体のはたらきも大切です。ここまで学んできた多くの知識を集大成するような内容です。さらに、この後に取り上げる神経系を中心とする生理機能は、ニューロンの興奮という現象を抜きにして考えることはできません。しっかりと復習しておきましょう。

 まず、脱分極や過分極が生じるためにはニューロンに何らかの刺激が加えら得る必要があります。授業では電極をさして電気を通じるという、実験的な刺激をモデルにしました。刺激に対しては、刺激依存性イオンチャネルが反応します。

 刺激によって刺激依存性イオンチャネル、例えばナトリウムイオンチャネルが開放して細胞外からナトリウムイオンが細胞内へ流入します。静止膜電位を維持した状態で、細胞内の陽イオンが増加するわけですから、当然静止膜電位よりも陽性に変化します。この現象が脱分極です。

 小さな脱分極はすぐに静止膜電位に戻ってしまいますが、閾値電位を超えるような脱分極が生じると、閾値を超えたとたんに電位依存性ナトリウムチャネルが開放して、刺激依存性イオンチャネルの開放によって流入した陽イオンよりもさらに多量のナトリウムイオンが細胞内へ流入します。この結果、オーバーシュートします。

 電位依存性ナトリムチャネルにはゲートが2つあり、それぞれ役割が異なります。しかし、まずは、閾値を超えると開放し、オーバーシューすると閉鎖すると考えましょう。そうすると、活動電位のピークが常に同じ大きさであることがわかりやすくなるでしょう。

 膜電位のオーバーシュートは電位依存性カリウムチャネルの開放を促します。この結果、細胞内で多量に存在するカリウムイオンが細胞外へ流出します。静止膜電位をつくりだすために移動していた量とは比べものにならないくらい多量に移動し、再分極を生じます。

 再分極後に静止膜電位よりも膜電位が陰性方向に変化します。これは、再分極相で移動しているイオンがカリウムイオンだけであるために、が膜電位はカリウムイオン平衡電位に向かって変化していくからです。その後、ナトリウムカリウムポンプのはたらきで静止膜電位を回復します。

 細胞膜上の局所で活動電位が生じると、オーバーシュートによって細胞内にたまった正電荷=陽イオンが周囲の負電荷=陰イオンに引き寄せられて移動します。電流が生じていると考えてよいでしょう。この結果、活動電位が生じた局所の周辺に新たな脱分極が生じます。この新たな脱分極が閾値を超えると、同様に活動電位が生じます。一方で、最初に活動電位が生じた部位は不応気になっているため、つまり電位依存性ナトリウムチャネルが不活性化しているために、活動電位は生じません。したがって、興奮=活動電位は、はじめに生じた部位から外側に向かって広がっていきます。これが興奮の伝導です。

 興奮が伝導するということは、すなわち活動電位が生じる部位が移動していくということです。細胞膜には電位依存性ナトリウムチャネルが一様に存在していると考えると、隣接する部位のチャネルが順に開放していくということです。このように、移動していく活動電位のことを、神経インパルスということもあります。感覚器や運動器の機能を考える場合にはよく使いますので、この機会に一緒に頭に入れておきましょう。

 ニューロンに生じる神経インパルスは、軸索小丘に始まり軸索終末に至ります。そして、ここから他の細胞へ興奮を伝達します。興奮の伝達は必ず一方向に生じ、伝える側をシナプス前、伝えられる側をシナプス後といいます。したがって、興奮はシナプス前からシナプス後へと伝達されます。これから学ぶのはシナプス前はニューロン、シナプス後はニューロンまたは筋細胞である場合です。ニューロンから他の細胞への興奮の伝達は、細胞間に電気を通じるのではなく、間隙を化学物質を介しておこります。このようなしくみが化学シナプスです。

 心筋での興奮の伝達を既に学びましたね。来週あるいは再来週の授業で触れますが、刺激伝導系や固有心筋間での興奮の伝達では、互いに接し合っている細胞間をイオンが移動する=電流が生じることによって興奮が伝達されています。このようなしくみを電気シナプスといいます。

 シナプスは構造の名称であると同時に、機能の名称としても使いますので、注意しましょう。

 軸索終末までインパルス=活動電位が伝導してくると、この膜電位変化自体は終末で消えてしまいます。終末の細胞膜には電位依存性ナトリウムチャネルが無いからです。かわりに、電位依存性Ca2+チャネルがあり、このチャネルの開放によって、細胞外から細胞内へカルシウムイオンが流入します。このカルシウムイオンがシナプス小胞とシナプス前膜との融合を促すために、エキソサイトーシスが生じます。この結果、シナプス小胞内の神経伝達物質がシナプス間隙へ放出されます。

 シナプス間隙は、分子にとってはかなり広いスペースです。拡散(広義の拡散)によって広がっていく伝達物質が、対岸であるシナプス後膜の受容体と結合することによって、興奮が伝達されます。伝達物質や受容体については再来週の授業で触れますが、物質を仲立ちとしてシナプス後細胞にイオンの流入を生じます。これが新たな脱分極を生じることによって活動電位が生じます。シナプス後細胞に生じる変化は改めて取り上げますが、まずは興奮の伝導と伝達がどのように生じるかという基本的なメカニズムを理解しましょう。

第9回 浸透、能動輸送、小胞輸送、静止膜電位

 今回は冒頭で浸透圧について、先週の補足をしました。溶質濃度と浸透圧の大きさは比例する関係にありますが、この場合の溶質濃度は倒壊する前の物質濃度ではないことに注意しましょう。また、等張液、低張液、高張液の区別もしっかりと付けられるようにしておきましょう。これらの溶液に細胞を曝した場合の変化は『生理学のための化学』第6章でも詳しく説明しましたので、改めておさらいしておきましょう。また、生理的食塩水の濃度については『生理学ための化学』第4章、第6章の数字の方が正確です。プリントでは概数で示したと考えて下さい。

 また、水チャネル(アクアポリン)は細胞膜を介した浸透=水の移動を考える上で非常に重要なしくみです。現在は高等学校の生物でも取り上げられていますから、膜チャネルの1つとして是非とも頭に入れておきましょう。

 受動輸送と能動輸送の違いは、物質の輸送にエネルギーを使うか否かです。同じイオンを輸送するしくみとしては、イオンチャネルとイオンポンプを比較した考えるとよいと思います。しくみだけではなく、それぞれの膜タンパク質が担う細胞機能も大きく異なっています。

 ナトリウム/カリウムポンプはとりわけ有名で、よく研究されています。授業で見たアニメーションは以下のサイトで自由に閲覧できるはずです。膜タンパク質の構造は、このアニメーションもプリントの図も非常によく似ているのは、立体構造もある程度明らかになっているからです。
   https://www.youtube.com/watch?v=M6_NCdV7YO8
 ナレーションは文字起こし機能と翻訳機能を使えば、よい解説として利用できるはずです。

 二次性能動輸送も生理機能を考える上で欠かせないしくみです。授業でも説明したように、ほとんどの二次性能動輸送ではナトリムイオンの濃度勾配を利用しています。したがって、このしくみがはたらくと、ナトリウムイオンは細胞内へどんどんと移動していきます。したがって、細胞内へ入ってしまったナトリウムイオンを細胞外へ戻すしくみが必要です。これが一次性能動輸送でのナトリウムポンプです。
ナトリウム/グルコースシンポーターのはたらきについてもいかにアニメーションがあります。
   https://www.youtube.com/watch?v=nYC3_3hb54Q
 二次性能動輸送については小腸吸収上皮細胞の例を挙げましたが、他にも腎臓・ネフロンの尿細管で機能するナトリウム/グルコースシンポーターやナトリウム/カリウムアンチポーターなどがよく知られています。

 エンドサイトーシスとエキソサイトーシスも実例を挙げながら説明しました。ニューロンでの神経伝達物質の放出については次回または次々回の授業で触れます。

 後半で第3章に入りましたが、ニューロンの構造については次々回の授業で改めて説明しますが、ここでは細胞体、軸索、樹状突起と3つの部分に分けられることをしっかりと頭に入れておきましょう。

 すべての細胞には膜電位があるという説明をしましたが、ニューロンと筋細胞では刺激によって膜電位が大きく変化します。このしくみが次回のテーマです。したがって、今回は膜電位あるいは静止膜電位とは何かをよく理解しておくことが大切です。A組の授業では静止膜電位が生じるしくみも説明しました。カリウムイオンの移動が大きくはたらいて、細胞内を負に帯電させる状態ができあがっています。前回の授業で配布したプリントをよく見直しておきましょう。

第8回 タンパク質の修飾と輸送、受動輸送 第8回 タンパク質の修飾と輸送、受動輸送

 先回の内容から引き続いて、リボソームで合成されたタンパク質(この段階ではポリペプチド鎖という方が正しい)がどのようにして運搬されていくのかを、細胞膜タンパク質や細胞外へ分泌されるタンパク質を例にして説明しました。
 粗面小胞体 ➡ ゴルジ装置 ➡ 細胞膜
と運ばれていきますが、運搬しているのはいずれも小胞です。粗面小胞体もゴルジ装置も、細胞膜と同様に脂質二重膜を基本構造としています。したがって、膜の一部がちぎれるようにして小胞をつくったり、小胞が膜と融合することで内部を一体化することができます。

 細胞質の小器官への輸送もそれぞれに研究されています。授業の説明と重複する内容も含めて、先週配布した『補遺:遺伝子と遺伝子発現のしくみ』の「タンパク質の立体構築と輸送」に簡単にまとめていますので、各自で見ておくように。

 今回の中心は細胞膜を介した物質の輸送です。時間の都合もあり、受動輸送についてしか説明できませんでしたが、来週の内容と合わせて前期の中でもとりわけ重要です。しっかりと予習と復習に取り組みましょう。

 拡散や浸透に関する基本的な説明は、すでに『生理学のための化学』で学んでいる内容の繰り返しでした。非常に重要な現象ですから、疑問点がないように見直しておきましょう。

 細胞膜を介して物質が移動した後、細胞内(サイトゾル内)あるいは細胞外で移動していく場合には、その物質の移動は広義の拡散であると考えてよいでしょう。水を溶媒とする溶液中をそれぞれの物質が拡散によって移動して広がっていきます。また、浸透あるいは浸透圧は、生理学Ⅱ&Ⅳで取り上げられる体液量の調節のメカニズムを考える上で、どうしても頭に入れておかなければならない概念です。「血液膠質浸透圧」については『生理学のための化学』第6章の最後で簡単に触れましたが、同じく生理学Ⅱ&Ⅳで取り上げられるはずです。

 受動輸送は、それぞれの物質が濃度勾配や電位勾配、またはその両方にしたがって移動することを指していいます。溶質の移動である拡散(狭義の拡散)は物質の大きさや極性の有無によって、単純拡散、膜チャネルを介した拡散、そしてキャリアタンパク質を介した拡散に分けることができます。物質の特徴と移動方法の違いを整理しておきましょう。同時に、どんな物質が、それぞれの特徴を持っているのかも一緒に考えられると、この後の学習にも役立つと思います。

 溶媒である水の移動は浸透として、溶質の移動とは区別します。受動輸送である点は同じですが、体液成分の大部分を占めている水の移動は、生体機能全体と関わらせて考えると、溶質の移動とは区別する必要があります。

 浸透圧の定義自体は授業で説明したとおりで、「溶媒分子が半透膜を通って浸透するときに半透膜にかかる圧力で、溶媒分子の移動を止めるために必要な圧力の大きさに等しい」ということです。しかし、今後の学習の便宜を考えると、溶質濃度の高い方(水濃度の低い方)が溶質濃度の低い方(水濃度の高い方)から水を引っ張っていると考えた方がわかりやすいでしょう。この水を引っ張っている力の大きさが、すなわち浸透圧の大きさです。したがって、浸透圧は膜を通過できない溶質の濃度に比例します。

 説明が途中で切れてしまったのでわかりにくくなるかもしれませんが、来週は、細胞膜を介して浸透圧に差があるとどんなことが起こるかを考えるところから始めます。

 来週は、細胞膜を介した輸送の残り、能動輸送と小胞による輸送を説明した後で、さまざまな細胞の構造と機能を取り上げます。ただし、プリントのすべてを説明する余裕はありませんので、ニューロンだけに触れますので、この部分の予習はニューロンの構造と機能だけとします。また、第3章では静止膜電位について、今日配布したプリントをよく読んでおくように。

第7回 遺伝子と遺伝子発現

 遺伝子や遺伝に関わる生命現象は広く関心の高い分野だと思います。この10年くらいを遡ると、高等学校でもかなり突っ込んだ内容を学習するようです。いわば常識だということでもありますが、表面的な知識にとどまらず、生理現象あるいは疾患に関わるしくみつながるように考えられるようにしていきましょう。できるだけ材料は提供しているつもりです。

 さて、授業では遺伝子を、タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの領域とタンパク質に翻訳されないRNAの塩基配列をコードするDNAの領域と定義しました。転写や翻訳のしくみと合わせると、前者にウエイトを置いた説明になっていたと思いますが、遺伝子数としては両者がそれぞれ約20,000個で、合わせて約40,000個であると頭に入れておきましょう。遺伝子数は、研究の進展によって厳密には日々変わっていますが、概数としてはほとんど変化しないと思います。まt、ヒトの遺伝子数を他の生物の遺伝子数と比較しておきましょう。

 ゲノムマップについては、βグロビンを例に挙げて説明しましたが、今後授業で多くのタンパク質を学びます。その都度、自分で探してみましょう。ヘモグロビン以外にすでに学んだものを挙げると、α-グロビン、DNAポリメラーゼ、アルブミン、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、エリスロポエチン、ABO血液型遺伝子、いくつかの血液凝固因子などです。1番染色体の「骨格筋アクチン」はαアクチンといい、細胞骨格とした学んだアクチン(βアクチンといい、7番染色体にあります)とは異異なるタンパク質をつくります。

 タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子は、エキソンとイントロンに分かれ、さらに調節領域も隣接しています。翻訳の特徴からも分かるように、エキソンのすべてがアミノ酸配列をコードしているわけではなく、非翻訳領域を含んでいます。したがって、エキソンとは、転写後のスプライシングによってmRNAをなる部分のことを指しています。

 転写の鋳型となるDNA鎖は、2本鎖のうちのいずれか一方です。どちらの鎖が鋳型として使われるかは遺伝子に依ります。相補的な組合せによって塩基対をつくりながら、転写反応が生じるところを押さえておきましょう。5個のエキソンからなる遺伝子の場合、第1のエキソンのはじめから第5のエキソンの最後までを転写します。その後、プロセシングが生じてmRNAとして、細胞質へ出て行きます。

 細胞質へ出たmRNAは直ちにリボソームと結合すると考えていいでしょう。翻訳反応は転写よりもやや複雑でしたが、mRNAの連続する3つの塩基の並び=コドンごとに一区切りとして、それぞれをアミノ酸に対応させます。アミノ酸はサイトゾル中に豊富に存在するのですが、必ずtRNAによってリボソームへ運搬されます。

 プリントp77の図に、始まりであるメチオニン以外のアミノ酸おmRNAのコドンを見ながら、順にアミノ酸を当てはめてみましょう。実感がわくと思います。そして、最後は停止コドンには、対応するアミノ酸またはtRNAがないために、ここでペプチド結合の合成反応が止まります。つまり、蛋白質の合成反応が終わります。

 できあがったタンパク質は、そのままでは機能できないため、しかるべき立体構造をつくりながら、それぞれのタンパク質が機能する部位へ運搬されていきます。来週はこの部分を簡単に説明します。今回の予習の範囲でしたが、p78の図を説明と照らし合わせながら、もう一度よく見ておきましょう。

 さらに、次回の授業では物質がどのようにして細胞膜を通過するのかについて考えます。『生理学のための化学』第9章は脂質の構造と特徴、さらになぜ細胞膜が脂質二重膜を基本構造として成り立っているのかを取り上げています。細胞膜の構造と機能を改めて確認しましょう。さらに、第4章で学んだ溶液中での物質の拡散、さらに第6章のテーマであった浸透現象も、細胞膜を介した物質移動のしくみを考える上で基礎となる知識です。理解が不十分であると感じていれば、合わせて見直しておきましょう。

第6回 細胞分裂、染色体、DNAとその複製

 今回は、はじめに細胞周期について簡単に説明しました。授業では細胞分裂と細胞周期の二つの用語をあまり区別することなく使いました。細胞分裂という場合には、分裂して数を増やしていく、まさに分裂する場面に注目していることが多いような気がします。一方、細胞周期という場合には、間期も含めて考えている場合が多いでしょう。したがって、DNAの複製という現象も、細胞周期の中の一場面と考えられます。

 DNAが複製される仕組みは非常に複雑で、かなりごまかして説明をしました。『生理学のための化学』第11章でも取り上げています。小テストの対象とするのはもう少し先ですが、時間を作って早めに目を通しておきましょう。

 しかし、重要なポイントは「半保存的に複製される」ということです。元々ある二本鎖のそれぞれの鎖の塩基の配列に対して相補的な塩基をもつヌクレオチドを向かいに置き、そのヌクレオチドを順につなぎ合わせていくとこによって、もとの二本鎖と全く同じ二本鎖が二つできあがります。

 DNAの複製の仕組みを明らかにするにあたっては日本人研究者も大きな貢献をしています。機会があればゆっくりと説明したいと思います。

 DNAの二重らせん構造とともに、さらに立体的に構築された染色体の構造も考えました。どうやったらあんなにコンパクトに、しかも常に同じ形態になるのか、実はまだよく分かっていません。しかし、複製された後に染色体がつくられ、1個の染色体は2本の染色分体がセントロメアで結合しています。そして、各染色分体が細胞1個分のDNAにあたり、細胞分裂によって染色分体ごとに分配されていくということが繰り返されています。

 細胞が増殖するだけでは、細胞の大きな集合体ができるだけです。生物の身体を形作っていくためには、細胞ごとに特別な構造と機能を獲得する必要があります。そのために、細胞ごとの異なった遺伝子の働きが必要です。次回は、遺伝子の構造と、それぞれの遺伝子がどのように発現するか=転写され翻訳されるのかを考えます。

第5回 サイトゾル、細胞骨格、細胞小器官

 今週の授業は細胞小器管の構造と機能を順に取り上げていったため、やや雑ぱくな内容になりました。サイトゾルや細胞骨格を含めた各小器官の機能は、これから考えていく器官や組織のはたらきを直接に担っています。生理学Ⅰ&Ⅲでは、ある器官や組織、細胞の機能を考えるときには、具体的にどの細胞のどの小器官が関わっているのかに触れていくつもりです。自分でもけその都度よく考えるようにしましょう。

 サイトゾルは細胞内で生じる多くの化学反応の場です。細胞内である反応が生じているという説明があった場合、小器官が特定されていなければサイトゾルが舞台となっていると考えていいでしょう。ATP産生のための解糖系やグリコーゲンの合成と分解、あるいは赤血球中でヘモグロビンが存在するのもサイトゾルです。また、細胞外からの刺激が細胞内に伝わっていく場合も、サイトゾルでさまざまな分子の移動や化学反応が生じています。

 ところで、サイトゾルの「ゾル」とは、全体がコロイド溶液になっている状態をさします。したがって、流動性はあり、化学反応の進行にも支障のないようになっています。ただ、一般的な細胞の条件では、細胞質の周辺部分(膜近傍)には微小繊維などが豊富であるために、粘性が高い状態(ゲルといいます)になっています。

 細胞骨格については、3種類、特に微小繊維と微小管の構成が重要です。繊毛、鞭毛、微絨毛は、いずれも生理学Ⅱ&Ⅳや解剖学で学ぶ内容に関わっていますが、ここで頭に入れてしまいましょう。アクチンは非常に有名なタンパク質で、微小繊維を構成すること以外にも役割があります(『生理学Ⅰ第5章』で取り上げます)。微小管は骨格であると同時に、細胞内での小器官の移動にも必須の役割があります。これも別の機会に取り上げます。

 細胞小器官は、一区塚に分けて説明をしました。タンパク質の合成や加工・修飾、運搬に関わっているのがリボソーム、粗面小胞体、ゴルジ装置です。第2章第6節遺伝子発現のしくみで改めて取り上げますが、それぞれの構造や互いの関わりについておさえておきましょう。

 同じ小胞体でも、滑面小胞体は非常に特殊な位置づけです。生理学Ⅰ&Ⅲでは筋細胞における役割について触れます。

 リソソーム、プロテオソーム、ペルオキシソームの3種類は、細胞内での分解や処理にかかわる小器官です。特にリソソームは多様なはたらきをもっているため、研究も進んでいます。参考として上げら「オートファジー」はその代表です。プリントには図と簡単な説明しかありませんでしたので、追加で説明文を配布しました。改めて解説することはありませんので、各自で目を通しておくように。

 ミトコンドリアはATP産生のための小器官です。ただし、サイトゾルで生じる解糖系が非有酸素反応(酸素を消費せずにATPを産生する)であるのに対して、ミトコンドリア内で生じるクエン酸回路と電子伝達系は有酸素反応(反応の進行に酸素が必須)です。すでに学んだ赤血球にはミトコンドリアがありません(他の小器官もほとんどありません)から、赤血球は有酸素反応によってATPを産生することができません。

 細胞小器官の構造を考える上で忘れてならないのは、小胞体、ゴルジ装置、リソソーム、ペルオキシソーム、そしてミトコンドリアはいずれも膜によってできているということです。これらを細胞内の「細胞内膜系」としてまとめることもありますが、いずれも細胞膜同様に脂質二重膜(+膜タンパク質)によってつくられています。ミトコンドリアだけが膜が二重になっていますが、他はすべて1枚の膜によって、サイトゾルとその小器官の内部が仕切られています。細胞膜とこれら小器官の膜を合わせて『生体膜』ということがあります。来週の授業で追加プリントを配布して、これらの細胞内膜系小器官の成り立ちを解説します。

第4回 細胞と細胞膜

 長い連休でしたが、やることも多かったことでしょう。連休前に紹介した医学会総会などに行っていれば是非感想を聞かせて下さい。

 今回からいよいよ細胞の構造と機能を考えていきます。冒頭で紹介したように、17世紀から既に観察され、19世紀の初めには、細胞が生体の基本単位であることが明らかにされていました。ちょうど、ベルナールが恒常性の概念を発表した時期に一致します。したがって、この時期に現在につながる生命科学が始まったといってもいいかもしれません。

 今回の内容で最も重要なことは、細胞膜の構造が脂質とタンパク質からなる「流動モザイクモデル」で説明できるということです。そして、細胞膜の基本構造は脂質二重膜で、さらにその中心はリン脂質です。したがって、リン脂質の構造と両親媒性物質であることをよく理解しましょう。『生理学のための化学』第9章ではやや詳しく説明しましたので、小テストの順番にとらわれずにじっくりと読んでみましょう。また、構造を理解するためには、なんと言っても実際に図を描いてみることです。リン脂質も、頭部と尾部の二つの部分からなっているということが分かる程度でよいので、手を動かしてみましょう。眺めているだけでは絶対に理解できません。

 細胞膜を構成する脂質の3/4はリン脂質ですが、それ以外にコレステロールと糖脂質があります。特に、コレステロールは膜の強度を高めるために必須です。ややもするとネガティブなイメージで語られることの多い物質ですが、細胞膜の構造に必須であるということは生存に必須であるということです。合わせて頭に入れておきましょう。

 細胞膜の機能を大きく二つに分けるとすると、細胞内外の障壁としての機能と細胞内外での物質や情報の媒体としての機能に分けることができます。障壁としての機能は主に脂質二重膜が担っています。しかし、物質や情報の媒体としての機能の多くを果たしているのは膜タンパク質です。今回は大雑把に紹介しただけですが、今後さまざまな膜タンパク質を取り上げてその機能を説明します。また、生理学2&4でも触れられるはずですから、その都度良く確認しましょう。
 
 授業の冒頭で紹介した18世紀の複式顕微鏡やレーウェンフック単式顕微鏡の写真などは昨年、東京・上野の国立科学博物館で開催された特別展「人体〜神秘への挑戦」の図録に掲載されています。既に終わった展覧会ですが、公式のホームページはここです。http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2018/jintai/index.html、また、文献リストはhttp://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2018/jintai/reference.html に挙げられています。

第3回 pH、フィードバック、化学反応

 今回取り上げたうち、水素イオン濃度とpHについては『生理学のための化学』第5章で取り上げていますので、ここで中途半端な説明をするよりも酸と塩基の性質とともに考えた方がわかりやすいでしょう。炭酸−重炭酸緩衝系についても合わせて説明しています。

 フィードバック、特にネガティブフィードバック機構については、エアーコンディショナーを例にして基本的な仕組みを説明しました。別途改めて説明を付しましたので、改めて考えてみましょう。

 授業でも触れたように、血圧の調節は循環器系の仕組みを理解する上で重要なポイントになる内容です。フィードバック機構の考え方のみならず、心臓と血管の構造と機能がよく分かっていないと、血圧調節の全体像をしっかりと説明することはできません。理解した内容を自分の言葉で説明するという意味でもよいモデルですから、生理学2で学ぶときには改めて思い出すようにしましょう。

 ポジティブフィードバック機構については、別途例も挙げました。生理学で取り上げられる大きな現象は子宮筋収縮・子宮頚部拡大だけかもしれませんが、細胞内の現象としてはいくつか考える予定です。

 化学反応については、合成=同化、分解=異化、そして、合成+分解=化学反応全体=代謝=同化+異化 としてまずは用語の意味を頭に入れましょう。そして、同化の過程と異化の過程でエネルギーがどのように移動するのかを理解しておきましょう。

 生体で生じる化学反応のほとんどは交換反応であり、可逆的反応です。アミノ酸の結合と分解を例にして説明しました。『生理学のための化学』第12章前半でもほぼ同様の内容を説明しています。アミノ酸以外の例も取り上げて説明しましたので、合わせて読むと理解が深まるでしょう。

 生体での化学反応にかかわるエネルギーを考えるには、アデノシン三リン酸を抜きに説明することはできません。今後はATPと略しますが、名称と略号を自由に使えるようにしておきましょう。同化と異化の過程でATPの分解と産生がどのように関わっているのかをよく考えましょう。

第2回 階層性と恒常性

 少しは学校に慣れてきましたか? 生理学の授業としてはここまでは助走で、次回からは少しペースアップして進めていきます。したがって、助走のうちに自分なりの勉強のしかたをつくれるようにしておきましょう。

 生体における階層構造は、これ自体を理解するのは簡単です。しかし、今後学ぶ内容に当てはめて考えていく必要がありますので、必要に応じて振り返るようしましょう。

 生理学の教科書の目次を見れば分かるように、器官系ごとに、さらに器官ごとに、その機能を考えていきます。機能は構造に依存しますので、その都度器官の構造を、組織の積み重なり方などとともに学びます。器官の機能は組織、さらには細胞のはたらきに依っています。外皮系と消化器系について、例題のつもりで簡単にまとめていますので、必ず目を通しておきましょう。

 分子については、来週以降の授業で順に取り上げていきますが、元素と原子、そして複数の原子が結合して分子ができることについては『生理学のための化学』をはじめ、必要に応じて高等学校の科学の教科書などを見直しておきましょう。

 授業中に指摘してくれたように、『生理学のための化学』p10表2-2で、マグネシウムイオンのイオン式が”Mg+”となっていますが、"Mg2+"に訂正します。各自で直しておいて下さい。

 生体の恒常性は、具体的に考えていかないとわかりにくいでしょう。今回は体液の量と組成、特に電解質の組成を中心に考えてみました。細胞内液と細胞外液の組成、特にそれぞれで最も多い陽イオンと陰イオンについては、前期を通じて常に頭に入れておくべき重要事項です。

 体液のバランスの調節については、1日あたりの水の出納という形でしか説明しませんでした。単純なことではありますが、これも覚えておくべき数字です。内訳については、数字まで記憶するのは難しいですが、それぞれで最も多いものは頭に入れておきましょう。取する方では飲水、排出する方では尿とその生成のしくみを後期に詳しく学ぶはずです。

 来週は恒常性の具体例として、体液中の水素イオン濃度を考えます。さらに、恒常性維持する上での基本的かしくみを、これも概念だけですが考えておきます。さらに、今日は代謝水にて簡単に説明しましたが、生体で生じる化学反応についても概略を説明します。

 来週は第2章に入る予定をしていますので、「はじめに」の部分まで予習しておくように。また、『生理学のための化学』の範囲を説明し忘れたクラスがありますが、「第3章:水」の範囲から出題します。

第1回 イントロ、階層性と恒常性

 第1回目の授業はいかがでしたか。久しぶりの学校生活で、「こんなはずでは」と感じることも多いかもしれません。あまり先を見てもしょうがないので、まずは目先のことを一つ一つ解決していきましょう。

 授業の方針については繰り返しませんので、必要があればプリントをよく見直しておきましょう。また、2年生や3年生に知り合いがいれば尋ねてみるとよいでしょう。よい評判も悪い評判も、いろいろ耳にすることができるはずです。

 さて、生理学がカバーする領域は幅広く、基礎医学においては解剖学とともに車の両輪のような役割を果たします。医学部などでは生化学という科目がありますが、広くは生理学に含まれていると考えてよいでしょう。こうした点でも、狭い意味での生物学の延長としてではなく、正常な人体の機能を考える上では幅広い自然科学の知見、高等学校までに学んだ内容でいえば理科と数学の知識と考え方を前提とします。

 生理学を学んでいく上であらかじめ知っておくべきは、生体(生物)には階層性と恒常性があることです。同時に、生体に階層性があり、恒常性があるとはどういうことかを1年間かけて学んでいくと思っていいでしょう抽象的ではあっても概念として知っておき、さらに、1年間かけてそれがどういうことなのかを具体的に考えられるようにしていくのが生理学の学習です。

 現象を考える上で必要な用語や状態を示す数字(と単位)が次から次へと取り上げられます。医学あるいは最も広く生命科学の学習は、数学や物理学のように演繹的な思考で考えるというよりも、知識を順に積み上げていく帰納的な手法が必要な分野です。そして、全体の中から大きな法則性を見いだしていくところに醍醐味があります。

 今回は階層性に関してせつめいしました。途中までしかできませんでしたが、ここでも用語とその意味・概念、そしてそれぞれの間の関係をしっかりと理解しておきましょう。理解するというのは、単に覚えるということではなく、これまでに自分が身につけている知識や体験と結びつけて、それらを自由自在に説明できるということです。それぞれについての具体例を挙げられることもその1つです。

 来週は階層性と恒常性について、概念とともにいくつか必要な具体例を考えてみます。また、『生理学のための化学』では、階層性の最も低位に位置する物質の基本概念を確認します。

2018年度第32回 中枢神経系の統合機能

 最終回は尻切れトンボで終わってしまいました。今回は簡単にまとめて、一部は後日追加しようと思います。

 はじめに、大脳新皮質について構造や機能局在について簡単に説明しました。機能局在は、これまでに感覚機能や運動機能で取り上げてきたこととオーバーラップする部分もあります。プリントp508のような外観図がすぐに頭に思いつくようにしておきましょう。

 一次感覚野や一次運動野の機能はわかりやすいですが、それ以外の感覚野などは授業でも詳しく取り上げませんでした。二次体性感覚野は一次体性感覚野と連合野を結びつける役割を負っていたり、それぞれの感覚独自の記憶を司る役割があります。連合野は脳の中でも最もおそくできあがる部分で、それだけ高次の機能を担っていると考えられます。感覚に関わる連合野は、各感覚の記憶や、いくつかの感覚を結びつけて生じる認識をつくりだすと考えられています。

 前頭葉の連合野は授業でも触れた人格や社会性をつくりだすために必須の領域です。まだまだ分かっていないことが多すぎて、すっきりとした説明はありませんが、「ヒトを人たらしめている」場所であることは間違いないでしょう。

 ところで、新皮質の構造は、この部分が発生、成長過程でどのように形作られるかということと密接に関わっています。このことは、ヒトとマウスを比較したことから分かるように、進化によって、あるいは動物の種間によって大きな差があることを示しています。機会があれば、このブログでも取り上げてみようと思います。来年度以降も思いついたときに開いてみて下さい。

 大脳のうち、新皮質と比べてより原始的な機能を持っているのが辺縁系です。情動脳とも呼ばれ、情動行動の他、本能行動の形成に与っています。しかし、基本的な記憶機能や意志決定、意欲の醸成にも大きく関わっているため、その機能は無視できません。

 脳波は基本的な四つのパターンの特徴を頭に入れておきましょう。そして、これらを通じて睡眠状態の変化を考えられるようにしておきましょう。

 睡眠については、多くの人々が少なからぬ関心を持っているようです。ときに誤った情報も流布されていますが、基本的な特徴をよく理解しておきましょう。自律神経系や内分泌系のはたらきも大きく関わっていますので、基礎医学の教育を受けていない一般に方々にはわかりにくいことも多いでしょう。みんなはしっかりと考えられるように。

 言語中枢は、二つあり、それぞれの機能に特徴があります。臨床の科目では言語障害なども取り上げられるかと思いますので、関連させて見直すといいでしょう。

2018年度第31回 自律神経系の中枢

 後期試験後の授業分のまとめがでいていませんでしたので、遅ればせながら簡単にポイントを挙げておきます。先ずは先週の分を。

 自律神経系の中枢として特に重要な部位は、言うまでもなく脳幹と視床下部です。授業ではかなりとばしたところがありますが、時間をつくって必ず見直しておきましょう。

 循環器系(心臓血管系)、呼吸器系に関する中枢機能は、血圧や呼吸のリズムの調節を考える上で必須です。脳幹については、運動機能の中枢としての役割も取り上げましたが、恒常性維持という観点から考えると、脳幹の最重要機能はこれら2つの器官系の中枢としての役割です。

 生理学2または4で「神経性調節」として学んだ内容です。圧受容器や化学受容器の部位、求心性神経である脳神経、そして遠心性神経(交感神経か副交感神経か)、さらに効果器である心臓(心筋)、血管(平滑筋)、呼吸筋の作用を自分なりにまとめてみましょう。プリントには一覧表にしていますが、フローチャートなどを改めてつくってみるといいのではないでしょうか。

 さらに、排尿反射や嚥下反射の中枢としての役割も忘れてはいけません。排尿反射は、脊髄を中枢とする反射として学んでいると思いますが、上位である脳幹から修飾がかかります。

 対光反射という場合には瞳孔括約筋の収縮を中心に考えます。視覚器で取り上げた明暗の調節機能と合わせて、瞳孔あるいは虹彩の機能として見直しておきましょう。

 視床下部の機能も生理学2または4で学んだ内容とオーバーラップしていると思いますが、見方を変えると気がつくこともあると思います。なかでも、体温調節中枢、そして割愛しましたが、飲水中枢としての機能は、恒常性維持という点で欠かすことができません。自律神経系の最高中枢として、多くの器官、器官系の機能を統一的に調節しています。

 体温調節のしくみは、体温を上昇させる機能と体温を低下させる機能にわけて、自律神経系の作用を中心に説明しました。内分泌系の作用や体性神経系の作用も、視床下部が制御していますので、忘れないように。こうした複数の器官系にまたがる機能を理解することは、「生体の恒常性」を考える上で最も大切なことです。

 飲水中枢としての機能は、視床下部に浸透圧受容器があることと不可分です。視床下部を通過する血液(血症)の浸透圧を検知しています。肝臓などにも同様の受容器がありますが、それらの情報はすべて視床下部に集中しています。浸透圧が上昇していると、飲水欲求が発生します。少し外れますが、腎臓傍糸球体装置は腎動脈圧を検知し、血圧が低下していると傍糸球体細胞からレニンが分泌され、レニン・アンジオテンシン系が活性化します。アンジオテンシンⅡも視床下部に作用して、飲水欲求の発生に寄与します。プリントには脱水を始まりとして、飲水欲求の発生にかけてどのような現象が生じているのかを示すフローチャートのような図を入れました。互いの関わり方をよく見ておきましょう。

 摂食に関する機能も、消化器系の作用、さらには代謝に関わるホルモンの作用と密接に結びついています。いくつかのホルモンの名前を挙げましたが、分泌部位や機能がすぐにピンとこなかったものがあれば、よく復習しておきましょう。

 最後に、内分泌系の最高中枢としての視床下部の機能にもふれました。生理学4で取り上げられた内容を重なっています。名称や略号、分泌部位など、覚えることもたくさんありますが、下垂体前葉への作用と下垂体後葉からの分泌はしくみが全く異なることをまずはじめに押さえておきましょう。前葉と後葉は、下垂体として1つになっているといっても、元々全く別の組織からできてきて、たまたま一体になっただけです。

 最後に、ストレス応答に関する図を使って説明しました。視床下部が交感神経系と下垂体ー副腎、甲状腺、肝臓(GHの標的は他にもありますが代表させています)へ、ともに作用していることを示しています。視床下部が自律神経系と内分泌系の両方の中枢として機能していることがよく分かると思います。

 自律機能とそれを担う器官・器官系に対する神経性調節は、恒常性維持機構の要です。生理学2&4で学んだことを振り返りながら、「自律神経系の機能」という切り口でよく見直しておきましょう。来年度に学ぶ病理学や内科学ではこれらの理解が求められます。

2018年度第30回 随意運動の伝導路、自律神経系の機能と伝達物質、受容体

 今回の授業内容までが後期試験の試験範囲です。最後の授業ですが、非常に重要な内容を含んでいますので、試験勉強につながるように、しっかりと見直しましょう。

 はじめに、一次運動野と運動単位、あるいは神経支配非の関わりに触れました。それぞれを独立したものとして理解するのではなく、互いの関わり合いをよく考えましょう。そうすることによって、それぞれの意味もより深く理解できるはずです。

 随意運動の伝導路についても同様です。外側皮質脊髄路、前皮質脊髄路、皮質延髄路の三つのルートを覚えるだけに終わらず、それぞれがどこの骨格筋の運動を支配することになるのかを、出発点である一次運動野の支配領野と合わせて考えましょう。そうすると、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路の神経線維の割合も簡単に頭に入るでしょう。

 錐体外路径は詳しく説明できませんでした。臨床の科目では取り上げられると思いますので、そのときに改めて振り返るようにしましょう・

 後半は自律神経系の特徴を簡単におさらいした後、交感神経系と副交感神経系の伝達物質と受容体の機能の違いを説明しました。2種類の伝達物質について、受容体は多種類存在します。特に、標的期間が持つアセチルコリン受容体とアドレナリン受容体は、それぞれの器官の反応性の違いを考える上で非常に重要です。副交感神経系は受容体の多様性がそれほどあるわけではありませんので、説明も簡単に済ませました。一方、アドレナリン受容体は大きく2種類、さらにそれぞれで2種類あります。その分布や機能の違いは、各器官に対する交感神経系の作用を考える上で大切ですので、やや詳しく説明しました。

 プリントに入れた表には、分布をかなり詳しく書き込んでいますが、基本的な考え方はテキストでまとめた部分にあるとおりです。まず頭に入れておきましょう。そして、交感神経系が亢進した状態での、各器官の作用を自分なりに考えられるようにしておきましょう。授業では心臓や消化管、腎臓の機能などに注目しました。肝臓や膵臓、血管なども、それぞれの機能を考える上でわかりやすい反応をしています。

2018年度第29回 小脳、基底核、運動性皮質 

 今日はかなり雑駁な内容になりましたが、脊髄や脳幹のような反射の中枢としてではなく、随意運動に関わった調節機能を取り上げました。

 構造についてもおさえた上で機能を考えていく必要がありますので、それぞれ簡単に整理しました。解剖学ではアトラスなどが指定されていませんので、全体を見渡した上で理解するにはやや不十分ですが、授業の内容をよく思い出しておきましょう。

 小脳の機を簡単にまとめると、随意運動を協調させ、複雑な運動の学習と記憶を司っていることです。そのために、大脳皮質の運動性皮質から下行する情報をモニターすることと、前庭器官や固有感覚受容器からの情報をモニターしています。

 大脳基底核は、四つの神経核が、四つのパートに分かれて神経回路を構成しています。全体として、大脳皮質から興奮性の入力を受け、視床へ抑制性に出力しています。基底核内の神経回路のうち、直接経路と間接経路のバランスがとれていることによって、運動を制御しています。

 大脳皮質の前頭葉の頭頂葉側にある運動性皮質は、それぞれが役割分担をしているようですが、最も重要なのは一次運動野です。特に体部位局在の特徴は必ず頭に入れておきましょう。

2018年度第28回 脳幹の運動調節

 週末に引いた風邪が完治しておらず、時々咳き込んでしまい申し訳ありませんでした。

 さて、今日ははじめに脊髄反射を少し補足しました。いずれも歩行運動に関わって説明することのできる現象です。バビンスキー徴候は臨床でも必ず学ぶはずです。最後に、四足動物の歩法について簡単に触れました。興味があれば、是非自分で調べてみましょう。

 脳幹の構造は解剖学で学んでいるはずですから、簡単にお温習いしたのみです。大脳と脊髄の間を上下する伝導路(上行路はすでに学びました)の通り道です。また、循環器や呼吸器では、それぞれの機能の中枢としても説明されたはずです。今回取り上げた嚥下をはじめ消化に関わるいくつかの機能や排尿機能の中枢としても機能しています。全体として、生命維持や基本的な運動の調節中枢として機能しているといっていいでしょう。

 授業ではすべてを説明することはできませんでしたが、脳幹の位置づけは、脳神経に含まれる感覚神経や運動神経が、求心性神経あるいは遠心性神経として機能する反射の中枢です。脳神経に含まれる感覚神経ですから、多くは特殊感覚です。また、三叉神経支配領域の体性感覚も忘れてはいけません。特殊感覚しては、授業では前庭器官を中心に考えました。脳神経に含まれる運動神経は、いずれも顔面や頭部の筋を支配しています。これらのことを考え合わせると、脳幹が反射中枢となっている反射が、どのようなものであるかある程度分かるでしょう。

 具体的に取り上げた反射の中で特に重要な反射は、前庭動眼反射です。脳幹の重要な機能が眼球運動を司ることであると同時に、眼球運動を反射性に調節しているのは脳幹だけです。ヒトにとって視覚が最も情報量の大きい感覚であることも合わせると、眼球運動がどのように調節されているのかを理解することの大切さも理解できるでしょう。

 外眼筋とその支配神経について、解剖学で学んでいるや否や。プリントp414に簡単にまとめていますので、よく頭に入れておきましょう。

 前庭動眼反射の反射弓は、必ず自分で考えてみること。介在ニューロンの役割もよく理解できるでしょうし、伸張反射と拮抗抑制の関係とよく似て、互いに拮抗する筋の役割もわかりやすくなるでしょう。また、視運動性反応との違いもよく理解しておきましょう。

 前庭頚反射と頚反射も、受容器と効果器の反応についてしっかりと見直しておきましょう。プリントでは「頸」を使っていますが、「頚」でかまいません。

 来週は、小脳の機能、大脳基底核の機能について考えます。どちらもヒトでの機能はまだそれほどよく分かっているわけではありません。一方で、動物実験でもそれほどはっきりとした結果も出ないようです。そこで、ヒトにおける疾患などを取り上げながら、考えてみます。

2018年度第27回 脊髄反射

 今回はスクリーンを2つ使って授業をしましたが、初めてでやや戸惑いながらでした。わかりにくかったところもあったかもしれません。

 運動機能はおおきく分けて5つある中枢、脊髄、脳幹、小脳、大脳基底核、大脳皮質(全体ではなく、運動性皮質と呼ばれる前頭葉の一部)に分けて、その機能を考えていきます。それぞれの構造は解剖学で学んでいると思いますのでよく見直しておきましょう。また、反射の機能や反射弓を理解する上では、筋紡錘、腱器官、さらにはα運動ニューロンなど、忘れていることがあれば必ず身につくまで復習を繰り返すこと。自分で何度も図を描き、構造や機能の特徴を声に出して説明する練習をしておきましょう。

 脊髄では運動機能を調節する最も下位の中枢です。意志が関わるような機能ではなく、反射の中枢として機能しています。運動という点ではすべての髄節の機能が等しいわけではありません。上肢と下肢を支配している領域が重要ですが、脊髄の頸膨大とよ腰膨大はニューロンの数も多く、より複雑な機能を営んでいます。

 今回は脊髄を中枢とするいくつかの反射を取り上げました。反射弓の考え方に慣れるということもありますし、そのために前期半ばで考えた神経回路の考え方を実際に活用していく必要があります。少しじっくりと説明をしたつもりです。

 伸張反射は単シナプス反射であり、また伸筋の多くに生じるという点で最もよく取り上げられます。除脳動物(多くは中脳のレベルで切断して回復させる)で、筋を伸張すると、その筋に張力が発生します。この筋に発生した張力は後根を切断すると消失するため、この作用が脊髄を介した反射によることが示されています。

 関節の伸展をともなうため、伸筋の拮抗筋である屈筋の弛緩が同時に生じます。これが拮抗抑制です。このように、拮抗筋の活動が抑制されることを相反性抑制といいますが、拮抗抑制はその典型です。それぞれの分野における典型的なものを正確に理解しておけば、いろんな応用が利きます。それぞれに必要な用語や語法も合わせて、伸張反射と拮抗抑制はくどいくらいに復習をしておきましょう。

 自原抑制(自原性抑制ともいいます)は、伸張反射/拮抗抑制よりは一段階高度ではありますが、おおきくこれら2つの反射によって筋の長さと張力の変化を補償し、姿勢の維持に貢献しています。

 屈曲反射と交叉性伸展反射は関わっている筋が多くなるため、反射弓全体を説明することはなかなか大変です。プリントでは、屈筋、伸筋とやや一般化して説明しました。その分理解しやすいと思いますので、これも自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

 今後も、今回のようにスクリーンを2つ使って授業を進めていく予定ですが、座席の都合で見にくい場合には、席を替わってかまいません。

 よい新年をお迎え下さい。

2018年度第26回 光受容のしくみと視覚の伝導路

 小テストの問題と解答のPDFファイルがこわれていたのか、うまく開かなかったようです。修正しましたので確認して下さい。また、第8章の「要点のまとめ」のうち、p388(50)に誤りがありましたので以下のように訂正します。
  誤:網膜の中心窩付近は杆状体細胞が集中するため( a )が強く、周辺部は( b )が強い。
  
  正:網膜の中心窩付近は錐状体細胞が集中するため( a )が強く、周辺部は( b )が強い。

 今回取り上げた光受容のしくみはかなり複雑です。まだまだ十分に解明されていないところもあるようですが、基本的な部分をできるだけわかりやすく説明したつもりです。ヒトにとって最も情報量の多い感覚ですから、多くの量の情報をより的確に認識できるように複雑なしくみがあるのでしょうか。

 網膜は、眼球壁の最も内側で硝子体と接しています。色素上皮層と神経層からなり、色素上皮層が脈絡膜と接しています。神経層はさらに3つの細胞層に分けてその機能を考えます。

 視細胞は、杆状体細胞と錐状体細胞の2種類があり、機能に違いがあります。この機能の違いは外節に含まれている視物質のはたらきによってつくられています。また、機能の違いはそれぞれの細胞の網膜での分布にも表れ、さらに、網膜の部位による色彩感覚や明暗認識の能力の差となっています。

 視物質のはたらきと、光刺激を受けたときの細胞内で生じる現象を理解するには、かなり分子レベルでの知識を求められます。授業ではかなり簡略化して説明しましたが、オプシンタンパク質とレチナールが結合したロドプシンタンパク質がしくみの鍵を握っています。光刺激を受けるとロドプシンタンパク質の機能が変化して、杆状体細胞ないが過分極します。このことが、双極細胞を興奮(正確には脱分極のみで活動電位は出ません)させ、さらには神経節細胞を興奮させます。神経節細胞の軸索は視神経を構成し、インパルスが視神経を視床外側膝状体へ向かって伝導していきます。

 A組の授業では触れましたが、プリントp378の下図⒝明所での反応の中で、外節円板膜に挿入されているロドプシンタンパク質に組み込まれているレチナールは、図中では「cis-レチナール」となっていますが「trans-レチナール」の誤りですので、訂正します。

 ロドプシンと相互作用するトランスデューシンというタンパク質について簡単に付け加えておきます。嗅覚の受容体の説明で簡単にGタンパク質に触れました。嗅物質受容体と結合していて、状態に嗅物質が結合すると構造が変化して、近傍にある酵素(アデニル酸シクラーゼ)を活性化する役割を演じるタンパク質です。トランスデューシンも同様にGタンパク質で、光刺激を受けて構造変化したロドプシンの作用によって活性化します。杆状体細胞内でのGタンパク質であるトランスデューシンの役割は近傍の酵素であるcGMPホスホジエステラーゼを活性化することです。このcGMPホスホジエステラーゼはcGMPを分解します。cGMPは杆状体細胞の細胞膜にある陽イオンチャネルがに作用して、イオンチャネルを開放する作用を発揮しています。cGMPホスホジエステラーゼの活性化によってcGMPが減少するため、陽イオンチャネルが閉鎖します。

 錐状体細胞内でのフォトプシンの作用も、杆状体細胞内でのロドプシンの作用を同じと考えていいでしょう。色の判別のしかたはかなり複雑なしくみがはたらいています。

 神経節細胞が興奮すると、インパルスは視神経を伝導して視床へ伝えられます。この途中にある視交叉での神経線維の交叉のしかたは、伝導路を理解する上での重要なポイントです。視野が左右反転して網膜に投影していることとともに、自分で図を描くなどして、よく見直しておきましょう。

 来週で年内は最後です。第9章に入り、中枢が末梢での運動をどのように調節しているかを考えます。最初は脊髄を中枢とした機能調節のしくみを取り上げますが、脊髄の構造についてよく復習しておきましょう。

2018年度第25回 視覚:遠近と明るさの調節

 先週は、授業後にそのまま学会出張に出てしまったため、更新が遅くなりました。簡単にまとめておきます。
視覚機能は、これまでの感覚と異なり、適合刺激が受容器に達する前に調節機構があります。先週は、この部分を取り上げました。可視光線に対する受容器は眼球全体と考えてもよいのですが、直接反応する視細胞を受容器細胞とすると、角膜から水晶体にかけても部分は受容器に含めるよりはその前の調節機構と考えておきましょう。

 遠近の調節は毛様体筋と水晶体の関係を中心に考えておきましょう。近くを見るときと遠くを見るときとで、互いがどのように反応するのかを考えられる様にしておきましょう。決して丸暗記をするのではありません。

 明るさの調節は虹彩を構成する2つの平滑筋のはたらきとそれらを支配する神経の組合せを正しく理解しておきましょう。宿題は、検証できる様な答えのある問ではありませんが、一度考えてみると、たとえそのアイデアが誤ったものであったとしても自分なりに理解するきっかけとなるでしょう。

 視覚がヒトにとって重要な感覚であることの表れなのか、眼球周りには筋も神経もたくさん分布しています。また、涙腺などの免疫に関する器官も存在します。解剖学ではこれらについても学ぶはずですので、機能と結びつけて頭に入れていきましょう。

 来週は網膜の構造と機能、さらに、視神経から一次視覚野へ至る伝導路を取り上げます。時間があれば、第9章へ入ります。

2018年度 第24回 平衡覚、可視光線の特徴

 平衡感覚はいわゆる五感には含まれません。古来、ヒトが特に認識することなく過ごしてきたということでしょう。したがって、その感覚についてうまく言葉で言い表すことも難しく、なかなか説明しづらい感覚です。そこで、授業では平衡感覚が乱された場合や感覚器官が障害を受けた場合にどのような症状が現れるかを考えました。

 鉛直方向や前後あるいは左右方向への加減速などの受動的な動きによって生じる静的平衡と、頭部の回転などによって生じる動的平衡に分けて、それぞれの受容器の構造と機能を考えました。前者は卵形囊と球形囊(合わせて耳石器)で、後者が半規管です。

 進化的に考えると、元々は聴覚などはなかったと考えられます。現在も海生動物には聴覚がないと考えられる動物もたくさんいます。しかし、水中で生活をしている動物であっても、重力に対して姿勢を維持する必要がありますし、周囲からの水の圧力を受けると体勢が崩れます。こうしたことへの適応から平衡感覚が備わったのでしょう。しかし、水の振動も小さな圧力であれば体勢を崩すことはなく、むしろその周波数の違い感覚し分けることができれば情報として使えます。ここから聴覚が進化したのではないでしょうか。したがって、平衡覚と聴覚は、ほとんど同じ部位に受容器があり、そのしくみも非常によく似ています。

 卵形囊と球形嚢は平衡斑の構造を、半規管は膨大部の構造をしっかりと確認しておきましょう。
BCの授業では卵形囊と球形囊のはたらきの違いについてはっきりと説明しませんでした。球形嚢は上下方向にかかった直線加速度(エレベーターに乗ったときなど)を検出し、卵形嚢は水平方向、つまり身体の前後方向あるいは左右方向にかかった直線加速度(車に乗っているときの加減速など)や頭部の傾きによって生じる加速度を検出しています。
半規管は3つが互いに垂直に交叉していますが、外側半規管が水平方向にあることは説明しましたが、前半器官と後半規管の位置関係をはっきりと説明していませんでした。この2つはともに外側半規管に対して垂直で、正中矢状面と約45度となる平面上に位置し、前半器官が前方に、後半規管が後方にあります。

 有毛細胞は静止状態でもある程度脱分極しており、その結果、感覚神経に対して興奮が伝達されています。したがって、感覚神経(前庭神経)は静止時でもある程度の興奮を送り出しています。ここで加速度運動が生じると、耳石の重さや半規管の動きと内リンパの動きとの間の差によって、感覚毛が一方向へ屈曲します。屈曲する方向によって、内リンパのカリウムイオンが有毛細胞内へ流入しで脱分極が大きくなったり、逆に流入が完全に阻止されて過分極が生じたりします。脱分極が
大きくなると感覚神経のインパルスの頻度が高まり、過分極が生じると感覚神経のインパルスの頻度が低下します。加速度の方向によって、左右で逆になったり、前後で逆になったりするでしょう。

 卵形囊・球形囊と半規管の有毛細胞は前庭神経とシナプス接続し、前庭神経は前庭神経核へ投射しています。前庭神経核は外側核、内側核、上核、下核に区分される大型の神経核です。ただし、有毛細胞の位置と神経核の部位に明確な対応はないようです。この前庭神経核は大脳皮質(一次体性感覚野の一部)、動眼神経核、外転神経核、滑車神経核へのびる神経線維があります。また、一部は脊髄にも伸び、頸随や胸髄、腰髄の運動ニューロンと直接つながっています。単に感覚が生じるというだけではなく、直接運動を引き起こすことができます。

 痛覚や味覚、嗅覚の伝導路では視床下部や大脳辺縁系に情報が送られて、このことが情動反応を引き起こすことにつながっていました。平衡覚では、身体の運動を生じるような経路があることをよく頭に入れておきましょう。

 後半では光、すなわち電磁波の特徴を簡単にまとめました。視覚の適合刺激は可視光線ですが、ヒトが知覚できるというから「可視」光線というのであって、電磁波という物理現象です。波長とエネルギーの違いによって分類され、その利用法も異なっています。『光マップ』で改めて確認しておきましょう。また、電磁波に共通する屈折と分散、特に屈折は来週の授業で取り上げる視覚おける遠近の調節機能を考える上で必須ですのよ組み直しておきましょう。

 今日はプリズムを持っていくのを忘れてしまったため、来週の授業で実物を見ながら屈折についておさらいする予定です。

 『色』というのはじつに不思議なものですが、発行しない物体の色が反射と吸収によって生じるということを理解できていればよいでしょう。

 来週は視覚機能を具体的に考えていきます。視覚器である眼、あるいは眼球の構造については余詳しく説明できませんので、あらかじめよく予習しておきましょう。

2018年度 第23回 聴覚

 今回は聴覚の適合刺激である音波についても、やや詳しく説明をしました。バネの性質は小学校か中学校で学ぶ機会があると思うので、波の性質については理解できたと思います。音波も高等学校で学ぶ機会があっても多くは忘れていたことでしょう。医学、生物学といえども、しっかりと理解するにはさまざまな知識が必要です。

 音の大きさと音の高さについて取り上げましたが、音波のどのような特徴が感覚の差、つまり大きいか小さいか、高いか低いかという違いをつくりだしているのかを知っておきましょう。合わせて、それぞれの基本となる単位、ベルとヘルツも知っておく必要があります。

 耳の構造、外耳、中耳、内耳の詳細は解剖学で学ぶはずです。本来は構造を先に学んでおくべきですが、今年は逆になったようです。解剖学で取り上げられた際には、それぞれの部位の機能を改めて確認しながら見直しましょう。

 特に重要な部位は、鼓膜、耳小骨、蝸牛で、さらに蝸牛は、前庭階、鼓室階、蝸牛管について内部の液体の違いに注意して見直しましょう。コルチ器は重要であるのはいうまでもありません。2つの有毛細胞の反応のしかたとカリウムイオンの流入、そして興奮の伝達までをよく見直しておきましょう。

 聴覚の伝導路は、有毛細胞、蝸牛神経、蝸牛神経核、視床内側膝状体、一次聴覚野という大きな通り道をおさえながらも、蝸牛神経核から後は左右に分かれる並行回路として進んでいくところが、他の感覚と異なっています。

 来週は、前半で平衡感覚を取り上げます。後半では、今日配布した「光マップ」で視覚の適合刺激について簡単に説明して、視覚器の構造を考えます。

2018年度 第22回 味覚と嗅覚

 今回から特殊感覚に入りました。冒頭でも繰り返したように、受容器が頭部の限局した部位にあり、感覚神経が脳研歯頸に含まれている点が一般感覚に対して異なっています。

 味覚と嗅覚には適合刺激がともに化学物質であり、化学感覚としてまとめられるため、連続して取り上げます。また、順応性、ヒトにとっての情報量や鋭敏さなど、共通点が多いのも特徴です。ただし、受容体の種類という点では、味覚が基本的に5種類にまとめられるのに対して、嗅覚は数百種類あるとされています。したがって、基本的な味は考えられますが、基本的なにおいを考えることはできません。

 話は少しそれますが、ヒト以外の哺乳類では嗅覚受容器は1000種類以上あるものが多く、ヒトは元々持っていた受容体遺伝子の多くが偽遺伝子化してしまっているようです。偽遺伝子とは、「既知の機能遺伝子と塩基配列の上で高度の類似性があり、それとの相同性がはっきり認められるにもかかわらず、遺伝子としての機能を失っているDNAの領域」(岩波生物学事典第5版)のことです。したがって、全く発現しないか、発現してもそのタン パク質がすぐに分解されてしまい、事実上機 能しないと考えられます。ヒトにとっての嗅覚の重要性が低いことを示しています。

 受容体の構造や機能についてはかなり難易度が高いと思いますので、説明されて分かれば十分です。しかし、味細胞や嗅細胞の膜タンパク質が刺激となる化学物質に対する受容体として機能していること、さらには、化学物質の結合(またはイオンチャネルを通過すること)が受容器細胞の電位変化を引き起こすことを理解しておきましょう。基本的には、脱分極や活動電位が生じるしくみと同一です。

 受容体の存在部位は、味細胞では味毛=微絨毛ですが、嗅細胞では嗅線毛(嗅毛)=線毛です。いずれも細胞の一部が突出した構造ですが、周囲は細胞膜で覆われています。

 受容器細胞が興奮すると、インパルスが感覚神経を伝導します。味覚の受容器は味細胞ですが、味細胞はニューロンではなく独立して機能する感覚受容器細胞ですから、シナプスを介して感覚神経と接続しています。この感覚神経は受容器の部位によって異なっています。よく問われる点ですからしっかりと確認しておきましょう。これに対して、嗅覚の受容器である嗅細胞は、これ自体がニューロンであり、軸索をもっています。この軸索が視神経を構成しています。

 それぞれの伝導路を考えてみると、いずれも脳神経部分が一次ニューロンにあたり、それぞれ延髄は嗅球で二次ニューロンに交代します。味覚の伝導路は視床を経由し、大脳皮質新皮質(前頭弁蓋と島)へと至るルートで、他の感覚の伝導路をよく似ています。しかし、嗅覚の伝導路は嗅球という、大脳辺縁系に属する部分から、同じく辺縁系の一部である梨状皮質に入ります。大脳の成り立ちを考えると新皮質の法が進化的に新しい領域で、辺縁系は古い領域です。つまり、より高度な機能を獲得している動物ほど新皮質が発達しています。したがって、味覚に比べると嗅覚はより原始的であるということでしょう。

 来週は聴覚を取り上げます。

2018年度 第21回 体性感覚の伝導路、体性感覚の中枢、痛覚

 生理学に限らず、どの分野でもすべて知識の積み重ねであり、すでに学んでいるさまざまな内容を結びつけていくことが大切です。今回取り上げた内容も、例えば解剖学で学んだ脊髄や脳の構造、生理学で学んだ感覚機能をと結びつけて考えられるようにすることが「理解する」ということです。

 先週に続いて取り上げた伝導路の内、脊髄小脳路は第9章で改めて触れることになりますが、運動機能を営むために感覚機能によって得られた情報が利用されています。こうした内容を理解していくことも、積み重ねたものを結びつけていくことです。

 もうひとつの脊髄網様体路は、侵害刺激を受けたときの全身性の変化、すなわち情動反応を考える上では大切です。情動反応が生じるというところが、他の体性感覚と痛覚の大きな違いでもあります。授業の最後の「ストレス反応」に関する説明ややや中途半端で変わりにくかったかもしれませんが、内分泌を学んだところでもう一度見直しておきましょう。分からないところがあればいつでも質問して下さい。

 痛覚については別の科目でもそれぞれ異なった観点から取り上げられると思いますが、関連痛は臨床症状から診断を下す上で重要な手がかりとなるものです。また、痛覚の抑制システムや痛覚過敏も、メカニズムを理解することが大切だと思います。取り上げられたときにはしっかりとしっかりと学習しましょう。

 体性感覚の中枢、特に一次体性感覚野についてはやや時間をかけて説明しました。特徴ははっきりとしていますので、必ず自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

 来週から第8章『特殊感覚』に入ります。

2018年 第20回 固有感覚、体性感覚の伝導路

 今回取り上げた固有感覚は、感覚として生じているのか否かがわかりにくく、なかなか実感が持てません。しかし、筋の収縮や弛緩、すなわち運動を考える上では避けて通れない感覚です。とりわけ筋紡錘と腱器官の機能は重要で、次章の「運動と姿勢の調節」では、運動調節機能の基本として、これらを受容器とする反射を取り上げます。

 同じくらいの分量の教科書でも、筋紡錘についてさらに詳しく説明しているものもありますが、授業では最低限必要な構造と機能について説明しました。少し詳しい説明をプリント287ページにつけているので、時間を作ってみておくようにしましょう。

 筋紡錘を構成する錐内筋、感覚神経はともに2種類ありますが、まずはそれぞれをひとまとめにして「錐外筋よりも直径の小さい錐内筋の中央にⅠa群感覚神経が巻き付いている」と理解しておきましょう。試験ではこのレベルまでを問うことにします。

 筋が収縮、弛緩する(=単純に、短縮、伸長すると考える)と、筋紡錘も一緒に収縮、弛緩しますが、このとき、Ⅰa群感覚神経には機械的な刺激が加わり、短縮すると刺激が弱まって興奮の頻度が低下しますが、伸長すると興奮の頻度が高くなります。興奮の頻度は筋の長さに比例すると考えることができ、筋紡錘は興奮(インパルス)の頻度によって筋の長さを伝えていると考えられます。

 一方、筋の長さの変化のしかたを考えると、長さが急激に変化すると興奮の頻度も急激に変化し、長さが変化する速度が小さいと興奮の頻度の変化も小さくなります。したがって、頻度の変化する速度が変わることによって、筋の長さが変化する速度を伝えていると考えるとわかりやすいでしょう。

 プリント290ページの図の説明ではややごまかしたようなところもありますが、筋長の変化と筋紡錘の反応性(Ⅰa群感覚神経の興奮の頻度)をよく比較しておきましょう。

 筋が収縮すると(ときには弛緩するときにも)その両端に連続する腱を引っ張ることになります。この結果、腱には張力がかかります。この張力を検知するのが腱器官です。構造をうまく表した図がないためわかりにくいですが、筋紡錘に当てはめると、錐内筋のかわりに膠原線維に感覚神経が巻き付いているような状態でしょうか。膠原線維には筋ほどには伸縮性がありませんが、張力がかかると構造的に変化が生じるはずです。これがⅠb群感覚神経に機械的な刺激を加えているのでしょう。

 体性感覚は表在感覚と深部感覚に分けられ、それらの感覚受容器はほぼ全身に分布しています。したがって、これら受容器が刺激を受けて生じた興奮が、中枢である大脳皮質へ伝えられるにはしかるべきルートが必要です。ほぼ全身の受容器から脊髄までは脊髄神経によって脊髄へ伝えられ、その後は後索路と脊髄視床路によって視床へ伝導(あるいは伝達)されます。顔面などの受容器からは三叉神経によって脳幹へ伝えられ、さらに視床へ伝えられていきます。これらのルートが「伝導路」で、受容器がどこにあるのか、その受容器がどのような刺激を適刺激とする受容器であるのかによって、脊髄内あるいは脳幹でのルートや興奮の伝達する部位が異なっています。

 上記の点を含めて、3つの伝導路には共通点と相違点がありますが、簡単に整理できると思います。是非まとめておきましょう。ポイントは、一次ニューロンと二次ニューロンの細胞体の存在部位=一次ニューロンと二次ニューロンとの間で興奮が伝達される部位、二次ニューロンが交叉する部位です。もちろん、脊髄内の伝導路は、どの受容器からのルートが脊髄のどこを通るのかをはっきりとさせておく必要があります。

 来週の授業では第7章を最後まで進みますが、その中では皮膚分節について触れます。表在感覚の受容器の存在部位と、そこが脊髄神経支配領域なのか三叉神経支配領域なのかを改めて確認しましょう。

2018年 第19回 表在感覚

 少し遅くなりましたが、先週の授業内容をまとめておきます。

 感覚機能は一般感覚から取り上げられることが多いようですが、名前の通り、感覚受容器が全身に広く分布しているからでしょう。表在感覚の受容器は、一様ではないにしろ、全身の皮膚に分布しています。

 授業で説明したように、受容器は主に真皮に存在していますが、その構造や反応性はそれぞれに特徴があります。特に触圧覚の受容器は、反応性の違いによってはっきりと分類されていますので、よく整理しておきましょう。

 触圧覚受容器の実体(受容体)は、圧迫や接触、振動などの機械的な刺激に反応して開放するイオンチャネルです。イオンチャネルは多くは樹状突起部分の細胞膜に存在し、刺激によって開放すると陽イオンが細胞外から細胞内へ流入して電位変化が生じます。

 温度覚受容器(受容体)は、温度変化によって開放するイオンチャネルです。侵害受容器(受容体)もそれぞれの適合刺激によって開放するイオンチャネルです。まだまだ詳細が不明なものも多いようですし、今後新たに発見されるものもあることでしょう。授業の最後で触れたように、ポリモーダルな反応をするイオンチャネルも多く、温度受容器や侵害受容器として機能しています。

 プリントの283ページには侵害受容器として機能するイオンチャネルを列挙しました。さまざまな性質を持ったイオンチャネルがあることが分かるでしょう。文中のTRPV4チャネルに関する説明の一部に誤字があるので訂正します。
「低浸透圧や圧などの機械的刺激、案や内因性の発痛物質に反応するほか」とあるのは「低浸透圧や圧などの機械的刺激、内因性の鎮痛物質に反応するほか」と訂正して下さい。これらの他にも、アラキドン酸という鎮痛物質の前駆体となる脂肪酸なその代謝産物にも反応するようですが、詳細は不勉強のため分かりません。

 ところで、「受容器」と「受容体」というよく似た二つの用語がありますが、この区別を簡単に説明します。「受容器」は刺激を受け入れる構造(複数の細胞によって構成される場合もあります)をさして用い、パチニ小体やルフィニ終末、自由神経終末などがそれにあたります。来週取り上げる筋紡錘なども受容器に含めて考えます。これに対して「受容体」は、刺激を受けて次につながる現象へとつなげていく分子(いずれもタンパク質であり、複合体として機能している場合もあります)を指します。つまり、ここで説明しているイオンチャネルや神経伝達物質の受容体などです。

 表在感覚の受容器である細胞レベルの構造からは、一部を除き直接神経線維が伸びています。触圧覚受容器の場合はAβ線維、温覚受容器はC線維、冷覚受容器はAδ線維またはC線維、そして侵害受容器からはAδ線維またはC線維です。侵害受容器には大きく2種類あり、それぞれ受容器としての反応性にも差がありますが、神経線維も異なっています。しっかりと区別しておきましょう。

 受容器から伸びている神経線維がそのまま各感覚の中枢へ至るわけではなく、途中で他のニューロンとシナプス接続しています。来週取り上げる伝導路です。

 生理学に限らず、医学系の学問はすべて知識の積み上げによって成り立っています。各学年ごとにも、教科ごとにも、そして毎回の授業ごとにも、「後でまとめて」できるようなものではありません。予習と復習を毎回しっかりと取り組んでこそ、結果(=成績)がついてきます。しっかりと取り組みましょう。

2018年度 第18回 感覚の一般的な特徴と二点弁別閾

 後期は神経系を中心にして、広い意味での神経機能を感覚機能と運動機能、そして中枢神経系の統合機能と分けて考えていきます。始めに取り上げるのは感覚機能です。今回は、感覚全般に共通する特徴を概観しました。

 共通点としてまず強調すべきは、すべての感覚は、それぞれの中枢に興奮が伝わってはじめて生じるということです。決して受容器が刺激されるだけで感覚が生じるわけではありません。授業でも、この特徴を理解しやすいような説明を心がけているつもりです。やや回りくどい説明になることもあると思いますが、それだけ重要だということです。したがって、感覚機能を理解するためには、中枢神経系の構造や機能も同時に考えていく必要があります。他の科目でも学んでいるはずですので、忘れていたり理解が十分でないと思ったりした部分は、その都度すぐに見直しましょう。

 ただし、実際の感覚は、あたかも感覚受容器の部分で生じているかのように感じます。この「感覚の投射」も大切な特徴ですので、よく理解しておきましょう。

 受容器に対する刺激、すなわち適合刺激を個別に丸暗記しても意味はありませんので、それぞれの感覚機能と合わせて考えましょう。感覚受容器が刺激を受容する仕組みを理解すれば自ずと頭に入ります。

 刺激の強さと生じる感覚の大きさの関係は、ニューロンの興奮(活動電位)がどのように発生するのかということと密接に関わっています。活動電位発生のしくみは前期に取り上げた最も重要な内容です。前期末試験でも問いましたが、改めて見直しておきましょう。

 感覚が生じる場合には、刺激が検知閾(感覚閾値)を超えている必要があり、さらにその後の感覚の変化には、ウェーバーの法則として紹介したような、弁別閾を超える刺激量の変化が必要です。実体験から何となく分かっていることではあると思いますが、生理学的、すなわち科学的にどのように説明するのかをよく理解しましょう。

 授業でも触れましたが、ウェーバーの法則だけで説明できる部分はごくわずかです。ヒトの感覚受容器が受容できる刺激のダイナミックレンジは非常に大きく、そんなに単純な法則性では説明できないようです。聴覚の適合刺激を説明する中で簡単に触れることになるでしょう。

 感覚受容器は、それぞれ非常に特徴的な構造と機能を持っています。その精緻さは知れば知るほど驚きます。しかし、やはりいくつかの共通点で分類することができます。授業では三つに分類して、その構造的な特徴をまとめました。表在感覚は自由神経終末と被包神経終末が中心です。特殊感覚の受容器は、独立した感覚受容器細胞をもっている場合が多いですが、刺激に対する反応性は単純な場合もあります。深部感覚器の代表である筋紡錘は再来週の授業で取り上げることになると思いますが、自由神経終末の変形のような構造と考えればいいでしょう。

 また、触れませんでしたが、感覚受容器から感覚中枢までの間は、複数の神経がシナプスを介してつながっています。つまり、伝導路では何度かの興奮の伝達が生じています。この伝導路を構成する神経を感覚受容器側から数えていく場合に、一次ニューロン、二次ニューロン、三次ニューロンなどと呼び表します。表在感覚を中心とした体性感覚の伝導路を説明するときに、具体的に説明しようと思います。

 後半では、表在感覚を考える上で重要な二点弁別閾を取り上げました。感覚受容器(あるいは来週説明する受容野と考えるとわかりやすい)は点状に存在していますが、やはりそれぞれが一定の面積をもっています。この面積の大小が、体部位によって異なっているために、二点弁別閾の大きさに差が生じます。触圧覚の二点弁別閾がよく調べられているため、教科書によく引用されています。他の表在感覚については、全身をくまなく調べた結果があるのかどうか。興味があれば是非調べて、教えて下さい。

 来週は表在感覚をすべて取り上げる予定です。共通するところ、異なっているところをはっきりとさせながら考えるといいでしょう。

2018年度 第17回 運動単位、収縮の特徴

 期末試験はどうでしたか? 模範解答はWebに掲載をしましたので授業前に見ていたことでしょう。自己採点と比べていかがでしたか?
 
どれだけできたかにかかわらず、必ず一度は見直すようにしましょう。前記の内容は前期で終わってしまうわけではなく、直接、間接に後期の内容に結びついています。

 後期は前期に学んだ神経系と筋系の理解の上に立って、体性神経系の機能を、感覚機能と運動機能に分けて取り上げます。始めに取り上げる感覚器系は、感覚受容器とその適合刺激、さらに感覚受容器からそれぞれの感覚器の中枢への伝導路と中枢の機能を順に考えていきます。来週は、多くの感覚機能に共通する特徴を、『総論』として概説します。後期中盤では、中枢の機能から始まって、実際に運動に関わる筋のはたらきを考えていきます。運動機能に関する中枢のはたらきはまだまだ不明な部分が多いため、一部は疾患の症状から機能を推測することにします。

 後期の後半では、末梢神経系のもう一方である自律神経系について、前記の内容をおさらいしながらより深く取り上げる予定です。生理学Ⅱ&Ⅳで自律機能全般を身につけた後の方が理解しやすい部分が多いため、最後に取り上げます。一応、ここまでが後期末試験の前に授業できる予定です。

 時間の都合で一部を割愛して進めるかもしれませんが、授業後に何回かの授業を予定していますので、その時間に埋め合わせをする予定です。

 さて、後期最初の授業では、前期のやり残しである、運動神経による筋の支配や筋の収縮の特徴を考えました。

 運動単位は、実際の筋の収縮を考える上では重要なまとまりです。特に、一つの運動単位を構成する筋線維の型が同一であり、さらにその筋線維が筋全体に分散していることによって、できるだけ効率的に筋を収縮させ、実際の運動が実行できるようにしてます。筋を支配する運動ニューロンは、すべての運動ニューロンが同時に興奮するわけではなく、求められる張力に応じて、小さな力を発揮する運動単位を支配する運動ニューロンからより大きな力を発揮する運動単位を支配する運動ニューロンへ、順に少しずつ分散していきます。しかも、できるだけ非同期的に、つまり同時に興奮しないように時間差をもって興奮します。さらに、一つの運動単位を構成する筋線維は筋全体に分散しているため、1運動単位の収縮によって筋全体が収縮することができます。運動単位を構成する筋線維は同一の型ですから、発揮できる張力の大きさを調節することも可能だし、エネルギー効率も調節できるでしょう。自然にできたとはとても思えないくらい、みごとなしくみです。

 1運動単位による1回の収縮(運動ニューロンから筋線維へ興奮が1回伝達されることによって生じる収縮)が単収縮で、このときの筋節変化を考えると、おそらくそれほど強く収縮(または短縮)しているわけではないのでしょう。したがって、連続的に興奮が伝達されることによって収縮は加重され、強縮が生じます。

 プリントp237下図の実験の説明がやや簡単でしたので、改めて説明します。
ここでは、ネコの腓腹筋を材料にして、そこに含まれる運動単位の3つの型、FF型、FR型、S型それぞれの運動ニューロンを刺激して、それぞれに含まれている筋線維群を収縮させています。図は『標準生理学第7版』(医学書院)に掲載されていたものですが、1973年に発表された米国公衆衛生院のBruke, Levine, Tsairis and Zajacによる”Physiological types and historochemical profiles in motor units of the cat gastrocnemius”(Journal of Physiology, 234, 723-748、1973)という論文より引用されたものです。

 ⒜、⒟、⒢はいずれもそれぞれの運動ニューロンを1回だけ刺激して生じた単収縮のときの筋電図を示しています。それぞれのグラフは、横軸は時間(単位はミリ秒)、縦軸は生じた張力の大きさ(単位がg)です。グラフ中の左上に描かれた小さな波線は、運動ニューロンの膜電位変化を示しており、下向きに大きく生じたピークの部分で活動電位臥床いています。つまりこのタイミングで興奮が伝達されて、筋活動電位が生じたと考えます。

 授業でも説明したように、単収縮の筋電図を観察すると、収縮を潜伏期、収縮期、弛緩期に分けることができます。グラフからは潜伏期は時間や張力の変化があまりにも小さいため、ほとんど分かりません。しかし、収縮期と弛緩期、そして張力のピークがどこであるかはよく分かります。FF型では、70ミリ秒程度で収縮+弛緩が終わり、張力のピークはおよそ40gくらいでしょうか。FR型は収縮し始めてから弛緩が終わるまでに100ミリ秒程度かかっており、張力はせいぜい10g程度です。S型では200ミリ秒近い時間をかけて収縮+弛緩し、張力はわずかに1g程度です。三つの型を構成する筋線維はそれぞれ、FF型=ⅡB型、FR型=ⅡA型、S型=Ⅰ型ですから、収縮の速度と張力の大きさの特徴がよくわかるでしょう。

 グラフの⒝、⒠、⒣では、100Hz、つまり運動ニューロンに1秒間に100回の刺激を加えることによって単収縮を加重させて強縮を生じさせています。強縮(tetanus)を生じさせる刺激を強縮刺激(tetanus stimulation)強縮を生じることによる張力の変化を表す筋電図を特に強縮曲線といいます。ここでは3~4秒間隔で強縮刺激を加えて、これを図に示された時間だけ継続して毎回の強縮曲線を記録しています。強縮を継続させることによって生じる筋の疲労のしかたが運動単位の型ごとに異なっていることがよく分かります。

 ⒝ではFF型運動単位を刺激開始時(図中には何も示されていない)、刺激を30秒間継続(30”)と示されている)、1分間継続(1’)したとき、強縮によって生じる張力がどのように変化しているかを示しています。それぞれのグラフの横に示された時間の幅は⒜と同様です。刺激開始時には、強縮によって単収縮時よりも大きな張力が生じていますが、30秒継続後には張力のピークがやや低下し、1分継続後には極端に小さくなっています。合わせて、収縮時の立ち上がりも遅くなり、弛緩の終了までも時間がかかっています。強縮が継続されることによって筋が疲労していることを示しています。

 ⒟はFR型運動単位にたいする刺激開始時、2分継続(2’)、5分継続(5’)したときの強縮の変化を示しています。強縮によって張力が非常に大きくなっていますが、それでも50g程度でしょうか。FF型運動単位に比べると、生じる張力は小さいことが分かります。しかし、この大きな張力は2分継続してもそれほど減少しておらず、5分継続すると30%ほど減少しています。FF型に比べると筋が疲労しにくいことが分かります。

 ⒣ではS型運動単位に刺激を加えて、刺激開始時、2分継続、60分継続して、それぞれの強縮による張力の変化を観察しています。生じる張力は5g程度でしょうか。FF型、FR型と比べて、張力はからり小さいですが、長時間刺激を継続してもその張力の大きさは全く変化していません。図中に時間は示されていませんが、刺激開始時と60分継続後での強縮曲線はほとんど重なっています。

 最下段の三つ、⒞、⒡、⒤は上記のような強縮刺激をさらに長時間にわたって継続しています。FR型とS型では強縮刺激を加える頻度はやや下げている場合もあるようです。⒞のFF型では15分間、⒡のFR型では50分間、⒤のS型では60分間にわたって、同一の運動単位に対して強縮刺激を継続して加え、毎回の強縮曲線を記録します。示されているグラフは、上2段のグラフの横軸を極端に狭めた様にしていると考えるとわかりやすいでしょう。張力のピークが縦の鋭いピークとして示されています。

 刺激開始時には、上段の実験を再現していることになりますが、FF型の張力は1分程度で極端に低下しており、その後さらに低下しています。FR型は4分くらいまで、張力はそれほど大きく低下しませんが、5分を過ぎたあたりから急に低下し始めます。しかし、50分後たっても、FF型ほどには低下せず、単収縮1回分ほどの張力を維持しています。FR型が疲労しにくい性質を持っていることが分かります。

 さらにS型は1強縮あたりの張力は4g程度しかありませんが、60分間強縮刺激を継続しても最大張力は変化していません。

 三つの運動単位の性質の違い、言い換えると筋線維の収縮やATP産生に関する性質の違いがよく理解できると思います。

 来週は第6章で感覚機能全般に関する特徴を考え、その後、第7章体性感覚に入ります。

2018年度 第15回 骨格筋の構造と収縮のしくみ

 夏休み前に簡単にイントロとして説明しましたが、改めて骨格筋の構造を考えました。

 前期の前半では人体を構成する細胞一般について、その構造と細胞膜や細胞小器官の構造を順に考えました。しかし、筋細胞は一般的な細胞と比べるといくつかの特徴があります。列挙してみると、
・細胞膜の一部が、細胞内(筋形質)へ陥入していること=この部分がT細管です。
・筋細胞が多核であり、しかもそれぞれの核は細胞膜近傍、つまり細胞内の周辺部に存在すること。
・滑面小胞体が豊富で、筋原線維の周囲に集まっている。筋小胞体という特別の名称を与えられ、カルシウムイオンを貯蔵している。
・他の細胞と比べるとミトコンドリアが多い。つまり、筋細胞はATPを大量に消費している。
・筋形質には「細胞小器官」には分類されない、筋原線維、ミオグロビン、グリコーゲンが存在する。グリコーゲンは肝細胞でも貯蔵していますが、筋原線維とミオグロビンは筋細胞にしかありません。(心筋にもありますが、平滑筋にはありません)

 骨格筋が収縮するのは、骨格筋を構成するそれぞれの筋線維が収縮するからです。そして、筋線維が収縮するのは、筋形質の筋原線維が収縮するからで、筋原線維の収縮はその構造単位である筋節が収縮するためです。したがって、筋の収縮を考えるためには筋節の収縮のしくみを理解する必要があります。心筋もほぼ同様のしくみがはたらいていると考えてよい。また、平滑筋には明確な筋節構造がないため、やや異なったしくみがはたらきます。

 骨格筋線維の筋節の構造をしっかりと頭に入れましょう。必ず自分で図を描き、各部分の名称とその特徴を確認すること。特に重要なのは、A帯、I帯、H帯、さらに細いフィラメントと太いフィラメントです。筋収縮のしくみと関わらせると、筋の収縮・弛緩にともなってどの部分の長さ(幅)が変化するのか、2種類のフィラメントがどのように動くのかをよく考えましょう。

 2種類のフィラメントの構成を知っておくことは、収縮のしくみを考える上で避けて通れません。予習の段階では「ミオシン」や「アクチン」の名称を正しく覚えていない解答が目立ちました。授業で取り上げた4種類のタンパク質の名称を正しく覚えておくこと。来週は、筋収縮においてこれらのタンパク質がどのように役割分担をしているかを考えます。

 最後に、神経筋接合部について取り上げました。ニューロンからの興奮の伝達のしくみは前期の最重要事項の一つです。神経筋接合部での興奮伝達もニューロンからニューロンへの興奮伝達と基本的なしくみは共通しています。注意すべきところは運動終板の構造と、このシナプスが必ず興奮性シナプスであるということでしょう。そして、伝達を担う神経伝達物質がアセチルコリンであるということも絶対に忘れてはいけません。

 来週は前期最後の授業ですが、筋のエネルギー供給のしくみ、そして筋線維の種類を取り上げます。

 予習は「筋のエネルギー供給のしくみ」までしておくこと。余裕があれば「筋線維の種類」も見ておきましょう。前期試験範囲は第5章6までの予定です。

2018年度 第14回 交感神経系、副交感神経系の構造と機能、筋の種類と特徴

 夏休み前最後の授業でした。
 自律神経系の機能に関する学習は交感神経系と副交感神経系の二つの遠心性神経が中心です。それぞれの構造を頭に入れた上で、機能の違い、つまり、器官の機能に対してどのように作用するのかを理解していきましょう。

 今回は具体的な作用のしかたまでは取り上げませんでした。循環器系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系の機能を一通り学んでからのほうが分かりやすくなると思いますので、後期の最後に復習をかねて説明します。まずは、それぞれの神経系の作用の一般的な特徴をしっかりと考えられるようにしましょう。「交感神経系が優位である」あるいは「副交感神経系が優位である」という状態で、どのような機能が促進または亢進するのか。逆に、抑制または低下する機能は何かを理解しましょう。その上で、具体的に、核器官系あるいは期間後のと機能を考えていくとわかりやすいのではないでしょうか。

 すでに学んでいる循環器系や呼吸器系をモデルにして考えてみると、生理学Ⅱの復習にもなり、一石二鳥です。循環器系では、心臓と血管の状態が、交感神経系優位なときと副交感神経系優位なときでどのように変化するのかは最もわかりやすいのではないでしょうか。血圧の調節機能とも密接に関わっています。多の器官系も含めて、教科書の204、205ページには、各器官に対する作用が簡単にまとめられていますので、参考にするとよいでしょう。

 血管に対する神経支配は、授業で説明した二重支配とは異なります。多くの血管は主に交感神経系だけによって支配されていて、血管平滑筋に対する作用もやや複雑です。循環器系について勉強する場合には、教科書206ページも参考にするとよいでしょう。後期の授業では、これらについても取り上げる予定です。

 心筋と平滑筋については簡単な説明しかできませんでした。プリントには3種類の筋の共通点と相違点について一覧にしてまとめています。すでに学んだ内容を多く含まれているはずですから、各自で確認しておくように。

 自律神経系ではたらく伝達物質については、今回は二つの物質を取り上げるにとどめました。実はそれぞれの受容体の機能を考えることがより重要ですが、これは後期にゆずります。

 骨格筋の構造までは説明しておきたかったのですが、やや時間が足りませんでした。夏休みが明けると授業は2回しかありません。しかも、実技の試験や学科の試験準備と並行することになります。夏休み中にしっかりと予習をしておきましょう。

 過去の期末試験問題も掲載しています。自分でよく見て、回答するにあたって不十分であると感じることがあればよく復習をしておくように。

2018年度 第13回 伝達物質と受容体、神経回路、末梢神経系

 今回は伝達物質受容体のしくみや神経回路の考え方の説明に時間をかけたため、自律神経系についての説明まで進めませんでした。来週は、自律神経系遠心性神経の構造と器官の支配の特徴をかいつまんで説明します。改めて予習をしておくように。

 さて、伝達物質として取り上げた物質はいずれも有名なものばかりです。具体例は今後の授業の中で取り上げることになると思います。そのときに思い出せるようにしておきましょう。また、受容体についても、イオンチャネル型と代謝調節型を区別して説明することが何度かありますので、しくみの違いをよく頭に入れておきましょう。

 例えば、取り上げたアセチルコリンとノルアドレナリンは、交感神経系や副交感神経系で伝達物質として利用されています。そして、関わっている受容体もイオンチャネル型と代謝調節型の両方です。それぞれの働き方の特徴を一緒につかめるのではないかと思います。

 神経回路はややわかりにくいところもあるかもしれませんが、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンをはたらきをよく頭に入れた上で、自分で考えてみましょう。論理学のようなところがありますので、分かってしまえば単純でしょう。

 来週の授業では、交感神経系と副交感神経系のそれぞれで、2種類のニューロンが自律神経節でどのように接続しているかを考えますが、ここで発散と収束の神経回路について改めて触れます。また、後期の授業では、反回性回路や側方抑制についても取り上げます。

 最近の小テストでは漢字の間違いが目立ちます。注意しましょう。

2018年度 第12回 神経線維、跳躍伝導、興奮性シナプスと抑制性シナプス

 第10回、第11回の授業では興奮の伝導と伝達について基本的なしくみを考えました。今回は、神経系を構成するニューロンや神経線維の構造を理解した上で、興奮の伝導と伝達がどのようにして生じているかを考え直してみました。

 神経線維には無髄神経線維と有髄神経線維の2種類があります。グリア細胞の特徴と合わせて解剖学でも取り上げられたはずです。よく見直しておきましょう。神経線維の構造の違いは、それぞれの機能の違い、つまり、伝導のしくみの違いを生んでいます。無髄神経線維では逐次伝導が生じ、有髄神経線維では跳躍伝導が生じます。伝導速度の違いを生み出すという点が最も重要ですが、エネルギー消費にも差が生じています。

 また、神経線維はそれぞれの直径にも差があります。特に、ヒトでは有髄線維の占める割合が高いためか、有髄線維の間で直径の違いが大きく、そのまま伝導速度の違いに結びついています。この結果、神経線維を分類したときに、大きく3種類、詳細には6種類に分類します。今後の学習では、これらの分類にしたがって具体的に名称を取り上げて説明することがたびたびあります。その神経線維が、有髄線維なのか無髄線維なのか、さらに、有髄線維である場合、その中でどの程度の伝導速度を持つものかをすぐに分かるようにしておきましょう。

 軸索終末にまで伝導した興奮は、別の細胞へ伝達されます。興奮を伝達する部分がシナプスで、ニューロンについて学ぶ場合には化学シナプス(化学的シナプス)を問題にします。伝達物質と受容体の組合せによって、シナプス後ニューロンに流入するイオンが異なります。ここで、陽イオンが流入すればシナプス後ニューロンには脱分極が生じ、陰イオンが流入すればシナプス後ニューロンに過分極が生じます。前者が興奮性シナプス後電位(EPSP)で、後者が抑制性シナプス後電位(IPSP)です。

 興奮性シナプスとはシナプス後ニューロンにEPSPが生じるシナプスであり、抑制性シナプスとはシナプス後ニューロンにIPSPが生じるシナプスです。そして、興奮性シナプスのシナプス前ニューロンを興奮性シナプスといい、抑制性シナプスのシナプス前ニューロンを抑制性ニューロンといいます。逆に言うと、興奮性ニューロンは興奮を伝達してシナプス後ニューロンにEPSPを生じるニューロンで、このシナプスが興奮性シナプスです。抑制性ニューロンとは、興奮を伝達してシナプス後ニューロンにIPSPを生じるニューロンであり、このシナプスが抑制性シナプスです。

 抑制性ニューロンも興奮しますので注意しましょう。

 シナプス後ニューロンに生じたEPSPやIPSPは細胞全体として加重されます。この結果、閾値を超えると活動電位が生じます。特に、中枢神経系のニューロンでは、各シナプスで生じるEPSPが小さいため、加重することによる効果が大きいと考えられます。プリントに脊髄の運動ニューロン(これは脊髄から骨格筋に向けて軸索を伸ばしている末梢神経)では、非常に多くのシナプス前ニューロンとの間でシナプスをつくっています。多くは興奮性シナプスと考えられますが、抑制性シナプスもあります。したがって、加重の効果によって活動電位が生じるか否かが決まります。一方、末梢神経系のニューロンや骨格筋などではシナプス1カ所に生じる(あるいは1本のシナプス前ニューロンによる)EPSPが大きく、簡単に閾値を超えることがあるようです。

 話は少しそれますが、授業でも簡単に触れたように、心筋や平滑筋では電気シナプス(電気的シナプス)によって興奮が伝達されます。刺激伝導系を構成する特殊心筋での興奮の伝達(「伝導」系といいますが、特殊心筋の細胞から細胞へと興奮が伝わっていきます)、さらに心室、心房で、それぞれを構成する固有心筋に興奮が伝わる場合に、この電気シナプスのしくみがはたらいています。前期の最後に、時間があれば心筋や平滑筋で活動電位が生じるしくみなどに触れることがあるかもしれません。

 来週は、興奮の伝達を考える上で避けることができない神経伝達物質とその受容体について説明します。その後、シナプスを介したニューロンどうしのつながりによって形成される神経回路を取り上げます。ここで、興奮性シナプスと抑制性シナプスの機能のしかたを考えてみます。その後、末梢神経系、特に自律神経系の構造と機能について取り上げます。

2018年度 第11回 興奮の伝達、神経系の構成と機能、ニューロンとグリア

 宿題レポートの再提出に関して授業中に言い忘れましたが、来週新たに提出するにあたって、返却したレポートを必ず添付すること。書式等は始めに注意したとおりです。

 さて、今週の授業ではニューロンという細胞の構造について改めて取り上げました。非常に特殊な形態の細胞で、興奮を伝えることに都合のよい構造です。長い軸索を持っているために、細胞体から遠く離れた細胞に対して興奮を伝達することができます。来週改めて取り上げますが、長い軸索にもさまざまな工夫が施され、効率よく興奮を伝導することができるようになっています。

 興奮の発生、伝導、伝達は、ニューロンのほか骨格筋や心筋など限られた細胞が持つ機能です。生理学ⅠやⅡの学習から分かるように、生理機能を考える上では、このような電気現象(生体電気ということもあります)を理解する必要があります。

 興奮の伝達を考える上でのポイントは、シナプスの構造、電位依存性カルシウムチャネル、エキソサイトーシス、そして受容体です。シナプスの構造は図をよく見て、できれば一度自分で図を描いてみて頭に入れましょう。

 電位変化を刺激として開閉するゲート型イオンチャネルは、先週取り上げた電位依存性ナトリウムチャネルと電位依存性カリウムチャネル、そして、今回取り上げた電位依存性カルシウムチャネルの3つを知っておけば十分でしょう。電位依存性カルシウムチャネルについては、筋細胞を機能を考える際にももう一度取り上げます。両者は遺伝子は異なりますが、大きな意味での機能は同じです。

 エキソサイトーシスを考える必要のある現象はホルモンの分泌が最も代表的ですが、今回取り上げた神経伝達物質の放出も重要です。「細胞の構造と機能」で説明したさまざま機能や性質は、いずれも全身のどこかで具体的に作用しているものばかりです。具体的に取り上げられたときに、一度振り返りながら理解していきましょう。

  授業では最後にグリアについて取り上げました。来週最初に改めて触れますが、オリゴデンドロサイトとシュワン細胞がつくる髄鞘は、興奮の伝導を考える上で非常に重要な構造です。これらのグリア細胞は軸索の周囲を取り巻いていき、ほぼ細胞膜だけがおよそ100層ほど重なっています。脂質の割合が高く、軸索の細胞膜を細胞外液から完全に遮断していると考えていいでしょう。したがって、個々の軸索は電気的に絶縁されています。

 来週は、軸索をグリアが取り囲んでつくられる神経線維について、どのよに興奮が伝導するかをあらためて考えます。さらに、興奮の伝達についてもさらに詳しく考えます。

2018年度 第10回 脱分極と活動電位、興奮の伝導

 今回は2限目の小テストにあたって、一部の学生に過去の小テストの印刷のあまりを配ってしまうというミスがありました。大変失礼いたしました。該当する学生については、評価点をつける際の集計において、今回の成績を分母から外します。もちろん欠席扱いというわけではありません。

 さて、今回の授業内容は前期の中でもとりわけ重要です。これまでに学んだ、細胞膜の構造や性質、細胞内外のイオンの組成、受動輸送やイオンチャネルのはたらきをしっかりと理解している必要があります。その上にたって、細胞膜、特にニューロンなどの興奮性細胞の細胞膜で生じている現象を考えました。

 過去の前期末試験問題を見ていればよく分かると思いますが、毎年出題しています。どの部分をどのように問うかは異なりますが、活動電位の生じるしくみや、興奮の伝導や(来週取り上げる)伝達のしくみは神経系のはたらきを考える上で基礎となる内容です。しっかりと復習しておきましょう。

 その場合、図やフローチャートを声に出して見ながら自在に説明できるようにしておくことが肝要です。黙って頭の中で考えているだけでは必ずごまかしてしまいます。声に出せば、うまく説明できていないことが自分でよくわかすはずです。できるなら、他人を前にして、講義をしているつもりで説明するとより効果があるでしょう。

 脱分極と過分極は、ちょうど正反対の現象です。過分極を考える機会は少ないですが、一緒にしてよく見直しましょう。まずは、陽イオンと陰イオンが細胞内へ流入する現象であるとしていいと思います。

 脱分極が生じるとき、ニューロンに加わる刺激の強さによって開放するゲート型イオンチャネルの数や時間が変化します。この結果、脱分極の大きさや持続する長さが変化します。したがって、強い刺激が与えられれば、生じる脱分極が大きくなる、すなわち、より多くのイオンチャネルが、より長く開放することになります。そして、脱分極が閾値を超えると活動電位が生じます。言い方を変えると、活動電位が発生するためには、閾値を超える脱分極を生じるような刺激が加えられる必要があります。

 活動電位のしくみを考える上でポイントは2つの電位依存性イオンチャネルです。順を追って考えていけば難しくはないはずです。閾値を超えるという刺激が電位依存性ナトリウムチャネルを開放させ、逆にオーバーシュートしたという刺激がこのチャネルを閉鎖します。また、オーバーシュートしたという刺激は電位依存性カリウムチャネルを開放し、オーバーシュートから静止膜電位へ戻ると電位依存性カリウムチャネルは閉鎖します。これらの現象を、活動電位のグラフの上に載せて考えるとすぐに分かるでしょう。

 全か無かの法則も同様に考えてみると、閾値を超えると必ず活動電位が生じるということは、閾値を超えたところで電位依存性ナトリウムチャネルが開放するということです。電位変化のピークの大きさが一定であるということは、常に同じ電位の大きさのところで電位依存性イオンチャネルが閉鎖し、電位依存性カリウムチャネルが開放するということです。

 活動電位の性質のうち、不応期は少しわかりにくいかもしれません。電位依存性チャネルが機能している状態では、たとえ刺激に反応したゲート型イオンチャネルが開放して細胞外の陽イオンが細胞内へ入ることになったとしても、その量は電位依存性チャネルによって移動しているイオンの量に比べると微々たるものです。したがって、細胞は全く反応しないと考えていいでしょう。このことは、興奮の伝導を考える上で重要です。興奮は必ず外側へ移動していくことを保証しているといってもいいでしょう。

 来週は興奮の伝達について考えますが、ここでも電位依存性チャネルが重要なはたらきをしています。さらに、先週の授業で取り上げたエキソサイトーシスの実例も考えることになります。今日の小テストができなかった場合にはよく復習をしておきましょう。

2018年度 第9回 能動輸送、小胞による輸送、静止膜電位

 はじめに、前回のまとめの中で絶対温度の説明をしましたが、その中で「温度感覚は摂氏温度と同じで、」という部分があります。ここは「温度間隔は摂氏温度と同じで、」の誤りです。訂正します。

 さて、今回は細胞膜を介した物質輸送の後半として、能動輸送と小胞による輸送を取り上げました。
能動輸送は二つに分けて説明しましたが、一次性能動輸送(ポンプ)がより重要です。特に、授業で例示したナトリウム・カリウムポンプ(「イオン」はつけてもつけなくてもかまわないでしょう。また、略して「ナト・カリポンプ」と呼んだり、「Na+/K+ポンプ」と記述されたりすることもあります)は今後何度も触れることになりますので、そのしくみをしっかりと理解しておきましょう。このポンプは、アニメーションで見たように、自身でATPを分解することができます。このことからNa+/K+ ATPaseと呼ぶこともあります。”ase”とは、この語の前に付いている名称の物質を分解する酵素を意味します。

 二次性能動輸送は、消化管で分解された栄養素(グルコースやガラクトース、アミノ酸など)を小腸吸収上皮細胞が吸収する場合、腎臓で尿が生成されるときに生じる尿細管での電解質(イオン)の再吸収の場合などに考える必要があります。思い出せるようにしておきましょう。

 エンドサイトーシスとエキソサイトーシスは互いに逆方向への物質の輸送です。授業では触れませんでしたが、いずれも大量のATPの分解をともないます。したがって、エネルギーを消費しており、広い意味では能動輸送と考えても差し支えないでしょうが、ポンプやシンポーターによる輸送とは輸送している物質(あるいは物体)の大きさや具体的な方法が異なるため、区別します。

 エンドサイトーシのうち食作用については他の科目で学んだ内容をもう一度確認しておきましょう。
エキソサイトーシスは今後ニューロンの機能を考える中で取り上げていきますが、他の科目でもホルモンの分泌など頻繁に考える機会があるでしょう。

 第2章にはかなり時間をかけましたが、すべての細胞に共通する性質を列挙するようにして説明しました。生理学で取り上げられる内容は、すべて「細胞の機能」を基本としています。生理学2では血球や心臓を構成する細胞群についてやや先行して進んでいますが、いろんな現象を細胞小器官や細胞膜の構造と機能を考えながら改めて見直してみましょう。特に、心筋細胞の収縮や特殊心筋における興奮の伝達などは第3章で取り上げる「細胞の興奮」を考えるとよりわかりやすくなるはずです。

 第3章で考える「細胞の興奮」は細胞膜の近傍の現象として理解することができます。したがって、この先もしばらくは「細胞膜」から離れられません。脂質二重膜を基本とする構造について、改めて見直しておきましょう。

 今日はその前提として、静止膜電位について考えました。細胞膜の構造だけではなく、細胞外液と細胞内液の組成、あるいはイオンについても知っていなくては正しく理解することはできません。電気に関する知識も少し必要です。来週は静止状態から大きく変化して細胞が興奮するという現象を考えます。

 以下にカリウム平衡電位について改めて説明しましたので、授業のプリントと合わせて見直しておきましょう。来週の授業では、以下の内容に平衡電位の計算方法を付け加えて配布します。

 静止膜電位について、改めて説明してみます。

 まず確認ですが、細胞内外には様々なイオンの分布に差があります。そして、細胞膜を構成する脂質二重膜はイオンを通さないため、いったんできた濃度差は簡単には解消されません。例えば、細胞外に100個の陽イオンがあり、細胞内に60個の陽イオンがある場合、その差である40個分の正の電荷の差が細胞膜を挟んで存在しています。実際には陰イオンもありますし、イオンの価数も考慮しなければなりません。このように、陽イオンと陰イオンの電荷の合計の差によって生じるのが電位差で、細胞膜を挟んで生じるため膜電位といいます。イオン濃度をもとに計算することもでき、電圧の単位であるボルト;Vで表します。

 膜電位はあくまでも細胞外を基準にして、つまり細胞外を0Vとして、細胞内がどれくらい正か負か、と考えます。正と負はあくまでも相対的なもので、どちらがより正の電荷(つまり陽イオン)が多いのか、あるいはより負の電荷(つまり陰イオン)が多いのかと考えればいいわけです。そして、膜電位として「電圧の大きさ」を問題にするとき、必ず細胞外に対する細胞内の電位差を指しています。

ではどうしてイオンの分布に差ができるのでしょうか? それを担っているのがイオンポンプとイオンチャネルで、これらポンプやチャネルのはたらきによって生じるカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度差が特に大切です(この他に塩化物イオンを一緒に考えることもよくあります)。

 細胞内外のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度差は基本的にナトリウム・カリウムポンプによって維持されています。このポンプのはたらきによって、細胞内にあるナトリウムイオンは細胞外へ移動し、細胞外にあるカリウムイオンは細胞内へ取り込まれます。その結果、細胞外にはナトリウムイオンが多く、細胞内にはカリウムイオンが多いという状態がつくりだされています。しかも、ナトリウム・カリウムポンプは3個のナトリウムイオンと2個のカリウムイオンをセットにして輸送しますので、このポンプのはたらきだけを考えれば細胞外の陽イオンが多くなってしまいます。

 いったんイオンポンプによって濃度差がつくられると、その濃度差にしたがってイオンがチャネルを通って移動します。細胞膜にあるカリウムチャネルにはいろんな種類がありますが、その中のカリウム漏洩チャネル(漏出チャネルともいいます)は、ニューロンの細胞膜には大量に発現しています。個々の漏洩チャネルはランダムに開閉を繰り返していますが、多数のチャネルが存在するため、ある数の漏洩チャネルが常時開放していると考えられます。したがって、細胞内のカリウムイオンは濃度勾配に従って細胞外へ移動します。追加で配布したプリントの図⒜の状態です。
 
 ところが、ある程度の量のカリウムイオンが細胞へ流出すると、今度は細胞内が陰性(負に帯電)に、細胞外が陽性(正に帯電)になり、カリウムイオンに対する電位勾配がつくられます(プリントの図⒝)。この結果、カリウムイオンは電位勾配にしたがって細胞外から細胞内へ移動します。あるいは、陽イオンであるカリウムイオンが負に帯電した細胞内に引きつけられて、濃度勾配による移動が少なくなるかもしれません。ただし、この状態では濃度勾配の方がまだまだ大きいため、カリウムイオンの移動は見かけ上は細胞内から細胞外へ向いています。

 しかし、さらにカリウムイオンの移動が続くと、電位勾配がどんどん大きくなり、濃度勾配の大きさと電位勾配の大きさが等しくなります(プリントの図⒞)。濃度勾配(化学的勾配)と電気的勾配(あわせて電気化学的勾配)がつり合った状態=平衡状態です。この結果、見かけ上、カリウムイオンはどちらの方向へも移動しなくなります。(ただし、移動が完全に止まったのではなく、流出量と流入量が等しくなり、見かけ上移動が止まっているだけです)。このように見かけ上イオンの移動がない状態のイオン濃度の差(電荷の差)によって生じる電位が「平衡電位」です。カリウムイオンの移動だけを問題にして、カリウムイオンの移動が見かけ上ない状態での電位ですので「カリウムイオン平衡電位」といいます。
 
 一方、細胞膜には他のイオンを通過させるイオンチャネルも多数存在します。例えば、ナトリウムイオンチャネルもいろんな種類があり、その中にはナトリウム漏洩チャネルもあります。しかし、カリウム漏洩チャネルに比べて圧倒的に数が少ないようで、細胞外から細胞内へ移動するナトリウムイオンは細胞外へ移動するカリウムイオンに対して極めて少量です。このように、細胞膜に存在するすべてのイオンポンプとイオンチャネルのはたらきによってつくりだされた細胞膜内外のイオンの濃度差によって生じるている電位差が静止膜電位(静止電位)です。

 一度説明を聞いただけではわかりにくかった人もいると思います。改めてじっくりと考えながら読み返してください。

2018年度 第8回 受動輸送

 前期も半ばにさしかかりました。勉強のやり方やペースがつかめてきましたか? 他の科目のことは分かりませんが、生理学Ⅰはここまでの内容がしっかり理解できていないと、来週以降の授業はかなり苦しくなります。もし不十分だと思うところがあれば、早めに復習しておきましょう。毎回の小テストや各章末の要点のまとめを参考にして整理すると効率がいいでしょう。

 今回は冒頭でタンパク質の輸送について簡単に補足しました。来週の授業でもう一度見て説明するところがあります。

 さて、中心は受動輸送ですが、広義の拡散についてもおさらいをしておきましょう。当たり前のことを説明したまでですが、液体の分子が常に運動しているということは何を考えるにしても重要です。

 簡単に補足しておくと、分子が運動エネルギーをもっているということは、すなわち温度があるということです。「絶対温度」を知っているでしょう。ケルヴィン温度ともいい、”K”であらわします。温度感覚は摂氏温度と同じで、「摂氏温度+273.15」であらわします。絶対温度が0K(絶対0度とよばれることもあります)は摂氏-273.15度にあたり、この温度ではすべての原子や分子が運動しなくなります。逆に言うと、この温度よりも高い温度では、温度に応じたエネルギーを持つため、物質はエネルギー量に応じて運動することができます。したがって、室温ではすべての分子が運動エネルギーを持ち、液体あるいは溶液中では「ランダムに運動している」=「動いている」わけです。このような運動の結果、溶液中では必ず拡散(広義の拡散)が生じます。

 受動輸送は、細胞膜を間に挟んだ状態で上のような拡散が生じていると考えるといいでしょう。ただ、細胞膜を通過するためには物質の性質によって通り道が異なり、授業で説明した3通りが使われます。

 単純拡散は、文字通り最も単純なしくみです。細胞膜の基本構造である脂質二重膜を通過できる物質は、低分子量で滑非極性(または極性が低い)物質に限られています。授業では例も挙げましたが、他の科目で触れられることもあるはずですから、その都度よく見直しをしましょう。

 膜チャネルは今後も何度も取り上げます。チャネルとよばれる膜貫通タンパク質がつくる通路を、比較的小型の分子が通過します。非極性であれば単純拡散で輸送できますが、極性が強い分子(イオンなど)では脂質二重膜を通過できないため、そのような多くの分子は膜チャネルを通過します。

 促進拡散では、チャネルタンパク質が提供する通路では小さくて通過できないような大型の極性のある分子が、キャリアタンパク質がつくる通路を通過します。分子の大きさの比較がしにくいかもしれませんね。ナトリウムイオンなどの単原子のイオンは所詮原子1個ですが、グルコースのように24個の原子からなる分子は明らかに単原子よりも大きいです。したがって、グルコースが通過できるようなチャネルがあると、細胞膜にかなり大きな「穴」が空いていることになり、一緒にいろんな物質が通過してしまいます。そこで、やや特殊なしくみができあがったのではないでしょうか。

 浸透、浸透圧は生理学では非常に大切な概念です。もし理解しにくい場合はいつでも質問を受けます。できるだけ早めに頭に入れてしまいましょう。細胞内外には細胞膜の厚みや面積に比して、大量の液体(水溶液)が存在し、それぞれの溶質濃度はいずれも非常に低いと考えていいでしょう。したがって、溶質の拡散を考えるときに同時に溶媒である水の拡散(=浸透)を考える必要はありません。しかし、水が細胞膜を通過する現象を考える場合には、溶質濃度(脂肪膜を通過できない溶質濃度)を考慮に入れて、水が移動する方向を考えます。『生理学のための化学』での最後にふれた「膠質浸透圧」がその一例です。

 授業では最後に溶血のビデオを見ました。何らかの理由で赤血球が破壊されることを一般に「溶血」といいます。ここでは、赤血球が極端な低張液(水)に曝されたことによって破裂されています。これが血液中への注射液を水でつくってはいけない、生理食塩水を使わなければいけない理由です。

 来週は、能動輸送、小胞による輸送を概観し、その後第3章へ入ります。

2018年度 第7回 遺伝子発現

 やや遅くなりましたが、先週の授業の内容を簡単に振り返ります。

 「遺伝子」や「DNA」は日常会話でも使われるようになってきました。ただし、テレビなどで話されているような使い方は、本来の生物学的な意味からはやや外れています。遺伝子とはタンパク質やRNAの構造を決める上方であり、その物質的な実体がDNAです。基礎医学に関わる概念や用語については厳密に考えるようにしましょう。

 さて、配布した『ヒトゲノムマップ』はよく見ておきましょう。これまでの人類の科学の到達点であると同時に、今後の学習にも役立つはずです。また、ヒトゲノムの塩基配列が明らかになったことによって、遺伝子の構造も具体的になってきました。授業ではその一端に触れたつもりですが、タンパク質のアミノ酸配列を決めている遺伝子の数、tRNAを初めとしたRNAの塩基配列を決めている遺伝子の数については概数を頭に入れておきましょう。

 さらに、タンパク質のアミノ酸配列を決めている遺伝子については、転写と翻訳のしくみを簡単に説明しました。転写は二本鎖DNAの一方を鋳型としてRNAを合成し、翻訳はmRNAを鋳型としてタンパク質を合成する反応のことです。

 転写とは、鋳型とするDNA鎖を構成するヌクレオチドの各塩基に対して相補的な塩基を持つRNAヌクレオチドを順に結合(ホスホジエステル結合)することによって一次転写産物がつくらることです。DNAの複製とほぼ同様の反応が生じています。一次転写産物(pre-mRNA)に対するスプライシングを初めとする加工(プロセシング)も重要ですが、授業では簡単に済ませました。この部分は『補遺:遺伝子と遺伝子発現のしくみ』に少し詳しく説明をしましたので、各自で自習するように。

 転写が必ず核内で生じるのに対して、翻訳は必ず細胞質のリボソームの機能によって生じます。tRNAの塩基配列をアミノ酸の配列に置き換えていく現象であるため、『翻訳』とよばれています。そして、その鍵となっているのが遺伝コードともよばれる「コドン」です。tRNAの連続する3塩基の配列を一組として1つのアミノ酸を指定します。我々は「読み枠」などともいい、「コドンを(アミノ酸に)読んでいく」という言い方をします。読み枠はtRNAの初めからではなく、途中のAUGから始まります。このコドンはメチオニンを指定するため、タンパク質のアミノ酸配列はメチオニンから始まります。翻訳のしくみも『補遺:遺伝子と遺伝子発現のしくみ』に詳しく説明をしました。

 合成されたタンパク質は、そのままでは機能することはできません。「タンパク質」と言うためには、機能できる状態、つまり、しかるべき構造をつくり、さらに機能するべき場所へ運ばれる必要があります。授業では細胞膜タンパク質や細胞外で機能するタンパク質を例にして説明をしました。膜タンパク質は、今週以降の授業でもたびたび取り上げますので、どのように運ばれていくのかについてもよく考えるようにしましょう。

2018年度 第6回 細胞分裂と染色体、DNAと遺伝子

 今回と次回で遺伝子と遺伝子発現を考えます。遺伝子は、もちろん「遺伝する因子」という意味ですが、ここでいう「遺伝」とは、親から子へという意味だけではなく、細胞が分裂したときに娘細胞へ伝わるという意味でもあります。したがって、始めに細胞分裂について取り上げました。

 体細胞分裂や細胞周期のメカニズムについては現在も研究が進められている分野で、おそらく終わりはないでしょう。しかし、ビデオで見たように、細胞を顕微鏡下で観察して得られる情報はすでの多く集められています。授業では簡単な模式図しか使いませんでしたが、染色体の形成を中心に、図をよく見ておきましょう。カラーのパネルには少し解説もつけられていますのでよく読んでおくように。説明のうち、「紡錘体極」とあるのは中心体だと考えてかまいません。また、紡錘体赤道面とは中期赤道面、染色体が整列する部分のことです。

 DNAは細胞周期の間期に複製され、分裂期に入ると染色体を形成します。それぞれの染色体は二つの染色分体がセントロメアで結合した構造です。二つの染色分体を合わせて姉妹染色分体ということもありますが、両者をあえて区別する必要もないので、名称は省いて説明をしました。細胞が分割されるとき、染色分体が互いに離れて、それぞれの娘細胞へ分かれていきます。

 複製されて二倍になったDNAは、こうして2つの娘細胞へ分配されます。これら一連の現象が連続していくことから、細胞レベルでも「遺伝」と考えます。

 ところで、ヒトの体細胞の染色体の数や構成は一般常識です。一市民として当たり前の知識ですから、医学を学ぶみんなにとってはいつでも説明できなければなりません。

 DNA、あるいは核酸については『生理学のための化学』を参考に自習しましょう。ヌクレオチドの構成、相補的な塩基の組合せ、そして、2本のヌクレオチド鎖が相補的な塩基どうしが向き合うことによって二重らせん構造をつくることなど、基本的なことをおさえておけば複製のしくみや、来週取り上げる転写のしくみも理解は容易です。

 DNAの構造が、相補的な塩基どうしが向き合った二重らせん構造であるという事実は、20世紀の自然科学における最大の発見の1つです。前回紹介したオートファジーの研究も、iPS細胞の研究も、さらにこれらのベースにあるバイオテクノロジー自体が、この発見を基にして成立し発展しています。物理学分野において、量子力学無くしてコンピューターもインターネットもなかったでしょう。同じように、生物学分野においても、DNAの構造が明らかにならなければ、現在の医学・生物学の発展はありませんでした。

2018年度 第5回 細胞小器官、細胞分裂

 今週は細胞質の構成要素である細胞小器官を順位取り上げて説明しました。機能のよく似たもの同士をまとめました。今後の授業で改めて取り上げる小器官もありますが、これぞれの構造の特徴と機能を自分なりにまとめておきましょう。

 細胞骨格は、それら自身がタンパク質で、重合することによって細胞内に広く分布しています。アクチンについては骨格筋の構造と機能を考えるときに取り上げます。また、繊毛、鞭毛、微絨毛は、生理学2&4や解剖学でも触れられることがあるはずですから、構造の特徴を頭に入れておきましょう。

 中心体は微小管形成にも関わっていますが、合わせて細胞分裂に関する役割について来週の授業で簡単に触れます。

 小胞体、とくに粗面小胞体とリボソーム、そしてゴルジ装置は蛋白質の合成と構造の構築に必須の小器官です。再来週の授業で具体的に機能を考えます。また、すでに配布されている『補遺・遺伝子と遺伝子発現のしくみ』でも詳しく解説しているので各自で目を通しておくように。

 滑面小胞体は細胞内の代謝などに関わった機能を持っていますが、細胞ごとに違った役割もおっているため、後者を強調して説明しました。筋細胞での役割は特に重要です。

 リソソームやペルオキシソーム、プロテアソームの三つはいずれも細胞内で何かを分解することに関わった小器官です。特に、リソソームは早くに発見され、多くの機能が明らかになっています。好中球とマクロファージのもつ食作用については生理学2ですでに学んだでしょう。生理学1でも6月に入ってから改めて取り上げて説明します。自食作用(オートファジー)については特に触れる時間はないと思いますが、『補遺・遺伝子と遺伝子発現のしくみ』で特別に説明しています。

 ミトコンドリアは『代謝』でATP産生のしくみを学ぶ中で改めて取り上げられると思います。生理学でも筋細胞の特徴を考える場合に、ミトコンドリアのATP産生能を問題にします。

 来週は細胞分裂について考えます。あまり詳しく触れる時間はありませんので、染色体の振る舞いについて特に注目します。その後、染色体を構成するDNAの構造を考えます。DNAは細胞の分裂にあたって必ず複製されますので、そのしくみも肝がんに考えておきます。その後、DNAに保存された遺伝子について考えます。

2018年度 第4回 細胞、細胞膜、細胞核、細胞質

 今回は生体の基本単位である細胞とはどういうものかを簡単に考え、構成要素のうちから細胞膜と核について考えました。

 生物の構成は非常にダイナミックで、生体では常に多くの細胞が死んでいくと同時に新しくつくられています。赤血球などはそのよい例です。受精卵からの発生過程を考えると、ビデオで見たように、1種類・1個の細胞が増殖と分化を繰り返して個体を作り上げています。細胞が分裂して増えていくしくみは次回または次々回に簡単に考えます。細胞が性質を変化させていく分化のしくみについては、残念ながら時間がなくほとんど触れることはできません。今後取り上げる遺伝子発現のしくみを踏まえて、後期の最後に時間があれば取り上げてみようと思います。あるいは補足のプリントをつくるかもしれません。

 さて、細胞の構成要素のうち最初に取り上げたのは細胞膜です。今回は細胞内外を隔てる構造物として、リン脂質を中心とした脂質二重層に特に重点を置いて説明しました。細胞膜がなぜ脂質二重膜を基本構造として作られているのかをよく考えてみましょう。リン脂質が両親媒性物質であることが重要なポイントです。この点は『生理学のための化学』の第6章でも取り上げています。小テストの範囲としては次のテーマですが、一緒に見ておくといいと思います。

 細胞膜の断面図は今後も再三にわたって取り上げます。脂質二重層を中央にして上が細胞外、下が細胞内として描かれていることがほとんどです。見慣れておきましょう。

 膜タンパク質は簡単にしか説明できませんでしたが、今後それらの内からいくつかを具体的に取り上げていきます。授業でも少し触れましたが、細胞の内外への物質輸送(第2章第7節)や細胞外からの情報の受容(第3章や第4章)に関わっている膜タンパク質を取り上げます。

 細胞核については、核内の様子と核膜の構造を説明しました。核内に存在するDNAについては来週の後半から再来週にかけて取り上げます。


 来週は、細胞質、特に細胞小器官について取り上げます。やや羅列して説明する様な授業になると思います。ややもすると眠たくなります。それを防ぐ最もよい方法はしっかりと予習をして、疑問を持って授業に臨むことです。

 授業で触れたRobert HookeのMicrographiaは以下のサイトで全文、全図を閲覧可能です。興味があれば是非どうぞ。
http://www.gutenberg.org/ebooks/15491?msg=welcome_stranger
または
http://www.gutenberg.org/files/15491/15491-h/15491-h.htm

2018年度第3回 体液のpH、フィードバック機構、化学反応

 今回はやや幅広く取り上げましたが、要点ははっきりしています。よく考えれば重要なポイントを外すことはないでしょう。

  体液のpHを維持するしくみである緩衝系については呼吸器系や泌尿器系と合わせても説明されると思います。この場合、酸塩基平衡という言葉が使われるかもしれません。

炭酸重炭酸緩衝系(炭酸二酸化炭素緩衝系)の機能が最も重要で、全体として
     CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-
という反応式であらわされます。水素イオン濃度が高いときには、泌尿器系のはたらきによって水素イオンそのものを尿中へ排泄したり、あるいは上の反応が全体として右から左に向かって進み、生じた二酸化炭素を呼吸器系のはたらきによって排出することによって過剰の水素イオンを解消しています。逆に、水素イオン濃度が低いときには、上の反応は右から左に進み、二酸化炭素の排出が減少して水素イオンが増加します。重炭酸イオンの濃度も同時に変化しますが、そのことが緩衝作用の中心でもあります。

 今回は『生理学のための化学』で「酸と塩基、pH」について自習することになりますから、ちょうど復習になると思います。一度は学んでいることが中心ですが、忘れていることも多いでしょうからじっくりと取り組みましょう。

 フィードバック機構を理解しておくことはホメオスタシスを具体的に考えていくことに結びつきます。概念は理解できたと思いますが、具体的に考えていくときには、構成要素である受容器、中枢、効果器の3つをしっかりと確認するようにしましょう。また、それぞれについて説明するときは曖昧な部分をつくらないようにすることが大切です。声に出したり文にして書いてみたり、さらにはそれぞれを他人に確認してもらいながら取り組むといいでしょう。

 化学反応についても同様です。合成反応=同化、分解反応=異化、化学反応全体=代謝とただ覚えるだけではなく、例えば、今回例示したアミノ酸からペプチド(タンパク質)の間の合成と分解のように、それぞれの反応が同化にあたるのか異化にあたるのか、あるいは今自分が考えている現象を代謝の中でどのように位置づけるのかを考えるようにしましょう。

 次回から生体の機能について本格的に考え始めます。生理学Ⅰでは、生体の基本単位である細胞について、分子レベルでの現象を中心に構造と機能を考えます。まずは細胞の基本的な構造と、細胞を構成する各部分の機能について考えます。

 また、『生理学のための化学』のうちの、次回のテスト範囲に一部訂正があります。:22ページ右段、下から5行目から6行目 「水素イオンと水酸化イオンが結合して」➡「水素イオンと水酸化物イオンが結合して」

2018年度 第2回 生体の階層性と恒常性

 今回は先週に引き続き、生体がどのような階層で成り立っているのか、内部環境の恒常性が維持されるとはどういうことであるかを考えました。

 階層の重なり方は小テストでも問いましたが、常に頭に入れておくべきことです。簡単ですが、非常に縦横なポイントですので改めて確認をしておきましょう。

 最も小さい階層である化学物質(原子や分子)ですが、これらは「化学」で学んだという意識が強いでしょう。生命現象は物質の相互作用として説明することができ、膨大な知識の蓄積があります。したがって、生命現象のメカニズムを学ぶためには避けて通れません。

 授業で取り上げた元素の名称や記号は化学的な現象を考える上での基本です。配布した周期表も参考にして改めて確認しておきましょう。また、それぞれの分子の特徴、特に高分子の構造と機能は授業の進捗に合わせて少しずつ解説をしますが、各自で『生理学のための化学』を順に取り組んでいくこと。

 細胞内にはさまざまな多くの分子や分子が集まってできた構造体(=細胞小器官)があります。しかし、これら単独では『生命現象』を営んでいるとはいえないため、生物学的な特徴を持つ構造的、機能的な最小単位は細胞です。人体には大きく分けても200から300種類の細胞が存在します。それぞれごとに、形態も機能も、またその細胞がどこにどれくらいの数あるかも異なっています。解剖学では形態の面から、生理学では機能の面から、これら細胞について考えていきます。プリントの「カタログ」に掲載された210種類は、いずれも何らかの形で取り上げられるでしょう。

 部位に応じて同種の細胞が集まり、一定の構造と機能を持った状態が組織です。細胞どうしが密に集まっている組織もあれば、粗になっている組織もあります。説明した4種類の名称と特徴をよく頭に入れておきましょう。授業では胃を例に挙げました。プリントの「参考:消化器系~」でも胃を取り上げ、p20に胃壁の構造を組織ごとに示し、さらに内腔側の粘膜=上皮組織については細胞の構成を図示しました。胃粘膜の中でも胃腺は多種類の細胞が組み合わされて構成されていますが、いずれも上皮組織に分類される細胞種です。

 組織が、器官としてまとまると固有の形態を持ちます。器官を「器管」と間違えるケースによくであいますが、言葉や字の意味をよく考えましょう。英語では”organ”で、語源などはここを参考にして下さい。

 器官がいくつか集まって、器官系をつくります。消化器がよい例です。「消化」器といいますが、消化器系の機能は大きく分けると、食物の摂取、消化液の分泌、食物の混合と移送、食物の消化、栄養素の吸収、排便と六段階に分けられます。これら一連の機能を全うするためには一つの器官では不十分で、いくつかの器官の機能を合わせることによってはじめて実現します。

 やや長くなりましたが、生理学1では、生体の機能単位である「細胞」について、できるだけ分子レベルでの現象を中心にして考えるところから始めます。

 後半で取り上げた「恒常性」、「ホメオスタシス」は、それぞれの考え方を提唱したベルナール、キャノンの名前とともに、概念を言葉で説明できるようにしておきましょう。これらの概念は多くの具体例によって裏付けられています。生理学を学ぶということは、これらの具体的な事実を順に身につけていくということに他なりません。

 今回は、その基本となる体液について簡単に説明しました。細胞外液と細胞内液、さらには間質液と血漿の組成や量がどのように維持されているのかは声帯全体のホメオスタシスを考える上で最も重要なしくみです。多くの器官系の機能が関わっていますので、説明は簡単ではありません。まずは、その量や組成の基本的な事柄を頭に入れておきましょう。

 小テストの模範解答と簡単な解説を別途掲載したので各自で確認すること。

2018年度 第1回 イントロ、階層性と恒常性

 入学後1週間、初めての授業が続いていますがいかがでしょうか? 

 第1回目の授業ということで、やや‘心構え’を説きすぎてしまった気がします。最初から力を入れすぎては疲れるだけですが、押さえるべきところは押さえておきましょう。

 今回の要点は生理学を学ぶ上での重要な柱である「生体の階層性」と「生体の恒常性」をいう言葉と、その意味するところを理解することです。具体性がないとなかなか理解しにくいですが、「階層性」については、生体を構成する階層がどのように積み重なっているのかをプリントの図を見ながら見直しておきましょう。「恒常性」はいくつかの具体例を挙げていますので、それらのうちのいくつでもいいので自分に引きつけて考えてみましょう。高等学校で学んだ生物の内容を思い出せるとよりわかりやすくなると思います。

 来週は、階層性についてもう少し具体的に説明します。また、恒常性・ホメオスタシスについては、内部環境である細胞を取り巻く液体について考えてみます。

 『生理学のための化学』では、第2項の「生体を構成する物質:元素と原子、分子、イオン」を小テスト範囲としますが、一部語句の訂正をしておきます。4ページ左16行目の「準主要元素」を「少量元素(準主要元素)」にして下さい。文中の表の表現に合わせるとともに、授業のプリントで用いている表現も併記します。

 プリントの各章末には『要点のまとめ』として穴埋めを中心としたドリルを設けました。必ずしも授業の進捗にしたがっているわけではありませんが、章ごとに整理するには便利だと思いますので、適宜利用して下さい。

2017年度 第30回 中枢神経系の高次機能

 今回は時間も少なかったので一部割愛して進めました。

  大脳の構造は複雑です。残念ながら、詳細な構造を説明することはできませんので、大脳の構造は解剖学で学んだ内容をよく見直しておきましょう。あわせて、感覚機能や運動機能の中で取り上げたそれぞれの中枢としての機能や特徴をよくおさらいしておきましょう。感覚機能は、中枢に情報(興奮)伝わってはじめて感覚が生じます。また、中枢から情報(興奮)が末梢に向かって送り出されないと運動することはできません。

授業ではヒトとヒト以外の動物を簡単に比較してみました。ヒトが「万物の霊長]といわれるゆえんを、少しでも分かってもらえたならば幸いです。

 脳波は簡単にしか説明できませんでしたが、特によく知られは波形は4種類です。大まかな特徴を頭に入れておきましょう。また、睡眠状態における脳波の特徴も押さえておきましょう。

 睡眠時と覚醒時のそれぞれの特徴は、概日リズムと関わらせてまとめてみるといいと思います。あわせて、他の科目でも学んだいくつかの生体現象体温やホルモン分泌、血圧に日内リズムのあることを学んだことを思い出しておきましょう。

 言語機能や学習・記憶に関するメカニズムは研究の進捗が著しく、教科書の内容程度では全く不十分です。とはいえ、基本的な内容が分かっていないとついて行けませんので、プリントをよく見ておいて下さい。また、休暇中の宿題にしたブルーバックスにもいくつか読みやすいものが含まれていますので、とどれか一つでも読んでみるといいでしょう。

 1年間で説明しきるにはあまりにも内容が膨大で、かなり割愛した部分や簡単に説明してしまった部分があります。また、第12章「骨の生理学」は取り上げることもできませんでした。これらのないかの一部ではありますが、他の学校などで講義を基にまとめ直して、来年度前半にはWeb上に掲載する予定です。夏休みの頃などに、改めてのぞいて下さい。

2017年度 第29回 錐体外路、 自律神経系の特徴

 期末試験前最後の授業はやや駆け足になりましたが、重要なポイントはすべて説明しました。

 運動機能を調節する伝導路は、先週の授業で取り上げた錐体路系が何よりも重要です。錐体外路系はもう少し時間に余裕があれば説明できたのですが、今回は名称とルートの概略の説明だけにしておきます。錐体外路に障害が生じたときの症状は臨床で取り上げられると思いますので、よく勉強して下さい。広くは大脳基底核の障害も含めて考えます。

 今回の授業の中心は自律神経系、特に伝達物質と受容体、さらに中枢の機能です。

 遠心性神経ではたらく伝達物質はアセチルコリンとノルアドレナリンの2種類のみです。具体的にどこで作用するかはよく確認しておくこと、さらに、受容体の特性、特に交感神経と副交感神経の表手吉間、組織の細胞がもっている受容体はすべて代謝調節型です。したがって、器官、組織によって興奮性に作用する場合と抑制性に作用する場合があります。プリントの一覧表とこれまでに生理学2&4で学んだ内容を手がかりに、よく見直しておくこと。

 授業では、特に交感神経系の作用について、受容体の種類や分布を広くまとめて説明をしました。交感神経系が優位なときの状態がしっかりと考えられれば、全体の仕組みがよく理解できると思います。

 後半では、自律神経系の中枢である脳幹と視床下部の機能をいくつか抜粋して説明しました。それぞれの部位の役割と、授与期・感覚神経からの情報を受けてどのような調節が起こるのかを一つ一つ確認しておきましょう。心臓や血管の機能、対光反射、体温調節、血糖値などの調節などは交感神経系と副交感神経系の役割分担がはっきりとしています。摂食や飲水に関しては内分泌系との関わりも重要ですが、視床下部が中枢としての役割を果たしていることをよく頭に入れておきましょう。

2017年度 第28回 大脳基底核、大脳皮質、随意運動の伝導路

 今回は大脳の運動調節について、2つに分けて考えました。

 まず、やや不正確ではありますが「大脳基底核」として基底核とその周辺の神経核によって構成される神経回路の機能を取り上げました。神経回路のつながり方を全部説明できる必要はありませんが、線条体へ入力した情報が直接経路と間接経路に分かれて出力部である淡蒼球内節・黒質網様部へ作用して、視床へ出て行きます。直接経路と間接経路は出力部に対する作用が正反対になっているため、この2つの経路のバランスによって基底核は運動を調節しています。

 授業ではパーキンソン病とハンチントン病の例を挙げて、どのようにしてこのバランスが崩れていくのかを考えました。順序立てて考えていくということがどういうことかを学んで下さい。また、これらの疾患については病理や臨床(神経内科)の講義で学ぶことになるでしょう。

 大脳皮質はさらに高次の調節機能を発揮するとともに、一次運動野からは脳幹と脊髄のα運動ニューロンへ指令を出しています。α運動ニューロンは下位運動ニューロン記述した部分もあります。また、α運動ニューロンは骨格筋を直接支配するニューロンです。しがたって、骨格筋は一次運動野からの指令によって収縮、弛緩していると考えます。

 一次運動野の特徴は、すなわち、全身の骨格筋ごとの特徴を物語っています。一次体性感覚野の特徴とも非常によく似ていますので、理解しやすいでしょう。どちらも大脳皮質と末梢の機能の関係を考える上で非常に重要な点です。どちらを問われてもしっかりと説明できるようにしておきましょう。

 最後に、この一次運動野からα運動ニューロンへの伝導路を取り上げました。大きく2つの伝導路、皮質脊髄路と皮質延髄路に分けられます。皮質脊髄路が錐体を通過していることに代表させて、随意運動を支配する伝導路ということで、両者を合わせて錐体路または錐体路系とよびます。皮質脊髄路はさらに2つに分けられますので、錐体路系は3つの名称を挙げました。それぞれのルートがどうなっているのか、さらに、これらがどの部分の骨格筋の運動を支配しているかをしっかりと確認しておきましょう。特に皮質脊髄路の2つは必ず自分で図を描いて、必要事項を書き込むなど、手を動かして頭に入れること。

 来週は錐体外路について簡単に触れた後、第10章自律神経系にすすみます。構造は解剖学で学んだともいます。また、基本的な構成と機能は前期に説明しましたので、今回は遠心性神経の機能について、伝達物質と受容体を通して考えます。同時に、脳幹と視床下部にある自律神経機能の中枢についても解説します。生理学2&4でも器官の神経性調節としてたびたび取り上げられ、後期の試験範囲とも重なっていると思いますので、復習をかねて進めます。

2017年度 第27回 脳幹による運動調節と小脳の機能

 年明けの第1回目でした。試験も迫った中野で短い冬休みでは、それほど頭を切り換えることも難しかったのではないでしょうか。運動機能の調節という点では年末の授業からの継続で、引き続き反射について考えました。

 授業でも触れたように、脳幹から直接出ている運動神経はすべて脳神経に含まれているため、支配している骨格筋の部位は限られています。ただ、脊髄に向かった下行路もあるため、姿勢の調節には全身性の反応も含まれます。大きくイメージをつくった上で、考えるようにしましょう。

 授業で割愛した嚥下反射は消化器で学んだ内容です。[反射]についての説明がどの程度あったのか分かりませんが、体性運動神経だけではなく自律神経系も関わった反射ですので、合わせて別の機会に取り上げたいと思います。

 脳幹の機能の中で眼球運動や頭部の運動に関わる調節は大きなウェイトを占めていますので、時間をかけて説明しました。脊椎動物では頭部(あるいは体幹を含めた頭部側)が動くことに対して、眼球が独立して運動することができます。したがって、頭部や体幹が運動する中でも視線を一定に保つことができます。視覚機能を生かす上で必須の機能でしょう。これを保証しているのが前庭動眼反射です。

 反射弓は、脊髄反射で考えた神経回路よりもやや複雑です。プリントの説明を見ながらよく考えてみましょう。拮抗抑制などの多シナプス反射を理解する上で良い参考になると思います。

 姿勢を維持するための反射も、受容器の違いはあるにせよ脳幹が中枢とした神経回路によって成立しています。前庭が刺激を受けた場合と固有受容器が刺激を受けた場合を一例ずつ取り上げました。身体の運動を無理なく遂行する上でも有効に活用できる場合がありますので、興味があれば是非深く調べてみましょう。

 小脳については簡単な説明しかできませんでした。随意運動を協調させる、運動を学習し記憶させるなどの役割に注目して、研究上は非常に興味を持たれている器官です。逆に、障害を受けた場合には平衡障害や推尺異常などの運動機能障害(運動失調と呼ばれます)を生じます。神経内科で学ぶと思いますが、治療的にはかなりの困難を伴う症状のようです。

 次回は大脳の機能と大脳から脳幹、脊髄の運動ニューロンへの伝導路を取り上げます。

2017年度 第26回 脊髄反射

 少し時間がたってしまいましたが、年末最後の授業を簡単にまとめます。

 脊髄を中枢とする運動調節機能、すなわち脊髄反射を取り上げました。具体的に考えていくときりがないため、特徴的な反射をいくつか取り上げて説明しました。あわせて、反射というものがどのような現象で、その神経回路である反射弓をどのように考えていくのかを身につけられるように、代表的な例を挙げました。

 伸張反射は単シナプス反射であるため、最も反射弓を考えやすいと思います。授業では膝蓋腱反射を例にしましたが、全身の多くの伸筋に生じる反射です。むしろ、膝蓋腱をたたかれることなど、日常的に生じることではありません。むしろ、歩行などの動作の中で大腿四頭筋が伸展する場合を思い描いた方が現実的でしょう。

 解剖学でも学んだと思いますが、関節の伸展や屈曲に関わる筋のはたらきは運動を考える上での基本だと思います。また、感覚受容器や神経の種類など、忘れているようなことがあればよく確認しておきましょう。

 伸張反射は決して単独で生じる現象ではありません。反射弓の基本が理解できたら、拮抗抑制や自原抑制をあわせて考えるようにしましょう。人体で生じている生理現象はすべてが連関しています。やや単純な例ではありますが、実感できるのではないでしょうか。

 屈曲反射と交叉性伸展反射も同時に生じます。中枢はやや複雑で、図によって描き方に差がありますが、介在ニューロンの種類によって、遠心性神経が興奮するのか抑制するのかを区別できるようにしておきましょう。

 年明けの授業では、脳幹を中枢とした反射を取り上げます。特に、眼球運動に関する反射が最も重要で、少し時間をかけて説明します。眼球の運動を司る6つの筋とそれらを支配する3つの運動神経について見直しておくように。

よい年をお迎えください。

2017年度 第25回 視覚、反射と脊髄の構造

 今回は前回の最後にやや中途半端に終わってしまった色や色覚について補足をしました。色覚について国試で問われることはないと思いますが、身近な事柄ですからですし、そもそもヒトあるいは動物にとっての基本的な機能の1つですから一度しっかりと頭に入れておきましょう。

 遺伝については高等学校の生物などで取り上げられていますので、覚えている人も多いでしょう。生理学で取り上げる時間がありません。病理学などで遺伝病などと関連して取り上げられるのではないかと思いますので、そのときにしっかりと勉強して下さい。

 色覚に関する遺伝現象は複雑で、高校の生物では1型色覚異常(旧来の赤色盲)と2型色覚異常(旧来の緑色盲)のしくみを「伴性遺伝」としていますが、正確ではありません。詳細はとても書ききれませんが、後期試験後の重合で時間があれば取り上げることにします。

 視覚の伝導路は、たの感覚の伝導路を比べるとやや複雑です。視神経が交叉をするところがポイントですが、脊髄視床路や後索路のような交叉のしかたとは異なります。また、視野の左右と網膜の左右が逆転しているため、さらに複雑に感じるかもしれません。順序立ててよく考えてみましょう。こういう内容はただプリンのテキストや図を見ているだけでは絶対に身につきません。必ず自分で図を描いて、授業で例に挙げたように矢の絵や各部位の名称などを書き込んで確認するようにしましょう。手も頭も、しっかりと使わないと理解できません。

 後半は第9章に入りました。運動機能に関する神経系のはたらきを、各機能の中枢部位のはたらきに注目して考えていきます。最初は脊髄と脳幹を考えます。この2つの部位を中枢とする運動機能のほとんどは反射であり、脳が介在することなくはたらきます。

 授業では反射に関する神経回路である反射弓の概略を説明しました。来週、そして年明けの授業ではこうした反射とその神経回路である反射弓を順に考えていきますので、その校正をよく頭に入れておいて下さい。また、最後に触れたように、最初に取り上げる伸張反射、拮抗抑制、自原抑制は筋や腱の感覚受容器が刺激を受けるところから始まります。これらの受容器についてもよく見直しをしておくように。

2017年度 第23、24回 平衡覚、可視光線の特徴、視覚

 先週の授業の記録を忘れていましたので、2週分を一緒にまとめます。

 平衡覚は大きく2つの受容器があり、それぞれが動的平衡と静的平衡を分担しています。ただ、有毛細胞を中心とした検知のしくみはよく似ています。半規管も卵形囊・球形囊も内腔は内リンパで満たされています。半規管は有毛細胞を覆っているクプラが慣性によって生じる内リンパの流れが感覚毛を動かします。卵形囊・球形囊では耳石膜の上に載っている耳石が頭部の動きに応じて移動することによって感覚毛を動かします。いずれにしても、感覚毛がある方向に倒れるとカリウムチャネルが開放して脱分極が生じ、反対方向に倒れるとカリウムチャネルが閉鎖して過分極が生じます。

 平衡覚の伝導路はかなり特徴がはっきりしています。第9章で運動機能について考えますが、この中で平衡覚と密接に結びついた反射をいくつか取り上げますので、そこで平衡覚の伝導路が一次中枢を経ずに運動機能と直接つながっていることが理解できると思います。

 特殊感覚の最後に取り上げる視覚は、受容器である視細胞の機能だけではなく、網膜に照射される光をどのように調節するかを一緒に考えますので、他の感覚よりも内容が豊富です。また、伝導路もやや複雑です。

 眼球の構造のうち、機能に直接関わる部分は説明しています。先週の後半と今週の前半で取り上げた遠近の調節と明るさの調節は、ともに水晶体とその周囲の構造が関わっています。解剖学で学んだ内容をよくおさらいしておきましょう。毛様体と虹彩は、ともに輪状筋と放射状筋よりなっています。毛様体については、特に輪状筋のはたらきによって水晶体の変化を考えました。また、虹彩は輪状筋(括約筋)と放射状筋(散大筋)の両方のはたらきによって、瞳孔の大きさの調節を考えました。これらの筋はいずれも平滑筋ですから、自律神経系(交感神経と副交感神経)によって支配されています。

 網膜の構造は、機能的に重要な視細胞層と神経節細胞層を中心によく見直しておきましょう。特に、光がどの方向に進行するのかを間違えないように。

 光に反応する視細胞の機能はやや複雑ですので、単純化して説明しました。順序よく現象を追いかけていけばそれほど難しいことはないでしょう。今回は杆状体細胞がどのように光に反応するかを考えました。ロドプシンは可視光線が当たっているか否かによって構造が変化し、杆状体細胞の状態を変化させます。視覚機能としては、この状態の変化が杆状体細胞に続く双極細胞、神経節細胞と伝えられて、視神経を介して視覚を生じさせることにつながっていきます。可視領域の中央付近の波長の光によく反応し、明暗の状態の変化を検知していると考えられます。したがって、もし私たちの網膜に杆状体細胞しかなかったならば、世の中は「白黒の世界」でしょう。

 錐状体細胞は、杆状体細胞のロドプシンにあたる視物質として、フォトプシンをもっています。特性の異なる3種類があり、1個の錐状体細胞は1種類のフォトプシンだけを発現しています。したがって、錐状体細胞にも特性の異なる3種類があります。この3種類の反応性の違いによって、私たちは色を感じています。

 来週は、色の感覚がどのように生じるかに触れた後、視覚の伝導路を取り上げます。さらに、後半は第9章に入ります。

2017年度 第22回 聴覚のしくみ、平衡感覚のしくみ

 聴覚と平衡覚の感覚器の構造について、生理学では機能に関わる部分について少し詳しく説明したかもしれませんが、基本的には解剖学でも学んでいるとおりです。もう一度よく確認をしておきましょう。

 聴覚のしくみは、前回説明した音波の空気の振動としての性質を頭に入れた上で考えましょう。振動のエネルギーは有毛細胞に伝わるまで、すべて何らかの振動、つまり物理的な刺激として伝えられていきます。この部分が聴覚器の“伝音部”にあたると考えますが、単に“伝える”だけではなく、エネルギーを増幅し、さらに、音波の波長によって共鳴部位を使い分けています。そして、最後に、有毛細胞の感覚毛の運動することによってイオンチャネルが開閉し、細胞内へのイオンの移動を変化するため膜電位が変化します。じつによくできたしくみです。途中で両生類や爬虫類の聴覚器の構造にも触れましたが、哺乳類は元来夜行性です。したがって、視覚以外の感覚によって周囲の情報を得るために発達させてきた機能ではないでしょうか。

 味覚や嗅覚でも、適刺激に対する受容器細胞の反応のしかたを取り上げました。いずれも、受容体やイオンチャネルなど、膜タンパク質の機能として考えました。聴覚や平衡覚で機能する有毛細胞も同様に、感覚毛にあるイオンチャネルのはたらきを説明しました。このように、一見マクロに見える現象も分子レベルでの構造と機能によって説明することができます。これらが現代の生命科学の重要な到達点です。最近の高等学校の生物では、こうした内容がかなり取り上げられています。医学を学ぶものとして、是非とも身につけてほしいものです。

 平衡覚は自覚しにくい感覚であるため、この感覚機能が乱されたような場合にどんな症状を呈するかをはじめに説明しました。別の例を挙げると、イヌやネコなどを仰向けにするとすぐにうつぶせ、あるいは四足で立つような姿勢をとろうとします。腹部を他社に見せることが危険につながるため、それを防ごうとする反射的な行動です。このとき、自らの背中が地面について腹部が上方を向いている、あるいは顔面が上方を向いているということは頭部の回転方向を検知することによって知覚しています。もし、東部の回転方向を知ることができなかったら、つまり平衡感覚器が機能しなかったらどうなるでしょうか。マウスやラットでの実験的に内耳を破壊すると、いったん仰向けにしてやってもそのままの姿勢を維持します。つまり、頭部の方向を全く理解していないということです。

 地球上にいる生物にはすべて重力がかかっています。特に、動物は身体を動かすため、どうしても重力がどの方向にかかっているのかを知っておく必要があります。平衡覚はあらゆる感覚の中で、最も早くに獲得された感覚の1つと考えられています。そして、そのしくみをそのまま流用して聴覚が発達してきました。したがって、感覚受容器は隣り合った部位にあり、さらに、刺激の受容のしかたもほとんど同じです。

 来週はお休みです。再来週は平衡感覚について補足して、その後視覚に入ります。

2017年度 第21回 味覚の中枢、嗅覚、音波

 味覚と嗅覚はともに化学物質を適合刺激とする感覚であることから、多くの共通点がありますが、相違点もはっきりとしています。これらを比較してみると、それぞれの特徴も見えてくるでしょう。

 それぞれの感覚の目的は、ともに生存に関する適、不適の情報を得るという点で共通してます。特に、その食物、飲料が摂取するに適するのか否かを判断するとともに、摂取に適した味やにおいを感じたときには消化器系の機能を促進するという点は共通しています。しかし、それらの感覚は他の動物と比べると鈍感であり、物質の検知閾値が高く(物質の濃度が高くないと検知できない)順応も速いという特徴があります。ヒトは視覚や触覚が発達している一方で、味覚や嗅覚から得られる情報をあまり当てにしてはいないようです。

 それぞれの基本感覚には大きな違いがあり、味覚には5つの基本味がありますが、嗅覚にはそのような感覚はありません。これは、物質に対する受容体の機能の差に依存しています。味覚の受容体は種類が限られ、決まった構造の物質だけを受容します。これに対して、嗅覚の受容体は非常に多種類で、さまざまな構造の物質に対応することができます。自身を取り巻く環境、文字通りに周りの空気の組成をできるだけ詳しく検知するという意味では、受容体の種類を増やす必要があったのでしょう。遺伝子レベルでの複雑な組換えが生じた結果、多種類の受容体タンパク質を産生できるようになっています。

 したがって、食物に関する情報を得るのは、まずその食物から発せられる揮発性物質を検知して、問題なしと判断したら口に入れてみて、さらに味を見て咀嚼、嚥下してもいいかどうかを判断する、という順でしょうか。

 それぞれの感覚の中枢を比較すると、味覚は大脳新皮質に一次中枢があるのに対して、嗅覚は大脳旧皮質(辺縁系とも言います)に一次中枢があります。進化的には、名前の通り旧皮質が先に出現し、哺乳類、特に高等哺乳類以降になって新皮質が飛躍的に発達してきています。環境を分析するための感覚として、あるいは、離れたところにいる天敵や仲間の存在を知るため感覚として、嗅覚はかなり古くから発達していたのでしょう。後期の最後で、ヒトとヒト以外の哺乳類の脳を比較してみますが、嗅球などが脳全体に占める割合を比べると、ヒトと他の哺乳動物では大きな違いがあります。

 後半では、嗅覚の適刺激である音波について取り上げました。説明がやや不十分だったと思いますが、音の大きさと高さの感覚の違いが音波刺激のどのような性質に依っているのかを理解してください。また、ヘルツやベルなど、日常生活でも比較的頻繁に使われる考え方にも触れました。知っておくといいでしょう。機会があれば、今回取り上げなかった音色の特徴も含めて、音楽的な意味での音の特徴についても取り上げたいと思います。

 次回は聴覚器の構造から、どのようにして音波刺激を神経系の電気信号に変換し、聴覚が成立するかを考えます。また、聴覚と同様に内耳に感覚器官がある平衡感覚についても取り上げます。

2017年度 第20回 内臓感覚、痛覚の特徴、味覚

 先週の授業は、冒頭で体性感覚の中枢についてまとめました。脳、特に感覚機能には「体部位局在」やこれとよく似た特徴を持つ領野が他にもありますが、一次体性感覚野は非常にわかりやすい局在性を示します。ホムンクルスとして描かれた図を見ても分かるように、その局在性には大きな特徴があります。図を見ながら順序をよく頭に入れておきましょう。先々週の授業で取り上げた体性感覚の伝導路を示す図(p245ほか)の中で、視床からの三次ニューロンの伸びる先をよく見てみましょう。それぞれ、下肢や上肢、あるいは顔面などの中枢部位へ入っているのが分かると思います。

 授業ではヒトについてのみを考えましたが、他の動物にも一次体性感覚野が脳の特定の領域に存在し、体部位局在が存在します。ただ、ヒトとは割り当てられている部位の大きさが全く異なっています。どのように異なっていると思いますか?

 先週は痛覚についてのいくつかの特徴を取り上げました。雑駁な内容でしたが、中でも重要なのは内臓痛覚の痛みの特徴と関連痛(放散痛)、そして、オピオイドです。いずれも他の科目でも取り上げられるでしょうが、この機会に理解しておきましょう。また、ストレス反応については概略を説明するにとどめましたが、内分泌系の機能を学ぶときに合わせて見直してみましょう。いくつかのホルモンのはたらきをひとまとめにして理解することができると思います。

 後半では特注感覚に入りました。今回は味覚について、その感覚の特徴と受容器・受容体を取り上げました。

 味覚の基本的な機能は「動物として生きていく上で必要な機能」という点に注目して考えています。基本味もこの観点から大きく2つに分類してみました。基本味物質の検知閾などと合わせて考えるとわかりやすいでしょう。

 味覚受容に関するしくみは、味蕾の構造と味細胞のはたらきをしっかりと理解した上で、各味物質ごとに存在する受容体、または受容体型イオンチャネルを考えましょう。これら膜タンパク質に味物質が作用することによって味細胞に電位変化が生じ、さらに、味細胞から味神経へ興奮が伝達されます。プリントで「味神経」としたのは、単一の神経をさすわけではなく、味細胞からの興奮を受ける神経という意味で示しました。明日の授業で取り上げるように、味蕾の部位によって神経が異なります。

 明日は、嗅覚を取り上げた後、聴覚に入ります。まずは、聴覚の適刺激である「音波」について説明します。


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 加納 安彦
 名古屋大学環境医学研究所
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2017年度 第19回 深部感覚、体性感覚の伝導路と中枢

 深部感覚のうち、固有感覚は筋紡錘と腱器官の機能を中心に説明しました。最後に取り上げた「筋長の変化と神経活動」をよく振り返りながら、それぞれの機能を考え直してみましょう。

 それぞれの構造の特徴、特に神経線維の種類はしっかりと頭に入れておくように。また、機能については、それぞれが「何に」反応しているのかを知っておくことが大切です。宿題として問題だけ提示しましたが、等張力性収縮と等尺性収縮の2つの場合で、筋紡錘と腱器官の機能を考えてみると縒り理解が深まると思います。

 体性感覚の伝導路は、固有感覚も含めて脊髄神経支配領域が広いため、脊髄の伝導路を中心に考えることが多いと思います。プリントにも三叉神経を含めて考えるべきところに「脊髄」と記したところが何カ所かあります。気をつけてください。国試では三叉神経による顔面や鼻腔、口腔、歯の支配に関して当問題も出題されていますので、忘れないように。

 後索路、脊髄視床路、三叉神経視床路の3つについて、共通点と相違点をはっきりさせて整理しましょう。図を見ながら、自分で表などをつくってみると分かりやすいと思います。特にポイントになるのはそれぞれの二次ニューロンでしょう。二次ニューロンの細胞体がどこにあり、どこで交叉をしているのか。また、脊髄の伝導路であれば、脊髄を上行しているのはどのニューロンの軸索か、なども重要な点です。

 脊髄小脳路は第9章「運動機能に関する調節」で改めて触れると思います。

 脊髄網様体路は痛覚にのみ関わっていますが、疼痛の定義に照らしてみればその重要性が分かると思います。来週、侵害刺激を受けることに伴って全身にどのような反応が生じるかを、今日配布したプリントを参考に簡単に考えます。

 体性感覚の中枢に関しては、一次体性感覚野の特徴が非常に重要です。来週、改めて説明をしますが、今日の授業の最後に見た図をもう一度よく見直して、その意味するところをおさらいしておきましょう。

 来週は体性感覚の中枢について改めて説明した後、内臓感覚、特に内臓痛覚について考えます。あわせて、痛覚全体に関わる特徴を説明します。その後、第8章「特殊感覚」に入ります。特殊感覚では、それぞれの感覚器官の構造にも触れますが、解剖学で学んだ内容ばかりですので、あまり詳しく説明しません。各自で予習をかねてよく復習しておくように。

2017年度 第18回 表在感覚、深部感覚

 今回はややキリが悪いですが、表在感覚のうち主として温度覚と痛覚、そして深部感覚のうち固有感覚の受容器である筋紡錘の機能と取り上げました。

 ここで言う温度覚は、熱痛や冷痛と区別します。そして、さらに温覚と冷覚に分けて考えます。それぞれの感覚の持つ特徴と、受容器の構造と神経線維をしっかりと頭に入れておきましょう。

 痛覚は表在感覚以外にも存在しますが、基本的な性質は表在痛として理解しておくのがいいと思います。あるいは、表在痛と多の部位の痛みを比較して考えられるようになるといいと思います。

 そもそも、医者にかかる理由の過半が「痛い」ということです。したがって、疼痛とはどういうものか、定義の説明に時間をかけましたが、各自でよく考えるようにしましょう。その上で、表在痛の特徴、受容器の構造と性質、神経線維についてよく整理しておきましょう。試験で問われることは言うまでもなく、臨床でも重要な知識です。

 深部感覚、特に固有感覚は概念的にはややわかりにくいですが、今回取り上げた筋紡錘と次回取り上げる腱器官、筋の状態を検知することによっての四肢や体幹の位置と動き方を知るための情報を提供してくれます。これらは運動機能を考える上でも重要な感覚器官です。

 次回は深部感覚を説明して、その後、体性感覚の伝導路について取り上げます。

2017年度 第17回 感覚総論、触圧覚

 遅くなりましたが、先週の重合の要点をまとめておきます。

 感覚単位は教科書では触れられていませんが、二点弁別閾や周辺抑制のしくみを考える上でわかりやすくなると考えて説明しました。実際に、感覚神経の末端には複数個の受容器が存在し、ある範囲に加えられた刺激に対して反応します。周辺抑制も教科書の説明では分かりにくいと思いますので、プリントの図を見ながら考えるとよいでしょう。

 さて、体性感覚は感覚としては非常にわかりやすく、また、皆さんにとってとりわけ関わりのある表在部に感覚受容器を持つ感覚を含んでいるため、やや詳しく説明をしています。表在感覚、特に触圧覚の受容器は多くの種類が知られており、それぞれの共通するところと相違するところがあります。自分なりに整理してしっかりと区別できるようにしておきましょう。相違点として重要なことは、それぞれの受容器の形態的な特徴とその機能です。いずれも機械的な刺激に反応しますが、皮膚に対して全く同じ強さと時間で刺激が加えられても、受容器によって反応するタイミングに差があります。このことが、皮膚の変位の大きさの違いに反応するのか、変位の速度の違いに反応するのか、あるいは変位の加速度の違いに反応するのか、という違いに現れてきます。

 明日は温度覚、痛覚、そして深部感覚を取り上げます。

2017年度 第16回 筋の種類、感覚機能総論

 遅くなってしまいましたが、後期最初の授業の内容を簡単にまとめておきます。

 前期にやり残した内容を簡単にまとめましたが、クラーレをはじめとするアセチルコリン受容体の作用を遮断する作用を持つ薬物の作用は臨床的に利用されているだけでなく、研究目的にも多用されています。ボツリヌス毒素は言うまでもなく食中毒の原因ともなり、重篤な症状を引き起こします。

 運動単位と神経支配比の考え方は筋の収縮の特徴を考える上で重要な性質です。今回は割愛しましたが、筋に強い負荷がかかって収縮するとき、最初からすべての運動単位(つまりすべての筋線維)が一斉に収縮するわけではなく、収縮する運動単位が徐々に増えていきます。このような現象を考える上で、運動単位とそれを構成する筋線維がどのように分布しているのかを知っておく筆余があります。また、筋線維の種類と運動単位の神経支配ヒトの間にも法則的な関係がありますので、よく見直しておきましょう。

 後半から感覚機能に入りました。適合刺激と感覚の投射の概念は、感覚機能を考える上で受容器の特性と中枢のはたらきが重要であることを示しています。また、ウェーバーの法則も単純ではありますが、感覚機能が神経系の作用であることを実感させてくれます。

 来週は体性感覚のうちの表在感覚に入ります。プリントを忘れないように。

2017年度 第15回 骨格筋の収縮、筋のエネルギー供給と筋の種類、運動単位

 前期最後の授業で、今日の進んだところまでが前期試験の範囲です。最後はやや駆け足で説明しましたが、しっかりと復習しておくように。

 運動ニューロンから骨格筋線維への興奮の伝達と筋線維の収縮・弛緩についてはプリントp
202ページの図を見ながら自分で説明できるようにしておきましょう。何事も自分の言葉で説明できるなれば、その内容を理解していると考えていいでしょう。逆に、理解を進めるためには、できるだけ、図などを見ながら(言葉で書かれた説明を見ずに)説明できるように心がけるのが早道です。

 いくつか重要なポイントがあります。
 興奮の伝達では、なんと言っても伝達物質と受容体の作用です。基本的な興奮の伝達のしくみを考えることとも重なります。
興奮収縮連関については、カルシウムイオンの役割を中心にして考えられるようにしましょう。
筋の収縮・弛緩については、2つのフィラメントの構造と作用を考えましょう。たんぱく質の機能を考えることが大切です。

 筋線維でのATP産生については、「代謝」に関する基本的な知識が必要です。生理学2の内容のおさらいと重ねるといいでしょう。細胞呼吸(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系)は生体での代謝機能を考える上で必須です。その上で、筋線維の種類を3つに分けて、共通点と相違点をはっきりさせておきましょう。

 非有酸素反応は解糖系とローマン反応を合わせて考えることもできますが、いずれも酸素を用いずにサイトゾルで生じる化学反応です。この反応システムはⅡ型筋線維でよく発達しています。その分、Ⅱ型筋線維にはミトコンドリアが少なく、有酸素反応は特異ではありません。一方、Ⅰ型筋線維は非有酸素反応は相対的に弱いですが、ミトコンドリアが多いため有酸素反応のしくみが発達しています。グリコーゲンはグルコースを産生するために必要な物質ですから、非有酸素反応で利用されます。ミオグロビンは酸素を結合・貯蔵しているたんぱく質ですから、有酸素反応に関わっています。

 型筋線維のうち、ⅡA型筋線維は非有酸素反応だけではなく有酸素反応のしくみも発達させています。

 筋組織としては3種類の筋線維の混合体と考えられるため、それぞれの筋線維ごとに独立して運動ニューロンによって支配されています。つまり、1個の運動ニューロンは同一種類の筋線維だけに興奮を伝達します。この1個の運動ニューロンと、この運動ニューロンが支配する(興奮を伝達する)筋線維をひとまとめにして「運動単位」といいます。筋組織は運動単位ごとに収縮します。ただし、ある筋を支配する運動ニューロンがすべて同時に興奮するわけではなく、多くの場合、非同期的に興奮します。したがって、筋線維も、ある運動単位が収縮していても別の運動単位は弛緩しています。この結果、特に強度の強い運動の場合には、筋疲労を遅らせて筋全体の収縮を長時間持続させることができます。

 運動単位についてはやや説明不足のところがありますので、試験後の授業で捕捉します。

 第5章では割愛した部分もいくつかありますが、後期のどこかで取り上げようと思います。したがって、10月の最初の授業では、運動単位に関して少しだけ説明を加えた後、新たに配布されるプリントにしたがって第6章「感覚機能」に入ります。

2017年度 第14回 骨格筋線維の構造と収縮のしくみ

 今回と次回で取り上げる筋線維の構造と機能は、夏休み前までに学んだ細胞の構造と機能、興奮性細胞の特徴を合わせて考えることになり、理解を進める上では格好の材料です。皆さんは実技の試験も始まっていて勉強が大変だと思いますが、期末試験に備えるためにも重要な単元ですから、しっかりと取り組んでください。

 骨格筋線維の構造は図を見ながら一つ一つよく確認してください。全体の構成とともに、特に筋原線維、あるいは筋節の構造は非常に重要です。筋節の構造が頭に入っていないと筋収縮の仕組みを理解することはできません。必ず自分で図を描いて、重要な部分の名称を描き込み、さらにその特徴や機能をよく確認しましょう。

 筋原線維以外の構成成分のうち、筋小胞体やT細管は筋収縮のしくみと密接に関わっていますので、合わせて考えられるようにしましょう。また、ミトコンドリアを初めとしたATP産生に関わっている構成成分については来週の授業で取り上げます。

 筋の収縮は太いフィラメントと細いフィラメントが互いにスライドすることによって生じます。したがって、この2つのフィラメントの位置関係、それらを構成するタンパク質の機能をよく理解しておきましょう。太いフィラメントを構成するミオシンタンパク質がATPを分解する性質を持っているこ、ミオシンとアクチンが結合してはじめてスライドが生じること、さらに、来週改めて説明しますが、カルシウムイオンがトロポニンに結合することがアクチンとミオシンの相互作用の引き金になっています。

2017年度 第13回 自律神経系の構造と機能

 やや遅くなりましたが、夏休み前最後の授業で取り上げた自律神経系を簡単にまとめてみます。

 構造は解剖学で学んでいるはずですので割愛しました。交感神経系では交感神経幹神経節と椎前神経節が使い分けられています。また、交感神経幹神経節の前後をどうやって通過していくのか、標的とする器官の部位によって異なっています。プリントp153の図(解剖学の教科書にも同様の図があります)をよく見て確認しておきましょう。副交感神経系は脳神経、骨盤神経と大きく分かれており、それぞれの支配領域もある程度はっきりと分かれています。分かりやすいと思いますが、それだけに抜けなく頭に入れておきましょう。

 また、それぞれで作用している伝達物質も押さえておくように。ほとんど例外がないため簡単だと思います。そして、これら伝達物質の作用、特に節後ニューロンから標的器官への作用によって、器官の機能が調節されています。授業では、みんながすでに学んでいる循環器系や呼吸器系を例に挙げて説明しましたが、今後学ぶ消化器系、泌尿器系に対しても神経性調節を考えていく必要があります。交感神経系と副交感神経系のいずれが優位となったときにどのように変化するのかを、授業で説明したような一般的な傾向とともに各器官、器官系の機能が具体的にどう変化するのかをよく考えるようにしましょう。生理学を学んでいく上で特に重要な内容です。

 夏休みの宿題について、何か分からないことがあればいつでも質問してください。できるだけ速く返事をするようにします。合わせて、ここまで学んだ細胞の構造と機能についてもよく復習しておきましょう。プリントに練習問題も入れています。重要事項のまとめを兼ねていますので、是非参考にしてください。

 夏休み明けで骨格筋の構造と機能を取り上げます。

2017年度 第12回 興奮の伝達


 今週はニューロンからの興奮の伝達について、2種類のシナプス、興奮性シナプスと抑制性シナプスの性質を中心に考えました。

 興奮性シナプスとは、興奮性ニューロンをシナプス前ニューロンとして、その終末とシナプス後細胞との間でつくられるシナプスです。興奮性ニューロンの神経終末まで興奮(神経インパルス)が伝導すると、シナプス小胞からエキソサイトーシスによって興奮性伝達物質がシナプス間隙に放出されます。興奮性伝達物質はシナプス後細胞の細胞膜(シナプス後膜)にある自身に対する受容体と結合し、イオンチャネルが開放します。この結果、シナプス間隙からイオンがシナプス後細胞に流入し、脱分極=興奮性シナプス後電位(EPSP)が生じます。単一のEPSPでは閾値を超えないため、多くのEPSPが加重されて閾値を超えると、シナプス後細胞に活動電位が生じます。

 抑制性シナプスに関しては、上の内容を参考にして各自で説明を考えてみましょう。

 シナプス後電位が加重されることを考慮して現象を考えることはあまりないかもしれませんが、シナプス伝達の重要な特徴の1つです。

 神経伝達物質として機能する物質やペプチドは数多く同定されています。まずは有名な物質を取り上げました。来週の授業では自律神経系ではたらく伝達物質であるアセチルコリンのノルアドレナリンについて取り上げます。生理学2&4でも必要に応じて物質名に触れられると思いますが、出てきたらすぐに頭に入れてしまいましょう。

 また、受容体のはたらきは非常に複雑で、現在も神経科学分野における重要な研究対象の1つです。イオンチャネル型受容体と代謝調節型受容体の2つの使い分けについては後期の最後に、自律神経系の機能に関わって改めて取り上げます。

 神経回路は、知識を正しく身につけて、それらを使って論理的に考えられるかどうかの練習です。つまり、興奮性ニューロンと抑制性ニューロン、興奮性シナプスと抑制性シナプス、興奮性伝達物質と抑制性伝達物質の区別がきちんとついているかどうか、そして、これらの知識を使って順序立てて考えられるかどうかです。じっくりと考えてみましょう。声に出して説明してみる、さらに、文にしてみると、どれだけ分かっているのかが分かると思います。できれば他人に聞いてもらったり、見てもらったりして、評価をしてもらうと尚いいでしょう。

 最後に触れたように、来週は、中枢神経系に関する構造と機能は割愛して、末梢神経系に関して取り上げます。解剖学で学んだ内容を見直しておくと、理解しやすいと思います。

2017年度 第11回 ニューロンとグリア、神経線維、跳躍伝導

 今回は、冒頭で神経系の機能を3つに分けて簡単にまとめました。具体的には後期に取り上げますが、第4章では、神経系の機能を担っている細胞であるニューロンとグリア、そして、その作用を受けて運動機能の発揮に必要な骨格筋細胞・組織を取り上げます。

 ニューロンは、存在する部位や形態によって詳細に分類することができます。第1章で見た「成人のからだを構成する細胞のカタログ」でも「ニューロン」でひとまとめにしながらも「莫大な種類--分類は不十分」となっています。今後の授業では多くの種類のニューロンを取り上げていきます。特に重要なはたらきをするニューロン、例えば感覚器系では、感覚受容器として機能する多くのニューロンを取り上げ、具体的に構造と機能を説明します。

 グリアは構造や機能からいくつかに分類されています。他の科目でも触れられると思いますが、今回は神経線維を構成する3種類だけを取り上げました。アストロサイトは中枢神経系で無髄神経線維をつくる以外に血液脳関門を構成していますので注意してください。

 髄鞘の構造と神経線維の様子は図や写真を見ながらよく頭の中でイメージをつくっておくように。生理学で取り上げる神経線維、特に末梢神経系の神経線維のほとんどが有髄線維です。したがって、跳躍伝導によって興奮は非常に速く伝導します。このことが大きな身体であっても素早く反応できる要因でしょう。

 プリントの中に一部誤字がありますので訂正します。
129ページの下段、「跳躍伝導」の説明の3行目「したがって、活動電流はランビエ絞輪から」の「活動電流」は「活動電位」の誤りです。
また、130ページの跳躍伝導の説明の図(右側)の下段の囲みの中の矢印はやや不正確でした。来週冒頭で改めて示しますので、訂正してください。

 神経「線維」は神経「繊維」している場合もあります。医学関連の教科書や辞書では前者が多いと思いますが、高校の教科書の他、生物学の教科書などでは後者が用いられています。日本医学会の用語辞典では前者が採用されていますので、授業では神経「線維」で進めます。

 次回は、シナプスと興奮の伝達について、改めて詳しく考えます。

2017年度 第10回 活動電位、興奮の伝導と伝達

 今回の内容は前期の中でも特に重要です。これまでに学んだ内容が頭に入っている必要がありますが、一つ一つは難しい内容ではありませんので、不十分なところは前を振り返りながらよく復習してください。特に、細胞内液と細胞外液の組成の違い、細胞膜のイオンチャネルの特徴をよく見直しておく必要があります。
 前回リンクを忘れましたが、静止膜電位については
ここここに詳しい説明をまとめましたので参考にしてください。

 活動電位は刺激依存性イオンチャネルの作用によって生じた脱分極が閾値に達することによって生じます。脱分極が閾値に達すると電位依存性ナトリウムチャネルが開放し、ナトリウムイオンが細胞外から細胞内へ移動するため細胞内がさらに陽性に変化します。あくまでも電位依存性ナトリウムチャネルの近傍に限られますが、細胞内へ入るナトリウムイオンの量が非常に多いため、細胞内のほうが細胞外よりも陽イオンが多い状態、つまりオーバーシュートします。細胞内が細胞外に対して正の状態になると、電位依存性ナトリウムチャネルが閉鎖し、逆に電位依存性カリウムチャネルが開放します。これら2つのイオンチャネルは細胞膜に近接していると考えていいでしょう。この結果、細胞内へ入るナトリウムイオンはなくなり、細胞内から細胞外へカリウムイオンが移動します。この結果、細胞内の正の度合いが低下し、さらには細胞内が負となり静止膜電位を回復します。

 いったん静止膜電位に戻っても、細胞内に入ったナトリウムイオンと細胞外に出ていったカリウムイオンはそのままです。つまり、元々の細胞内外のイオンの濃度は回復していません。単に陽イオンと陰イオンの総量=電位が回復しただけです。したがって、この後で細胞内に入ってきたナトリウムイオンを細胞外へ運び出し、細胞外へ出て行ったカリウムイオンを細胞内へ戻す必要があります。このために、後電位の期間はナトリウム・カリウムポンプが作用しています。

 局所的にはイオンチャネルがはたらき、オーバーシュートしていても、細胞内も細胞外も全体としては、ナトリウムイオン濃度は細胞外が高く、カリウムイオン濃度は細胞内が高い状態です。したがって、ナトリウムイオンを細胞内から細胞外へ移動させ、カリウムイオンを細胞外から細胞内へ移動させるには能動輸送に頼る必要があります。

 活動電位は、2つの電位依存性イオンチャネルのはたらきによって生じる現象です。したがって、これら2つのイオンチャネルが作用している最中に横やりを入れるように刺激依存性イオンチャネルが開放しても、2つのイオンチャネル反応できません。この状態が不応期です。興奮の伝導について考えるときにはこの状態も考慮する必要があります。

 興奮の伝導とは、この活動電位が生じている場所が順に移動していくことと考えていいでしょう。したがって、伝導が生じている細胞膜には上で考えた2つのイオンチャネルがともに存在しています。そして、これらイオンチャネルの隣接する部位で順に開閉していきます。この結果、ある場所が脱分極(オーバーシュート)して、次の瞬間に再分極すると同時に、隣接部位で脱分極(オーバーシュート)が生じています。こうして、活動電位が生じる場所が順に移動していくことを「興奮が伝導する」といいます。

 興奮の伝達は、伝導とは全く異なります。細胞から細胞へと伝わる減少ですから、全く別のしくみが必要です。

 生理学1では主に「化学シナプス」を取り上げます。「電気シナプス」について説明する時間はほとんどないと思いますが、心筋や平滑筋の収縮と弛緩を考える上では必要なしくみです。別の機会に詳しく説明しようと思います。ここでは、化学シナプスについて振り返ります。

 名前が示すとおり、化学物質=神経伝達物質が仲立ちとなっているということが最も重要です。興奮がニューロンの終末まで伝導してくると、終末の細胞膜にある電位依存性カルシウムチャネルが開放します。カルシウムイオンが細胞内(軸索終末内)へ流入するとシナプス小胞のエキソサイトーシスを誘導します。この結果、神経伝達物質がシナプス間隙=細胞外へ放出されます。シナプス間隙での細胞間の距離はわずかではありますが、この部分を伝達物質は拡散によって細胞外液中を広がっていきます。ここでいう「拡散」とは、広義の拡散です。局所的には伝達物質の濃度は非常に高いと考えていいでしょうから、シナプス前角からシナプス後膜に向かって広がり、多くがシナプス後細胞の細胞膜にある受容体と結合します。

 今週、さらに来週の授業でこの先を詳しく取り上げますが、興奮が伝達された結果、シナプス後細胞にどのような変化が生じるのかを考えるのは簡単ではありません。伝達物質に対する受容体はイオンチャネルと一体になっているものとそうでないものがあります。また、イオンチャネルを通過するイオンは陽イオンだけではなく、陰イオンの場合もあります。さらに、陽イオンがシナプス後細胞内へ流入したとしても、簡単に活動電位が生じる=シナプス後細胞が興奮するわけではありません。

 解剖学で「神経組織」はすでに学んだと思います。その中で、ニューロンやグリア、さらに神経線維などが取り上げられています。次回の授業では、復習をかねて概説しますので、改めて見直しておきましょう。

2017年度 第9回 膜電位と活動電位

 今回は、
膜電位がどのようにつくられるか
脱分極がどのように生じるか
活動電位とは何か
がポイントですが、これまでに学んだ細胞内液と細胞外液の組成、細胞膜の構造や細胞膜を介した物質輸送、特にチャネルを介したイオンの移動に関する知識を踏まえて考えました。
 そのほかに、基本的な化学や物理の知識にも触れました。

 このように、生理的な現象を考えていくためには、多くの基本知識を前提としながら、すでに学んだ知識を使ってさらに考えていく必要があります。何かを学ぶというのはそもそもこういうことです。これまでまり得意ではなかったとしても、何とかして克服しないと先には進めません。

 中心の1つである静止膜電位がどのように生じるか、授業での説明とは少し異なったやり方で説明して、まとめてみました。参考にしてください。ここここです

 また、脱分極とか分極という現象は、静止膜電位からの逸脱であると考えればいいかもしれません。もちろん、勝手に生じるわけではなく、必ずなにか刺激が必要です。「刺激」といっていますが、まずは単なる「きっかけ」であると考えて、その先を理解するようにしましょう。今後の授業の中で、いろんな「刺激」を取り上げます。しだいに実感を持って考えられるようになっていくと思います。

 「刺激」によっていったん脱分極が生じると、それがどれくらいの大きさであるか。つまり、どの程度陽性方向に変化するかが重要です。言い換えると、活動電位を生じるための閾値を超える超えないかがポイントです。脱分極が閾値を超えなければ、そのまま静止膜電位に戻りますが、いったん閾値を超えると必ず活動電位になります。メカニズムは来週の授業で説明しますが、このall-or-nonであることが非常に大切です。生物は一見アナログなしくみで動いているように見えますが、デジタルな側面も持っています。

2017年度 第8回 受動輸送、能動輸送、エンドサイトーシス

 今回の授業で取り上げた
細胞膜を介した物質輸送
は、多くの生理現象に関わる重要なしくみです。

 来週取り上げるエキソサイトーシスを含めて、ニューロンや筋細胞での活動電位の発生、ニューロンからの伝達物質の放出、毛細血管内外での物質交換、肺でのガス交換、消化管での消化液の分泌と栄養素の吸収、腎臓での濾過と再吸収、ホルモンの分泌と血液から標的細胞への作用など、器官系の機能を理解する上で重要な現象は、細胞膜を物質が通過することによって生じています。

 授業では基本的なしくみを順番に考えていきます。具体的にどのしくみがどこではたらいているかまで説明できませんが、他の科目で触れられたときにすぐに見直すようにしておきましょう。

 神経系や感覚器系、筋系の機能は生理学Ⅰで取り上げます。今回取り上げた受動輸送や能動輸送、来週説明するエキソサイトーシスなどの機能を中心にして説明する部分もあります。特に、来週の後半と再来週の授業ではニューロンの持つ興奮性について取り上げますが、ここではイオンチャネルやイオンポンプの作用について改めて触れるので、忘れずに復習をしておくように。

2017年度 第7回 遺伝子発現とタンパク質の輸送

 今回はDNAに保存された遺伝情報が発現するしくみを、タンパク質ができる過程を考えることによって概観しました。転写と翻訳の2つのステップについて、考え方の要点となる部分を説明したつもりです。プリントの図を見ながら、自分なりに跡づけてみましょう。

 転写は、二本鎖DNAの一方のみを鋳型としており、ある部分=転写開始点から始まって、相補的な塩基を持つヌクレオチドを順に結合させ、ある部分=転写終結点で終わります。DNAとRNAでは含まれる塩基と糖の種類に違いがあります。特に、糖の違いが二本差にしないと安定しないか、一本差でも安定であるかの差をつくっています。また、塩基の違いは相補的な組合せをつくる上で間違えないようにしましょう。

 転写された産物は、転写開始点から転写終結点までの一つながりのRNAであり、イントロンを含んでいます。したがって、スプライシングによってイントロンを取り除き、さらにCapやpolyAを結合させてmRNAができあがります。

 どの遺伝子を、いつ、どのくらいの量を転写するか。つまり、どの転写産物が、いつ、どれくらいできるのかは、細胞の状態を決める上で重要な要因です。

 できあがったmRNAは細胞質でリボソームによって翻訳されます。mRNAの連続する3塩基配列が1つのアミノ酸を指定するというのは、地球上のすべての生物に当てはまる重要な法則です。「翻訳;translation」とはうまい言葉を当てたものだと思います。「コドン」がアミノ酸を指定するという文法、あるいは言語の変換を通して、タンパク質が合成されます。

 翻訳も、転写と同様に、タンパク質ごとに開始部位と終結部位が決まっています。できあがったタンパク質はリボソームから離れると、形を整え、さらにしかるべき場所へ運ばれていきます。授業では細胞膜や細胞外で機能するタンパク質についてだけ取り上げました。これらは粗面小胞体上のリボソームで産生された後、粗面小胞体内へ入り、さらにゴルジ装置へ運搬されて立体構築されます。

 一方、細胞質内のサイトゾルや小器官、あるいは核内で機能するタンパク質は遊離型のリボソームで合成されます。これらのタンパク質には「シグナル配列」とよばれるタグ=荷札の役割をするアミノ酸配列が含まれていて、この部分の配列情報に基づいてそれぞれの場所へ運ばれていきます。

 最後に溶液中の拡散について簡単に説明しました。現象としては当たり前のものですが、拡散(広義の拡散)は、生体内での物質移動や輸送を考えていく上で非常に重要な概念です。分子は常に運動(文字通り、運動エネルギーによって動いています)しています。一つ一つの分子に注目をすると、それらは完全にランダムな動き方をしています。したがって、多くの分子が集合すると、それらの運動の方向や大きさは完全に相殺され、マスで見たときに全く動きがないかのように見えます。よく使われる表現ですが「見かけ上」変化がありません。ここに、異なった種類の分子の集団が入り込むと、この新たな異種分子も運動しているため、互いが動き合って、お互いの間に広がっていきます。こうした運動が長時間続くと、互いが広範囲に広がって均質な状態になります。このような現象を「拡散」といいます。さらに、拡散して全体が均質になった結果、見かけ上変化がなくなってしまった状態を「平衡状態」といいます。

 来週は、上で考えたような物質の移動が細胞膜を挟んで、どのように生じるかを考えてみます。

2017年度 第5、6回 細胞小器官、細胞分裂、DNAとその複製、遺伝子

 前回分のまとめをうっかりと忘れておりましたので、まとめて掲載します。

 細胞小器官は種類が多く、先週の授業の内容だけではその役割がなかなかピンとこないかもしれません。ややもすると丸暗記したくなりますが、その細胞がどのような細胞小器官を多く備えているのかということは、その細胞の機能とよく一致します。名称と簡単な構造と機能は覚えないとどうしようもありませんが、他の科目で学んだ(あるいはこれから学ぶ)内容などと結びつけて理解するようにしましょう。

 例えば、生理学2で学んだ好中球やマクロファージは食作用(貪食作用)を発揮して、広く生体の防御に関わっています。これらの細胞は、微生物や外来異物を小胞に包まれた状態で細胞内へ取り込みます。その後、小胞は細胞質のリソソームと融合し、リソソーム内に含まれている分解酵素の作用によって取り込んだものを分解・消化します。マクロファージは寿命に達した赤血球や血小板を取り込んで分解するためにも機能しています。このような作用についても来週の授業で取り上げます。

 オートファジーは同じリソソームが関わった機能でも、多くの細胞に共通しています。

 授業で紹介した膵臓外分泌細胞は、膵臓の大部分を占めており、大量の消化酵素、すなわちタンパク質を産生して細胞外へ分泌しています。分泌された消化酵素は、膵臓から十二指腸へ排出されて消化管内で食物の分解・消化に与かります。従って、粗面小胞体とその表面にあるリボソーム、さらにはゴルジ装置を多く含んでいます。生理学2の消化器系で取り上げられるでしょう。また、来週の授業では、このような分泌タンパク質の合成と細胞内での輸送について取り上げます。

 また、前期の最後で筋細胞の構造と機能について考えます。筋細胞が収縮、弛緩するときには大きなエネルギーが必要です。このエネルギーの源になっているのはATPです。したがって、筋細胞は大量のATP
を産生する能力を持っています。そのうち、サイトゾルでは解糖系とローマン反応という化学反応によっていますが、さらに、ミトコンドリアを大量に備えており、ここでATPを産生しています。

 中心体と微小管の役割については今日の授業で少し触れました。細胞が分裂するときに、染色体を誘導するために必須です。また、微小管は別の機会にも触れることがあると思いますので、それらと合わせて細胞骨格の役割を理解しましょう。

 さて、今日の授業の中心は染色体とDNAでした。『生理学のための化学』に詳説したので不要だったかもしれませんが、現在の生命科学における常識といっていいでしょう。十分に理解しておく必要があると思いますので、今日の授業の内容と『生理学のための化学』あるいは他の成書を合わせて自学自習しましょう。

 DNAの構造を理解する上でポイントになるのは、相補的な塩基同士が向かい合って二重ラセンをつくっているということです。塩基の構造は詳しく説明できませんでしたが、相補的な塩基同士がかみ合うように水素結合をつくっています。DNAはヌクレオチドが多く連続していますから、非常に長い二重ラセン構造をつくっています。ヒトゲノムが全部で約34億塩基対として、染色体1本当たり約1億5千万塩基対ということですね。1細胞分のDNAが単純にゲノム2セット分とすると、全部を1本につなぐとおよそ2mです。

 ところで、生理学は生体の機能を考える学問ですが、いきなり機能を考えられるわけではなく、あくまでも構造を基礎にして考えていきます。分子レベルでの現象を考える上でも同様で、DNAの構造について毎年同じ説明をして、説明を重ねるほどにそのみごとな構造に驚嘆します。DNAの複製のしくみ、さらに来週取り上げるDNAからRNAへの転写のしくみを考える上で欠かせない知識ですので、よく復習しておくように。

 最後に遺伝子についてとりあげました。説明したように、いくつかの定義がありますが、授業ではタンパク質の構造(具体的にはアミノ酸配列)とRNAの配列(同様に、RNAを構成する塩基の配列)を決める情報にあたる部分を合わせて『遺伝子』とします。今後の授業ではタンパク質の機能に焦点を当てた説明が多くなりますが、DNAの塩基配列という形で多くの情報が保存されていると理解しておきましょう。

 今日配布した『ゲノムマップ』は、『周期表』や『細胞』と同様に、『一家に一枚』シリーズです。相変わらず小さな持ちで見にくいと思いますが、余裕があればダウンロードして拡大して見てください。他のチャートと同様に、科学館のミュージアム・ショップで販売されていると思います。ピックアップして説明されているのは、いずれも有名なタンパク質のアミノ酸配列を保存した遺伝子ばかりです。ヘモグロビンやABO式血液型に関わる酵素、今日取り上げたDNAポリメラーゼ、今後の授業で取り上げるアクチンやミオシン、ロドプシン、神経伝達物質の受容体、さらに消化酵素であるアミラーゼ、インスリンやプロラクチン、これらホルモンの受容体、そして免疫グロブリン、いくつかの疾患の原因となるタンパク質など、幅広く取り上げられています。

 分子レベルで生じている現象を実際に目できることはできません。授業で使っている図は数ある教科書類の中で分かりやすいものを選んでいます。想像力を働かせましょう。

 来週は遺伝子発現を実現している転写と翻訳という2つの現象、そして産生されたタンパク質が細胞内でどのように運搬されていくのかを考えます。その後、改めて細胞膜について、構造だけではなく機能について考えていきます。

2017年度 第4回 細胞膜、細胞核、サイトゾル、細胞骨格


 今回は細胞の機能を考える上で不可欠な細胞膜とサイトゾルを中心に考えました。

 細胞膜の構造を理解することは単に細胞の内外の隔てる境界としてだけではなく、多くの細胞機能を考える上で非常に重要です。今後、細胞膜の果たしている機能を具体的に取り上げますが、構造が分かっていないと機能を理解することはできません。しっかりと復習しておくように。特に、脂質二重膜は、リン脂質分子の構造をよく理解した上で考えるようにしましょう。リン脂質という、両親媒性をもつ物質が膜の中心になっているということがポイントです。

 コレステロールの重要性も忘れてはなりません。ややもすると悪者一辺倒にされがちです。どんな生体物質であっても、必要以上の量が存在したり、代謝全体がアンバランスになれば、悪影響を及ぼします。

 取り上げたように、コレステロールは疎水性の化合物です。したがって、血液中を運搬されるにあたって、血漿に溶解した状態では運搬できません。リポタンパク質という、コレステロールとタンパク質の複合体の状態で運搬されます。他の科目で学ぶはずですが、いわゆる「悪玉コレステロール」とか「善玉コレステロール」と呼ばれているのは、このリポタンパク質のことであり、コレステロール自体をさしているわけではありません。「悪玉コレステロール」と呼ばれているのは低密度リポタンパク質(low density lipoprotein; LDL)で、「善玉コレステロール」と呼ばれているのは高密度リポタンパク質(high density lipoprotein; HDL)です。

 脂質については『生理学のための化学』でも詳しく取り上げました。脂質二重膜の構造についても合わせて触れていますので、各自でよく学習してください。

 細胞膜の機能を担っているのが膜タンパク質です。ここでは、膜にあるタンパク質がどのような配向、位置関係にあるのかだけを説明しました。ここの膜タンパク質の形、名称、機能は順に取り上げます。何度か振り返って見直す必要もあると思いますが、プリントの流動モザイクモデルの図がすぐに頭に思い浮かぶようにしておきましょう。

 細胞の図を見ていると、内部には核を含めて多くの構造物があります。来週の授業でそれぞれの小器官の構造と機能を取り上げますが、液体部分であるサイトゾルも忘れないようにしましょう。サイトゾルでは多くの化学反応が生じ、これらの反応抜きに細胞が生存することはできません。また、個々の細胞の独自の機能を発揮することもできません。例えば、赤血球は核もなければ、小器官もほとんどすべてを失っています。したがって、独特の形態を維持していますので、細胞骨格は存在しますが、サイトゾルを細胞膜が覆っているだけの細胞といってもいいほどです。そして、サイトゾルには莫大な数のヘモグロビンタンパク質があり(赤血球1個あたりおよそ2億8,000万個のヘモグロビンが存在する)、酸素を結合して運搬しています。また、水素イオンや二酸化炭素も含まれています。そして、以前に説明した緩衝作用に関わる重要な化学反応が生じています。

2017年度 第3回 体液のpH、フィードバック、化学反応、細胞とは

 今日は話がかなり雑駁になりましたが、今後の学習の基礎になる内容ばかりですので、よく復習をして頭に入れておくように。

 体液、特に血漿のpHが7.35~7.45に保たれているということは、維持されている内部環境の諸要素の中でも特に重要です。呼吸器系と泌尿器系で具体的に学ぶことになると思います。また、内分泌系では、特に腎臓の機能を調節働きをもつホルモンについて取り上げられますので、しっかりと学習してください。

 授業ではエアコンの例を用いて説明しましたが、負のフィードバック機構はホメオスタシスの諸要素のそれぞれが維持されているしくみを考える上でどうしても理解しておく必要があります。授業では血圧調節を例にして説明しました。生理学Ⅱでも同様の説明があると思いますが、受容器がどこにあるのか、受容器と中枢を結ぶ神経、中枢、中枢と効果器を結ぶ神経系の作用、そして効果器の働きなど、順に追って考えるようにしていきましょう。

 化学反応については、本来であれば『生理学のための化学』に含めるべき内容ですが、残念ながらまとめられていませんので今回の授業で取り上げました。高等学校の化学などで学んだ内容の中にすべて含まれているのですが、これから学ぶであろう内容に即してまとめ直してみました。やや分かりにくいところもあったともいますが、同化反応、異化反応、そして代謝の概念は頻繁に取り上げられます。また、可逆的反応もよく出てきますので頭に入れておきましょう。そして、ATPは『エネルギーが必要』な場面では常に介在する物質です。忘れないようにしましょう。

 来週から第2章『細胞の構造と機能』へ入ります。今日の最後にも触れたように、細胞は生体の構造と機能を考える上での基本単位です。すべてはここから始まると要ってもいいでしょう。最初に細胞膜について考えますが、生体を構成する分子のうち、脂質が特に重要な役割を演じています。『生理学のための化学』の該当部分を自習してから臨みましょう。

2017年度 第2回 階層性(外皮系をモデルとして)、恒常性(体液をモデルとして)

 前回の授業で概念だけを説明した「階層性」について、外皮系をモデルにして説明しました。
器官系:外皮系 -> 器官:皮膚 -> 組織:上皮組織である表皮 -> 細胞:ケラチノサイト(角化細胞)など
器官系:外皮系 -> 器官:皮膚 -> 組織:結合組織である真皮 -> 細胞:線維芽細胞
まとめてしまうと簡単ですが、それぞれの構造の特徴をよく見直しておきましょう。

 上皮組織、特に被蓋上皮については解剖学でも取り上げられると思いますが、今後学ぶ多くの器官の構成として重要です。また、結合組織の種類も、骨や軟骨に関してすでに取り上げられていると思います。上皮組織と異なり、細胞間の物質が機能的にも重要です。

 「恒常性」、あるいは「ホメオスタシス」は、概念自体もきちんと説明できる必要がありますし、具体例をあげて考えてみることも必要です。今日取り上げた体液の量と組成が「ある範囲で一定に」保たれているということは、人体のホメオスタシスを維持する上で重要な要素の一つです。あるいは、体液の量と組成に関するホメオスタシスが維持されているということは、個体が健康であるための必須要件です。

 体液は細胞内液と細胞外液、さらに細胞外液は大きくは間質液と血漿に分けて考えます。それぞれの体重比での量や、組成(特に電解質の組成)の違いは今後もたびたび考える機会があります。「そのうちに」ではなく、「直ちに」頭に入れておきましょう。

 体液の量と組成がどのようなしくみで維持されているのかは生理学2&4で学びます。特に、内分泌系と泌尿器系、あるいはこれらに関連した内容として取り上げられると思います。循環器系や消化器系の働きも関わってきます。非常にダイナミックで、多くの器官や器官系が連関して機能していることが非常によく分かります。楽しみにしておきましょう。

 来週はゴールデンウィークで、また1週間空いてしまいます。次回はホメオスタシス自体がどのようなしくみで維持されるのか、代表的なしくみを改めて考えてみます。また、生体にで生じる化学反応に関する基本を確認します。その後、第2章に入りますので、準備しておくように。

2017年度 第1回 階層性と恒常性

  1週間授業を受けてみていかがですか? 授業の始まりと終わりのあいさつなど中学校や高等学校の様なところもあれば、授業の進め方など大学のように講義中心で、取り組み方は学生1人1人の自覚に任しているようなところもあります。卒業後は直ちに自分1人でやっていかなければならないということを考えると、自分で学べるようになっていく必要があります。

 さて、第1回目の授業では生理学をなぜ、どのように学んでいくかを簡単に説明しました。重要な考え方は2つあり、
生物の階層性(生体の階層性と要ってもいいです)

生体の恒常性=ホメオスタシス
です。
 考え方ですから、常に頭に置いておく必要があるし、同時に、学んでいく中でこれら2つの考え方がどのようなものであるかを理解していくことにもなります。

 階層の積み重なり方はすぐに分かると思います。そして、器官系や器官の名称や構造、機能もそれぞれのところで取り上げられます。その中で、全体に共通する組織の特徴をよく押さえるようにしましょう。特に、上皮組織と結合組織には多くの種類があり、それぞれの器官の機能によって使い分けられています。構造と機能を結びつけて理解できるとすべてがわかりやすくなります。そのためにも、組織の特徴は常に考えるようにしましょう。

 次回は、階層性を考えるモデルとして「外皮系」を考えます。プリントでは「消化器系」も説明していますが、時間の都合で割愛します。その後、ホメオスタシスについて体液をモデルにして考えます。生理学の全体に関わって重要な知識でもあります。

 今日の授業ではプリントを忘れてきた学生がいました。そのとき注意をしましたが、授業を理解するためには準備が必要です。持ち物の問題だけではなく、次に受ける授業の内容についてもしっかりと準備=予習をしておきましょう。

2016年度 第30回 自律神経系の中枢、第31回 中枢神経系の高次機能

 期末試験後に行った2回の授業の内容を簡単に要約しておきます。

 自律神経系の中枢機能として重要なのはなんと言っても視床下部の機能です。それぞれの中枢機能を持つ神経核の名称を覚えるのは大変ですが、どんな機能を持っているのかはよく見直しておくように。特に、体温調節、概日リズム、摂食・満腹、飲水に関する機能を持っていることは生理学2&4で学んだ内容と合わせて考えるようにしましょう。また、下垂体ホルモンの分泌を調節するホルモンを分泌していること、下垂体後葉から分泌される2つのホルモンが視床下部で産生されていることも忘れないように。

 循環器系、呼吸器系の神経性調節を考える中で、脳幹が中枢として働いていることを学んだと思いますが、機会を見て、圧受容器反射や化学受容器反射についても復習しておきましょう。どこに受容器があり、求心路、遠心路を構成する神経、そしてどこにどのような反応が生じるのか、順に追っていけばいいのですが、一つ一つよく確認しておきましょう。

 中枢神経系の高次機能についてはかなり駈け足で説明したため、わかりにくいところもあったと思います。これまでに取り上げなかった内容では、脳波、睡眠の分類と特徴、言語中枢の機能、記憶と学習が重要です。

 脳波は特徴的な4種類が分かればいいと思いますが、睡眠状態で出現する脳波についてもよく見ておいてください。また、睡眠の2つの状態も、特徴をよくつかんでおきましょう。

 言語機能は左半球優位であることと、2つの異なった機能を持つ中枢が存在することをよく見ておくように。プリントで使った大脳皮質の機能局在は右半球を見ています。したがって、ここに2つの言語中枢を描くのは、大多数の人の特徴を捉えていませんので誤りです。教科書でもこのような誤りが時々あります、あしからず。

 記憶機能、学習機能については心理学でも学んだと思います。それぞれのメカニズムという角度から少しだけ考えてみました。日進月歩の分野で、なかなか最新の知見までフォローできませんが、どんな実験がされているのか、一端が分かってもらえたならば幸いです。

2016年度 第29回 大脳基底核、大脳皮質、伝導路

 遅くなりましたが、先週の授業の要約をしておきます。
 大脳基底核、正確には基底核群といった方がいいかもしれません。いくつかの神経核が組み合わさって機能しています。ただ、正常機能をすっきりと説明することができませんので、授業では、特定の神経核のニューロンが変性・脱落した場合にどのような症状が出現するのかを考えて、その部位の機能を推測しました。

 取り上げたのは神経回路の修飾部である黒質網様部のドーパミン産生ニューロンが脱落することによって生じるパーキンソン病と、入力部の一部である尾状核の抑制性ニューロンが脱落して生じるハンチントン病です。特に、パーキンソン病については根午後どこかで取り上げられるでしょう。高齢者に突発性に生じ、患者数の多いですから、症状のみならず、原因についても頭に入れておきましょう。

 大脳皮質の運動性機能については、伝導路ともども非常に重要です。しっかりと見直しておくように。

 一次運動野はその特徴がはっきりしていてます。一次体性感覚野の特徴と共通点が多く、理解しやすいと思います。自分の言葉で説明できるようにしましょう。伝導路、特に皮質脊髄路の特徴と合わせて考えるとよりわかりやすくなるでしょう。プリントに載せた図は、両者をともに考えるのに丁度いいと思います。

 補足運動野や運動前野はまだ分かっていないことも多いのか、機能が複雑なのか、一次運動野ほどはっきりとした説明はできません。これら2つの領野も、基底核と同様に、障害を例にして考えてみました。

 伝導路については錐体路系の2つの伝導路をまず理解しましょう。特に、皮質脊髄路は支配する領域が広く、外側路と腹側路で交叉する位置が異なるため、注意が必要です。図を見ながら、あるいは図を自分で描いてみてよく見直しましょう。経路の特徴を自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

 脊髄の伝導路は体性感覚の2つの伝導路、すなわち脊髄視床路と後索路も合わせてよく見直しておきましょう。これらも交叉するという点で似ています。

 期末試験が迫っています。1回の試験で何もかもを問うことは不可能です、当然、より重要なポイントについて理解できているかどうかをと言うことになりますが、重要なポイントは毎年同じです。過去の問題を精査すれば分かることですが、結局問うているのは同じことです。やや切り口が異なっているだけですから、1つの内容をしっかりと理解していれば十分に対応できるはずです。 

Good Luck!

2016年度 第28回 脳幹反射、小脳、基底核

 今回はやや盛りだくさんでしたが、
前庭動眼反射と視運動性反応
前庭頸反射と頸反射
小脳の機能
基底核の構造
と分けて、それぞれで要点をおさらいしましょう。

 眼球運動を伴う反射は、国試などで頻出する内容ではありませんが、人体のしくみとして非常に重要です。現象は簡単ですので、それぞれの反射弓をよく考えておきましょう。最後に触れた基底核と同様に、神経回路を考える材料にもなります。

 前庭頸反射と頸反射はややわかりにくいところもあるかと思いますが、現象をよく理解するとともに、中枢が脳幹にあるということをよく理解しておいてください。

 小脳に関する問は以前はよく出題されましたが、最近は出題されなくなってきました。臨床症状を考える上では必須だと思いますので、構造の特徴や脊髄小脳路の性質を合わせて見直しておくように。

 基底核は図をよく見て、それぞれの神経核がどこにあるのかを確認しておきましょう。来週は、パーキンソン病とハンチントン病で神経回路がどのように変化しているのかを考えます。橋説明した正常での神経回路をじっくりと見ておきましょう。

2016年度 第27回 脊髄反射、脳幹反射

 今回の中心は主要な脊髄反射を通して、反射とはどのような現象か、そして、反射弓の構成がどうなっているかを理解することです。

 最初に、最も重要な反射として伸張反射を取り上げました。唯一の単シナプス反射でもあり、反射弓の構成は非常に単純です。刺激とその受容器、求心性線維と遠心性線維、中枢がどこであるのか、求心性線維と遠心性線維がどのように接続しているのか、効果器とその反応のしかた、というように、しっかりと考えられるようにしておきましょう。
 
授業では、伸張反射の中でも膝蓋腱反射をモデルにして説明しましたが、他にも多くの伸張反射が知られていますので、決して膝蓋腱反射だけを丸暗記するようなことのないように。


 伸張反射と拮抗抑制は必ず同時に生じます。そして、これらの後には自原抑制が起こって、関節位を元の状態に戻します。現象全体をしっかりとつかめるようにしておきましょう。

 屈曲反射と交叉性伸展反射はも現象は非常に分かりやすいと思いますので、反射弓をじっくりと考えて、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

 脳幹の運動に関わった機能は、脊髄と同様に反射の中枢としてはたらくことです。詳細を理解するには時間がかかると思いますので、特に重要な反射について、その現象を取り上げて説明します。脊髄反射よりも反射弓は複雑ですので、来週は代表的で、かつ、これまでに学んだ神経野神経核で説明がつくような反射に絞って説明します。

 次回は、小脳と大脳基底核の機能についても取り上げます。

2016年度 第26回 筋のエネルギー産生と筋収縮の調節

 今回で今年は最後、あまり締めになるような授業ではありませんでした。前期にやり残しではありますが、筋線維あるいは筋の特徴を考える上で重要な内容ですので、しっかりと復習しておいてください。

 筋線維を分類する考え方はいくつかあるようですが、一般的な分類方法を採り上げて説明しました。

 赤筋線維と白筋線維、または遅筋線維と速筋線維という分け方は筋線維の見た目の特徴(色)と筋線維の収縮速度がほぼ一致するところから、筋線維を大きく2つに分けています。国家試験でもこの分類に随ってそれぞれの特徴を問う問題が出題されています。なぜそのような色をし、なぜ収縮速度に差が生じるのかを考えると、それぞれのATPの産生方法の違いを考えることにつながってきます。したがって、ATPの産生方法に従って3つに分ける考え方は、現実的だと思います。この3つに分ける考え方が、現在最もよく使われており、筋線維内の構造的な特徴や収縮に関する特徴を合わせて考えることができます。

 プリントには簡単な一覧表を入れましたが、必ず自分なりの手書きの一覧表をつくって、どこが重要であるかをよく考えるようにしましょう。

 運動単位は、筋線維の集合体としての筋がどのように収縮しているかを考える上で必要な考え方です。筋線維の種類と運動ニューロンの特徴を合わせて考えるようにしましょう。それぞれの筋の役割を考えると、その筋がどのような収縮のしかたを求められているかが分かると思いますが、神経支配比を考慮することはこの筋の特徴を考える上で有効です。

 また、単収縮と強縮も試験で問われることの多い分野です。運動単位と一緒にしてよく見直しておくように。

 授業の最後に、反射について簡単に説明しました。年明けの授業では、脊髄や脳幹を反射中枢とした反射についていくつか事例を挙げて考えます。反射弓の構成をしっかりと頭に入れておいてください。

2016年度 第25回 視覚

 今日の授業では視覚の受容器としての視細胞の機能と、中枢への伝導路を取り上げました。

 杆状体細胞(杆体細胞)と錐状体細胞(錐体細胞)の光に対する反応性はほとんど同じです。したがって、より詳しく研究され、かつ、単純な杆状体細胞を例にして説明しました。視物質であるロドプシンの構造の特徴と、光を受けたときの変化のしかた、そして、光が当たったことによって細胞内でどのような現象が生じるかをよく考えましょう。

 また、錐状体細胞の性質と色の感覚についても説明しました。錐状体細胞は含まれている視物質によって3種に分けられること、それぞれが異なった波長域の光に反応すること、3種の反応性の違いによって色を感じていることなどが分かれば、色盲や色弱がどのようなしくみで生じるかも理解できるでしょう。

 視細胞は光が当たることによって過分極が生じ、このことが神経節細胞の興奮を引き起こし、この興奮が視神経を伝導します。

 伝導路を考える上では、網膜には視野の上下左右が逆さまになった像が移っていることに注意した上で、視交叉での交叉のしかたをしっかりと理解しましょう。これが分かれば、後は順番に考えていけば簡単です。左右の一次視覚野へ送られる情報と、実際の視野の関係を理解しておきましょう。

 来週の小テストは平衡覚と視覚についてです。最後に触れた筋のエネルギー産生については来週の授業分と一緒にします。

2016年度 第24回 視覚(遠近と明るさの調節他)

 先週は授業後に学会出張があり、そのまま横浜に行ったため授業の記録がアップできませんでした。質問に先に答えてしまい、順番が前後しますが、簡単にまとめます。

 入射する光は角膜と水晶体で屈折しますが、角膜は厚みや曲率(丸みの度合い)を変えることができませんから、遠近調節のために変化するのは水晶体だけです。水晶体の周囲の構造について、プリントでは断面図しかないためややわかりにくいと思いますので、この部分について補足します。まだ十分に解明されていないしくみがあるようですが、わかりやすさを優先して説明します。

 前方から見ると水晶体はほぼ円形で、その周囲を毛様体筋が取り囲んでいます。毛様体筋には輪状の筋線維と放射状の筋線維があります。ちょうど虹彩と同じで、内側(水晶体側)にあるのが輪状筋、外側にあるのが放射状筋です。そして、毛様体筋から水晶体に向けて毛様体小帯(チン小帯とも言います)が伸びています。毛様体小帯は弾性繊維などを中心にしてできた結合組織性の構造です。ここで、重要なのは毛様体筋を構成する輪状筋と毛様体小帯です。

 プリントの図の毛様体筋の部分をよく見ると輪状筋と放射状筋の様子が分かると思います。

 近くを見るときには輪状筋が収縮するため、毛様体筋全体は水晶体に向かって閉じていきます。したがって、毛様体小帯は緩み、水晶体は自らが持っている弾性によって丸みを帯びたような形状に変化します。遠くを見るときには輪状筋が弛緩して毛様体筋全体が水晶体から遠ざかるようになります。その結果、毛様体小帯に張力がかかって水晶体を周囲に向かって引っ張るため、水晶体は扁平になります。

 虹彩の変化のしかたとよく似ています。それぞれが遠近、あるいは明暗に応じてへに平滑筋の収縮状態を変化させて調節していることが分かると思います。

 最後に、網膜の構造を簡単に説明しました。明日の授業でも改めて考えますが、視細胞を中心とした光に対する反応のしかたを理解する上でどうしても必要な知識ですから、よく見直しておくようにしてください。

2016年度 第23回 平衡覚、視覚

 今週は前半に小テストを行いました。問題と解答は別途掲載しましたので、各自でよく見直してください。漢字の間違いや、文意が十分に理解できていないと思われる誤りが目立ちます。試験はどれだけ理解できているかをはかるものですが、あくまでも事前の準備(つまり試験勉強)ができていることを前提として実施します。したがって、当然用いるべき用語や語法を身につけているものとして採点します。穴埋め問題などで、ただ文意が通じればいいというものではありません。気をつけましょう。

 さて、授業では平衡感覚の受容のしくみと伝導路を取り上げました。授業中にも触れたように、聴覚のしくみときわめて類似しています。したがって、内リンパの性質や有毛細胞、感覚毛の特徴を理解した上で、半規管や耳石器が、それぞれどのような刺激によって反応するのかをよく考えるようにしましょう。

 半規管膨大部や卵形囊、球形囊の平衡斑の有毛細胞の興奮の伝達を受ける感覚神経について、「前庭神経」としました。まずはこの名称でしっかりと理解しましょう。さらに詳しく名称を挙げると、前庭神経が分枝して、膨大部有毛細胞へは膨大部神経、2つの平衡斑へはそれぞれ、卵形囊神経、球形囊神経と呼ばれる神経が伸びています。

 これらの神経はいずれも前庭神経節に細胞体がある双極性ニューロンです。この前庭神経が一次ニューロンとして前庭神経核へ入ります。伝導路の図をよく見ると、前庭神経の終末が分枝し、いくつかの神経核へ入っています。前庭神経線維は延髄に入り、4つの神経核に入ります。そこからさまざまな運動中枢へ神経線維が伸びており、情報を送っています。

 前庭が刺激を受けると、眼球運動が生じたり、頭部を回転させたり(頸部の筋が関わる)、四肢や体幹を動かすような運動が生じたりします。これら運動を保証するために、図にあるような多くの神経核とつながっています。

 視覚に関しては、眼、または眼球の構造と光(電磁波)の性質を簡単に説明しました。光の特徴は来週、または再来週の授業で改めて触れますが、プリントをよく見て全体を理解しておくこと。

2016年度 第22回 聴覚

 今回は前半で空気の振動である音、音波とはどのようなものであるかを簡単に説明しました。

 横波は水面の波ですからわかりやすいですが、縦波はわかりにくいですね。Wikipediaの英語版で”Longitudinal wave”を引くと縦波のアニメーションがあります。

 縦波といえど、グラフにするときにはサインカーブのように横波のように描きます。このグラフの縦方向は空気の分子の疎密の程度(言い換えると、空気の圧力)を表し、横方法は波の進行方向または時間を表します。縦方向を振幅といい、この大きさ、つまり空気分子の疎密の程度によって音の大きさが表されます。一方、横方向の周期の頻度=周波数、つまり空気の分子の疎密の幅によって音の高さが表されます。それぞれ、ベル(Bel、またはデシベル;dB)とヘルツ(Hz)という単位で表記します。

 音の大きさは、数デシベルから100デシベルくらいまではほぼ聞き分けることができます。音の高さは20Hz前後から1万数千Hzまで十分聞き取れます。おおよその目安として知っておくといいでしょう。ただし、聞き取れる音の高さの範囲、詰まる周波数は教科書的には20~20,000です。

 耳の構造については、今回は聴覚器としての生理機能を考える上でどうしても必要な部分に絞って説明しました。解剖学で学んだ内容を改めて見直しておくように。

 さて、音波が聴覚受容器である内耳の有毛細胞までどのように伝わっていくのか、改めて考えてみます。全体として重要なことは、空気の振動が、耳の構造を通過する中で、物体である鼓膜や耳小骨のほか、有毛細胞の感覚毛などの機械的振動や内耳の液体の振動に順に変換されて、最後にニューロンの電気的な興奮が発生するということです。

 空気の振動である音波は耳介で集められて外耳道へ入ります。ここでは、音源の発した周波数と音圧によって空気の分子が振動しています。音波が鼓膜に達すると、音圧の強さと周波数に応じて鼓膜を振動させます。つまり、空気の振動が固体の機械的振動に変換されます。さらに、鼓膜の振動は耳小骨に伝えられ、これら機械的振動を繰り返す中で増幅されます。この部分の説明を省略したのでややわかりにくいかもしれませんので、来週もう一度説明します。

 耳小骨のうち、アブミ骨は卵円窓と結合しており、アブミ骨の振動はそのまま卵円窓の振動を引き起こします。卵円窓は前庭階内の外リンパと接していますから、外リンパ、すなわち液体が振動します。液体は、振動するという減少については空気と同じであると考えて差し支えありませんので、外リンパの振動とは、つまりここでも縦波が生じます。空気よりも液体のほうが波のつくり出す圧力が大きいため、特に圧力波という言い方をすることがあります。

 外リンパの振動は、途中で前庭膜を振動させながら前庭階内を伝わっていくはずです。前庭膜は鼓膜と同じように、縦波の振動に呼応して前庭階内と蝸牛管内を往復するように振動します。当然、蝸牛管内の内リンパが振動します。この結果、前庭膜と反対側に当たる基底膜を上下させるように振動させます。基底膜が振動するとコルチ器も一緒になって動きます。

 コルチ器が上下に振動するときに、有毛細胞の感覚毛が蓋膜にあたります。外膜にあたった感覚毛が曲げられると、感覚毛の先端にあるカリウムチャネルが開放し、内リンパ内のカリウムイオンが細胞内へ流入します。この結果、有毛細胞に受容器電位が生じ、閾値を超えれば活動電位が生じます。

 驚くほどによくできたしくみです。

 有毛細胞が興奮すると、蝸牛神経とのあいだでシナプス伝達が生じて、蝸牛神経に神経インパルスが発生します。

 牛神経は延髄の蝸牛神経核に投射し、その後、左右に分かれた並行回路として左右の視床内側膝状体へ入ります。この後、左右それぞれの大脳皮質側頭葉にある一次聴覚野に興奮が伝えられて聴覚が発生します。

 来週は平衡感覚を説明した後、視覚に入ります。

2016年度 第21回 味覚、嗅覚

 今週は化学感覚である味覚と嗅覚を取り上げました。それぞれ、化学物質が口腔あるいは鼻腔に入るときの状態は異なりますが、受容器細胞と反応するときにはいずれも水溶性の状態です。イオンチャネルを通過あるいは受容体と結合することによって受容器細胞に脱分極を生じるという点で共通しています。

 舌や乳頭の構造は解剖学で学んだと思いますので、味蕾、味細胞の構造と性質をよく見直しておくように。基本味は5種類あり、いずれも味毛の受容器と反応して(またはイオンチャネルを通過して)味細胞に興奮が生じると、味神経に興奮が伝達されます。伝導路の特徴は、舌から孤束核までの脳神経の分担をよく確認しておくように。そして、二次ニューロン、三次ニューロンと介して一次味覚野へ興奮は到達します。大脳皮質(新皮質)での一次味覚野の場所を必ず確認しておくこと。

 鼻腔の構造は各自で見直してください。その上で、嗅上皮、篩板、嗅球などの構造も確認しておきましょう。嗅細胞は味細胞と異なり、双極ニューロンです。つまり、一方の樹状突起が嗅毛(嗅小毛)として鼻腔側へ出ており、他方の軸索は嗅神経として篩板を通過して嗅球へ伸びています。中枢部位がいくつかの部位に渡って広がっているため、嗅球から後の伝導路もすっきりとしたものではありません。梨上皮質な眼窩前頭皮質、扁桃体などは嗅覚情報が集まり、さらに他の反応を引きを超すことに関わるという点で重要な部位です。

 味覚も嗅覚も情動反応などを引き起こします。消化機能などに関わる本能行動を引き起こす引き金にもなっています。こうしたことも、他の感覚にはない特徴ですので、頭に入れておきましょう。

 来週は聴覚を取り上げますが、はじめに聴覚の適刺激である音波について取り上げます。また、聴覚器、つまり耳=外耳、中耳、内耳の基本的な構造は予習として、解剖学で学んだ内容をよく見直しておくこと。

2016年度 第20回 伝導路、体性感覚の中枢、内臓感覚、痛覚の特徴

 今回は前回に引き続き、体性感覚の伝導路を取り上げました。脊髄小脳路の機能は、この後で学ぶ運動機能や中枢の機能と結びつける必要があります。授業でも指摘すると思いますので、そのときに振り返るようにしてください。

 痛覚に関わって取り上げた脊髄網様体路は、最後に取り上げたストレスなど痛覚に伴うさまざまな反応を考える上でポイントとなる伝導路です。脊髄視床路と一緒によく見直しておくように。

 体性感覚の中枢の特徴を理解することはとりわけ重要です。毎年期末試験でも問うていますが、体部位局在に関する特徴や、感覚の鋭敏さと中心後回で占める領域の大きさの関わりなど、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。一つ一つの特徴や現象をしっかりと説明できるようになっていくと、授業で学んだ一つ一つのことが、より具体的に見えてくると思います。

 内蔵痛覚の特徴、関連痛も疾患の特徴を知る上で必要な知識ですので忘れずに復習しておきましょう。

2016年度 第19回 固有感覚と伝導路

 今週は固有感覚を取り上げました。いずれも、筋の状態を通じて姿勢や運動の状態を知る上で欠かせない受容器です。その中でも、筋紡錘と腱器官は特に重要で、運動機能を考えるためにも必須の知識です。

 それぞれがどのような構造をしているのか、必ず図を描いて確認するように。また、感覚神経の種類とその反応のしかたも自分の言葉で説明できるようにしておくこと。

 プリントには核袋線維と核鎖線維、一次終末と二次終末、さらには静的反応と動的反応について説明していますので、余裕があれば考えてみてください。試験でここまで問うことはありませんが、筋紡錘の機能がより分かりやすくなるはずです。

 体性感覚の伝導路は、プリントにまとめたように3つありますが、今週は脊髄の2つの伝導路を説明しました。それぞれの共通点と相違点をはっきりさせると分かりやすいはずです。そのためには、自分で表やフローチャートをつくるといいでしょう。試験前などにも便利です。来週には体性感覚のうちの三叉神経支配領域に関する伝導路を取り上げます。

2016年度 第17,18回 感覚器系総論、表在感覚

 2回分の要点を整理します。

 感覚機能は、各受容器ごとの適合刺激によって受容器が反応する=活動電位が生じ、これが興奮として感覚神経を伝導・伝達されて中枢で伝わった結果、それぞれの感覚を生じることです。多くの感覚機能に共通する特徴があるとともに、感覚機能ごとの特殊性もあります。これらをしっかりと整理することが重要です。いろんなまとめ方がありますが、自分なりにわかりやすいまとめ方を見つけ、少しずつ広げていきましょう。

 適合刺激と受容器の関係は1回確認すれば十分だと思いますが、今日取り上げた痛覚では侵害刺激が適合刺激です。他の刺激とはやや考え方が異なりますので注意してください。触・圧刺激は皮膚に対する機械的刺激です。温度変化も分かりやすいと思いますので、特に説明はしませんでしたが、特殊感覚の適合刺激のいくつかは受容器の性質を考える上で受容ですので、必要に応じて説明します。

 投射の法則と、刺激の強さと感覚の大きさの関係はそれぞれよく見直してください。授業の説明で何度も繰り返しますが、刺激が受容器、感覚神経を興奮させ、この興奮が中枢へ伝わってはじめて感覚が生じます。刺激の強さと感覚の大きさはおおよそ比例しますが、閾値があることには注意が必要です。ウェーバーの法則も国試で出題されたことがありますので、関係式、ウェーバー比の意味を考えられるようにしておくこと。

 感覚単位や受容野の考え方が分かると、感覚点が理解しやすくなるでしょう。また、二点弁別閾も受容野の考え方を頭に入れて見直してください。

 次の授業では、一次ニューロンの神経線維がどこにあり(あるいはどこを通っているか)、この興奮が二次ニューロン、三次ニューロンとどのように伝達されていくのかを考えます。体性感覚の伝導路といいます。ニューロンの構造や興奮の伝達について忘れていることがあれば、必ず復習をしておくように。

 表在感覚は痒みやくすぐったさを加えて細かく説明しましたが、重要度では触圧覚、温度覚、痛覚の3つである。それぞれの受容器の特徴、神経線維、生じる感覚の特徴を整理しておく必要があるでしょう。必ず、自分なりに表にまとめたり、フローチャートをつくったりして覚えやすいやり方をつくっておくことが大切です。過去の小テストや期末試験の問題なども参考にして、ポイントをまとめておきましょう。

2016年度 第16回 骨格筋と心筋、平滑筋の特徴

 最後の授業でしたが、骨格筋については前回の授業を補足するような内容でした。言葉の意味、使い方としては非常に重要ですので、授業内容を理解するとともに、改めて確認をしておいてください。

 「筋が収縮する」ことは長さが変化するというだけではなく、より重要なことは張力が生じているということです。したがって、したがって、等尺性収縮や等聴力性収縮のうち遠心性収縮があるわけです。例えば、等尺性収縮の場合、細いフィラメントが筋性の中央に向かってスライドし続けるわけではありません。たぶん、ミオシン頭部がATPを分解して形を変えた瞬間にはフィラメントは筋節中央に向かって動きます。しかし、ミオシン頭部がアクチンから離れた瞬間に反対方向(筋節の両端側)へ向かって引き戻され、再び最初の位置でミオシン頭部がアクチンと結合していると思われます。したがって、全体として筋節の幅、筋の長さは変化しないにもかかわらず、エネルギーを消費して張力が生じています。


 張力とは文字通り、引っ張る力です。筋が収縮する、つまり力を発揮するということは筋がどちらかの方向(あるいは両方向)に引っ張られているということでもあります。したがって、イメージの通り、生じる力を「張力」といいます。

 筋節の幅はかなり大きく変化させることができるようですが、どれくらいの幅から収縮するかによって発揮できる力の大きさに差があります。幅が小さくても大きくても十分に力を発揮することはできません。

 後半には心筋と平滑筋の構造と興奮、収縮に関する特徴を簡単にまとめました。すでに生理学2で学んだ内容ともオーバーラップするところが多いと思いますので、合わせて見直しておくといいでしょう。

 心筋の特徴は細胞自体に自動能があるということと機能的合胞体をつくっているということです。そして、特殊心筋が刺激伝導系をつくり、ここからの興奮の伝達を受けて固有心筋が収縮します。特殊心筋と固有心筋では活動電位のパターンに大きな違い、それぞれの細胞の性質を決める特徴があります。授業では詳しく説明できませんでしたが、心筋のもつ性質をよく理解しておくと、神経系からの作用をより深く理解できると思います。

 平滑筋の性質については取り上げられる機会が少ないかもしれません。細胞の形態や筋節の配列などの構造の特徴をよく見直しておくように。また、心筋と同様に合胞体をつくっている場合と個々の細胞が独立して収縮する場合があります。消化管や血管、気管などすでに学んだ気管については、それぞれの器官の機能と合わせて考えるようにしましょう。

 来週から前期試験が始まります。授業の内容を理解するには地道な努力が必要ですが、ある程度理解できていれば、試験はテクニックです。過去の問題を解きながらと傾向を分析し、しっかりとした対策を立てればクリアできます。Good Luck!!

2016年度 第15回 骨格筋線維の構造と収縮のしくみ

 今回は骨格筋線維がどのように収縮するのかを中心テーマにして、この機能に関わる構造から考えました。

 特に重要な構造は、筋形質膜が陥入してできたT細管、筋の滑面小胞体である筋小胞体、そして筋形質に存在する筋原線維です。

 T細管は内部が細胞外液(間質液)で満たされています。したがって、筋細胞内に陥入していますが、筋活動電位が伝導していきます。滑面小胞体が細胞ごとに異なった役割を持っていることは以前に説明しましたが、筋小胞体はカルシウムイオンを貯蔵するという役割を担っています。したがって、筋収縮にあたってカルシウムイオンを筋形質に放出したり、筋弛緩にあたってカルシウムイオンを回収したりします。筋原線維は筋節がつながってできています。筋節の構造は何度も描いてしっかりと頭に入れておくように。横紋という骨格筋の外見上の特徴を示すとともに、筋収縮のメカニズムはこの筋節の構造によって考えます。

 筋収縮のしくみ、滑走機能はプリントの図を見てよく見直しておくようにしましょう。アクチンとミオシンのはたらきはもちろんですが、神経筋接合部での興奮の伝達からの一連の現象として考えられるようにしておくことが大切です。プリント184ページの図を見ながら自分の言葉できちんと説明できるような何度も練習するように。

 来週は「筋のエネルギー供給」を取り上げるといいましたが、生理学2で「栄養・代謝」にまで進んでいないとのことでしたので、変更して「心筋と平滑筋」を簡単に説明して、第6章「感覚機能総論」に入ります。

2016年度 第14回 交感神経系と副交感神経系

 1週間たってしまい、皆さんはすでに夏休み期間に入っていますね。遅くなりましたが、先週の授業の内容を簡単にまとめます。

 交感神経と副交感神経は血管を含めた内臓器官のはたらきを調節する神経系です。生理学2で学ぶ、各器官系の神経性調節を担っています。本当は内臓求心性神経の働きも加える必要がありますが、勉強の中心はやはり、遠心性神経ということになるでしょう。

 交感神経系と副交感神経系が器官機能を調節するしくみは、3つの特徴を押さえて考える必要があります。二重神経支配、拮抗支配、そして自発性活動です。これらの意味が分かって、2つの神経系それぞれの作用を知れば、後は組み合わせて当てはめていくだけです。すでに学んだ循環器系(心臓と血管)、呼吸器系(肺、気管・気管支)のについて、よく考えてみましょう。特に、2つの神経系の作用によって血圧がどのように調節されるのか、考え方を理解し、説明のしかたを考えていく上でよいモデルになると思いますので、各自で取り組んでみましょう。

 合わせて、神経伝達物質についても、どこで何がはたらいているのかを見直しておきましょう。興奮性シナプスと抑制性シナプス(授業では興奮性の場合を取り上げました)についても、合わせて当てはめてみましょう。

 夏休み明けは、骨格筋について取り上げます。筋細胞の構造を理解した上で、筋が収縮・弛緩するしくみを筋細胞の細胞小器官のはたらきや微細構造のレベルで考えます。さらに、筋細胞は大量のエネルギーを消費します。つまり、他の細胞よりも多くのATPを要求します。このATPをどのようにまかなっているのか、を考えます。

 夏休み中もこれまで同様に随時質問を受けますが、休暇を取っていて出勤しない日も多いため、返事は遅くなるかもしれません。あしからず。

2016年度 第13回 伝達物質と受容体、神経回路、体性神経系と自律神経系

 今回は最初に化学的シナプスにおける興奮伝達の主人公である神経伝達物質とその受容体を取り上げました。シナプス前ニューロンは1種類の神経伝達物質を産生し、シナプス小胞に貯蔵しています。代表的な神経伝達物質を取り上げて、名称を物質としての性質を簡単に説明しました。いずれも、今後神経系の機能を考えていく上で、伝達物質の名称を挙げて説明することがありますので、よく覚えておいておくように。

 その神経伝達物質が興奮性シナプスのシナプス前ニューロンで産生されるのか、あるいは抑制性シナプスのシナプス前ニューロンで産生されるのか、ある程度決まっている物質もあります。しかし、そのシナプスが興奮性シナプスであるのか、抑制性シナプスであるのかは神経伝達物質受容体(とイオンチャネル)の機能によって決まります。したがって、単に伝達物質の名称とシナプスの性質を結びつけるのではなく、受容体の機能も一緒に考えられるようにしておきましょう。

 神経伝達物質受容体は大きく2つに分けられます。これらの違いは、伝達にかけられる時間やしくみの多様さの違いによって使い分けられています。夏休み明けの授業で、ニューロンと骨格筋がつくるシナプス(神経筋接合部)について考えますが、ここではできるだけ速く興奮を伝達する必要があるため、イオンチャネル形受容体がはたらいています。

 興奮性シナプスと抑制性シナプスでの興奮伝達は、神経回路を考えるとよく分かると思います。授業では簡単なしくみをいくつか例題として考えましたが、これらのしくみを考えながら、シナプスでの興奮伝達の実際をよく理解しましょう。

 中枢神経系の構造と機能はすべて割愛しました。すでに解剖学で学んでいる内容とオーバーラップしているという理由もありますが、後期には感覚機能や運動機能の中枢、自律神経系の中枢、そして大脳皮質を中心とした高次機能(統合機能)のはたらきについて取り上げていきます。あらかじめ頭に入っていた法外胃部分もたくさんありますので、各自で取り組んでください。

 授業では末梢神経系、特に自律神経系の構成と機能を取り上げます。生理学2ですでに循環器系や呼吸器系の神経性調節として自律神経系の作用、特に交感神経系と副交感神経系のはたらきを学んでいると思います。それぞれに対する作用を個別に学ぶことが基本ですが、全体としてどのような特徴があるのかをつかんでおくとより理解しやすくなると思います。来週の授業で、これら2つの神経系について、その特徴を考えます。

2016年度 第12回 興奮の伝導と伝達

 前回まででニューロンでの興奮の伝導と伝達に関する基本的な構造としくみ概観しました。小テストに向けた勉強でそれぞれ復習したことと思います。残念ながら十分に理解できていない、あるいはとりあえず丸暗記でしのいだという答案も見受けられました。自分の理解がどの程度であるかは自分がよく分かっていると思います。今回の内容の復習を通じて改めてよく見直すように。

 前半は興奮伝導のしくみが有髄神経線維と無髄神経線維でどのように異なっているのかを考えました。無髄神経で生じる逐次伝導は前々回の授業で説明した興奮の伝導のしくみそのままです。ある部位で活動電位が生じる(=興奮する)と、さらに隣接部位に活動電位が生じ(=興奮する)、これが次々と伝播していくことです。言い換えると、隣接部位に順次脱分極と再分極を起こしていきます。この現象が生じるためには、細胞膜が全面にわたって細胞外液と接している必要があります。つまり、細胞膜を隔てて電位差が生じていなければいけません。ところが、有髄線維は軸索を髄鞘が覆っているため、細胞膜が細胞外液と接している部分がランビエの絞輪に限られます。したがって、活動電位は絞輪部分でしか生じず、隣接する絞輪へ伝わっていきます。これが跳躍伝導であり、逐次伝導に比べて同じ時間の間により遠くまで興奮を伝えることができます。

 神経線維での興奮の伝導はこのように逐次伝導であるか跳躍伝導であるか、すなわち、無髄神経線維であるか有髄神経線維であるかによって伝導速度に大きな差があります。そもそも、伝導速度は軸索の直径が大きいほど大きく、一般には有髄神経線維を構成している軸索の法が無髄神経線維を構成している軸索よりも直径が大きいですから、有髄神経線維のほうがより伝導速度が大きくなります。

 後半は興奮の伝達についてさらに詳しく説明しました。シナプス前からシナプス後へ興奮が伝達されるということは、活動電位の発生という現象が隣接する細胞に伝えらるというだけのことではなく、複雑な調節メカニズムによっています。それは、この伝達が生じるシナプスが化学シナプスであるということ、つまり、化学物質(=神経伝達物質)が作用することによって興奮が伝達されるというしくみに依存します。

 伝達物質とその受容体については来週の授業で取り上げますが、これら二つの組合せによってシナプス後細胞に脱分極が生じるのか、過分極が生じるのかが決まります。この脱分極を興奮性シナプス後電位といい、過分極を抑制性シナプス後電位といいます。伝達物質の作用によってシナプス後ニューロンに興奮性シナプス後電位を生じるシナプスが興奮性シナプスであり、シナプス後ニューロンに抑制性シナプス後電位が生じるシナプスが抑制性シナプスです。また、興奮性ニューロン、抑制性ニューロンという言葉も今後よく使います。日本語の語感から判断すると、「興奮しやすい、あるいはされやすいニューロン」、「抑制しやすい、あるいはされやすいニューロン」という意味にとれますが、両者はシナプス前ニューロンの性質を表しています。あるいは、そのニューロンがシナプス後ニューロンとして興奮性シナプスを構成するのか、抑制性シナプスを構成するのか、によって命名されます。

 単一のシナプスで興奮が伝達されても、それだけでシナプス後ニューロンに活動電位が発生するわけではありません。興奮性シナプスといえども、単一シナプスで生じる脱分極(=EPSP)は非常に小さく、とても閾値には達しません。1つのニューロンでは樹状突起を中心に多くのシナプスがあり、常にどこかで興奮が伝達されていると考えていいでしょう。したがって、同時に、あるは非常に短い時間間隔でEPSPやIPSPが生じており、これらがニューロンの軸索の根元に当たる軸索小丘に集まって加重されます。加重の結果、電位変化が閾値を超えるとはじめて活動電位が発生します。そして、いったん活動電位が発生すると、軸索小丘から軸索終末に向かって伝導していきます。

2016年度 第11回 興奮の伝達、ニューロンとグリア、神経線維

 今回は最初に先週に引き続き、「興奮の伝達」のしくみを考えました。化学シナプスは伝達物質が仲立ちとなって興奮が伝達されるところが最大の特徴です。したがって、受容体が必要であり、興奮はシナプス前からシナプス後に一方向に伝わり、シナプス間隙も必要です。伝達に時間がかかるというのも伝達物質がはたらいているが故です。

 生理学2で学んだように、心筋は隣り合った心筋細胞どうしが介在板で結合し、そこにはギャップ結合があるため、イオンが行き来することができます。これがイオン電流となって心房、心室がそれぞれ機能的合胞体になっています。こうしたしくみは電気的シナプスといいます。化学シナプスとは全く異なる構造的、機能的特徴を持っています。

 ここまでで、興奮性細胞、特にニューロンに刺激が加わることによって電位変化が生じ、それが活動電位となること、さらに、その活動電位が生じるという状態(すなわち興奮)が同一細胞内を伝導し、さらに他の細胞にまで伝達されることを学びました。今後生理学1&3では興奮性細胞とこれらの細胞が中心になってつくりあげている組織や器官、器官系の働きを順に学んでいきます。ここまでの理解が不十分だとこの先のあちこちでつまずくことになりますから、しっかりと復習をしておくこと。また、途中で分からないことが出てきたときに、分からないままで済ませるのではなく、必ず元に戻って見直してから先に進むようにしましょう。

 さて、今回の後半では神経系を構成する主要な細胞であるニューロンとグリアを取り上げました。ニューロンは興奮性であるということが最も大きな特徴ですから、すでに学んでいるわけですが、個々の細胞の構造やどのように集まって組織を作り上げているのかを順に考えていきます。そして、ニューロンが集まって作る組織の構造や役割を考えていく上でグリアの性質もよく理解しておく必要があります。グリア細胞には多くの種類がありますが、授業では特に重要な細胞、今回は神経線維をつくる細胞を説明しました。

 神経線維はその構造から2種類に分類できます。どこがどのように異なっているのか、各自でよく整理しておくようにしましょう。来週の授業で、その構造の違いが興奮の伝導に対してどのように影響するのかを考えます。生物の組織の変化がどのように機能に結びつくのかを考える上でも重要なヒントになると思います。

2016年度 第10回 脱分極と活動電位、興奮の伝導

 今回は前期の中でも非常に重要な部分です。フレッシュなうちにしっかりと復習をしておくように。わかりにくい場合はよく分かっている人に尋ねて確実に理解しておくようにしましょう。他人に説明することによって自分自身の理解がどの程度であるかを知ることができます。尋ねられた場合には、自らの理解度を試すつもりで説明してみるといいと思います。

 改めて復習してみます。

 静止膜電位の状態に対して刺激が来ると膜電位が変化します。この変化が静止膜電位よりも陽性方向(膜電位の絶対値が小さくなる方向)である場合を脱分極、静止膜電位よりも陰性方向(膜電位の絶対値が大きくなる方向)に変化する場合を過分極といいます。脱分極が生じるのは細胞内に陽イオンが流入した場合、過分極が生じるのは陰イオンが流入した場合です。刺激が頻繁に加えられているとすると、脱分極や過分極も常にどこかで生じていると考えられます。

 過分極が生じる場合、刺激の強さに比例した大きさの過分極が生じるだけです。しかし、脱分極が生じる場合には閾値があることを忘れてはいけません。この閾値は活動電位が生じるかどうかの閾値であり、脱分極の大きさが閾値を超えれば必ず活動電位(つまり細胞内がオーバーシュートする)が生じ、閾値を超えなければ直ちに静止膜電位に戻ります。

 刺激依存性イオンチャネルの開放によって陽イオン(多くはナトリウムイオンです)が流入すると脱分極が生じ、流入する陽イオンの量が多いと(つまり刺激が強いと)脱分極の大きさが閾値を超えます。この結果、活動電位が生じます。

 活動電位自体も、電位変化を刺激とする刺激依存性イオンチャネル=電位依存性イオンチャネルのはたらきによって生じます。

 まずはじめに、電位変化が閾値を超えたことが刺激となって電位依存性ナトリウムチャネルが開放し、細胞外のナトリウムイオンが流入します。ニューロンの細胞膜には電位依存性ナトリウムチャネルが多数存在し、これらが順次開放することによって細胞外のナトリウムイオンが細胞内へ大量に流入します。ナトリウムイオンが細胞内へ流入することによって細胞内の電位は陽性方向に変化します。この状態が「脱分極相」で、流入するナトリウムイオンの量があまりにも多いため、細胞内が細胞外に対して正になるまで電位は変化します。細胞内電位が正になった状態を「オーバーシュート」した状態をいいます。

 電位依存性ナトリウムチャネルは細胞内電位が正になったことが刺激となって閉鎖します。この結果、細胞外のナトリウムイオンは細胞内へ流入しなくなり、細胞内電位がこれ以上正方向へ変化することはありません。逆に、細胞内電位が正になったことが刺激となって電位依存性カリウムチャネルが開放し、カリウムイオンが細胞内から細胞外へ流出します。細胞内の陽イオンが細胞外へ流出するため、細胞内電位は低下=負の方向へ変化していきます。この状態が「再分極相」です。

 再分極によって細胞内電位が再び(細胞外に対して)負となり、さらに静止膜電位の大きさにまで変化=下がります。オーバーシュートした状態で開放した電位依存性カリウムチャネルは静止膜電位に下がると閉鎖するため、カリウムイオンの流出が止まります。電位変化が刺激となって開放した二つのイオンチャネルがともに閉鎖するため、イオンの移動がなくなります。これで活動電位とよばれる電位変化がおわり、静止膜電位を回復します。

 ただし、流入したナトリウムイオンと流出したカリウムイオンはそのまま細胞内、あるいは細胞外にとどまっています。つまり、これら二つのイオンの量は、刺激を受ける前の状態と比べると大きく変化していて、細胞内外のナトリウムイオンの濃度差もカリウムイオンの濃度差もともに小さくなっています。これらのイオンはイオンチャネルによる受動輸送によって移動していますから、濃度差が大きいほど勢いよく、つまり素早く大量に移動します。このままでは次に刺激が来たときにナトリウムイオンが細胞内へ流入したり、カリウムイオンが細胞以外へ流出したりするための勢いをそぐことになります。濃度差が小さいと単位時間当たりの移動量が小さくなり、電位変化のしかたが変わることにつながります。これが相対不応期が生じる原因です。そこで、二つのイオンの濃度差を元の状態に戻すためにナトリウム・カリウムポンプがはたらきます。

 いったん活動電位が生じると、細胞内へ流入したナトリウムイオンは周囲に拡散し、隣り合った部位に脱分極を生じます。ここで生じた脱分極は必ず閾値を超え、活動電位を生じます。つまり、ニューロンなどの興奮性細胞のある部位に活動電位が生じると、その周囲に活動電位が連続的に発生していく=興奮が伝導します。

 ニューロンの興奮=活動電位は軸索小丘で生じ、この興奮が軸索を終末に向かって伝導していきます。この速度は非常に大きいため、我々が意識するようなことはありません。そして、終末にまで伝導されると、シナプスによってとなりの細胞へ伝達されます。1個のニューロンの中で興奮がおさまっていては情報としては全く意味を持ちません。必ず伝達されています。来週はニューロンからとなりの細胞への興奮の伝達について取り上げます。続いて、第4章に入り、改めてニューロンとニューロンが中心になってつくりあげている神経系全体について考えてみます。

2016年度 第9回 小胞による輸送、膜電位、脱分極

 少し遅くなりましたが、前回の授業内容のまとめです。

 小胞による輸送としてまとめた内容は、エネルギーの消費(ATPの分解)を伴いますので、この意味では能動輸送です。しかし、一次性能動輸送、二次性能動輸送とは全くしくみが異なります。

 細胞には、細胞膜に限らず脂質二重膜によってつくられた袋状の構造が多数あります。小胞体やミトコンドリアなどの小器官もそうですし、ここで取り上げた輸送に関わっている小胞も数え切れないくらい存在していることでしょう。これら膜構造の特徴の一つは、膜どうしが融合し合えるということです。したがって、細胞膜と小胞が融合することもできるし、細胞膜の一部がちぎれるようにとれても、残った部分が融合したり、ちぎれた部分だけで新たな小胞を作ることができます。

 エンドサイトーシスとエキソサイトーシスはこうした脂質二重膜特有の性質に依拠しています。受動輸送や能動輸送として取り上げた方法と同様に、何らかの目的があって生じる現象です。したがって、今後学ぶ(あるいはすでに学んだ)多くの現象においてどこでどのようにはたらいているのか、よく考えるようにしましょう。

 好中球やマクロファージが食作用を発揮することはすでに学んだと思います。また、破骨細胞も食作用を発揮することができます。飲作用が具体的に取り上げられることはほとんどないと思いますが、毛細血管の内皮細胞が行うエンドサイトーシスは飲作用であると考えて差し支えありません。

 エキソサイトーシスはたくさんの例があり、生理学1でもニューロンの神経伝達物質の放出を取り上げます。また、小腸吸収上皮細胞や内分泌細胞におけるホルモンの分泌(前回の授業では膵臓β細胞のインスリン放出を取り上げました)なども典型的なエキソサイトーシスです。


 2週にわたって取り上げた細胞膜を介した物質の輸送に関する知識は、前期の残りの期間に取り上げる興奮性細胞(ニューロンと筋細胞)の性質を考える上で必須です。今回の授業では静止膜電位がどのようにして生じるのかを説明しました。その中で、いくつものイオンチャネルの名前を挙げました。これらのイオンチャネルが常に機能することによって細胞の性質や機能が維持されています。

 静止膜電位を考える必要があるのは、興奮性細胞であるニューロンや筋細胞が「興奮する」という現象を考えるためです。心筋についてはすでに学んだと思いますが、『静止状態」があるからこそ、そこから逸脱した「興奮状態」があり、この『興奮状態』が細胞にとって意味を持つ、あるいは何らかの役割を与えることができます。

 静止状態から興奮状態へ直ちに変化するのではなく、静止状態を壊すような小さな変化がいったん生じます。これが脱分極であり、過分極です。来週改めて説明しますが、この小さな変化をきっかけにして大きな変化=活動電位が生じます。来週の授業は前期の中でも大きな山場です。決して簡単な内容ではありませんし、ここでの理解がその後のさまざまな現象の理解に結びつきます。しっかりと予習をして臨むように。

 静止膜電位が生じるしくみはそんなに複雑ではありませんが、一度きいただけではなかなかわかりにくいかもしれません。以前に作った資料に手を加えた説明文を一緒に掲載しますので、参考にしてください(ここです)

2016年度 第8回 受動輸送と能動輸送

 細胞が正常に生存し、その機能を発揮するためには細胞内外での物質の移動が不可欠です。今週と来週の前半で、その主なしくみを学びます。

 細胞膜の両側に生じる濃度や電気的な勾配によって生じる移動が受動輸送で、これらの勾配に逆らうためにエネルギーを使って{消費して}生じる移動が能動輸送です。最後に触れましたが、どの方法も物質が順に一つずつ移動していく方法です。ナトリウム・カリウムポンプでのアニメーションで示したように。

 授業で使った図を見ながら
・どのような物質が:物質の分子量や電荷・極性の有無で物質の特徴を考える。
・細胞膜のどこを:脂質二重膜なのか、膜タンパク質なのか。膜タンパク質であれば、それらは何とよばれるか。
・どのような方法で:自分の頭の中でアニメーションをつくってみましょう。
 一つ一つの特徴を整理して、自分なりに表などをつくってまとめておくとわかりやすいはずです。

 今後の生理学などの学習では、細胞膜を物質が通過するという現象がたびたび取り上げられます。授業の中でも例を引いて説明した部分もありましたが、
・毛細血管とその周囲の細胞との間での物質の移動
酸素、二酸化炭素の移動、グルコースなどの栄養素の移動、ホルモンやビタミンなどの移動
・呼吸膜を介した酸素と二酸化炭素の移動
・胃での胃酸の分泌
・小腸粘膜上皮細胞における栄養素の取り込み
・腎臓・ネフロンでの濾過と再吸収
などが代表的です。細胞外から細胞内へ、あるいは細胞内から細胞外へ物質が移動するということは、学んでいる方法のうちのいずれかによっているということです。今後の学習をスムーズに進め、それぞれの現象の意味と仕組みを理解するためにも、しっかりと理解しておきましょう。

2016年度 第7回 遺伝子発現のしくみ

 先週の最後に説明した遺伝子に引き続き、遺伝子からタンパク質がつくられる過程を概観しました。この過程を経て特定の遺伝子からそのタンパク質(またはRNA)がつくられることを「遺伝子が発現する」と言います。

 今回は、転写、翻訳、そしてタンパク質の修飾・立体構築と輸送 という3つのステップに分けて説明しました。それぞれに重要な概念や用語があります。一つ一つしっかりと確認しながら現象を捉えるようにしましょう。プリントの図を見ながら自分で声に出して説明してみると、何が分かっていてどこが理解できていないのかがはっきりします。

 DNAの塩基配列として保存されている内容がどのようなものであるのか、生命現象として意味を持つために細胞内で何が起こっているのかをおおよそ知っているということが重要です。医学の知識や技術はどんどん蓄積され進歩していきます。自分から調べて理解することは難しいですが、テレビで組まれる特集番組や新聞報道などに接したときに、ただ鵜呑みにするのではなく、ある程度しっかりと判断できるための土台をつくっていくという態度が大切です。



 授業ではDNAとRNAの構造の違いをしっかりと説明できませんでした。塩基の組合せの違いを除くと、糖の部分がデオキシリボースであるのか、リボースであるのかということです。「生理学のための化学」p56~に両者の構造の違いを簡単に説明しました。また、DNAは必ず二本差になって二重らせん構造をつくりますが、RNAは一本差のままでも構造的に安定しています。したがって、DNAの一方の鎖を鋳型として転写されたRNAは自身の向かいに相補的な鎖をつくる必要はありません。

 転写後のプロセシングについてはスプライシング以外には詳しく説明しませんでした。プリントにあるように、mRNAの一端(転写の始まりに当たる部分)にメチルグアニンという特別の塩基をつけます(これを”Cap”と言います。文字通り帽子です)。そして、もう一方の端(転写の終わりに当たる部分)にはアデニンを含むヌクレオチドを連続して付加します。これらの反応がスプライシングとあわせて進行し、mRNAができあがります。また、プリントp65の図中、左下に示した塩基の名称のうち、最下段の”U”が「グアニン」という名前になっていますが「ウラシル」の間違いです。

 遺伝子がDNAの塩基配列として保存されているだけではただの情報に過ぎず、これをどのようにすれば利用できるのかが生命現象を多様化する上でどうしても克服しなければならない壁だったと思います。原始の頃は転写されてできたRNA自体にタンパク質のような酵素としての働きがあり、このはたらきに頼っていました。ところが、RNAの情報をさらにタンパク質に翻訳することができるようになって、情報を利用できる幅が広がりました。翻訳のステップは、塩基配列がアミノ酸の配列にどのように置き換えられていくのかが大切です。「コドン」と言う概念を中心にして考えるようにしてください。

 プリントには「コードする」という言葉をたびたび使っています。授業では特に触れませんでしたが、元来は「コード;code」とは「暗号、暗号化する」という意味です。ここから、「タンパク質のアミノ酸配列を遺DNAの塩基配列という別の形(あるいは言葉)で保存する」という意味で使われはじめ、現在では「タンパク質のアミノ酸配列がDNAやRNAの塩基配列として、あるいはRNAの塩基配列がDNAの塩基配列として表されている、または保存されている」という意味で使います。英語の”code”には「ひも」とか「規則」などの意味もありますので、間違えないでください。

 タンパク質の合成から修飾・立体構築、そして輸送は連続した現象として考えた方がいいでしょう。授業では細胞外タンパク質や細胞膜タンパク質を例にして、粗面小胞体状のリボソームで産生されるところから順に説明しました。これも、図を見ながら自分で説明を試みてみましょう。来週あるいは再来週の授業では、細胞内で産生されたタンパク質などがどのように細胞外へ放出されるのかについても考えてみます。この現象はエクソサイトーシス(開口放出)といい、多くの細胞が利用しています。例えば、形質細胞が免疫グロブリンを細胞外へ放出するときにも利用しています。今後生理学を中心に、このエクソサイトーシスに当たる現象が多く取り上げられるはずです。

 最後に遺伝子疾患について簡単に説明しました。代表的な疾患を紹介しただけですが、きわめて多くの疾患があります。その多くは根本的に治療する、つまり治すことはできません。興味があれば自分で調べてみてください。

2016年度 第6回 細胞分裂とDNAの複製、遺伝子

 今週は細胞の「増殖と分化」を理解する手がかりとして、
・細胞がどのように分裂するのか。
・遺伝情報を保存する実体であるDNAはどのような構造であるか。
・細胞分裂に伴ってDNAはどのように振る舞うのか。
を考えました。

 細胞分裂については高校の生物のほうが詳細に取り上げられています。高校の教科書や資料集などが手元にあれば、一度見直してみるといいでしょう。生理学の授業では、核とその内部のDNAがどのように振る舞うのかを中心に分裂現象の概略を説明しました。知っておくべき用語もいくつかありますが、分裂の様子を頭に思い浮かべながら見直しておきましょう。

 DNAの構造は『生理学のための化学』に解説しました。複製のしくみも合わせて熟読してください。相補的な塩基が向かい合った二重らせん構造であることが、細胞分裂に伴って正確に複製される、すなわち、DNAが遺伝子の実体であると言うことの前提です。DNAが二重らせんであることが分かったのは20世紀の自然科学上の最も重要な発見の1つであり、今や、生命現象を考える上で不可欠の知識です。

 DNAはポリヌクレオチド鎖が相補的な塩基どうしで向かい合っていますが、このポリヌクレオチド鎖はどれだけでも長くすることができます。ヒトには46本の染色体があり、それぞれが2つ染色分体よりなっています。各染色分体は一つながりのDNAでできています。授業の最後に取り上げた22番染色体(正確には一方の染色分体分)は4千8百万塩基対で、これだけ一つながりになっています。

 時間の都合であまり詳しく触れませんでしたが、『一家に一枚ゲノムマップ(Genome Map)』にはいろんな情報があります。字が小さくて見にくいですが、ここの染色体に描き込まれている遺伝子名、タンパク質名はともかく、下部の説明などには目を通しておくといいと思います。また、特別に取り上げられている遺伝子・タンパク質はいずれも生理学上重要な機能を担っているものばかりです。中には、その欠損や変異が重大な疾患の原因となっている遺伝子もあります。今後の学習の参考にもなると思いますので、時間のあるときに調べてみるといいでしょう。


 宿題の提出期限を伝え忘れました。来週の授業の前に、クラスごとにまとめておいてもらえると助かります。

2016年度第5回 細胞質

 今週は細胞質を構成するサイトゾルと細胞小器官について列挙しながら構造と機能を概説しました。一つ一つ繰り返すことはしませんが、説明に用いた図を見ながら、それぞれの名称、構造の特徴、機能について自分なりに説明できるようにしておきましょう。

 赤血球や白血球、血小板については構造上の特徴や機能を学んだと思います。授業中に質問した内容も含めて見直しときましょう。

 ヘモグロビンは赤血球だけがもつタンパク質ですが、これは赤血球のサイトゾルにあります。もちろん、循環血中の赤血球は核のみならず、多くの細胞小器官を持たない、言い換えるとほとんどサイトゾルしかない非常に特殊な細胞です。脱核直後の網状赤血球を考えるとわかりやすいかもしれませんが、細胞小器官はありながらも、サイトゾルには大量のヘモグロビンが存在しています。また、血小板も細胞小器官を十分に持っているわけではなく、サイトゾルが大きな割合を占めています。血小板凝固に関わる多くの因子もこのサイトゾル中に含んでいます。

 白血球のうち、好中球や単球が分化したマクロファージは食作用を持ちます。食作用については6月の授業であらためて取り上げますが、食作用で取り込んだ微生物などを分解するためにリソソームが必要です。また、マクロファージが遊走していく場合には、細胞の形態を変化させたり運動したりする必要があります。このような現象には細胞骨格がその役割を発揮しています。

 来週、再来週の授業ではリボソームでタンパク質が産生され、さらに、粗面小胞体、ゴルジ装置での修飾、貯蔵を経て細胞膜へ運ばれていく過程を考えます。これらの構造や機能をしっかりとは見直しておくように。

 粗面小胞体と滑面小胞体は構造だけではなく、役割も全く違います。骨格筋や心筋における滑面小胞体は、特に筋小胞体(sarcoplasmic reticulum)といい、カルシウムイオンの貯蔵庫として機能しています。心筋の構造と機能もそろそろ学んでいると思いますが、骨格筋については前期の最後に取り上げます。

 来週は細胞分裂と染色体、そして遺伝子について取り上げます。予習をかねて、あらかじめ『生理学のための化学』9.核酸の構造と複製をよく見ておくこと。

2016年度第4回 ATP、細胞膜、細胞核 

 今週は前半に化学反応に伴うエネルギーについて、ATPを中心に説明しました。後半では、細胞膜と核について取り上げました。

 生体で生じる生理学的な現象の多くは化学反応を伴っています。今週の授業で取り上げた細胞膜をつくるためにも多くの化学反応が必要で、そのために莫大なエネルギーが消費されています。この生体内、あるいは細胞内で生じている化学反応(同化反応)に必要なエネルギーを供給しているのがアデノシン三リン酸です。また、化学反応(異化反応)によって放出されたエネルギーの多くもアデノシン三リン酸に貯蔵されます。ATPとその働きは、今後の授業でも頻繁に取り上げます。名前とおおざっぱな役割をしっかりと頭に入れておくように。具体的な作用は今後の説明で少しずつ分かってくると思います。また、酵素など、今回は説明を省いた部分は今後の授業で何らかの形で取り上げることにします。

 さて、今回細胞の構造と機能を考え始めましたが、やっと生物学らしくなってきました。地球上の生物はすべて細胞によって構成されています。たとえ単細胞生物であったとして、細胞です。単細胞生物の細胞と多細胞生物を構成する細胞とは構造の異なるところもありますし、動物と植物でも違いがあります。しかし、細胞を単位としている点では共通していますし、細胞である以上絶対に必要な構造や機能があります。

 授業では、動物、特にヒトを含む哺乳類を構成する細胞、という程度の共通項で考えていくことにしましょう。

 最初に考えたのは細胞を覆っている細胞膜です。細胞膜の機能は別の機会に取り上げますが、まずは構造についてしっかりと理解しましょう。細胞膜の構造は全体として「流動モザイクモデル」と考えますが、基本構造は脂質二重膜(脂質二重層)です。脂質二重層、特にリン脂質の二重層が袋状の構造になるとなぜ細胞になり得るのか、授業中に簡単に説明しました。「生理学のための化学」にも同様の説明をしましたので、改めて見直してみると理解しやすいと思います。

 脂質二重膜という場合には、単にリン脂質による二重膜というだけではなく、コレステロールや糖脂質も含んだ膜であるという意味です。そして、この脂質二重膜にタンパク質(膜タンパク質)がモザイク状に入り込んでいます。細胞の種類によって膜タンパク質の種類には差がありますし、同じ細胞であってもそのときの状態によって膜タンパク質の分布は変化します。脂質二重膜自体に流動性があるため、膜タンパク質も細胞膜を移動することができます。細胞膜がこのような性質を持った構造であるということから、流動モザイクモデルとよばれています。

 過去の期末試験問題を見てみれば分かることですが、細胞膜の構造と機能に関する知識は必ず問います。フレッシュなうちにしっかりと見直しをして、理解しておきましょう。

 最後に細胞核について簡単に触れました。内部にあるDNAについてはときを改めて取り上げることにしますので、今回は構造をよく見ておいてください。来週の授業で取り上げる小胞体ともつながっていますが、その成り立ちを理解するためには「envelope」であるということを知っておく必要があります。

2016年度第3回 生体の恒常性

 GWを挟んでしまいましたが、簡単にまとめました。

  第3回目の授業では「内部環境の恒常性」、「ホメオスタシス」という概念について、特に体液量やその組成を例に挙げて、「何が、どの範囲で保たれているのか」を考えてみました。また、そのしくみについても、やや概念的ですが触れました。

生理学1は動物的機能を主に取り上げますので、どちらかというと「ホメオスタシス」を直接テーマとして考えることは少ないかもしれません。しかし、生理学1の中心である神経系の機能はすべての器官系の働きを調節する上で必須です。さらに、さまざまな器官系の働きを強調させる上でも重要なはたらきをしています。生理学2では循環器系や呼吸器系が取り上げられると思いますが、これらの機能の神経性調節を考える機会があるはずです。どのように「ホメオスタシス」に関わっているのか、よく考えながら勉強してください。

 また、体液の性質は生理学のどの分野を学ぶ上でも必要な知識です。いくつかの数字や物質(電解質など)を取り上げましたが、いずれも常に頭に入れておいてください。

 先週連絡したように、来週12日の授業では冒頭で小テストを実施します。範囲は、生理学1の最初から先週の授業範囲、第1章4の冒頭までです。過去の問題なども参考にしながらよく見直しておくように。例年、小テストの成績と期末試験の成績は相関しています。普段の積み重ねが大切だということです。

2016年度第2回 生物の階層性

 今週は生物の階層性、つまり生体の構成レベルについて概略を説明しました。外皮系という、生理学ではまとめて取り上げることのない器官系をモデルにしましたが、どのように構成されているのかは分かったと思います。

 生理学では器官系ごとに分けて、それぞれがどのような機能を果たしているのかを考えていきます。器官系を構成する器官を順に取り上げ、それぞれどの様な大きさ、構造をしていて、そのような組織によって形作られているのか。器官の機能を発揮するために特に重要な組織は何か、その組織はどんな細胞で構成されているのか。それぞれの細胞はどんな機能を持っているのか。そして、細胞がそれぞれの機能を発揮するために、細胞内のどんな構造や分子が重要であるのか。こうしたことを一つ一つ確認しながら学んでいくことによって、そのとき学んでいる器官系がなぜそのような階層構造になっているのか、理解できるようになっていくと思います。

 物質レベルの説明はあまりしませんでしたが、今後の授業の中では頻繁に取り上げます。「生理学のための化学」は内容も分かりやすさも十分なものではありませんが、少しでも理解するように努力してください。また、今回は皮膚に存在するコラーゲンタンパク質とエラスチンタンパク質について簡単に説明しました。真皮は皮膚の伸展性や弾力性を担っている部分です。物質の性質とその細胞や組織の機能の関わりも少しずつ見えるようになっていくと思います。

 授業では多くの用語が出てきますが、できるだけ日本語と英語を併記するようにしています。決して、英語を覚えなさいという意味ではありません。日本語の医学用語もすべて外国語の訳としてつくられています。もちろんすべてが英語からというわけではなく、むしろ基本的な用語の場合には他の言語の訳としてつくられた言葉の方が多いかもしれません。しかし、言葉の意味や概念を理解していくためには、その起源や成り立ちを考えることは少なからず役立ちます。日本語だけを見ていては分からないことがたくさんありますので、代表的な外国語として英語を併記するようにします。

2016年度 第1回:授業の記録 イントロ、階層性と恒常性

 医学は、あるいは人体とはどのようなものか、何となく感触をつかめたでしょうか。1限目のクラスは文字通り初めての授業であり、学校での勉強も久しぶりという方も多いことでしょう。90分間1つのことに集中するというのはなかなか難しいことです。授業中にも触れましたが、何となくきいていると何も分からないうちに時間が過ぎ、気がつくと意識が遠くなっているということになりかねません。どのように臨めばいいのか、自分のやり方、ペースをつかむように考えましょう。

 さて、今回は生理学がどのような学問、科目であり、何を目標に勉強していくのか考えてみました。やや抽象的な説明に終始しましたが、来週からは具体的に取り上げていきます。今後学んでいく内容、知識は、高校で学んだ内容とそれほど変わらないという人もいるかもしれません。事実、それほど詳細で難解なものではありませんが、「生物の階層性」と「生体の恒常性」という2つの概念を深く結びつけながら、疾患や治療を前提として「人体」を学ぶという点では、高校までの学習とはだいぶん異なってくるはずです。

 来週は「階層性」を改めて考えます。モデルとして外皮系を取り上げますが、分子、細胞、組織、器官、器官系とどのように積み上がっていくのかがポイントです。

第32回 覚醒と睡眠、言語機能、学習と記憶、発声

遅くなりましたが、最終回の記録です。

脳の高次機能、つまり脳独自の機能を取り上げました。睡眠現象は古来多くの人たちの興味を引いていたようですが、近年そのメカニズムの一端が明らかになってきました。その結果は不眠症などの治療にも生かされているようです。

睡眠を脳波の特徴で分類すると、ノンレム睡眠とレム睡眠に分けられます。そして、レム睡眠には睡眠時とは思えないような多くの特徴があります。よく整理しておきましょう。また、覚醒状態をつくり出す、あるいは覚醒状態を維持するためのしくみにも触れました。詳しく説明できませんでしたが、さまざまな感覚入力と、これを受けてはたらく脳の神経回路が重要な役割を演じているようです。

言語機能は発声機能とも関わらせて説明しました。ヒトに特有のきわめて重要な機能です。多くの人にとって左半球優位であるということとともに、授業ではあまり触れませんでしたが、構音機構(発声に関わる諸器官の運動によって語音をつくり出すこと)についても理解も大切です。声帯の構造とはたらき、そして、口唇や舌、口蓋、顎などの運動についても解剖学や2年生で学ぶ運動学などの知識を結びつけられるようにしておきましょう。

最後に、学習と記憶の機能は非常に関心の高い領域ですが、授業でも触れたようにまだまだ分かっていないことばかりです。前世紀(つまり十数年以上前)に比べると、飛躍的に理解は進んできていますが、まだまだです。授業ではこの分野を理解するための最も基本となるような現象や知識、研究手段などについて説明をしました。可塑性や長期増強などやや難しかったかもしれませんが、時折国試にも出題されていますので、よく見直しておいてください。記憶能力や学習能力が高まればいいなあとは誰しもが思うところですが、「こうすればいい」という特効薬のような効果を期待できる手段をつくり出すには至っていません。

第31回 新皮質と辺縁系の機能、脳波

今回は一部は復習のような授業になりましたがが、新たな内容も取り上げていますので時間を作って自分で復習するようにして下さい。

新皮質の領野の分布は図を見てよく確認して下さい。一次感覚野と運動性皮質の部位は描けるようにしておきましょう。各機能は繰り返しませんでしたが、感覚機能のところで取り上げましたのでよく見直しておくように。

連合野についてはやや抽象的な説明ばかりでわかりにくかったかもしれません。ヒトのヒトたる機能を担っている領野もあり、現在 非常に高い注目されている分野の1つです。是非興味に応じて自分なりに勉強して下さい。

また、辺縁系の機能も簡単に紹介しました。自律神経系の中枢としても説明しましたので、内容的には重複しているところもあります。ペーペッツ回路や報酬系、懲罰系など、改めて見直しておいて下さい。

最後に説明した脳波は図を見て特徴をよく頭に入れておきましょう。明日は、この脳波を手がかりに睡眠の状態について考えます。また、言語機能、学習・記憶機能についても取り上げます。

第30回 自律神経系の中枢

試験前最後の授業でした。やや駆け足になったところもありますが、試験勉強に資することを中心に要約してみます。

はじめに取り上げた交感神経系と副交感神経系の伝達物質、受容体は、名称や分布は必ず頭に入れておくように。これらは何を考える上でも前提です。その上で、同じ伝達物質、アセチルコリンやノルアドレナリンがある場合には興奮性に作用し、別のある場合には抑制性に作用するということを理解しておくことが重要です。具体的には代謝調節型受容体のしくみに依存しますので、詳細は省きます。アドレナリン受容体であれば、受容体のタイプによって興奮性に作用するか抑制性に作用するかはおおよそ決まっていますのでわかりやすいでしょう。

自律神経系の中枢として取り上げた脳幹、視床下部、そして大脳辺縁系はそれぞれ機能に特徴があります。よく整理しておきましょう。

脳幹、特に延髄には重要な自律機能の中枢が集中しています。授業では循環器系の中枢としてのはたらきを中心に説明しましたが、血圧の調節はいずれも「反射」です。したがって、運動機能の反射で取り上げたように反射弓があります。刺激(血圧の上昇または低下)、受容器(主に大動脈弓と頸動脈洞の圧受容器)、感覚神経(内臓求心性神経としての迷走神経と舌咽神経))、中枢(延髄)、遠心性神経(交感神経と副交感神経)、効果器(心臓の場合は心筋、血管の場合は平滑筋)というように、整理して考えればそれほど難しくはないでしょう。

化学受容器やその他の受容器に対する刺激と循環器系、呼吸器系の反応も同様です。

消化機能の中枢として3つの機能を取り上げましたが、今後の勉強や臨床的な応用を考えると嚥下反射はしっかりと理解しておく必要があるでしょう。

排尿反射は、3つの遠心性神経にの作用だけを取り上げましたが、膀胱・平滑筋がもつ伸展受容器からの情報は骨盤神経を通って脊髄に入る感覚神経によって伝えられています。副交感神経も同様に骨盤神経、交感神経は下腹神経、運動神経は陰部神経を通っています。

対光反射は後期の主題である感覚機能、運動機能、自律神経機能のいずれにも関わっている現象(反射)です。反射弓を中心に改めて見直しておくように。

視床下部の機能は非常に幅が広く、それぞれ切り離して頭に入れようとしてもなかなか大変です。体温調節中枢、飲水中枢、摂食中枢としての機能は、それぞれ、他の科目で学んだ内容とオーバーラップしているところがあるはずです。一緒にして考えると分かりやすくなると思います。内分泌はまだ十分に習っていないクラスもあるようですが、下垂体前葉で産生・分泌されるホルモンの作用を考える上で視床下部から分布されるホルモン(放出ホルモンと抑制ホルモン)のはたらきは必須です。また、下垂体後葉から分布ッされる2つのホルモンも視床下部で産生されています。しっかりと区別して頭に入れておきましょう。

ホルモンそれぞれの名称や略号、産生部位と作用を知っておくのは当然として、内分泌で最も理解すべきことは、ホルモンの分泌に関するネガティブ・フィードバック機構です。甲状腺ホルモンやグルココルチコイドなどが分かりやすいと思いますが、この仕組みを理解する上で視床下部、下垂体の関係をよく理解しておく必要があります。

最後に、視床下部はその上位に位置する大脳辺縁系とともに本能行動や情動行動の制御に関わっています。具体例は授業でいくつか説明しましたが、感情的な変化や侵害刺激などを含めたさまざまな刺激が視床下部や大脳辺縁系の機能に影響を与え、その結果、交感神経系と副交感神経系のバランスが決まり、自律機能が変化します。

第29回 大脳皮質、伝導路、自律神経頚の機能

先週は最初に運動機能に関して最も高次の調節を行っている大脳皮質(新皮質)の機能を考えました。

運動性皮質ともいい、一次運動野、運動前野、補足運動野に分けられます。それぞれの機能の違いと特徴を簡単に説明しましたが、相違点はサルを使った実験などで具体的に考えました。改めて自分なりによく考えてみてください。また、一次運動野の支配の特徴は、一次体性感覚野と非常によく似ています。ともに、大脳皮質の機能を考える上で必須です。いずれも自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

あわせて、運動機能を支配する伝導路も概説しました。特に、錐体路は脊髄の下行路に対する理解という点で重要です。皮質脊髄路は大きく2つに分けられますが、支配する筋の部位、交叉する部位の違いをしっかりと説明できるようにしておきましょう。また、皮質脊髄路と皮質延髄路の違いも重要です。体性感覚の伝導路とよく似ていますね。

後半では、自律神経系の機能について復習をかねて取り上げました。交感神経系と副交感神経系による器官機能の調節は前期にも取り上げましたが、これまでに学んだことを踏まえて、改めてよく見直しておきましょう。プリントの最後の表を参考にしてください。

来週は、自律神経系の中枢である脳幹と視床下部、そして大脳辺縁系の機能について取り上げます。これらの説明も、生理学Ⅱ&Ⅳで学んだことがベースになっています。これらもプリントの表を見ながら思い出しておきましょう。

後期試験の範囲は、後期の始め、筋線維の種類から今度の授業で進んだところまで(たぶん、自立神経反射は入りません)です。

第27回、第28回授業の記録

今年に入ってから2回分の授業をまとめてみます。

 脊髄が中枢として関わっている運動機能はすべて反射です。しかし、おおざっぱに反射弓の構成だけで分類してもたくさんありますが、ここの受容器や効果器ごとに分け出すときりがないでしょう。授業では、反射がどのようなもので、反射弓の構成はどうなっているのかを理解してもらう手がかりになり、なおかつ、脊髄反射として重要なものをモデルとして取り上げました。主に体性感覚で取り上げた感覚神経が関わった反射です。
 伸張反射と拮抗抑制、そして自原抑制は同時にまたは連続して生じる反射であり、伸張反射が唯一の単シナプス反射であるという点でもわかりやすいため、必ず取り上げられます。臨床的にも検査によく利用されています。
 詳細はくりかえしませんが、はじめにそれぞれの反射の刺激とそれによってどのような反応が生じるのかを押さえた上で、反射のもつ意味や意義を持っているのか押さえておきましょう。例えば伸張反射であれば、筋長が瞬間的に延びたことに反応して同名筋が収縮する反射であり、筋の長さを一定に保つことによって筋の損傷を防ぐためのフィードバック作用を果たしている、ということです。その上で、それぞれの反射弓を自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
 また、屈曲反射と交叉性伸展反射も日常的に経験するものであり、反射弓もそれほど理解する上で難しいものではないでしょう。伸張反射などに比べると、髄節間反射であること、または、脊髄で交叉している反射であることなどが反射弓を複雑にしていますが、図を見ながら考えてみましょう。

 脳幹は脊髄と同様に反射の中枢という形で運動機能を担っていますが、やはり脳の一部であるだけに、脊髄よりはやや複雑です。角膜反射などの反射弓の構成は単純ですが、眼球運動を担う前庭動眼反射や視運動性反応、頭部の運動が関わっている前庭頸反射や頸反射などの反射弓はかなり複雑な構成です。
 授業では特に眼球運動を重視して、前庭動眼反射と視運動性反応の反射弓を説明しました。いずれも、特殊感覚で取り上げた感覚神経が求心路とする反射です。前庭神経と視神経を求心路として眼球を回転させるために筋が反応する反射です。反射の反応はよく似ていますが、何を刺激とするかが異なります。生体がもつ調節機能の妙とでもいうべきでしょうか。
 また、対光反射は遠心路が副交感神経であるという点で、今回取り上げた他の反射(今回取り上げた反射の遠心路はすべて体性運動神経です)とは異なっていますので、注意してください。

 小脳は、運動に関する学習・記憶、そして随意運動を協調させる機能について説明しました。いくつか例を挙げて説明しましたが、私たちが当たり前のようにしている動作にもみごとな調節機能が働いています。。生理学でも、もっと詳しく説明するべきなのでしょうが、与えられた時間と自分の理解の程度では限界があります。臨床の授業では、小脳の障害に関して詳しく取り上げられると思いますので、具体的な症状を知ると、果たしている役割の大きさがより理解できると思います。

基底核は、解剖学的な構成がそのまま生理学的な機能に結びついていないため、ややわかりにくかったかもしれません。内的情報に基づいた運動の発現や遂行、終止を制御するために機能する神経核の集団というように理解した方がいいかもしれません。この神経核集団に対する入出力と神経核相互のネットワークは図に示したとおりで、これをこのまま覚えようとしても無理ですが、疾患によって障害された場合にどのように変化してしまうのかを、図を見て考えるようにしましょう。
 授業で説明したパーキンソン病は教科書にも取り上げられていますが、非常に有名な疾患です。病理学的な症状とそのために神経回路がどのように変化してしまうのか、ゆっくりと考えてみましょう。プリントでは他にもいくつかの疾患を取り上げました。余裕のあれば、是非自分で文献を当たって勉強してください。

教科書に取り上げられていても授業で説明しなかった反射がいくつかあります。国試でも時折出題されていますが、今回授業で取り上げた反射についてしっかりと理解していればいずれも簡単に正答できます。基本的な内容をしっかりと身につけておくことが大切です。

第26回授業の記録 色覚と視覚の伝導路、反射と脊髄の特徴

皆さん、今年はどのような1年でしたか?

今回は先週に引き続き、色の感覚、特に色覚について取り上げました。色盲や色弱は名前は知っていても、具体的にどのようなものであるかなかなかわかりにくいと思います。遺伝的には非常に頻度の高いもので、遺伝子レベルでどのような変異が生じているかも詳細に研究されています。色盲や色弱の方は実生活で不便を感じられることもあり、色覚のバリアフリーという考え方でいろんな取り組みも進んでいます。興味のある方は自分で調べてみてください。例えば、http://tsutawarudesign.web.fc2.com/miyasuku3.html や http://www.nig.ac.jp/color/guideline_kanagawa.pdf などです。

視覚の伝導路は他の伝導路に比べるとやや複雑ですが、順序立てて考え、違いをしっかりと理解するという意味もあり、やや詳しく説明しました。視路障害を考える上で必要な知識でもあります。プリントの図を見ながら自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

後半で第9章「運動と姿勢の調節」に入りました。今回はイントロとして、運動機能そのものも概論と最初に取り上げる脊髄や脳幹の機能に関わって、反射について簡単に説明しました。次回(年始)の授業では、脊髄と脳幹を中枢とする反射について取り上げます。その際、刺激と反応だけを並べていくのではなく、それぞれの反射の反射弓を具体的に考えてみます。これまでに学んだ感覚受容器や神経系に関する知識を土台にして、論理的に考えていく必要があります。

では、皆さんよい年をお迎えください。

第25回 授業の記録:明るさの調節、光受容のしくみ、色の感覚

遅くなりましたが、先週の授業を簡単にまとめておきます。

光の量が多すぎても少なすぎても形態や色が知覚できませんから、適切な量にするために眼球に入る光の量を調節します。この眼球への入射光の量は瞳孔の大きさを変化させて調節され、交感神経と副交感神経の作用によって虹彩を構成する2つの平滑筋を収縮、弛緩させることによっています。光量に応じていずれも神経が反応しているのか、そしてどの筋が収縮しているのかが重要です。授業で説明したように、混乱しやすいところですので、理屈を立てて理解しましょう。

網膜の構造もやや混乱しやすいところがあるので注意しましょう。光によって反応する細胞、つまり視細胞は網膜の最も外側、後ろにあります。そして、光が当たることによってロドプシンが反応して視細胞は過分極します。これまでに学んだ刺激に対する受容細胞の反応のしかたとはやや異なりますので、注意しましょう。

色の感覚は簡単にしか説明できませんでしたが、昼行性であるヒトを含めた多くの動物にとって重要な感覚です。動物の種類によりますが、ヒトは3種類の異なる波長に反応する錐状体細胞を持ち、そのために多くの色を知覚することができます。

プリントとスライドで「錐状体細胞」の「錐」が誤っている部分が数カ所ありました。大変失礼しました。「錘」ではありませんので、訂正します。

第24回授業の記録:平衡感覚、光の性質、視覚機能(遠近の調節)

前回の小テストはこれまでに比べると皆さんよくできていました。だいぶんポイントが絞れるようになってきたのでしょう。全体を理解する上での柱となる部分をまとめて問題文にしています。したがって、復習する場合には小テストの内容を中心にして、プリントを参考にしながら理解を広げていきましょう。

さて、前半は平衡感覚器の構造と機能を考えました。聴覚器と非常によく似た構造ですので、仕組みは理解しやすいと思います。頭部の運動に伴って生じる内リンパの流動が基になってクプラや耳石・耳石膜を動かすことに伴って有毛細胞の感覚毛が倒れ、カリウムチャネルの開閉を生じます。内リンパの組成が特殊であることの重要性が分かると思います。有毛細胞には前庭神経が伸びてきており、両者の間にはシナプスがあります。したがって、有毛細胞の興奮は前庭神経に伝達され、その後前庭神経核からいろんな運動神経核などへ伝えられていきます。

平衡感覚器と聴覚器の構造と機能が似ていますが、元々前庭感覚器だけを持っていた動物で器官の複製が起こり、一方が聴覚器に進化したと考えられます。水中での水の振動は全身を動かすと同時に、音波にもなり得るものです。こんなところにも、生物(動物)が元来味中に生存していたことが見えてきます。

後半の視覚器では、光(可視光線)の特徴を理解してもらうために、電磁波全体に広げて簡単に解説しました。全体を6種類に分類しましたが、それぞれの生体に対する影響や医学分野への応用・実用など、かいつまんでまとめられているので各自でよく見ておいてください。

視覚器の構造は来週の授業を含めて、可視光線の通過する順にしたがって順に取り上げていきます。今回は水晶体とその周囲の構造による遠近の調節を概観しました。水晶体の厚みが変わると、表面のカーブの具合=曲率が変わります。この結果、光が通過するときに入射する角度(光が水晶体表面に当たる角度)とが変わることになり、水晶体に入射した光が水晶体を出ていくときにどのような角度で出て行くのかが変わります。こうして、網膜にちょうど焦点が合うように調節しています。

最後に近視や老視についても簡単に説明しました。それぞれを矯正する場合に、なぜ凹レンズ、凸レンズが必要であるのか、改めて自分で考えてみましょう。

第23回 音波、聴覚のしくみ、平衡感覚

今週ははじめに聴覚の適刺激である音波の特徴について、物理学的に簡単に説明しました。必要最小限の説明でしたのでややわかりにくかったかもしれませんので、概念が理解できれば十分です。また、デジベルやヘルツという単位はいろんな場で用いられるので覚えておくといいでしょう。

この空気の振動が外耳、中耳、内耳と順に形を変えて伝えられ、有毛細胞の興奮を引き起こします。非常にみごとなしくみができあがっています。プリントの図を見ながら、じっくりと考え直してみましょう。1人ですべてを説明できる必要はありませんが、重要なところは、鼓膜から耳小骨と伝えられて行く過程で振動が増幅されること、内耳では液体の振動に変わっていること、液体の振動が再びコルチ器全体の機械的な振動に変換されるとともに、有毛細胞の興奮につながっていることです。こうして、空気の振動がニューロンの電気信号に変換されて、動物の感覚として成立するわけです。

伝導路は、体性感覚とはことなり、両側性です。しかし、この両側性であるが故に音源定位も可能になり、感覚の精度が上がっているといえるでしょう。伝導路の中で中継所として視床が機能しているのは他の多くの感覚と同様です。聴覚では視床の内側膝状体は非常に有名ですので覚えておきましょう。

第22回 味覚、嗅覚と聴覚器の構造

先週の授業では味覚と嗅覚における刺激受容のしくみと興奮の伝導路を取り上げました。

味覚の5基本味のそれぞれに対応する受容体(膜タンパク質)があります。細かいしくみはともかく、基本味が味物質と受容体の関係を根拠にして考えられるのだということをしっかりと頭に入れておきましょう。ここが、嗅覚との大きな違いです。

味蕾、味細胞の構造と役割、味細胞に寿命があること、そして、味細胞が刺激を受けた後、中枢までどのように興奮が伝達されていくのかを押さえておきましょう。

嗅覚は味覚など他の感覚よりも原始的な感覚です。それは、伝導路や中枢の構成によく現れています。ここでは、嗅細胞の構造と役割、そして、嗅細胞-嗅神経とこれら以降の伝導路をよく見直しておきましょう。辺縁系については解剖学で学んだと思いますが、生理学では断片的に取り上げることしかできません。新皮質とは異なり、進化的に古く、本能行動や情動反応、あるいは記憶に関わる機能を持っていることが分かっています。

後半では、聴覚器の構造を概観しました。耳介から内耳コルチ器の有毛細胞まで、それぞれに役割があります。適刺激(音波、または空気の振動)をいかにニューロンの興奮に変えていくのか、じつにみごとなしくみです。来週の授業で取り上げますが、構造の理解があってはじめてしくみを理解することができますので、よく見直しておいてください。

第21回 体性感覚の中枢、内蔵感覚、痛覚の特徴

今週は体性感覚の中枢と内臓痛覚を中心に取り上げました。いずれもその特徴をよく理解して、自分の言葉で説明できるようにしましょう。

視床は体性感覚だけでなく、聴覚や視覚の伝導路においても中継所として機能します。神経核は異なりますが、役割や共通しています。

一次体性感覚野の体部位局在再現は、「感覚の敏感な部位ほど広い」と言葉だけをみるのではなく、プリントの図で具体的にどの部位にどれだけの広さが割り当てられているのかを確認してください。一度よく見ておけば自然に記憶に残るでしょう。

内臓痛覚は説明が具体的ではなかったと思いますが、『痛み』の特徴を表在痛と比較して考えておけばいいと思います。また、関連痛(放散痛)は重要な現象ですから、いくつかの部位とそのしくみも分かるようにしておきましょう。

痛覚についていくつか補足をしましたが、内因性オピオイドと痛覚抑制系は3年生で改めて取り上げられるはずです。痛覚過敏はよく体験することですから見直しておいてください。

最後に味覚と嗅覚の特徴を説明しました。基本味に関しては強化の記載とやや異なっています(つまり、国試の出題内容と異なります)ので注意してください。来週は味覚器と嗅覚器の構造と機能、それぞれの感覚の伝導路を取り上げます。時間があれば聴覚に入りますが、プリントの順と異なり、聴覚器の構造を先に説明します。いずれも解剖学で学んでいる内容を土台にしますので、一通り復習しておいてください。

第20回 深部感覚、体性感覚の伝導路

今週は深部感覚と体性感覚の伝導路を取り上げました。

深部感覚では、固有感覚、特に筋紡錘と腱器官を受容器とする感覚に絞って詳しく説明しました。それぞれの構造、筋紡錘であれば錐内筋とそこに巻き付くようにして終止しているⅠa群感覚神経、腱器官であれば膠原線維とそこに絡みついているⅠb群感覚神経です。必ず図を描いてそれぞれの構造に名前をつけるようにしましょう。

筋は収縮、弛緩に伴って長さとかかっている張力の大きさが変化します。また、長さの変化のしかたにも時々で差があります。これらの変化量を神経の興奮頻度という形で中枢へ伝え、解析・処理された結果、全身の筋の状態を把握して、運動状態を知ることができます。

後半では先週と今週の前半で取り上げた体性感覚全般の受容器情報がどのようにして(あるいはどこを通って)中枢に伝えられるのかを概説しました。基本となるのは3つのルート、後索路、脊髄視床路、三叉神経視床路です。体性感覚全般の伝導路を、表在部位と感覚の種類で分けてまとめました。教科書のまとめ方とは異なりますので注意して下さい。脊髄網様体路は脊髄視床路の枝のようなルートですが、痛覚に特有のルートですから、特殊なものと考えた方がわかりやすいでしょう。

来週は伝導路によって興奮が伝えられるところ、中枢の機能の特徴を考えます。また、内臓感覚についても簡単に触れた後、痛覚について改めて特徴を考え直してみます。

第19回授業の記録

今週の授業では表在感覚を一通り取り上げて説明しました。3年生になって改めて取り上げる授業があるはずですが、患者さんに対して直接触れる部分の重要な特徴ですから、しっかりと見直しておいてください。

取り上げた感覚の適合刺激がどのような性質を持っているかは自明であるため、説明は省きました。それぞれの受容器の構造、反応のしかた、神経線維の種類そしてそれぞれがどのような感覚であるのかを軸にして、一覧表にしたり箇条書きにしたりしながら自分なりにまとめておきましょう。

触圧覚は受容器が5種類あります。授業で説明したとおり、分布と順応速度に差があります。構造的にもそれぞれ特徴がありますので、ほとんどは被包神経終末という点で共通しています。順応速度の差はそれぞれが刺激を受けたときにどのように反応するのかという差に一致します。

・刺激が加えられ皮膚が変形すると興奮し、変形の大きさに興奮頻度が比例しているのがメルケル盤とルフィニ終末です。したがって、これらの受容器は順応するまでにかなりの時間がかかります。
・皮膚が変形する速度に興奮の頻度が比例しているのがマイスナー小体と毛包受容器です。変形のしかたが速いと興奮頻度が高くなり、ゆっくりと変形すると興奮頻度は低くなります。形が一定な状態で維持されているとこれらの受容器は反応しなくなります。したがって、刺激を受け始めたうちは興奮していますが、ある程度刺激を受け続けて、皮膚の変形の程度が安定すると順応します。多くの場合、速く順応することになるでしょう。
・皮膚の変形の速度が変わったときに反応するのがパチニ小体です。例えば、変形していない状態(刺激を受けていない状態)から変形を始めたときや、変形が続いている状態からそれ以上は変形しなくなるときです。刺激の強さが変化すると変形するスピード(速度)が変わる、すなわち加速度が変化します。わずかな時間で生じる現象ですから、パチニ小体はいったん反応してもすぐに興奮がなくなります。つまり、非常に速く順応します。

温度感覚と痛覚は受容器が自由神経終末であるという点で共通しています。実体は軸索終末にあるイオンチャネルでですが、まだまだ研究途上にあると言っていいでしょう。授業では一部を紹介しましたが、まずは感覚点とそこある自由神経終末が反応していると理解しておきましょう。温覚受容器、冷覚受容器、高閾値機械受容器、熱痛受容器、冷痛受容器、ポリモーダル侵害受容器とそれぞれから伸びる神経線維の種類を整理しておきましょう。

また、痛覚、疼痛に対する理解は医学の基本だと思います。多くの患者さんはどこがか「痛い」と感じて治療を考えます。刺激とそれに応じる受容器の種類、その受容器が刺激されたときの痛みの感じ方をきちんと説明できるようにしておきましょう。自分で説明できるということが、他人の話を理解することにつながると思います。

前期末に配布した練習問題の解答に誤りがありましたので訂正します:(53) a:S(型)、b:FF(型)

第18回 感覚機能総論

今週は感覚機能を考えていく上で必要な一般論を概観しました。やや雑ぱくになってしまいましたが、いずれも感覚機能を考える上での基本的な概念ですので、よく確認しておいてください。

感覚中枢は一部の感覚を除いて、大脳皮質の特定の領野に特定できています。今後の授業では、具体的にどの部位かを示します。解剖学で学んだ大脳の構造をよく見直しておくようにしてください。そして、感覚の投射という現象についても確認しておきましょう。

ウェーバー(エルンスト・ハインリヒ・ヴェーバー、Ernst Heinrich Weber)については来週の授業でも簡単に触れます。感覚機能について有名な実験し法則を見いだした19世紀のドイツの解剖学者・生理学者です。

来週以降、それぞれの感覚について受容器の構造と機能を最初に考えます。ニューロンの一部に刺激に反応するイオンチャネルがあることによって受容器として機能するもの、元々はニューロンであった者が軸索を持たなくなって独立した細胞として刺激を受けて興奮することに特殊化したものがあります。それぞれで説明しますが、あらかじめどんなタイプがあるのかを頭に入れておきましょう。そして、末梢から中枢に向けて興奮を伝えていくニューロンのうち、最も受容器側(またはその一部を受容器としているもの)にあるニューロンを一次ニューロンといいます。授業では触れませんでしたが、中枢に向かって順に二次ニューロン、三次ニューロン、四次ニューロンと数えていきます。いくつのニューロンを経由して中枢へ伝わるかは感覚の種類によって異なります。

最後に表在感覚に関する特徴を説明しました。表在感覚の場合は、感覚点が点状に分布しているために2点弁別閾という考え方が必要です。触圧覚が最もよく検討されていることは授業で説明したとおりですが、痛覚では分布のしかたが大きく異なりますので注意してください。

第17回 筋線維の種類と収縮の特徴

後期第1回目は前期の続きで、筋系について取り上げました。今回は、ATPの産生方法によって骨格筋を分類して、さらに、筋線維の収縮がどのように調節されているかを考えました。

筋線維の分類方法はいくつか知られていますが、最もわかりやすいのはその色、または筋収縮の速度による分類です。しかし、これらの特徴は筋の構造や収縮に関わるいくつかの性質を反映しているため、結局はATPの産生方法によって分類していることになります。

これまでの国家試験では、赤筋、白筋という分類でその特徴、構造を問う問題が出題されています。したがって、まずはこの2つの分類をよく理解しておく必要があります。一方で、運動単位の分類については教科書では3種類に分類して説明していますので、筋線維もATPの産生方法の違いによって3種類に分類して考えられるようにしておきましょう。

3種類の筋線維の構造とATP産生に関する特徴を一覧表にしました。自分なりに重要だと思う部分を抜き出してまとめなをしたり、箇条書きや文にまとめ直したりしながら、理解するようにしましょう。運動単位に部結びつけていこうとすると、ここに運動ニューロンの特徴を付け加えれば十分です。

後半では単収縮と強縮について簡単に説明しました。そして3種類の運動単位ごとに単収縮と強縮がどのような特徴を持っているのかを、実験例を通じて考えてみました。プリントには必ずしも十分な説明がつけられなかったので、授業を思い出しながら改めて自分で考えてみること。忘れてしまった場合にはいつでも質問に来てください。

第16回 筋節の構造と筋収縮のしくみ、筋のエネルギー供給

更新が遅くなり申し訳ありません。少しトラブルがありまして・・・。

筋収縮のしくみは筋原線維の構造をしっかりと理解して考えるようにしてください。筋節の構造は完全に自分で描けるようにして、その上で太いフィラメントと細いフィラメントがどのように運動するのかを説明でいるようにしましょう。ATPの分解も重要な要素です。

プリントp176とp177に入れた2つの図は神経筋接合部での興奮伝達と興奮収縮連関、そして筋収縮サイクルをひとまとめに考えられるようにうまくつくられています。よく見て自分の言葉で説明できるように努力しましょう。どこかで引っかかったり、つまずいたりせずに説明できれば、文字にしてみたり、他人に説明してみたり、いろんな工夫をして身につけてください。いずれにせよ、図や文字を眺めているだけでは理解は進みませんし、記憶にも残りません。

等張力性収縮と等尺性収縮は、実際の身体運動を考える上では重要な概念です。また、リハビリなどを考える上でも有効だと思います。興味のある人は時間を作っていろいろ調べてみるといいでしょう。

最後に取り上げた筋のエネルギー供給のしくみについては後期に少し細くします。今回はローマン反応についてよく見直しておいてください。

第15回 交感神経と副交感神経、筋の構造

自律神経系の遠心性神経は自律機能を考える上で非常に重要です。循環器系や呼吸器系、消化器系の神経性調節として学んだと思いますが、交感神経系と副交感神経系の作用によってそれぞれの器官、器官系の機能が調節されています。血圧の調節が最も典型的ですが、消化器系のはたらきもわかりやすい例でしょう。多くの内蔵器官は交感神経と副交感神経によって二重支配されていて、互いに拮抗するように作用します。しかし、これら2つの神経は常時自発的に活動しているため、いずれかより活発に活動している方の神経のの影響によって器官への作用が決まります。交感神経が優位なときには全身の身体活動やエネルギー消費、あるいはATPの産生がより盛んにすると同時にエネルギー貯蔵に関わる器官の活動が抑制されます。逆に、副交感神経が優になときにはエネルギー消費に関わる器官の活動が抑制され、エネルギー貯蔵にを盛んにする器官の活動が活発になります。こうした特徴を、できれば具体的な器官の働きを確認しながら理解しましょう。

伝達物質の違いは覚えるしかありません。といっても、それぞれ2箇所しかありませんし、まずは例外はないものと思っていいでしょう。後期の最後に、改めて伝達物質と受容体の関係、そして、各器官の作用を整理しようと思います。

後半は骨格筋線維の構造について取り上げました。明日の授業で筋の収縮と弛緩のしくみを説明しますが、この現象も筋線維、筋原線維の構造について理解していないと分かりません。自分で図を描くなり、特徴をまとめるなりして頭に入れておいてください。

第14回 シナプス伝達の加重、伝達物質と受容体、神経回路、自律神経系

更新が遅れてしまいました。夏休み前最後の授業はやや急いで進めましたので、重要ポイントもやや多めです。

はじめに取り上げたシナプス伝達の加重という現象は、活動電位が発生するしくみと興奮性シナプスや抑制性シナプスがどのようなものであるのかを理解していれば、それほど難しくないと思います。授業で使った図、模擬実験を自分の言葉で説明できるようにしましょう。今後いろんなタイプのシナプスでの興奮伝達を考えていきます。神経回路の説明では加重については曖昧にして説明しましたが、頭の中には常に思い浮かぶようにしておきましょう。

各シナプスが興奮性シナプスであるのか、抑制シナプスであるのかを決めているのは伝達物質と受容体の組合せです。シナプス前ニューロンがつくる伝達物質は決まっています。したがって、シナプス後細胞がもつ受容体の性質、結合する伝達物質、そしてイオンチャネルが開口したときにどのようなイオンが通過するのかも決まっています。今後の授業では、伝達物質だけを取り上げることもあれば、両者の組合せで取り上げることもあります。

プリントの120ページの上段は授業では説明しませんでした。末梢神経系ではたらいている伝達物質については、授業ではいくつかを具体的に取り上げて説明しますが、それほど多種類をではありません。一方、中枢神経系ではたらいている伝達物質は具体的に取り上げる機会はほとんどありません。しかし、非常に多くの伝達物質が見いだされています。過去の国試でも出題されたことがあるのでプリントで、「低分子量伝達物質」として名前を紹介した物質を中心にして一覧表にしました。

また、下段の受容体の一覧表の中で「シナプス前抑制」という言葉を使っています。抑制性シナプスの説明の中で割愛した部分ですが、ここで簡単に説明します。

このシナプスが、シナプス前ニューロンがシナプス後ニューロンの樹状突起や細胞体との間でシナプスをつくっているのではなく、抑制性ニューロンの終末が興奮性ニューロンの軸索終末との間でつくっているシナプスです。軸索-軸索間シナプスといい、抑制性ニューロンがシナプス前ニューロン、興奮性ニューロンがシナプス後ニューロンです。シナプス前ニューロン終末から抑制性伝達物質が放出され、これがシナプス後ニューロンの軸索末端に作用して、興奮性ニューロンの終末からの興奮性伝達物質の放出を抑制します。この結果、興奮性ニューロンをシナプス前ニューロンとしてつくられているシナプスのシナプス後ニューロンにはEPSPが生じず、興奮性が低下します(または興奮しない)。シナプスの「前」で興奮性伝達物質放出を抑制するため、「シナプス前抑制」といいます。プリント表中のグルタミン酸受容体やドーパミン受容体は、これら受容体に伝達物質が作用することによって、この受容体を発現している興奮性ニューロンの伝達物質放出を抑制するようにはたらきます。

次に取り上げた神経回路は、授業で順に説明した2シナプス結合の4つのパターンが自分で説明できるようにしておきましょう。図中の3番目のニューロンがどのようになるかが分かることも大切ですが、一番上のニューロンから順に一つ一つのニューロンの作用、変化をきちんと説明できることがより重要です。説明できて初めて「理解した」ということです。後期の授業では感覚情報や運動情報に関する伝導路を取り上げます。これらは非常に単純ではありますが、すべて神経回路です。そのときになって慌てないようにしましょう。また、収束回路と発散回路の二つは自律神経系が利用している仕組みです。

最後に取り上げた自律神経系はだいぶスキップして進めたのでわかりにくかったかもしれません。交感神経と副交感神経の構造的な特徴、とくにそれぞれが解剖学的にどの神経に含まれているのか、自律神経節がどこにあるのか、それぞれがどの器官、器官のどの部分に投射しているのかなど、解剖学で学んだことをかぶせて復習しておきましょう。また、生理学2で学んだ循環器系や呼吸器系、消化器系の機能調節のしくみを一緒に考えるとよりわかりやすくなる思います。

第13回 グリアと神経線維、興奮の伝導と伝達

今回は、神経線維の種類に応じてどのように興奮が伝導するのか、を前半で考えました。そのために、神経線維の構造をグリア細胞のはたらきと合わせて取り上げました。

まず、髄鞘の構造と髄鞘をつくるためにはたらくグリア細胞を確認すること。中枢神経系と末梢神経系では異なる細胞が髄鞘をつくっています。髄鞘がつくられていく過程については特に説明しませんでしたが、胎生期に神経系が構築される過程で順につくられていきます。ヒトでは、神経線維の多くが有髄神経線維です。線維の直径に差があるため伝導速度には幅があり、5種類に分類されます。無髄線維と合わせて名称もしっかりと頭に入れておくこと。来週の授業でいくつか例を示せると思います。

前々回に学んだ興奮の伝導のしくみは、小テストでも出題しましたが十分に理解できていない人が多いようですね。授業中に振り返る余裕はありませんので、各自でよく復習しておくように。その上で、逐次伝導と跳躍伝導の違いを確認しましょう。両者の間で活動電位の生じる場所や伝わる速さには大きな違いがありますが、伝導の特徴として説明した3つの原則は共通しています。

興奮の伝達については、電気的シナプスについても少し復習をしました。生理学1のプリントの第5章199、200ページに心筋細胞の構造とギャップ結合について簡単な図を入れて、前後で心筋の特徴について説明しています。特殊心筋と固有心筋の脱分極/活動電位に関しても簡単にまとめていますので参考にしてください。これらの部分は生理学1&3の授業では説明する時間がなく、割愛すると思います。

化学的シナプスには興奮性シナプスと抑制性シナプスと分けられます。しかし、電気的シナプスは、いわば興奮性シナプスしかありません。ここも両者の大きな違いです。

今回の授業では興奮性シナプスと抑制性シナプスについて、シナプス後細胞に脱分極が生じるのか、過分極が生じるのかということだけで説明をしました。来週の授業で、化学的シナプスではたらく伝達物質と受容体について詳しく説明をします。これらのことを合わせると、シナプス後細胞に「なぜ」脱分極が生じる場合と過分極が生じる場合があるのかについてわかりやすくなると思います。

第12回 興奮伝達のしくみ、神経系のしくみとニューロンの構造

前半でニューロンが興奮を伝達するしくみを説明しました。ここで取り上げたシナプスは化学シナプス、つまり神経伝達物質が仲立ちとなって興奮を伝達するシナプスです。

参考までに、化学シナプスの他に電気シナプス(電気的シナプス)があります。神経系では例外的なもので、授業では取り上げません。ただ、生理学2で学んだ心筋と心筋の間での興奮の伝達は、隣り合った心筋細胞がつくる介在板にあるギャップ結合をイオンが通過することによって生じます。このしくみが電気シナプスです。

化学シナプスは構造をしっかりと理解した上で、軸索終末まで伝導してきた興奮がどのようにして伝達されるのかを考えるようにしましょう。プリントに重要な構造を箇条書きにしてまとめましたので、自分で図を描くなどしてしっかりと頭にいれること。その上で、一つ一つの現象がどのように進んでいくのかをしっかりと確認するように。

後半は、神経系の構造と機能をおおざっぱにまとめました。中枢神経系と末梢神経系の役割分担について、また、体性神経系と自律神経系のちがいについて、今後具体的に少しずつ取り上げていきます。解剖学で学んだことと合わせて、まずは全体の構成をしっかりと頭に入れてください。

すでに循環器系の機能調節の中で自律神経系の機能について学んだいると思います。やや遅くなりましたが、再来週の授業で、この自律神経系のはたらきについても概観する予定です。


夏休みのレポート課題のブルーバックスの見本は高柳先生のお預けしました。閲覧したい場合は職員室に行って申し出てください。

第10回 エキソサイトーシス、膜電位

今週は先週からの続きで小胞による輸送について取り上げました。エキソサイトーシスが関わっている現象をいくつか学ぶはずです。生理学1の前期では、来週から再来週にかけて取り上げるニューロンでの興奮の伝達です。今日の授業でも触れましたが、ニューロンは軸索終末から神経伝達物質という化学物質を大量に放出します。また、生理学2では再三にわたって触れられるのではないでしょうか。 現象は単純でわかりやすいと思います。いつでも思い浮かぶようにしておきましょう。

さて、後半は細胞の膜電位とニューロンの静止膜電位について取り上げました。ここまでに体液や細胞の膜構造、膜を通過する物質の輸送を学んできましたが、これらの知識を使って多くのことを考える必要があります。やっと生理学らしい内容になってきました。例えば、細胞膜内外のイオンの組成、脂質二重膜の基本的な性質、受動輸送、イオンチャネルに関する知識を使って、順に考えていく必要があります。また、電圧や電流などの基本的な理科の知識も必要です。これらまでを一緒に復習する時間はありませんので、忘れていると思ったら各自でやり直しておくように。

静止膜電位については、授業の説明を思い出しながらプリントをよく見て自分で声に出して説明するようにしてみましょう。できるできないはともかく、図を見ているだけでは理解することはできません。また、別項に説明文を考えてみましたので、参考にして下さい。

第9回目 受動輸送、能動輸送、エンドサイトーシス

今週は受動輸送と能動輸送について取り上げました。いずれも、イオンや水、グルコースやアミノ酸など小さな分子が一つずつ膜を通過していく方法です。広義の拡散や浸透、浸透圧については理解が不十分だと感じる場合は、図を見ながら考えてみましょう。

拡散は3種類に分けられますが、それぞれの方法によって移動する(輸送される)物質には大きな違いがあります。その違いをはっきりさせたうえで、具体的な物質を挙げられるように。
授業でも触れたように、
・単純拡散:呼吸器系で肺胞と肺毛細血管との間移動する酸素や二酸化炭素、小腸内腔から小腸上皮細胞でへの短鎖脂肪酸や脂溶性ビタミンの取り込みなど。
・膜チャネルタンパク質:主にイオンが細胞内外へ移動する。第3章では膜電位の形成や活動電位の発生のしくみとして取り上げます。また、筋収縮や胃酸の分泌のしくみを考える際にも取り上げら得れます。
・トランスポータータンパク質:小腸内腔から小腸上皮細胞でへの単糖類の取り込みや細胞のグルコースの取り込みなど。

能動輸送はどのようなエネルギーを利用するかによって大きく二つに分けます。
・一次性能動輸送=ポンプはATPを分解して得られるエネルギーを利用するという点でわかりやすいでしょう。ナトリウム-カリウムポンプは今後いろんな場面でそのはたらきを目にすることでしょう。この他に、筋収縮のしくみの中でカルシウムポンプが、胃酸の分泌のしくみやミトコンドリアのでのATP産生のところで水素イオンポンプが取り上げられるかもしれません。
・二次性能動輸送は簡単にしか説明できませんでしたが、小腸内腔から小腸上皮細胞でへの単糖やアミノ酸の取り込み、腎臓でのグルコースやナトリウムの再吸収などさまざまなところではたらいています。


それぞれの場面で必ず振り返って復習するように心がけること。

今後生理学の学習の中でも触れられるはずですが、あらかじめどんな物質かを知っていればそれぞれの現象も理解しやすいはずです。

予告の通り、来週は第2章の1〜6までの範囲で小テストを実施します。しっかりと準備しておきましょう。また、宿題の再提出も忘れずに。

第8回 タンパク質の翻訳と翻訳後修飾、輸送、膜輸送(受動輸送)

今日はじめにタンパク質の翻訳をしくみを取り上げました。核酸の文法、つまり塩基の配列をコドンというまとまりで読み替えていくことによってタンパク質の文法に翻訳します。一見複雑なようにみえますが、じっくりと見ていけば単純な法則で成り立っていることが分かるでしょう。生物は遺伝情報をDNAを複製するという形で保存し、また次世代へ伝えていきます。さらに、個体(細胞)の中ではDNA➡RNA➡タンパク質と情報を発現させる(これが遺伝子発現です)ことによって生命を維持しています。

遺伝子発現という言葉はタンパク質が合成されるところまで、つまり翻訳までを指していることが多いですが、タンパク質は遺伝子の情報の通りにアミノ酸がつながっていれば機能するわけではありません。タンパク質にはそれぞれ『正しい形=立体構造』があります。『生理学のための化学』でも説明しているとおり、二次構造、三次構造、場合によっては四次構造が重要です。これらの高次構造をつくるのが小胞体やゴルジ装置などの働きです。

ここまで説明してきたDNAの複製やRNAへの転写、そしてタンパク質への翻訳とその後の立体構成はすべて誤りなく進んでいきます。その結果、我々の健康が維持されています。たとえ、小さな誤りがあったとしても何らかの形で修正されたり、誤りや不具合を含んだものは破壊されたりしてすべて排除されていきます。排除できずに誤りが蓄積していくと細胞ががん化したり、あるいは老化したりしていきます。

後半は細胞膜を挟んで、細胞内外への物質移動のしくみのうち、最も基本的な移動方法である「受動輸送」について説明しました。来週の授業でで、溶質の移動である「拡散」と溶媒(水)の移動である浸透に大きく分けて具体的に考えます。いずれも基本は、今日説明した「広義の拡散」です。現象としては当たり前のことですが、分子の運動という目で改めて見直しておくように。

第7回 DNAの複製、遺伝子の構造とDNAの転写

先週から来週は「細胞の増殖と分化」を考えるために、また、これから個々の細胞の機能を考えていく上で不可欠な「遺伝子」と「遺伝子の発現」を取り上げています。

まず最初に取り上げたのは「DNAの構造と複製のしくみ」でした。DNAはヌクレオチドのポリマーとして考えることができ、2本の相補的なヌクレオチド鎖=相補的な塩基が向かい合って塩基対をつくっているヌクレオチドどうしで二重らせん構造をつくっています。『生理学のための化学』にもまとめましたが、DNAの構造が明らかになったことが現在の医学・生物学の発展につながっています。今は高等学校の生物でも当たり前のように取り上げられている内容で、生き物、そして生きているということを考える上で基本的な知識の一つです。

DNAは相補的な塩基どうしが向かい合った二本鎖であるがからこそ、半保存的複製によって完全に複製することができます。つまり、構造と複製のしくみは切り離して考えることはできません。授業の説明では、できるだけ簡単に説明するために、二重らせん構造や複製のしくみの詳細は省きました。『生理学のための化学』にある程度詳しくまとめましたので、時間を作って目を通しておくように。

授業中にも触れたように、「〜の遺伝子」とか「〜のDNA」などと、かなり気安く使われているような気がしますが、「遺伝子」という概念は決して分かりやすいものではありません。来週の授業で詳しく説明しますが、DNAの塩基配列(つまり、転写されたRNAの塩基配列)がタンパク質のアミノ酸の配列を決めており、あるタンパク質のアミノ酸配列を決めているDNAの塩基配列部分を「一つの遺伝子」とします。この遺伝子をヒトはおよそ20,000個持っていて、これら遺伝子とその遺伝子の発現を調節する情報をあわせてゲノムといいます。したがって、物質的にはゲノム=DNAと考えていいでしょう。

DNAが染色体をつくっていますから、染色体に遺伝子があるということです。したがって、今日配布したような「ゲノム・マップ(Genome Map)」がつくられました。大判を見たい場合はここ(http://stw.mext.go.jp/series.html)

遺伝子からタンパク質をつくるためのステップに、転写と翻訳があります。今日は転写のみを説明しました。DNAの複製の仕組みが理解できれば、転写はほぼ同様の理屈で分かると思います。DNAとRNAでは含まれている塩基の種類が一つだけ違いますので注意してください。プリントの転写を描いた図をよく見ながら自分で説明してみるといいでしょう。

来週は翻訳のしくみと合成されたタンパク質がどのように目的の場所へ運ばれていくのかを取り上げます。また、後半では細胞膜を介した物質輸送の概略を説明します。

第6回 細胞小器官と細胞分裂、染色体

今回は細胞小器官と細胞分裂、そして染色体を取り上げました。

リソソーム、ペルオキシソーム、プロテアソームはいずれも何かを分解するための小器官です。これら小器官は細胞内に多数あり、それぞれが独自の酵素によって対象物を消化、分解しています。リソソームとペルオキシソームはともに膜構造でできています。また、食細胞などの機能を考える上でリソソームは非常に重要です。

ミトコンドリアはATPを産生するための小器官で、多の小器官と異なり二重の膜でつくられています。ATP産生にはサイトゾルで生じる解糖系の他に、このミトコンドリアが持っているクエン酸回路と電子伝達系という2つのしくみが必要です。1反応あたりの産生ATP数はミトコンドリア内での反応の方が圧倒的に多く、効率的です。

また、授業では割愛しましたが、ミトコンドリアにはDNAがあり、いくつかの遺伝子を保存しています。この理由については場を改めて取り上げようと思います。

後半では細胞分裂のしくみを簡単に説明しました。来週の授業で遺伝子と遺伝子発現について取り上げますが、そのイントロとして染色体についても簡単に説明しました。

体細胞は分裂する場合に、必ずいったん丸くなります。そして、分裂して2個の娘細胞になると、間期の間に細胞内を元の状態に戻してから次の分裂に入ります。分裂中の核と染色体の振る舞いを中心に見直しておきましょう。また、今回はしっかりと説明できませんでしたが、間期に核内のDNAをすべて複製し、全く同じ塩基配列を持ったDNAを2セットにしてから分裂します。来週は、最初にDNAの複製という現象について説明します。『生理学のための化学』の「9.核酸の構造と複製」をよく読んで授業に臨んでください。

染色体は中学校や高等学校の生物でも必ず取り上げられる内容ですから、すでに分かっているという人も多かったと思います。生物の種ごとに固有の染色体数があり、標本化してギムザ染色するとそれぞれが特有の染色パターンを示します。ヒトの染色体の構成、常染色体と性染色体の数、組合せ、そして、倍数体と半数体の違いについてしっかりと見直しておくように。

第5回 細胞膜、核、サイトゾル、細胞骨格、細胞小器官(小胞体、リボソーム、ゴルジ装置)

少し遅くなってしまいました。皆さんの復習は順調に進みましたか?

細胞膜の構造は細胞レベルで考えていく上での基本です。「流動モザイクモデル」とは、先週取り上げたリン脂質とコレステロール、そして糖脂質が構成する脂質二重膜が基本となって、そこにタンパク質がモザイク状に分布する構造です。機能は構造に裏打ちされているといっていいでしょう。したがって、今後、膜タンパク質を中心にして細胞膜の機能を取り上げていきますが、すべて流動モザイクモデルを頭に置いて考えるとわかりやすくなると思います。


構造を理解するためには、何よりも自分で描いてみることです。自分なりにわかりやすい図を描いて、学んだことを一つ一つ書き込んでいくといいでしょう。

細胞核とDNAや細胞分裂については来週触れます。今週は、これも構造、特に角膜の構造を考えました。細胞膜同様に脂質二重膜でできていますが。細胞膜との違いは、二重の膜になっているということ。また、非常に大型の孔(=穴)があいています。これも非常に重要な特徴です。

細胞内にある多くの構造、つまり細胞小器官は膜でつくられています。この膜の構造は細胞膜同様に脂質二重膜を基本構造とした流動モザイクモデルで考えられる構造です。小器官の内外も水溶液です。したがって、細胞と同様で、水を含んだ袋が水の中で構造を維持するためには脂質二重膜を基本とした膜構造が最も理にかなっているのでしょう。

細胞質の構成は非常に複雑で、大きくサイトゾルと細胞小器官に分けて考えます。

サイトゾル=細胞質の液体(水溶液)部分は形がないために構造を考えることはできません。機能もあまりにも多様で、今回は具体的には示しませんでした。今後多くの細胞機能を学んでいきます。その機能に細胞小器官が関わっている場合にはその旨説明があると思いますから、限定がない場合はすべてサイトゾルがその機能を果たす場になっていると考えていいでしょう。

細胞骨格は細胞小器官というよりは、サイトゾル中にあるタンパク質でできた構造と考えたほうがわかりやすいかもしれません。細胞そのものの運動や形態に関わっているだけではなく、繊毛や微絨毛など構造や運動にも重要です。これらの構造が出てきたときに思い出してください。

粗面小胞体とリボソーム、ゴルジ装置はいずれもタンパク質の生成に関わっている細胞小器官です。来週、再来週の授業で改めて取り上げますが、それぞれの構造をよく頭に入れておいてください。

滑面小胞体は細胞ごとに機能が大きく異なっているため、すべての機能を知ることはとうてい無理です。生理学の授業では、今回触れたように肝細胞(肝臓の機能の中心なっている細胞)や筋(特に骨格筋)細胞の2つを知っていればいいと思います。

今秋の授業では小テストの解説をした後、今週の続きで細胞小器官を取り上げ、さらに細胞分裂とDNAの複製(あわせてDNAの構造)、そして遺伝子と遺伝子発現にすすみます。『生理学ための化学」の最後の項目「核酸の構造と複製」をよく読んでおくとわかりやすいでしょう。

第4回 化学反応、細胞と細胞膜

GWの最終日である昨日はなぜ休日であったか、知っていますか? 職員室では知らない方が大勢いるようでした。GW開けて2日間だけ授業というのもやや中途半端ではありますが、頭をはっきりさせて本格始動させていきましょう。

さて、今回は前半で「化学反応」の基本的な考え方を説明しました。「同化」と「異化」は少しずつですが出てくると思います。あるいは、これらの言葉は使わずとも、物質が合成されたり分解されたりという化学反応は少しずつ取り上げられますので、考え方をしっかりと身につけておきましょう。また、ATP(アデノシン三リン酸)とその分解によって生じるエネルギーを利用した化学反応は、今後よく取り上げます。

後半で「細胞の構造と機能」に入りました。いよいよ、生理学らしい内容なりますが、授業のテンポを上げていく予定ですので、予習と復習を怠りなく授業に臨んでください。

細胞が分裂する様子を見てもらいましたが、このような現象にもエネルギーは必要です。したがって、細胞内では大量のATPがつくられ、そして分解されています。

人体を構成する細胞の数や種類、そして「増殖」と「分化」という概念はしっかりと頭に入れておきましょう。これらが分かっているからといって、細胞の構造や機能の詳細が理解できるわけではありませんが、基本の中の基本です。そして、細胞膜の構造を理解することは、細胞全体のの構造と機能を考える上で最も重要です。来週の授業でも触れますが、細胞内にある核や多くの細胞小器官がすべて細胞膜と同様に脂質二重膜でつくられています。そして、何よりも、細胞というものがなぜ、どのようにできあがったのかを知る上で、細胞膜の構造を理解することは不可欠です。

第3回 生体の恒常性と体液 

今日は「生体の恒常性」について、その概念を体液を例にして考えてみました。

授業で説明したように、「恒常性」、「ホメオスタシス」という考え方は生理学の土台です。この概念を理解するために学ぶと言っても過言ではありません。そもそもどのような考え方であるのか、用語の整理とともに、しっかりと確認しましょう。また、生理学ではそれほど多くの人名が出てくるわけではありませんが、ベルナールとキャノンはその業績共々覚えておきましょう。

体液の量や組成がどのように調節されているのかは今後の課題として、正常ではどのように区分され、それぞれがどれくらいの量で、その組成はどうなっているのか、生理学的な知識の一部としても、そして今後の学習にとっても必須事項です。具体的にいくつかの数字や電解質の名称、組成に関して説明しました。プリントp24の2つの図は非常に重要です。細胞内、細胞外のそれぞれで最も多い陽イオンと最も多い陰イオンの合わせて4つはすぐに出てくるようにしましょう。

体液に関わる調節のしくみとして、pHと体液量についても取り上げました。pHの概念は各自で勉強してもらうことにしますが、「緩衝系」という調節機構が存在すること、そして、これが正常に機能するために多くの器官系が働いていることを押さえておいてください。呼吸器系、循環器系、泌尿器系、内分泌系でそれぞれ取り上げられるはずですが、体液のPHのホメオスタシスを維持するためのしくみであるという大きな現象の一部分であるということを理解して勉強を進めましょう。

こうしたホメオスタシスを維持するためのしくみの基本は「負のフィードバック機構」です。概念は分かってもらえたと思いますので、一つ一つの仕組みを理解する場合に、それぞれのしくみの中で何が、あるいはどこが受容器、中枢、効果器として機能しているのかをよく考えるようにしましょう。

授業中に「血漿中のタンパク質は?」と質問しました。習う科目は異なりますが、こうした問にも直ちに反応できるよう日頃から復習をしっかりとしておきましょう。

来週は化学反応と生体におけるエネルギー源であるATP、そして細胞の構造と機能へ入ります。最初は「細胞膜」について考えますので、「生理学のための化学」のうち、
6.脂質の構造と特徴
をよく読んでおくと理解が進むでしょう。

第2回 生体の階層性

今回は生体の階層性について、特に「外皮系」をモデルにして説明しました。最初と言うこともあり、生理学を学ぶ上で必要ないろんな知識を織り交ぜて説明したので、やや混乱したところもあったかもしれません。前回も言いましたが、必ず毎回復習をすること。後でまとめて見直すのは、多くの方には無理でしょう。毎回必ず復習をして、さらに忘れているところ、確認すべきところをさかのぼってチェックしていくようにしてください。

さて、今回は器官系〜物質までの回想の積み重なり方を具体的に考えました。全体をおおざっぱに理解するためにもひとつひとつの知識をしっかりと積み上げていくこと、概念や意味を把握することが重要であるということがわかったと思います。「外皮系」を取り上げた理由は、
生理学の教科書に「外皮系」という項目がなく、まとめて説明する機会がないこと、
器官系の中で最もよく眼にするものであること、
構成する器官が少なく、組織構造も単純で説明しやすい
などです。今後生理学の中で取り上げられるとすると、
感覚器系の一部である表在感覚を含む器官として
体温調節や生体防御の一端を担う器官として
でしょうか。いずれも生理学Ⅱ&Ⅳの範囲です。

「外皮系」をモデルにして、細胞から器官系までをフローチャートのような形でまとめてみると、理解の助けにあると思います。

第1回 イントロ、生体の階層性と恒常性

最初の授業で、いろいろ戸惑いもあったかもしれませんが、いかがでしたか? 冒頭で説明したように、授業はすべてスライドで進めていきます。ただきいているだけで分かったつもりにはなれますが、後で思い返そうとしても何も出てこないということになりかねません。今後順次プリントが配布されますが、各章ごとにおおよそ何回の授業があるのかあらかじめ分かっているのですから、次の授業でどれくらい進みそうか見当をつけてしっかりと予習するようにしましょう。どんな言葉や図が使われるのか、あるいはすでに持っている知識を受け皿として使えるのかどうか、など事前に分かった上で授業に臨むように。

さて、第1回目ということでスローペースで、できるだけたくさんの顔を見ながら進めました。特に抽象的な内容が多かったため、いろいろかみ砕いて説明もしたつもりです。生理学を学んでいく上でのキーワードは2つ、生体の階層性と生体の恒常性です。この2つの切り口で生き物、特に人体=ヒトを考えていきます。それぞれ具体的には来週以降の授業で説明します。逆に言うと、生理学を学んでいくということがこれら2つの概念を理解することでもあります。

階層性については、来週の授業で改めて各階層について説明した後、外皮系を例にして階層の組み立てについて考えてみます。プリントには消化器系も例として取り上げましたが、時間の都合で省きます(同じ内容が解剖学Ⅱ&Ⅳと生理学Ⅱ&Ⅳで説明されます)。また、生体を構成する分子については人体を構成する元素などについて概説しますが、高分子については『生理学のための化学』を各自で取り組んでください。今後、生理学Ⅰ&Ⅲでは必要に応じて各論的に取り上げていきます。

恒常性についてはプリントp22以下、概念について改めて整理した後、具体例として体液について考えます。イオンやpHについて基本的なことを知っている必要があります。

生理学は一見膨大な知識の集積のようにみえます。しかし、全体を貫く筋道のようなものが必ずあります。これが理論であり、ある程度つかめれば、単に知識の集積として詰め込むような勉強をすることなく、全体を理解することができます。もちろん、理論を身につけるためにある程度知識を詰め込む必要はあります。多くの人にとってはかなりの努力を要しますし、基礎となる知識と教養も必要です。

では、1年間よろしくお願いいたします。

第32回 自律神経系

時間がたってしまいましたが、最後の授業の内容を簡単にまとめておきます。

ここで取り上げた内容のほとんどはこれまでに学んでいることばかりですが、「自律神経系」あるいは「交感神経系と副交感神経系」という切り口で見直してみたというところでしょうか。ほとんどすべての器官系の機能はこれらの神経系の作用によって調節されています。特に、循環器系や呼吸器系、消化器系などは重要ですので、春休み中に必ず時間を作って見直しておくようにしてください。

交感神経系と副交感神経系の作用という観点から見ると、それぞれの伝達物質とその受容体の組み合わせ、そして、標的器官の受容体とそこに伝達物質が作用したときにそれぞれの器官がどのように機能が変化するのかを考えられるようにしておきましょう。プリントに表でまとめましたが、この表は何もかも一つにまとめています。したがって、具体的な勉強には使いにくいと思いますので、自分なりに見やすい表を作り直してください。こうした作業はただ写せばいいわけではありませんから、何が重要かをじっくりと考えながら、進めていきましょう。それが勉強すると言うことです。

自律神経頚の中枢の機能はだいぶスキップしながら説明をしました。基本的な考え方は循環器系に関する調節機能として取り上げたとおりです。また、視床下部の働きは自律機能全体にかかわる大がかりなものです。体温調節や消化機能など、内分泌系の作用もあわせて考えられるようにしておきましょう。

第31回 運動機能の調節、伝導路

今回はやや駆け足で説明しましたが、小脳と大脳皮質による運動調節の特徴を概説しました。

小脳は随意運動を協調させること、そして運動学習に関して中枢的な役割を果たしています。とくに、前者についてはいろんな障害についても合わせて学ぶことが大切だと思います。2年生で神経疾患について学習すると思いますので、そのときに改めて見直してください。また、小脳の学習機能については近年研究が進展し、教科書には触れられていないようなこともかなり明らかになってきています。国家試験の対策という意味ではそれほどウェイトを置く必要はないと思いますが、興味のある人はいろんな文献に当たってみるといいと思います。

大脳皮質、特に一次運動野に関する理解は必須です。本来であれば期末試験で「説明せよ」と出題するべき内容です。一次体性感覚野と中心溝を挟んで向かい合っている場所ですが、支配の特徴も非常によく似ています。合わせてよく復習しておいてください。また、補足運動野と運動前野については、サルを使った実験を考えました。いずれもまだ十分に理解されているとは言いがたいところもありますが、典型的な機能の違いを頭に入れておくといいと思います。

さて、後半は伝導路を取り上げました。体性感覚や特殊感覚でも、感覚受容器の情報がどのようにして中枢へ伝えられるのかについて考えました。これは、感覚というものが、受容器で刺激を受けて、そこで発した興奮が中枢へ伝えられて初めて感覚が生じるからであり、それを理解するために必ず伝導路を考えました。今回、運動に関する情報の伝導路を考えるのも全く同じことです。筋による運動は、筋が勝手に収縮・弛緩して生じるわけでもなく、また、脳で意思が生じたら勝手に筋による運動が発生するわけでもありません。大脳から末梢まで興奮が伝わって初めて運動、筋の収縮や弛緩が生じます。その、まさに筋道を理解することが大切です。

錐体路とひとくくりにしますが、皮質脊髄路と皮質延髄路の2つ、ともに、大脳皮質のニューロンの軸索(神経線維)が直接α運動ニューロンとつながっています。この神経線維のルートをしっかりと考えられるようにしてください。

脊髄内の伝導路は感覚性の上行路と運動性の下行路の2方向があります。例えば、けがなどで脊髄に障害が発生した場合にこの伝導路がダメージを受けます。脊髄のどこにダメージを受けるかによって運動、感覚の麻痺の出方が変わってきます。教科書180ページに「ブラウン・セカール症候群」として簡単に紹介されていますので、一度目を通しておくように。

第30回 脳幹を中枢とする反射

冒頭で先週からの続きとして、」屈曲反射と交叉性伸展反射を見直しました。伸張反射と拮抗抑制が組み合わさって関節の伸展が生じかすが、同様に、伸筋と屈筋のはたらきによって関節の屈曲や伸展が生じます。それぞれの反射弓を順を追って考えられるようにしましょう。

脳幹による運動反射は脊髄反射ほど単純ではありませんが、反射によるという点では共通しています。授業で取り上げたように、受容器や効果器が様々ですが、代表的な反射を中心にして説明しました。

特に授業で取り上げた眼球運動に関する二つの反射、前庭動眼反射と視運動性反応は、ともに脳神経を介していること、特殊感覚の受容器に対して運動神経を遠心路として反応することなどの点で脳幹を中枢とする反射の特徴をよく表しています。また、対光反射も特殊感覚刺激に対して自律神経系が反応するという点で特徴的です。いずれも、何が刺激となってどのような運動が生じるのか、その運動の目的は何は、受容器、感覚神経、運動神経はどのような構成になっているのか、などをよく整理して理解しましょう。

後期は感覚機能と運動機能を取り上げました。運動機能に関しては不十分ですが、ヒト(あるいは生体)が、例えば体外からの刺激をどのように受け、感覚・認識しているのか。さらに、その刺激に対してどのように反応し運動するのかという、動物的機能として最も基本的なはたらきを考えてきました。必要な知識を整理し、それに基づいて現象や概念を説明できるようにしっかりと復習してください。

第29回 視覚の伝導路、脊髄反射

先週ははじめに視覚の伝導路について補足しました。単に、視神経から一次視覚野までのインパルスの通過経路としてだけではなく、視野あるいは視野に入っている物体の像がどのようにしてイメージされているのかを考えられるようにしてください。視野と網膜、そして一次視覚野に至る伝導路を自分で描いてみて頭に入れておくように。

先週の中心は脊髄反射です。反射についても要点をまとめましたが、反射弓の構成をよく理解しておいてください。今度の授業、そして後期末試験でも必ず問う内容です。

さて、脊髄が中枢として調節している運動機能の中心は反射です。したがって、授業でもその代表である伸張反射と拮抗抑制、そして自原抑制を3つをはじめに取り上げました。反射という現象を考える上でのモデルとしても非常に重要です。反射弓を自分の言葉で正確に説明できるように、何度も繰り返しおさらいしておくように。

反射を考える上では、後期の前半で取り上げた感覚受容器と感覚神経に関する知識や理解も必須です。今回の授業では固有感覚受容器である筋紡錘と腱器官、そして表在感覚の受容器が関わる反射を取り上げました。来週は脳幹が中枢として機能する反射を取り上げます。ここでは、特殊感覚の受容器が関わる反射をいくつか取り上げます。

感覚機能と運動機能を反射という現象を通じて結びつけて考える必要があります。いろんな知識を別々の引き出しにしまい込むのではなく、いつでもすぐに取り出せるようにしておきましょう。

第28回 視覚

先週の授業では視覚器の中で可視光線を受けてニューロンの興奮に変換する網膜を中心に取り上げました。

網膜は大きく2層で構成され、このうち神経細胞層はさらに3層で構成されています。この3層の構造が硝子体側からどういう順で並んでいるのか(積み重なっているのか)をしっかりと頭に入れておくように。言い換えると、細胞層を可視光線がどういう順に通過していくのかをしっかりと理解してください。

そして、可視光線は最後に視細胞に当たります。視細胞は大きく2つの部分からなっていますが、光が当たって反応が生じる部分はより奥に位置しています。視物質=光が当たって構造変化を生じる物質は、杆状体(桿状体)細胞がロドプシン、錐状体細胞がフォトプシンです。基本的には同じ反応が生じ、光が当たることによって視細胞は過分極します。

視細胞の過分極は神経節細胞の興奮を引き起こし、この興奮が視神経を通して視床へ運ばれ、さらに大脳皮質一次視覚野へ送られます。

意識している視野、今見えている「その点」からの光を受けた情報が脳内をどのように運ばれていくのかについて、来週少し補足します。

入射する光量の調節は交際を構成している2つの平滑筋とそれらを支配する神経系の作用として理解してください。運動機能のところでも同じ内容を対光反射として取り上げます。

今週は、運動機能、特に脊髄反射につて取り上げます。

第27回 平衡感覚と視覚機能

新年最初の授業は平衡感覚と視覚機能(構造と遠近の調節)を取り上げました。

平衡感覚はなかなか実感しにくいのですが、刺激を受けた後のしくみは聴覚と非常によく似ています。授業でも触れたように、元々は1つだった器官が進化の過程で重複してそれぞれが別の機能を持つようになったと考えられます。有毛細胞と内リンパの働きによっているという点で共通しています。ただ、平衡機能は中枢が1つではなく、むしろ的¥待った中枢がないという点で他の感覚機能と異なっています。運動機能、特に眼球運動などと一緒に考えることになりますので、そこで改めて見直しましょう。

視覚機能は平衡感覚と異なり、自分の体験に引きつけて考えることができるでしょう。遠近の調節は水晶体とその周囲の構造を基にして考える必要があります。来週は明るさの調節について考えますが、2つの機能には互いに関連がありますので、そのつもりで今週の内容を復習しておいてください。

終了後に半規管の機能について、頭部が水平に回転したときに、どのように反応するのかという質問がありました。間違った説明をしてしまったので、改めます。例えば、頭部が左回りに回転したとき(左回りの回転加速度が加わったとき)、水平半規管は左側がより強く興奮します。

第26回 可視光線の特徴

大雪で大変でしたね。中和医療で15年ほど授業で週1回通っていますが、今回のように大雪で授業に支障が出たのは3回目。単純に確率論的に考えればもっと少なくていいはずですが、よく当たります。台風のときに当たったことはないのですが・・・。

さて、今回は平衡感覚をとばして、視覚にイントロダクションをしました。視覚の適合刺激である「可視光線(可視光)」がどのようなものかを少し詳しく説明しました。日頃ほとんど考えないことも多かったと思いますが、我々人類が自然の性質をいかに理解し、克服しているのか(利用しているのか)、身の回りを見直すきっかけになれば幸いです。また、動物が「色」の感覚、認識を通して様々な情報を得ていることも分かってもらえたのではないでしょうか。

年明け第1回目は平衡感覚と視覚機能のうちから遠近と明るさの調節について考えます。それぞれの感覚器の構造、前庭や眼については解剖学ですでに学んでいる内容と重複しますので、機能の説明に直接関わる部分以外は割愛します。各自で復習をしておいてください。

それでは、皆さんよいお年をお迎えください。

第25回 聴覚

今回は聴覚器のしくみを取り上げました。構造は解剖学で学んでいるはずということで重要なところだけをピックアップして説明しましたが、不十分だと感じた場合は各自で見直してください。

はじめに聴覚器の適刺激である音波=空気の振動について簡単に説明しました。空気を構成する分子の疎密波としての縦波を、電気的な信号に変換するために進化は非常に大きな工夫をしています。

空気の振動を機械的な振動、液体の振動に変換した後、感覚受容器細胞である有毛細胞のもっている特殊な構造を生かして、細胞の脱分極を引き起こしています。しかも、はじめの音波の振動エネルギーと周波数に応じてその違いを感じる分けられるようにも工夫されています。プリントの図を説明を見ながらじっくりと考えてみましょう。構造と機能がいかに密接に結びついているかが理解できることでしょう。

次回は内耳にあるもう一つの感覚機能である平衡感覚をとりあげ、その後で視覚機能に入ります。

第23回 体性感覚野と痛覚の特徴、味覚

今回は最初に一次体性感覚野について取り上げました。部位局在を覚えるだけであれば簡単なことですが、重要なのは大脳の各半球が互いに対側半身の感覚を支配し、感覚が鋭敏な部位ほど大きな領域を割り当てられているという特徴を理解することです。後策路も脊髄視床路も三叉神経視床路も二次ニューロンが対側に交叉しています。したがって、右半球には左半身の情報が入力し、左半球には右半身の情報が入力しています。また、一次ニューロンからすべて一対一対応で興奮が伝達されると、一次体性感覚野には感覚受容器と同数のニューロンがあることになります。したがって、受容器の数が多い体部位に対してた数多くのニューロンが存在する、すなわち、より感覚が鋭敏であるということです。

内臓感覚については、痛覚だけを取り上げて説明しました。授業でも触れたように、他の内臓感覚は他の科目で学んでいるはずです。各自でしっかりと見直しておいてください。それぞれの期間、器官系の働きを考える上で不可欠です。またn痛覚に関しても補足しました。関連痛(放散痛)やオピオイド、痛覚過敏など、3年生になって改めて学習すると思いますが、国家試験でもよく出題されていますので、しっかりと見直しておいてください。

授業の進行がやや遅れているのですが、今回何とか特殊感覚に入りました。年内には味覚、嗅覚、聴覚、平衡覚を取り上げることになりますが、これらも、体性感覚と同様に、共通点と相違点があります。それらを整理しながら見ていくとわかりやすいのではないでしょうか。

第22回 体性感覚の伝導路、体性感覚の中枢

今週は体性感覚の伝導路を中心に、体性感覚の中の構成を取り上げました。

後策路、脊髄視床路、三叉神経視床路の3ルートで基本的に説明できますが、これら伝導路に共通する特徴は
一次〜三次の3つのニューロンがシナプス接続して構成されている。
一次ニューロンはの終末に感覚受容器がある。
二次ニューロンが必ず交叉する。
二次ニューロンが視床で三次ニューロンと接続している。
ということです。さらに、
三次ニューロンは視床から大脳皮質体性感覚野に投射しています。

三叉神経視床路は顔面など狭い範囲の感覚を支配していますから、ほぼ全身は後策路(後策-内側毛帯路)と脊髄視床路でカバーされています。この2つは上記の共通点に加えて、
一次ニューロンの細胞体は後根神経節にある
ことです。

また、相違点もはっきりさせておきましょう。
一次ニューロンと二次ニューロンが接続する場所、つまり二次ニューロンの細胞体がある場所が異なっています。
後策路では延髄、脊髄視床路では脊髄後角、そして三叉神経視床路では橋の主知覚核と延髄の脊髄路核です。また、
後策路では一次ニューロンのつくる神経線維が脊髄を上行しているのに対して、脊髄視床路では二次ニューロンのつくる神経線維が脊髄を上行しています。

プリントに図をつけましたが、必ず自分の手で描いて確認をしましょう。

脊髄小脳路については第10章運動機能で触れる小脳の機能のところでも改めて触れると思います。

脊髄網様体路は先週と今週、そして来週にもう一度「痛覚」について触れますが、これらの内容と合わせて考えられるようにしましょう。

「体性感覚の中枢」という場合、一次体性感覚野=中心後回だけを指すことが多いと思いますが、今回は視床も脳の一部であるという意味で、中枢に含めて考えました。したがって、「伝導路」と内容がダブっていますが、中継所としての機能は他の感覚機能、例えば聴覚や視覚についても同じ役割を果たしています。一次体性感覚野につては来週もう一度触れますが、対部位局在があるということ、そして、一次体性感覚野の割り当てられている領域の大きさ(面積)とその対応する部位の感覚の鋭敏さの関係をよく理解してください。

第21回 痛覚、固有感覚

今回とりあげた表在痛覚は非常に重要です。質的に異なる2種類の痛みの特徴とそれらの痛みを生じる刺激や受容器、受容器からの興奮を伝える神経線維について区別してしっかりと頭に入れておきましょう。

ポリモーダル受容器については来週もう一度補足しますが、多様な刺激に反応できるということとC繊維の自由神経終末に存在するということを合わせて考えると、進化的には最も古くに発生した感覚受容器の1つと考えられます。したがって、侵害刺激に対する受容器としても全身に広く分布し、あらゆる場所の侵害刺激を受容して痛みを感じさせます。このことは、痛覚=痛みを感じるということが生体を防御するために必要な感覚であるということを示していると思います。

このような古くに発生した感覚に比べると、後半で取り上げた固有感覚は比較的新しい感覚といえるでしょう。神経線維は最も伝導速度の大きな有髄線維ですし、その感覚もきわめて繊細です。ある程度からだが大きくなり、いろんな部位が別々に運動させて活動することのできる動物にしか必要のない感覚です。

筋紡錘と腱器官の両方を固有感覚のための受容器として理解してください。特に、それぞれが具体的にどのような刺激に反応するのか、あるいはどのような変化を検知しているのかをはっきりさせて、感覚神経を区別して理解しましょう。

後期のここまでの内容で分かったと思いますが、前期に学んだ内容の上に立って説明しています。今回の神経線維の分類や筋線維の構造など、できるだけ前期のどこを復習すればいいのかを示しながら進めていきますが、理解に自信のない場合は必ず振り返って、よく見直しをしてください。

来週は、表在感覚や固有感覚の受容器に生じた興奮がどのように、あるいはどこを通って中枢へ伝えら得れていくのかを考えます。

第20回 触圧覚と温度覚

今回は表在感覚のうち、触圧覚、温度覚、痒み、くすぐったさについて取り上げました。また、痛覚についてもその定義と表在痛の特徴を説明しました。

まずそれぞれの感覚の特徴、例えば、触圧覚とは皮膚の変形によって触圧点が刺激されて起こる感覚で、皮膚表面に軽く触れたときに生じる感覚が触覚で、、圧覚は圧迫や牽引によって生じる感覚です。触覚は、単にものが触れたことを知覚する感覚と刺激物の形、大きさ、感触や触れた体部位の正確な場所などを知覚できる感覚を分けて考えます。温度覚は温覚と冷覚にわけられ、同じ皮膚温でも温度が上昇していく時は温かく感じます。痛覚は質的に異なる2種類があります。それぞれの感覚について、できるだけ詳しくまとめておきましょう。

感覚機能は広くは神経系のはたらきの中に含めて考えることが多いと思います。したがって、感覚受容器の実体とそれぞれの感覚受容器からの情報(興奮)を伝える神経線維の種類も区別して頭に入れておきましょう。

さらに、触圧覚の受容器についてはルフィニ終末とパチニ小体を例に挙げて説明しました。また、温度受容器についても最近の報告を紹介しました。各感覚受容器はどのような刺激に対して反応しているのか、それぞれの感覚の特徴と合わせて考えられるようになるといいと思います。

第19回 感覚の特徴

今回は感覚機能に関する一般的な性質を取り上げました。
適合刺激は当たり前のようですが、化学物質のようにいくつかの受容器に対して適刺激となるものもあります。同じ物質が同じような反応を生じるわけではありませんが、ヒトへの進化の過程で獲得していった能力です。

感覚の投射は具体的な例を示した考えました。感覚機能を考える上で非常に重要な考え方です。

刺激の強さと感覚の大きさは、感覚機能が神経系の機能であるということを考えるとよく分かると思います。感覚が生じるためには「閾値」が存在し、刺激の大きさの変化を知るためには「弁別閾」が存在します。後半で取り上げた二点弁別閾も考え方としては同様です。感覚機能を考える上で常についてくる考え方です。
また、ウェーバーの法則も現実の問題を具体的に数式にするのは難しいかもしれませんが、弁別閾を理解する上でわかりやすいと思います。

来週以降、一つ一つの感覚機能を取り上げていきます。すべてにおいて、受容器への刺激がニューロンを興奮させ、これがどのニューロン、どの神経線維を通って中枢へ伝えられていくのかを考えます。そのためには、受容器の種類と一次ニューロンの関係をしっかりと理解している必要があります。受容器の構造と合わせて見直しておいてください。

表在感覚は身近でテストしやすいため、ヒトを対象として古くから研究されてきています。感覚点という考え方はヒトを対象とした研究の中から出てきたもので、その意味で有効です。その一方で、ヒトを対象とするが故に試せないこともあります。例えば、来週取り上げる「かゆみ」についての理解が進まなかったことなどです。感覚受容器の実体がどのようなものであるのかということは、動物実験や分子レベルでの解析の結果から明らかになってきました。授業ではこれらを織り交ぜて説明をしていく予定です。

第18回 筋線維の種類と運動単位

今回は筋線維を分類し、さらに筋線維をそれを支配する運動ニューロンをひとまとめにして考えたときに見えてくる特徴を考えてみました。

筋線維は大きく2種類、赤筋と白筋、遅筋と速筋と分けるのが最も一般的です。筋線維の疲労の程度を同時に考えることもできるため、この分類がいろんな解説書で取り上げています。しかし、ATPの産生方法や太いフィラメントをつくっているミオシンタンパク質の性質(ATPを分解する活性の強さや速度)に注目してみると、授業で説明したように3種類に分類できます。分子細胞レベルで考えるときにはⅠ型、Ⅱ型(AとB)に分類して考えた方が理解しやすいと思います。

他の科目で学んだ解糖系や酸化的リン酸化に関する知識が必要です。あわせて見直すとより理解が深まるでしょう。

プリントに載せた表を手がかりに、自分なりにまとめ直してみると、それぞれの特徴がよりはっきりとしてくるはずです。例えば、筋線維の直径、収縮の速度、細胞内のミトコンドリアやミオグロビンの量、グリコーゲンの量が、筋線維の種類によってどのように異なっているのか。あるいは、筋線維ごとの疲労しやすさとATPの産生方法の違い、など自分でテーマを決めてまとめ直してみるといいでしょう。

このことは、運動単位ごとの特徴を理解することにもつながります。

運動単位は実際の運動を考えるうえで重要な考え方です。その構成を理解した上で、神経支配比の違いと筋の性質、特徴をよく考えておきましょう。

第17回 筋のエネルギー産生

後期に入り時間割が変更になったこともあり、調子が狂ってしまいました。

後期第1回目の授業では骨格筋線維がどのようにATPを産生しているのかについて取り上げました。生理学Ⅱに学んだ内容を見直さないと十分に理解することはできないと思います。前期試験直後ですが、だいぶん忘れているようでしたので、改めて復習をしておくように。

筋線維でのATP産生について3段階で考えました。
ローマン反応はクレアチンリン酸からADPへリン酸基が移動してATPがつくられます。クレアチンキナーゼという酵素が働くことによって、1段階の化学反応でATPをつくることができます。全体として、後の反応ほどに大量のATPを産生することはできないようですが、とにかく速くつくることができます。

解糖系(非有酸素反応)はつくれるATP量は限られていますが、細胞内外に大量にあるグルコースを原料にできるという利点があります。そして、次回取り上げる、白筋線維ではこの解糖系によって大量のATPを産生して利用しています。

酸化的リン酸化(有酸素反応)=クエン酸回路+電子伝達系は本格的にATP産生を始めるために時間がかかりますが、三大栄養素である脂質(直接には脂肪酸)、タンパク質(同様にアミノ酸)、そして糖質(グルコース)のすべてを原料にして長時間にわたって大量のATPを産生できます。赤筋線維がこの方法でATPをつくっています。

筋の機能は次回途中できりがつくと思います。続いて、後期の内容である感覚機能に入ります。

第16回 筋原線維の構造、筋収縮のしくみ、興奮収縮連関

前期の最後の授業でした。今日取り上げたところまでを前期の試験は範囲とします。

筋の収縮のしくみは、すなわち筋原線維の収縮であり、筋節の収縮です。したがって、何度も強調したように筋節の収縮のしくみを考えることが、筋の収縮のしくみを考えることにつながります。そして、筋節の収縮を考えるには筋原線維の構造的な基本単位である筋節の構造を理解する必要があります。プリントにはやや小さめの図しか載せていませんが、自分で見やすい図を(何度も)描いてしっかりと頭に入れておきましょう。収縮の仕組みを理解することを前提しすれば、細いフィラメントと太いフィラメント、明帯、暗帯、H帯がそれぞれどのような関係にあるのかをよく理解しましょう。
そして、筋が収縮、弛緩したときにこれらの構造がどのように変化するのか、あるいは移動するのか、運動するのかを一つ一つ考えてみましょう。

最後に、興奮収縮連関は、神経筋接合部での運動ニューロンから筋線維への興奮の伝達から始まって筋原線維の収縮に至る一連の過程を指します。連関=couplingとはいくつかの反応が必ず組み合わさって生じるような現象に対して用いることが多いようです。したがって、興奮収縮「連関」とは、一連の過程が連続して生じます。いくつかの図を使って説明をしました。それぞれの図を見ながら声に出して説明してみましょう。どこかで説明が滞ったり、曖昧になったりしたら、まだ理解できていないということです。単に『図を見ているだけ』では絶対に理解できません。

第15回 筋系の機能と骨格筋の構造

前期は第5章まで進む予定でしたが、少し遅れおり、途中までで終わりそうです。今週と来週で骨格筋繊維の構造、特に筋原線維の構造と収縮のしくみを取り上げますが、ここまでが前期の試験範囲です。

はじめに説明した筋の種類、分類については生理学Ⅱで学んでいる器官、器官系の構造や機能とも関わっています。いろいろ質問をしましたが、すぐに思い浮かばなかったところは自分でよく復習をしておくように。他校では生理学全般を教えていますが、今週の授業で質問したような内容が答えられないと相当に厳しいです。

骨格筋線維の構造は、細胞の構造としては非常に特殊です。筋の最大の機能である収縮・弛緩のために特化していると言っていいでしょう。まずはこの収縮・弛緩のしくみを理解するところから始まります。したがって、筋原線維を中心に筋線維の構造を考えてみましょう。プリントに乗せたいくつかの図は今週の授業で説明しました。来週も同様の図を見ながら説明しますが、筋原線維の構造、つまりkがどのように細胞全体の横紋につながっているのかをよく理解してください。,


後期に入ったら、筋線維が備えているエネルギー産生機構=ATP産生機構についても取り上げます。

第14回 自律神経系の構造と機能

夏休み前最後の授業で、自律神経系について概観しました。すでに学んでいる循環器系や呼吸器系、消化器系の機能調節を理解する上でも重要な考え方です。今回の内容を手がかりに一つ一つ具体的に見直してみましょう。

自律神経系の求心性神経である内臓求心性神経は、様々な感覚受容器から中枢へ伸びている神経に対する総称です。具体的に各受容器や伝える情報の性質によって名称が付されているわけではなく、解剖学的に独立しているわけでもありません。授業で触れたように、すべてが脊髄神経や脳神経に含まれています。したがって、器官系の神経性調節に関わる受容器からの求心性神経がどの神経に含まれているのか、一つ一つ確認しましょう。

自律神経系の機能を理解する上では遠心性神経の働きを考えることが中心です。したがって、交感神経と副交感神経の構造や作用、器官機能の支配に関する特徴をしっかりと復習しましょう。

交感神経系と副交感神経系がともに2種類のニューロン・神経線維がシナプス伝達によって連絡し、標的器官・組織に分布しているます。それぞれの部位で利用される伝達物質と合わせて必ず頭に入れておいてください。受容体についても学ぶべきことは多いのですが、詳細は後期の最後に取り上げます。そして、それぞれが優位に作用したときに各器官、組織がどのような作用を発揮するのかを理解しておくことが最も重要で、国家試験でも高頻度で出題されています。これらは丸暗記する、あるいはできるものではなく、各器官、組織の機能と交感神経系、副交感神経系の作用を十分に理解した上で考えられるようにしましょう。

ところで、夏休みのレポート課題の文献は決まりましたか?シリーズ全体としては人体のほぼすべての機能に関するテーマが採られていると思います。書店にどの程度並んでいるのかによって実物を手に取れるかどうかはわかりませんが、Webサイトなども参考にしながら興味あるテーマを見つけてください。読解力は人によって差があるため一概に言えませんが、私が同じ課題に取り組むなら少なくとも3回、場合によっては5回くらい読まないと納得のいくレポートは書けないと思います。わからないことがあればいつでも質問していただいてかまいませんが、じっくりと時間をとって取り組みましょう。

第13回 興奮伝達の加重、神経伝達物質と受容体、神経回路、体性神経系

今週の中心は神経伝達物質と受容体、そして神経回路です。いずれもシナプスの性質、つまり興奮性シナプスと抑制性シナプスがどのようなものであるかを理解していることが前提です。何事も積み重ねですから、自分が何をどこまで理解しているのかを自分で判断して、必要に応じて振り返りながら進めてください。

さて、今後の勉強に必要な神経伝達物質はプリントにまとめました。うっかりとスライドを準備し忘れたため、やや説明不足になりましたが、プリントp124からp128までをよく見直してください。授業中にナメをあげた伝達物質についてはそれぞれの名称をよく頭に入れておいてください。今後、何度か出てくると思います。また、国試でも問われたこともあります。伝達物質と受容体の関係は「特異的」であるといいます。他では使わない言葉ですが、生理学や生化学など分子レベルで現象を考える分野ではよく使われています。生理学4で学ぶ免疫系の作用でも、抗体と抗原の関係として考えるときがあると思います。

受容体の仕組みについては神経筋接合部の機能や後期の感覚器系の中でも触れることがありますので、今のうちによく理解しておいてください。

神経回路は化学シナプスの仕組みがわかっていればそれほど難しくないはずですが、考え方はそれほどなじみのあるものではないでしょう。とはいっても、簡単な数学のようなもので、単純な論理学です。物事を順序立てて考えていくためのトレーニングと思って根気よく取り組んでください。こういうものの考え方がスムーズにできるようになると、生理学のような「仕組みを理解する」ことが苦ではなくなるのではないでしょうか。

来週で夏休み前の授業は終わりです。9月には2回あるだけ。レポートも含めて、疑問があれば今のうちに解決しておいてください。

先週紹介した夏休みのレポート用の参考文献は二村先生にお預けしましたので、ひつようであればみせてもらってください。

第12回 神経線維と興奮の伝導、シナプスでの興奮の伝達

やや遅くなりましたが、先週月曜日の授業の要点をまとめてみます。

解剖学でも学んでいるように、神経組織の構造はニューロンの細胞体や樹状突起などが多く集まっている部分と神経線維、特に有髄線維が多く集まっている部分では見た目が異なります。さらに、機能を考える上でも、両者は区別した方がわかりやすいことが多いため、灰白質と白質をしっかりと区別して考えます。脳と脊髄でそれぞれどこが灰白質で、どこが白質であるのか、自分で図を描いて頭に入れておきましょう。

神経線維は髄鞘の有無によって分けますが、互いの構造の違いを伝導の仕組みの違いに結びつけて理解しておきましょう。そうすれば、伝導速度による詳細な分類も単に名称だけの問題です。

化学シナプスでの興奮の伝達という現象に対する理解は、生理学を学んでいく以上、あらゆる場面で必要です。すでに心臓や血管の神経性調節について学んだと思いますが、ここでも興奮が伝達されて初めて効果が発揮されます。興奮性シナプスと抑制性シナプスの違いは、シナプス後細胞にどのような変化が生じたかによって生じます。脱分極と過分極という現象について不確かな場合は改めてよく復習してください。

シナプスでの興奮の伝達をうけて、シナプス後細胞に活動電位が生じるためには加重が必要です。

第11回 興奮の伝達、ニューロンとグリア

今日はやや体調が思わしくなかったため、あまり工夫もせずに説明するだけになりました。神経系の機能の概略の説明など、ややわかりにくかったかもしれません。早めによく復習しておいてください。

今回は「興奮の伝達」と「ニューロンの構造」と「グリアの構造と機能」を中心に説明しました。

興奮の伝達は、興奮の伝導とともに、ニューロンの機能の要です。生理学1&3で今後取り扱う内容のほぼすべての前提となる現象です。来週さらに詳しく説明しますが、シナプスの構造と伝達の基本的な仕組みをしっかりと頭に入れておくようにしてください。

神経系の構成は解剖学での内容と完全にオーバーラップしていると思いますが、これらも今後の学習の基本です。そして、ニューロンの構造は自分で図を描いて説明できるようにしておきましょう。また、グリアの種類、グリア細胞の機能は来週の授業でも取り上げます。血液脳関門については循環器系でも説明されるかもしれませんが、毛細血管の構造とあわせて見直しておきましょう。

第10回 脱分極と活動電位、興奮の伝導

先週の授業で取り上げた静止膜電位は、「細胞内外のイオンの分布」と「細胞膜を介した物質輸送」をもとにして考えました。今週のテーマである脱分極と活動電位も同様に、この二つの内容の理解を前提にしています。基本的な概念も具体的にいろんな問題を考えることによって理解が深まります。第3章で取り上げているないような、細胞膜に関するいろんな知識の応用問題として取り組んでください。

さて、脱分極という現象はニューロンに何らかの刺激が加わることによってイオンチャネルが開口することによって生じます。細胞にとって何が刺激であるのか、あまり具体的に説明できていないためわかりにくいと思います。授業でも触れたプリント98ページ以降の説明で理解できると思いますが、生体内で直接外部からの刺激を受ける細胞=ニューロンは感覚受容器です。また、活動電位を生じる最大の要因である電位依存性ナトリウムチャネルも電位変化という刺激に反応しています。

脱分極は細胞外から細胞内に陽イオンが流入することによって生じ、過分極は細胞内へ陰イオンが流入することによって生じます。この二つの概念を理解しておけば、活動電位という現象はそんなに難しくないと思います。プリントではいくつかの図を使ってやや詳しく説明をつけました。図を見ながら説明をよく読み、じっくりと考えましょう。

活動電位がどのように生じるのかが理解できれば、興奮の伝導はわかりやすいと思います。来週は「興奮の伝達」を取り上げますが、興奮の伝導の後に生じる現象ですから、今週の内容はしっかりと復習しておきましょう。

来週は、第3章5(2)ニューロンと筋細胞での興奮の伝達をスキップして、第4章神経系の基礎に入ります

第9回 小胞による輸送、膜電位

今週は細胞膜を通過する物質輸送のうち、先週取りあげられなかった二次性能動輸送と小胞による輸送(膜動輸送)を考えました。小胞によるエンドサイトーシスとエキソサイトーシスもATPを分解して生じたエネルギーを利用していますので、能動輸送に含めて考えてもいいのですが、輸送の規模が大きく異なるため、別の方法として取りあげました。

食作用については授業でも例を挙げたように、生体防御機構としても非常に重要ですし、生体内での新陳代謝を図る上でも重要な機能です。食細胞といい場合には、一般的にはマクロファージと好中球ですが、破骨細胞やミクログリアなどマクロファージと同様の機能を持つ細胞はいくつか知られており、授業でも取りあげられると思います。

また、エキソサイトーシス(開口放出)は来週または再来週の授業で取りあげる神経伝達物質の放出のためのしくみとしても重要です。

後半では、前期の重要なテーマである興奮性細胞の特徴に入りました。ニューロンと筋細胞という2種類の興奮性細胞がどうして『興奮=膜電位の大きな変化」を生じるのかを理解することは、ニューロンと筋細胞の機能を考えていく上で欠かすことができません。特に、神経系はニューロンが興奮を次々と伝達していくことで機能しています。

膜電位という概念は必ずしもわかりやすいとはいえませんが、膜の内外のイオンの組成やイオンチャネルについて改めて復習をしてよく考えて下さい。また、電流や電圧など、これまでにどこかで学んだ知識も必要です。乾電池の電圧を忘れているようではだいぶ怪しいかもしれませんが、必要であれば昔の教科書を使って、あるいは本屋さんで何かを探して、復習をして下さい。

来週の授業では「膜電位」の理解を基にして、細胞が興奮するという現象について考えてみます。

第8回 受動輸送と能動輸送

今週は細胞膜の機能のうちで、すべての細胞の共通する膜輸送=細胞膜を通過して、細胞内外に物質が移動するしくみを取りあげました。大きく3種類に分類して考えるのが一般的です。前半の内容からある程度理解できたと思いますが、細胞内外はすべて水溶液です。したがって、溶質と溶媒である水が移動し、その物質の性状にふさわしい移動方法が準備されています。

物質は濃度や電荷に勾配、つまり高低あるいは偏りがあると、自然に移動します。受動輸送は、このように勾配という自然に備わった状態がそのままいかされた方法です。拡散と浸透は溶質が移動するのか溶媒が移動するのかの違い。拡散には移動する物質の性質によっていくつかの方法がありますが、浸透は水チャネルを通過する移動だけを頭に入れておけばいいと思います。

浸透という現象については少し時間を割いて説明をしました。やや考えにくいところもありますが、図を見ながらよく復習をして下さい。

能動輸送は2種類あります。今週はそのうちのポンプについてだけ説明をしました。ナトリウム・カリウムポンプは今後の授業の中でも何度か取りあげます。プリントで説明をした機能をよく理解して下さい。

来週は能動輸送のうち、取りあげられなかった二次性能動輸送と小胞による輸送を説明します。プリントではその後で、いくつかの細胞の特徴を列挙していますが、ニューロンだけを取りあげて説明し、第3章:興奮性細胞の特徴に入ります。

第7回 遺伝子発現

今回は遺伝子発現について、遺伝子の構造から転写、翻訳、タンパク質の輸送までを考えました。

長年、何らかの形で遺伝子にかかわって研究を続けてきましたが、遺伝子の概念はこの10年で大きく変化しました。

以前は、遺伝子とは単にタンパク質のアミノ酸配列をコードする領域と考え、ゲノムの約2%程度を占めているにすぎず、DNAのほとんどがジャンクであるとされていました。しかし、DNAのほとんどの部分がRNAに転写されていて、トランスファーRNAだけではなく、さまざまなRNAが生物学的に重要な機能を担っていることが明らかになってきました。したがって、生物学的な機能を担っているのだからこれらも遺伝子と考えてもいいのではないかと考えられています。

授業ではタンパク質のアミノ酸配列の情報を保存している領域を中心に遺伝子を考えて、『約30000個』としました。今後さらに概念が変化していくかもしれません。皆さんも、常に勉強する姿勢を失わず、さらに柔軟な思考を維持していきましょう。

転写や翻訳のしくみは教科書の内容を大きく越えて説明をしました。テレビの一般向けの特集番組などでもかなり突っ込んだ説明をすることがあります。治療家といえど、患者さんからみれば『専門家』です。今回の授業内容程度は理解しておきましょう。

プリントの図を見ながら自分で説明をしてみるとよく身につくと思います。DNAとRNAでの塩基の使い分けや、翻訳に関わる小器官、mRNAの振る舞いなどは現象全体の重要なポイントですし、国試でも問われています。このあたりを中心にしっかりとおさらいをして下さい。

今年卒業した学生の1人が、重い病気のために高度医療による治療を受けることになり、医者がいろんな説明をしてくれたそうです。そのときに、DNAやRNAなどの言葉を使って説明されたようで、その学生は授業で学んだ内容でいろんな質問をしたら驚かれたと言っていました。


来週は、物質が細胞の内外を移動するときに、どのように細胞膜を通過していくのかについて取り上げます。

第6回 DNAの複製と染色体、遺伝子

今週はDNAとはどういうものかを、その構造、染色体の構成、そして遺伝子の実態として考えてみました。

細胞分裂については解剖学でも学んだかもしれません。また、高校で生物を履修していればかなり詳しく説明を受けたと思います。本来は、生理学でも取りあげるべきテーマですが、時間の都合もあり染色体を中心に考えるだけで、簡単に済ませました。したがって、重要なことは体細胞分裂における染色体の形成と分配です。

染色体の数が生物の種によって異なること、そしてヒトはいくつあり(~本と数えます)、どのような構成になっているのか、これらは社会人として常識にすらならない知識ですから必ず理解をしておくように。
減数分裂については全く説明しませんでしたが、減数分裂によって生じる生殖細胞と他の体細胞を染色体の違いとして理解しておくとわかりやすいでしょう。その上で、
「男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子である」
という問に対しても具体的に説明できるようにしておきましょう。

DNA
(デオキシリボ核酸)の構造については『生理学のための化学』をよく読んで、また、興味のある人は他の教科書なども参考にして理解して下さい。DNAが半保存的複製によって複製されるしくみも、来週説明するRNAへの転写がおこるしくみも、すべてDNAの構造によって説明することができます。特に、塩基の種類、相補的な塩基の組み合わせを分かっていないと複製や転写という現象は理解できません。

授業で配布した「一家に一枚ゲノムマップ」は『一家に一枚周期表』と同様に科学週間の企画として作成されました。これはヒトのもつ代表的な遺伝子とその染色体上の存在位置を記した(マップした)図(マップ)です。ピックアップして説明されている遺伝子のほとんどは、今後の解剖学や生理学、あるいは臨床の科目で取りあげられるタンパク質のアミノ酸配列をコードしています。遺伝子として取りあげられることは少ないでしょうが、何らかの形で学習する内容を含んでいます。A3版にプリントしましたがもちが小さすぎて読みにくいと思います。本来はA2版またはA1版で提供されています。Webからダウンロード(左端にURLが記載されています)できますので、必要であれば拡大してみてください。また、名古屋市科学館のショップでも販売されていると思います。

第5回 細胞小器官

GWで1週間あいてしまいましたが、これまでの内容が抜けてしまっていませんか? 

生理学に限りませんが、何事も積み重ねです。わずか1ヶ月とはいえ、これまでの内容をしっかりと蓄積しておかないとこれからが大変です。特にはじめが肝心ですから、箍(たが)が緩んでいたら締め直してください。

今日は細胞小器官を取りあげました。一つ一つを解説しませんが、プリントの図をよく見ながら自分なりに表などにまとめておくといいでしょう。

細胞小器官の機能だけを取りあげて丸暗記しても意味はありませんが、しっかりと理解できていると今後いろんな組織や器官の機能を具体的に考えるときにわかりやすいと思います。授業の中でも滑面小胞体やリソソームの機能を例にして、器官や組織のはたらきにおける細胞小器官の役割を紹介しました。このように、今後の学ぶさまざまな内容を結びつけていくようにしましょう。

第4回 ATP、細胞膜と細胞核

最初に生体で生じるさまざまな化学反応でエネルギー源として利用されるアデノシン三リン酸について説明しました。ほぼすべての生体反応に関わっていると考えて差しつかえありませんが、具体的にどのような形で関わっているのかはその都度説明します。まずは名称と略号、そして、生体の化学反応でエネルギーを移動させるために必要であるということを頭に入れておいて下さい。

先週説明した、同化反応や異化反応でのエネルギーの移動もATPを介していることがほとんどです。

さて、これから本格的に生物あるいは人体に迫っていきます。生理学2では全身を循環する血液やその循環機能を担う心臓を中心とした循環器系(心臓血管系)を学んで「人体」と実感していることと思います。生理学Ⅰでは、階層性にしたがって生物あるいは人体を考えたときに、その基本単位となる細胞の構造と機能についての基本的な内容を確認します。すべての細胞に共通する性質を一通り考えられるようにしたいと考えています。

今回は、細胞の一般的な特徴と、細胞の基本的な構造である細胞膜と細胞核を取りあげました。

「増殖」と「分化」という言葉は普段はあまり使わないと思います。英語ではそれぞれ、proliferation、differentiationといいます。1種類・1個だった細胞がどのようにして300種類・60兆個になり、さらに、決められた構造と機能を必ず持ちうるのかはまさに「生命の神秘」であり、そのしくみを明らかにすることは生命科学の目標です。授業でもできるだけこうした問題に触れる機会をつくりたいと思います。

細胞を細胞外と隔てる細胞膜は単に「境界としての膜」であるというだけでなく、細胞が生きていく上で必要な多くの機能を備えています。この機能を考える上でも、今回説明した「脂質二重層」と「流動モザイクモデル」はどうしても理解しておく必要があります。

まずは、細胞膜の基本構造である脂質二重層とその大部分を占めているリン脂質分子の構造とその特徴をよく理解して下さい。細胞の内外は基本的には「水」です。したがって、この水との間の関係がどのようになっているのかを中心に考えてみるといいでしょう。

細胞膜が「なぜ」リン脂質やその尾部の周囲にあるコレステロールによってつくられているのか、その必然性については「生理学のための化学」でやや詳しく説明をしました。一度じっくりと読んで下さい。

細胞膜にあるタンパク質の存在様式はさまざまです。例えば、完全に埋没するような場合、細胞内外に貫通しているような場合、細胞の内側あるいは外側にだけ突き出ている場合、あるいは細胞膜の細胞内側や細胞外側にわずかに触れているだけという場合。プリントで名称を挙げた「内在性」、「膜貫通」、「膜周辺」など存在様式オwもン台にするときには区別するための名称を用います。授業では改めてこれらの名称を使って説明することはないかもしれませんが、自分で勉強するときの参考にして下さい。

細胞核についてはあまり説明できませんでしたが、プリントの説明と図によりながら「核膜」、「膜膜孔」、「染色質」を確認しておいて下さい。この後、細胞の分裂、DNAの複製や遺伝子発現について考えるときに細胞核に関する理解が必須です。

第3回 ホメオスタシスと体液

少しは慣れてきたでしょうか? 

今週は「生体の恒常性」について、体液の組成を中心にして考えました。今回説明した具体的な組成がどのように維持されているのかを学ぶことは生理学の重要項目の1つです。しかし、まずは正常な体液がどのような組成で構成されているのかを知っておきましょう。

授業で説明したように、最も多いのは電解質=イオンです。細胞内液と間質液、血漿のそれぞれでどのイオンが多く含まれているのか、あるいはどのイオンが少ないのか、しっかりと頭に入れておくように。プリントのグラフをよく見ながら一度自分の「口」で説明してみましょう。

今回はイオンではあっても他とは異なる特徴を持っている水素イオンの濃度について特別に説明をしました。水素イオンがどのような構造をしているのか、また、その濃度の表現のしかた(pH)については中学校の理科や高等学校での化学、あるいは「生理学のための化学」を参考にして下さい。今回は体液の代表として血漿のpHについて触れました。生理学を学ぶ中ではホメオスタシスが維持された状態を具体的に考えていきますが、血漿(正確には動脈血の血漿)のpHその中で最も重要な要素です。緩衝系の具体的なしくみは血液や呼吸器系、泌尿器系で学ぶことになります。

電解質濃度を保つしくみや水素イオン濃度を保つための緩衝系のしくみなど、ホメオスタシスを維持するためにはたらいているすべてのしくみは負のフィードバック(ネガティブ・フィードバック)機構によって調節されています。いくつかの例を挙げて説明しましたが、一般的な考え方をよく身につけておきましょう。化学反応の概念も同様で、具体例は今後学んでいきますが、一般的な考え方が分からないと全く理解できませんので、よく復習しておいて下さい。

第2回 階層性:外皮系、内部環境の恒常性

申しわけありません。サマリーを創っておきながらアップしておりませんでした。改めて先週の授業のまとめです。

第1回目の授業では生物のからだ、生体の構造には階層性があるということを学びました。第2回目では、外皮系を取りあげて、実際にどのような階層構造になっているかを考えました。


自分の外皮、直接には表皮を毎日目にしています。多少はわかりやすいのではないかと思います。外皮系という器官系は、皮膚という器官とそれに付属するいくつかの器官から構成されています。付属器官は、一つ一つは皮膚よりも小さいですが、いずれも外皮系としての機能を全うする上で必須です。皮膚という器官は表皮と真皮という2つの組織から成り立ち、表皮は上皮組織、真皮は結合組織に分類されます。組織には、その組織を構成する細胞の形態や細胞間の物質などによって分類することができます。表皮と真皮について構成する細胞や細胞間の物質をいくつか示して説明をしました。飛ばしてしまった内容もありますが、自分でよく見て、その違いを理解しながら、組織の構造を考えるきっかけにして下さい。

細胞と一言にいってもいろんな種類があり、それぞれ形態も機能も全く異なります。表皮と真皮についていくつか細胞の名称を挙げて機能を説明しました。構造についてはあまり説明しませんでしたが、今後の授業でさまざまな組織を学ぶ中で、いろんな図を見ると思います。それぞれにある程度形態が判別できるような図が描かれているはずですから、一つ一つをよく注意してみるようにしましょう。

階層性の最も下位、最小のレベルである物質=分子や原子の詳細は『生理学のための化学』に譲ります。できるだけ早く目を通して、何が分かっていて何が分からないのかをはっきりさせましょう。もちろん、分かっていないことは解決する必要があります。そして、概念とともに、いくつかの元素記号を知っていることも必須です。

授業では元素についてだけ一覧表で示しました。ほんの入り口ですが、配布した周期表とともにできるだけ日常生活の中で考えられるようにしていきましょう。

最後に『内部環境の恒常性』、『ホメオスタシス』という考え方を説明しました。考え方そのものは何となく身に付いていることかもしれませんが、『生理学』を学ぶ以上、正確な概念と言葉、それに関わる人物や歴史を知っておく必要があります。また、来週は『ホメオスタシス』の概念を体液を実例として取りあげながら具体的に考えます。

第1回 イントロ、生物の階層性

年度最初の授業はいかがでしたか? クラスによっては、文字通りの「最初の授業」でしたが、やや抽象的な話ばかりになってしまいました。来週からはもう少し具体的に「生物」あるいは「人体」を考えていきます。高校までの科目では、理科、特に生物と化学が土台ですから、まずは身の回りの自然や生き物、物質に目を向けるところから始めてみるといいと思います。注意深く見てみると、いろいろなもの見えてくるはずです。

さて、今日は生理学がおおよそ何を目的としているのかを簡単に説明しました。ここで説明した2つの考え方、生体の恒常性と生物の階層性という考え方は生命現象を考えていく上で最も重要な概念です。常に座右に置くつもりで、見直して下さい。

生物の階層性という概念は、「細胞」が生物の基本単位であるということと結びついています。ヒトの身体を構成する約300種類、約60兆個の細胞の機能を考えていく上で分子レベルでの理解は不可欠ですし、1個の細胞に注目すると周りの細胞との関係がいかに重要かが見えてきます。この細胞同士の関係を考えることが組織を考えることであり、さらには器官、器官系の機能を理解することにつながります。

組織の構造や種類、器官の構造については解剖学でも学ぶことになると思いますが、来週の授業で外皮系をモデルにして簡単に考えてみます。

プリントの追加のような形で配布した「生理学のための化学」はよく読んで下さい。一部に誤字脱字、図表の番号違いなどがありますが、十分に内容は理解できるはずです。一部授業でも解説をしますが、基本的には自学自習できるような内容になっていると思います。今後の学習の土台作りですので、時間がかかっても必ず取り組んで下さい。わかりにくいところがあればいつでも質問して下さい。また、次回か次々回に正誤表は配布するようにしますが、気がついたところがあれば順次教えて下さい。

第31回 自律神経系による器官機能の調節

最終回でしたが、残った範囲が広いためかなり駆け足で説明することになりました。『読んでおいて下さい』とか「みておいて下さい」という部分が多かったのですが、本当に自分でよくみておいて下さい。プリントは要点をまとめるという性格上、箇条書きが多いためわかりにくいところがあると思います。全体を理解してから、改めて1度は自分が講義をするようなつもりで、声に出して説明をしながら見直すと、自分の分かっていることと分かっていないことがはっきりすると思います。

さて、今回は自律神経系、特に2つの遠心性神経による器官、器官系の機能の調節について取りあげました。交感神経と副交感神経は常時自発的に活動しているため、両者によって二重支配されている器官に対しては、2つの神経系のうちより優位に活動している神経系の作用が発揮されます。そして、2つの神経系に作用は互いに拮抗しています。

交感神経系は全身性に作用を及ぼし、より代謝が盛んになるように、つまりATP産生やエネルギー消費を増大させるように働きかけて身体活動を支援すると同時に、エネルギー貯蓄を促進するような機能を抑制します。一方、副交感神経系の作用は交感神経系の作用に比べると限局しており、身体のエネルギー消費を抑制するため、身体活動を活発にするというよりもリラックスした状態をつくり出そうとします。このとき、全身の器官ではエネルギー貯蓄を促進するような機能が促進しています。

プリントにある表を見ながら、伝達物質/受容体の組み合わせと一緒に、各器官、組織ごとによく考えてみましょう。

交感神経系と副交感神経系のさまざまな器官、組織への作用、効果については国試でも必ず問われます。授業中にも触れましたが、けっして丸暗記しようとするのではなく、それぞれの神経系のはたらきから出発して、各器官、組織の機能と結びつけて考えられるようにしましょう。

後半では自律神経系の中枢、特に脳幹と視床下部について考えました。

脳幹にある中枢の多くは生理学Ⅱ&Ⅳで学んだ内容ですが、循環器系、呼吸器系、消化器系などがどのような神経性調節を受けているのか、中枢の機能という観点から改めて見直しておいて下さい。多くは感覚受容器から内臓求心性神経(感覚神経)を介して中枢へ興奮(情報)が伝わり、交感神経あるいは副交感神経を介して効果器であるさまざまな器官、組織が反応する反射です。今回説明できませんでしたが、第10章の最後に簡単に触れている内臓-内臓反射、つまり求心性神経と遠心性神経がともに自律神経系である反射です。

視床下部の機能はこれまでに学ばなかった内容があったかもしれません。体温調節や飲水中枢の機能などはこれまで他の科目で学んだ内容と合わせて考えられるようにしておきましょう。また、概日リズムや摂食(満腹・空腹)に関する中枢の機能はまだよく分かっていないことが多く、現在活発に研究が進められています。今後、ニュースや新聞などでも新しい知見が報告されると思いますので是非注目をして下さい。

第30回 大脳皮質の機能と随意運動の伝導路、色覚

今回は運動機能の調節のうち、大脳皮質の運動性皮質とそこからの伝導路について取りあげました。

運動性皮質は大きく3つの領野に分けて、その機能が調べられています。一次運動野の機能はかなりはっきりとしていますが、それに比べると運動前野と補足運動野は曖昧です。

運動前野と補足運動野について最新の研究成果を十分にフォローできておりませんが、両者がそれぞれ異なった機能を持ち、一次運動野から出力される情報をつくる立場にあることは間違いなさそうです。国試で問われることはないでしょうが、さまざまな障害を持つ患者さんの症状を理解する上で必要な知識だと思います。是非自分なりに勉強する時間をつくるようにして下さい。

一次運動野は中心前回にあり、一次体性感覚野と中心溝をはさんだ位置にあります。その特徴は一次体性感覚野と同様で、対側を支配し、体部位局在も全く同じように並んでいます。この後で取りあげた伝導路と合わせて理解して下さい。

中心前回のうちで大きな部位を割り当てられている体部位の筋に対して、より多くの運動ニューロンからの神経線維が分布しています。そして、これら運動ニューロンに対して、一次運動野の広い領域=多量のニューロンからの神経線維が接続していることになります。

また、一次運動野と一次体性感覚野の違いを挙げておくと、一次運動野では大脳皮質外側下部(側頭葉との境界に近い部分)に、"Vocalization=発声"、"Salivation=流涎(りゅうせん)"、"Swallowing=嚥下"、"Mastication=咀嚼"などの機能による割り付けがされていることです。全体の中でかなり大きな部位が割り当てられていますが、ヒトにとって顎や舌などを使った一連の運動が以下に重要であるか、あるいは大きな意味を持っているのかを示しています。

随意運動の伝導路である皮質脊髄路と皮質延髄路もこの一次運動野から発しています。っぷりんとの図をよく見ると分かりますが、皮質脊髄路は頭頂部付近、すなわち体幹や四肢に対応する領域から発し、皮質延髄路は下部、すなわち顔面から下顎、頸部にかけてに対応する部位から発しています。一次運動野の領野の面積=ニューロンの数とすると、上にも記したようにそれぞれの部位から発する伝導路の規模を推し測ることができると思います。

皮質脊髄路と皮質延髄路の走行についてはプリントの図の通りです。1度自分で図を描いて頭に焼き付けておきましょう。

最後に色覚について簡単に説明しました。網膜・錘状体細胞の特性を理解してもらえればと思い取りあげたのですが、時間も少なくかえってわかりにくくなったかもしれません。色盲が生じるメカニズムについては多少なりとも遺伝学を理解していないとわかりにくいと思います。次回(木曜日)に追加プリントを配布します。説明する時間はありませんが、1度自分で考えてみて下さい。

次回はカリキュラム上はエキストラです。内容は重要ですが、気楽にやりましょう。

第29回 脳幹と小脳、大脳基底核の機能

期末試験の結果を返却できず申しわけありませんでした。

さて、今回は運動機能の中枢のうち、脳幹の姿勢調節をはじめに取り上げました。やや舌足らずな説明になってしまいましたが、それぞれがどのような刺激によって身体のどの部分が反応するのかを理解しておきましょう。2年生でもう少し詳しく勉強できると思いますが、生理学では受容器の性質や反射弓をよく見ておいてください。

小脳と基底核についてはやや抽象的な説明しかできませんでした。将来、いろんな運動失調をもつ患者さんと出会うことになると思いますが、原因に対する知識の幅が広いほど治療の幅も広がると思います。是非いろんな自分で異論案問題を設定して考えてみてください。

授業の最後でジストニアという疾患について取り上げました。以前に
ここで少し紹介しましたので、時間のある方はご覧ください。

第28回 脊髄反射、脳幹による運動調節

試験前としては最後の授業でした。前半は脊髄反射として、自原抑制と屈曲反射・交叉性伸展反射を取りあげました。

自原抑制は、伸長反射・拮抗抑制と連続する現象ですが、受容器、求心路が異なります。遠心路、効果器は同じですが、生じる反応、効果は全く逆。このあたりをはっきりさせられるように、それぞれの反射弓を比較してみるといいでしょう。

合わせて、筋紡錘や腱器官の構造と機能も考えられるようにしておきましょう。

今日配布したプリントに比較できるような表を載せました。自分で空欄を埋めていって下さい。解答では、「拮抗抑制」の効果器とその反応が「拮抗筋の収縮」となっていますが「拮抗筋の弛緩」の誤りです。

屈曲反射と交叉性伸展反射はそれぞれの役割を理解した上で、後レらも反射弓をよく整理しておきましょう。この2つは受容器と求心路は共通しています。表在感覚全般が刺激となり得るという点では、よい復習の材料です。中枢である脊髄での介在ニューロンがやや複雑です。そして、遠心路と効果器の違いを区別できるよう見直しましょう。

後半は脳幹の機能のうち、脳神経かが関わっている運動反射をいくつか取りあげました。特に、対光反射(瞳孔反射)と前庭動眼反射の2つは、感覚器の最後に学んだ視覚機能、眼球運動が関わった反射です。わかりやすいと思いますが、関連させてよく見直しておいて下さい。

前庭動眼反射では平行感覚器の機能、役割を考える上でも役立つと思います。1度図を見ながら反射弓を説明してみましょう。少なくとも、頭部の運動に対してどのように遠心路と効果器が反応するのか、さっと判断がつくようにしておきましょう。

後期は時間の都合もあり、予定した範囲の途中までしかすすめませんでした。試験問題としてもやや偏った内容になってしまいますが、小テストや過去の問題をよく見直して、重要な現象や概念をしっかりと理解して、基本的な知識を正しく積み上げていけばどんな問に対しても正しい解答を得ることができます。しっかりと勉強して下さい。

第27回 視覚の伝導路、脊髄反射

前半は視覚の伝導路を説明しました。大まかに通過ポイントをつかんだ上で、視交叉で交叉する視神経と交叉しない視神経が網膜上のどこから発しているかをしっかりと理解して下さい。プリントの図を見ながら、自分で説明できるようにしましょう。

視野のどの部分が網膜のどの部分に映っているのかも一緒にして、1度自分で図を描いてみるとすぐに理解できるのではないでしょうか。

後半は運動機能のうち、脊髄反射を取りあげました。脊髄の構造についても復習をしましたが、あやしいと思ったら自分で復習をするように。

伸長反射と拮抗抑制は、臨床的にも重要であると同時に、反射あるいは反射弓を考えていく上での基本的な要素を含んでいます。いずれも自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

第26回 視覚

今週は遠近の調節と明るさの調節という、水晶体と虹彩・瞳孔のはたらき、そして光受容部である網膜、特に視細胞の構造と機能を取りあげました。

遠近の調節は先週の最後で説明した内容と連続しますが、水晶体の厚みを変化させることによって光の屈折度合いを変化させ、ある距離から入射した光をうまく網膜に焦点させることができます。プリントでは「屈折異常」という言葉を使いましたが、近視の多くは眼球の前後径が長くなっており、自らの眼球の長さに合うように屈折できないという意味です。

水晶体には弾性があり、外部から力がかからなければ丸みをおびる性質があります。そして、周囲の毛様体(毛様体筋と毛様体突起)は水晶体の周囲を取り巻いています。毛様体筋が収縮すると、水晶体を取り巻く輪のような構造が縮小して、水晶体を引っ張る力が減少します。この結果、水晶体は自身の弾性で丸くなります。しかし、遠くを見るときには水晶体の周囲にある毛様体筋が弛緩して水晶体は全方向に引き伸ばされるため、扁平になってしまいます。

矯正のためのレンズの形状も簡単に説明をしました。少なくない人が日常的に使っている器具ですから理解しておくように。

明るさ、すなわち眼に入る光量の調節は虹彩をつくっている2種類の筋の収縮と弛緩によっています。それぞれの支配神経の種類と一緒に頭に入れておいて下さい。

小テストのBで、虹彩は遠近の調節時に変化して瞳孔が縮小すると注意書きをしました。上で説明した水晶体の周りの毛様体筋は動眼神経の副交感神経支配で、瞳孔括約筋と同じです。したがって、毛様体筋が収縮する、つまり、支配神経である副交感神経が興奮するわけで、瞳孔括約筋も一緒に収縮してしまうようです。

後半に取りあげた網膜については、構造は解剖学でも学んでいると思いますが、神経層の構造はよく見直しましょう。角膜・水晶体・硝子体と通過してきた光が網膜に当たって、網膜の細胞層をどのように通りぬけて視細胞にあたるのか、図を見ながら確認しておいて下さい。

視細胞の機能が重要ですが、説明がやや概略的でしたので、ややわかりにくいかもしれません。感光物質であるロドプシンの構造変化が細胞の膜電位を変化させ、これが視神経の興奮につながっているところをよく見直しておいて下さい。

ステレオグラムや盲点は1度試しておくといいでしょう。ステレオグラムはやり過ぎると気分が悪くなるので注意して下さい。

第25回 平衡感覚の伝導路、視覚(視覚器の構造と可視光線の性質)

前半は平衡感覚の続きで、伝導路を簡単に説明しました。

嗅覚同様に、ヒトの感覚の中では原始的なしくみが残っているのか、他の感覚のようにすっきりとした伝導路ではありません。感覚系の中枢をほとんど素通りするように直接運動を担う部分とつながっています。このようなところが、感覚としてわかりにくいということになっているのでしょうし、障害などの現れ方がわかりにくいことにつながっているのかもしれません。次に勉強する「運動機能」で取りあげる眼球運動などで、もう一度触れます。

後半は視覚でした。特に視覚器の構造とか可視光線=電磁波の性質、そして水晶体による遠近調節を取りあげました。

視覚器の構造は解剖学で学んだことと合わせて、復習しておくといいと思います。機能を考えながら構造を見直すとよく頭に入るのではないでしょうか?

電磁波=光はだいぶ急いで説明してしまったのでわかりにくかったかもしれません。気になることがあればいつでも質問して下さい。また、追加で配布したプリントはざっと見ておいて下さい。色の認識についてはいったん飛ばして授業を進める予定ですが、後期試験後に時間をつくって説明します。そのときに、改めて可視光線の色について触れようと思います。

遠近調節はやや中途半端な説明しかできませんでした。来週おさらいをします。

第24回 聴覚のしくみと平衡感覚

新年最初の授業で、教室もまだ寒くて大変でしたね。落ち着いて話を聞いたり、考えたりできないところもあったかもしれません。改めてゆっくりと見直しておいて下さい。

さて、前半は聴覚器での刺激の伝わり方を考えました。空気の振動である音波がニューロンの電気的な興奮へ、どのようにして変換されていくのかというしくみです。詳細は繰り返しませんが、聴覚器、外耳、中耳、内耳の構造を確認した上で順番に追いかけてみるといいでしょう。一つ一つ組織、部位を通過するたびにの振動が変換されていき、最後には有毛細胞の感覚毛の屈曲に結びつきます。感覚毛の屈曲が感覚毛の頂点にあるイオンチャネルを開口させ、その結果カリウムイオンが流入し、さらに脱分極・受動電位を引き起こすことにつながっていきます。

複雑なしくみではありますが、非常によくできています。音の大きさや高さの違いもこのしくみを使って感じ分けることができます。

聴覚器の伝導路は簡単にしか説明できませんでした。音源定位について補足しましたが、聴覚の伝導路を特徴を合わせて考えるとわかりやすいと思いますので、理解を深める意味でプリントの説明をよく読んでおいて下さい。

平衡感覚は分かりにくい感覚ですが、視覚と連動してはたらいているという点で、車酔い(動揺病といいます)を例に簡単に説明しました。分かってもらえたでしょうか?

構造的には半規管と耳石器の2つあり、役割は異なっていますが、ともに内リンパが流動することによって有毛細胞の感覚毛が屈曲し、カリウムイオンがイオンチャネルを介して細胞内へ流入することによって脱分極が生じます。

進化的には、前庭器官が先に作られ、内リンパをもつ膜迷路の構造が重複するように後聴覚器がつくられたのでしょう。したがって、刺激を受容するしくみはよく似ています。

後期は試験までの授業数があまりにも少ないため、2回振り替えで授業を入れていただきました。運動機能まで進む予定です。

第23回 嗅覚の伝導路、聴覚(音波と聴覚器の構造)

今年最後の授業でした。本来であれば、年内に運動機能を終えるところまで進みたかったのですが、後期はハッピーマンデーが多く、やや中途半端なところで切れてしまいました。忘れないようにはやめに1度見直して、さらに年初めにもう一度おさらいしておいて下さい。

さて、前回の授業で嗅覚の伝導路だけが残ってしまったために、はじめに簡単に説明しました。今後、聴覚や視覚の伝導路を学んだ後で、すべての感覚の伝導路を自分なりに比較して下さい。自ずと分かってくることですが、嗅覚は他の多くの感覚と比べると、左右の交叉視床での中継の有無、、そして大脳新皮質に一次感覚野があるかどうか、など、大きな違いがあります。

嗅上皮から嗅神経によってすぐに大脳とつながり、さらに大脳辺縁系のいくつかの部位に情報が送られて処理されています。他の脊椎動物や他の哺乳動物では非常に重要な感覚で、動物、特に脳の進化と関わらせて考えると、やや特殊に見える伝導路ができあがったのもうなずけます。

授業では飛ばしましたが、プリント260ページ上の図では、伝導路ではなく、嗅物質の受容体について取りあげました。プリントだけではややわかりにくいですが、ヒトとマウスを比べると、マウスの方が受容体の数が多いことが分かります。つまり、それだけ多くの匂いを識別できるということです。

後半の聴覚では、適合刺激である音波と聴覚器の構造をおさらいしました。

音波についてはもう少し詳しく説明できるようにプリントを作成したのですが、時間が足りず大幅に割愛しました。興味のある人は自分でゆっくりと見て、疑問があればいつでも質問して下さい。

音波は空気の振動であり、縦波です。そして音の大きさは振動の大きさ=エネルギーによって決まり、音の高さは周波数=振動の回数によって決まります。それぞれ、デシベル(dB)またはホーン(Ph)、ヘルツ(Hz)という単位で表します。これらのことがしっかりと理解できていれば、聴覚機能を理解するには先ず十分でしょう。

聴覚器の構造は解剖学でも学んだとおりです。年明けの授業で、音波=空気の振動がどのように聴覚器の中をどのような形で伝えられ、神経の興奮につながるのかを考えます。外耳から中耳、内耳の構造、特にそこに空気があるのか、膜構造があるのか、骨があるのか、あるいは液体があるのか、自分なりに図を描いたり、表にまとめたりしてしっかりと頭に入れておいて下さい。

次回の授業ではさらに、聴覚の伝導路、そして平衡感覚を取りあげます。

第22回 味覚と嗅覚

1週ぬけてしまい申し訳ありませんでした。後期は感覚機能と運動機能を取りあげる予定でしたが、試験までには全部やりきれないかもしれません。特殊感覚は今回を含めて全5回の予定です。

今回取りあげた味覚と嗅覚、ともの化学物質を適合刺激とする感覚であるため化学感覚とも呼ばれます。ヒト以外の動物にとっては情報量が大きく重要な感覚であることからも分かるように、進化の過程では早い時期に獲得された感覚でしょう。このことは、情動や本能行動に大きな影響を与える感覚であるという点で、痛覚などとも共通しています。

生理学の勉強はすべて同様ですが、感覚機能は特に構造と機能を結びつけてやすいと思います。むしろ、構造と機能を結びつけて考えないとわかりにくいかもしれません。したがって、それぞれの感覚受容器、あるいは感覚受容器細胞とその周囲の構造をよく見ながら、機能を考えて下さい。

味覚であれば、舌を中心とした口腔>乳頭>味蕾>味細胞>味毛>受容体 というように順に構造を追いかけながらそれぞれの機能や特徴を考えていきましょう。

また、授業でも触れたように、それぞれの感覚ごとに、刺激自体にも注目しておきたいと思います。したがって、味覚に対する刺激である味物質と其れによって生じる感覚=基本味や嗅覚に対する刺激である嗅物質についても簡単ですが触れました。過去の国家試験でこれらに関わる問題が出題されたことはありませんが、日常身の回りにあり、日々体験することでもあるので、少し気にしながら生活をしてみましょう。この後の聴覚や視覚でも同様にはじめに簡単に説明をします。

特殊感覚の伝導路はすべて脳神経です。これが特殊感覚たる分類の根拠の1つです。解剖学で身につけているという前提で進めていきますので、怪しいと思ったら自分でよく見直しておいて下さい。

第21回 体性感覚の中枢、内蔵感覚、痛覚他

今回ははじめに体性感覚の中枢を取りあげました。一次体性感覚野の特徴は3つあります。いずれも表在感覚を中心とした体性感覚の感覚点や受容器の分布に関する特徴、伝導路の特徴とつながっていますので、一緒にして考えられるようにしておきましょう。

内臓感覚については、循環器系や呼吸器系、消化器系、泌尿器系で取りあげられた内容とオーバーラップしているので簡単に済ませてしまいました。

特に、血圧を検知する圧受容器(機械的刺激に反応する)、血液中の化学組成、特に酸素分圧や二酸化炭素分圧、水素イオン濃度を検知する化学受容器(化学的刺激に反応する)の2つは非常に重要ですから必ず自分で復習をしておいて下さい。

また、関連痛(放散痛)は臨床的には重要な意味を持つ現象です。2年生の授業で取りあげられると思いますが、内臓通の伝導路の特徴とあわせて理解しておきましょう。

後半は痛覚に関連する内容を取りあげました。やや雑駁な説明になりましたが、生体の防御に関わる感覚であるだけにいろんな側面をもっていて、しくみは複雑です。疼痛が引き起こす全身性の反応などについては他の科目で学ぶ内容などもあわせてよく考えてみて下さい。また、内因性鎮痛物質(オピオイド)や痛覚過敏は非常に有名な特徴です。

第20回 固有受容器のはたらき、体性感覚の伝導路

今週は最初に固有感覚の受容器である筋紡錘と腱器官のはたらきを、神経活動とあわせて考えました。

2つの受容器がどんな刺激に反応するのかを改めて確認して下さい。そして、これら受容器からの興奮を伝える感覚神経の活動について、授業で使った図を見ながら自分で説明できるようにしておきましょう。特に、筋紡錘のはたらきは重要です。筋の長さは長さの変化に伴ってどのように興奮が発せられるのか、じっくりと考えてみましょう。

筋以外の部位の固有感覚や振動感覚については国試で問われることはないと思いますが、機械的な刺激に反応する受容器は触圧覚の受容器と同じものが働いていますので、あわせて確認して下さい。

痛覚は表在感覚、深部感覚、そして来週ふれる内臓感覚のいずれにも共通する感覚です。これは、痛覚だけの特徴といってもいいと思います。C線維の自由神経終末、ポリモーダル受容器が主要な役割を果たしています。伝導路にも他の感覚とは異なる特徴があります。脊髄の伝導路の分枝である脊髄網様体路の存在は侵害刺激がヒト(あるいは動物)にとって「ストレッサー」になっているということを示すものでもあります。来週の授業でも少し触れることになると思います。

今週の後半は体性感覚の伝導路について一通り説明しました。

授業でも触れたように、最も重要な伝導路は脊髄の後索路と脊髄視床路です。それぞれがどのような刺激あるいは受容器からの興奮を伝えるルートなのかをしっかりとおさえた上で、一次ニューロン、二次ニューロン、三次ニューロンの特徴を理解して下さい。一次ニューロンと三次ニューロンは共通点が多いですが、二次ニューロンに大きな違いがあります。必ず自分なりに一覧表や図をつくってまとめるようにしましょう。さらに、三叉神経視床路は脊髄の伝導路と比較しながらまとめるとわかりやすくなると思います。

脊髄小脳路は運動機能を学ぶときに改めて触れると思います。

第19回 温度覚、痛覚、固有感覚(筋紡錘)他

今回は表在感覚のうち、温度感覚、痛覚とかゆみ、くすぐったさ、また、深部感覚の受容器として筋紡錘を取りあげました。

前回取り上げた触圧覚と温度覚、痛覚に関する知識は国試でもいろんな形で問われています。また、2年生、3年生になってからも他の科目でこれらの知識が必要です。もちろんその後も。したがって、しっかりと復習して下さい。

それぞれの刺激を受ける受容器の実体、少なくとも被包神経終末であるのか自由神経終末であるのか、さらに、触圧覚の場合はそれぞれも名称と構造についてもおさえておきましょう。また、それぞれの神経終末からの神経線維の種類もあわせてまとめておきましょう。

表在感覚と深部感覚について、

受容器の構造と名称、分布、機能:受容器がどのような刺激をうけるのか、受容器からの神経線維、順応性

を一覧にしてみるといいと思います。

痛覚については特に重要だと思いますので、2種類の感覚についてそれぞれの特徴を自分の言葉でしっかりと説明できるようにしておきましょう。

深部感覚については、感覚自体についてはうまく説明できませんでしたが、筋紡錘という感覚受容器は「運動機能」でも取りあげます。筋線維について改めて確認するとともに、図をよく見て構造をしっかりと頭に入れて下さい。筋紡錘の機能を考えるためには、錘内筋の中央に巻き付いているⅠa線維が重要で、この神経線維への機械的な刺激(伸展刺激)が興奮を引き起こし、筋の長さや長さの変化する速度をモニターすることにつながります。機能については来週の授業でも改めて説明しますが、基本的な特徴を見直しておきましょう。

ところで、表在感覚や深部感覚に関わる受容器の構造や神経線維をながめてみると、受容器構造の複雑さや神経線維の構造や伝導速度の大きさに特徴があります。

侵害刺激は生命維持に関わる基本的な刺激ですが、それだけに進化的には非常に早い段階で獲得したと考えられます。特に、幅広く刺激を受けるポリモーダル侵害受容器の最大の特徴はどんな刺激に対しても反応するということですが、最初はこのような受容器1つですべてをまかなったと考えると、この受容器が自由神経終末で、神経線維がC線維=無髄線維である、つまり、進化のより早い段階で生じたものであることが納得できます。また、機械的な刺激に対しても自由神経終末の受容器が反応し、神経線維はAδ線維、また温度感覚という環境変化に関わる刺激についても同様に自由神経終末で、C線維やAδ線維が使われています。つまり、いずれもより原始的な形態をもった受容器で、無髄線維や有髄線でも伝導速度の小さい線維です。

これに対して、触圧覚(これらは精密触覚を含んでいます)や筋紡錘や腱器官(筋の状態を細かくコントロールするために必要です)は受容器自体も非常に特殊な形態をしていて、Aβ線維やAα線維を使っています。これらが時間をかけてつくられてきた=進化に伴って変化してきたことが明らかです。

このように、進化の頂点にいるヒトには生物の歴史=進化の成果が詰まっています。私たちは個人として、あるいは家族とともに人生を歩んでいるだけでなく、生命が歩んできた数十億年の蓄積の上に生きているのです。

第18回 受容器の特徴、触圧覚

今回は、最初に感覚機能に関する一般的な性質の1つとして、感覚単位を取りあげました。ややわかりにくかったかもしれませんが、二点弁別閾で説明した「受容野」とも関わりのある考え方です。関連させて見直しておいて下さい。

表在感覚の冒頭で、「感覚点」として、感覚を生じる部位が点状に存在すると紹介しました。「点」といっても、この場合の「点」はやはり「面」であって、一定の面積をもっています。そして、1つの感覚神経がある面積に加えられた刺激に反応するということです。

感覚受容器はいくつかの考え方に従って分類することができます。授業でもいくつかを説明しましたが、最初に取りあげた、①自由神経終末、②被包神経終末、③感覚受容器細胞 という3種類に分けて考えるのが最もわかりやすく、かつ、このあとの勉強に役立つと思います。

さて、今回から3回ないし4回にわたって体性感覚を取りあげます。実際に自分が体験しているものであるだけに、具体的にイメージをしながら一つ一つ理解していくのがいいでしょう。

今日は皮膚感覚(表在感覚)のうちの触圧覚でした。二点弁別閾については最もよく研究されていて、いろんな資料を手に入れることができると思います。また、直接刺激を受容する感覚受容器は5種類。被包の形態や真皮のどこにあるのかがそれぞれ異なっていますが、何よりもどんな刺激に反応するのかについてよく理解しておいて下さい。授業では最後にルフィニ終末とパチニ小体を例にして説明をしました。それぞれの順応性を考える上でも重要なポイントです。

また、受容器から中枢へ伸びている神経線維の種類も重要です。次回取り上げる他の表在感覚についても、それぞれの受容器から中枢へ伸びる神経線維を説明しますが、すべて違いがあります。これらの点は表在感覚を考える上で大切なポイントですから、その都度しっかりと頭に入れておいて下さい。

第17回 運動単位と収縮、感覚の一般的性質

後期は休日となる月曜日が多いため、間が空いたようになりやややりにくいのですが、皆さんはできるだけ授業の直後と直前に見直しをして、忘れないようにして下さい.

さて、今回は骨格筋線維の運動単位についてと感覚機能のイントロダクションでした.

運動単位は定義をよく確認して下さい.これが抜けてしまうと何にも分からなくなってしまうので、しっかりと頭に入れておいて下さい.そして、運動単位の性質をいくつかにまとめましたが、図を見ながら(あるいは自分で描いてみて)整理しましょう.
・運動ニューロンはいくつの筋線維を支配しているか.
・運動ニューロンが支配する筋線維の違いを決めているのは何か.
・1本の筋線維はいくつの運動ニューロンに支配されているのか.
・運動単位を構成する筋線維の種類は?、運動ニューロンの性質は?

単収縮は実験的に観察される現象ですが、単収縮が加重されることによって生じる強縮は運動のための筋収縮においては基本的な現象です.授業で使った図を見ながら自分で説明をしてみましょう.また、前回の追加プリントの図をみながら運動単位ごとの単収縮と強縮による張力や疲労のしかたの差を考えてみました.もう一度自分で説明できるかどうかトライしてみましょう.

後半は感覚機能に関わる特徴を説明しました.次回の前半までかかりますが、やや抽象的でわかりにくいところもあるかもしれません.体性感覚として最初に表在感覚を取りあげますが、ここまで理解できると全体が見えてくると思います.

適合刺激が何なのかについては、それぞれの感覚ごとに説明をします.刺激の物理的な性質についても時間の許す限り考える予定です.また、感覚の投射はややわかりにくいかもしれませんが、「眼から火花が散る」と「幻肢痛」を例に挙げてみました.もう少しいいたとえがないか考えてみて下さい.また、ウェーバーの法則は、刺激の大きさと実際に体験する感覚を定量化するために最も重要で基本的な考え方です.弁別閾という考え方も来週もう一度取りあげることになりますので、よく復習しておいて下さい.

第16回 筋のエネルギー供給と筋線維の種類

期末試験はいかがでしたか。一つ一つの問題は決して難しくはなかったと思いますが、正確に、そしてわかりやすく説明するためには「うろ覚え」ではなく、自分の言葉で語れるようになっていることが必要です。不十分な成績だった人は、もう少し時間を使って、深く理解できるようにしましょう。

学校での勉強は単に知識や技術を身につけるだけではなく、卒業後にスキルアップするための能力を身につけること、言い換えると「自分で勉強する力」をつけることが最も重要です。そのためのベースは人の話を聞いたり、書かれたものを読んだりして理解することです。授業を含めた日々の学習はその実践であり、修練です。ノウハウはいろいろあると思いますが、まずは授業中にノートをとる(or プリントに書き込む)こと、授業のあとで分かっていることと分からないことを自分なりにはっきりさせる努力をすることから始めるといいのではないでしょうか? もちろん分からないことはそのままにするのではなく、分かっている人に尋ねることが大切です。

さて、今日は前期のやり残しですが、骨格筋がどのようにATPをつくっているのか、そして、その方法によって筋の性質が異なっていることを学びました。

細胞でのATP産生については生理学or Ⅳ)で取りあげられる分野です。グルコース1分子をもとにどのステップで何分子のATPがつくられるのか、グルコース1分子がどのように代謝されていくのか、糖質以外の栄養素:脂質とタンパク質がどのように代謝されるのかなどもう一度確認して下さい。代謝に関わる内容は苦手な人も多いかも知れません。少し時間をかけて説明したつもりですが、今回の内容に合わせてもう一度よく見直しておいて下さい。

筋では非有酸素反応と有酸素反応以外にローマン反応という特別なしくみがあります。クレアチンリン酸にリン酸基を蓄えて、必要時にADPをリン酸化してATPを産生する方法です。この方法は可逆的反応としてすすむ純粋に化学的な反応と考えることができます。授業の内容に付け加えておくと、ローマン反応は筋線維の種類を問わず利用されている方法ですが、やはり収縮が速い筋ほど一気に多量のATPを消費するため、ⅡB型筋線維ではローマン反応の能力が高いようです。

では、最後に取りあげた筋線維の種類のポイントです。国試では赤筋線維、白筋線維(または遅筋線維と速筋線維)という分類で問われていますが、色の違いはミオグロビンの含量に依存しているため、筋収縮のためのATPをどのような方法でつくっているかを考えることが重要だと思います。したがって、授業のように大きく3つに分類して考えてみましょう。プリントのp188に3種類の筋線維の特徴を比較しましたので参考にして下さい。特に、それぞれの筋線維の主な役割とその筋の機能的な特徴をあわせて考えられるようにしておきましょう。
表の中には、今日の授業で説明しなかった内容も含まれていますが、一部は次回の授業で取りあげます。また、「クレアチンキナーゼ」はローマン反応を触媒する酵素のことで、この酵素の量が多いゆえに、上で説明したように、ⅡB型筋線ではローマン反応の能力が高いのです。

第15回 筋原繊維の構造と筋収縮のしくみ

前期の最後は骨格筋(筋節)の構造と収縮のしくみを取りあげました.

最初に説明した筋節の構造は、単に構造が分かったというにとどまらず、筋節の構造が収縮・弛緩に伴ってどの高に変化するのかを考えられるようにして下さい.

筋節の構造自体は何度か書いてみれば簡単に頭に入ると思います.2つのフィラメントがどのように位置関係になっているのかがポイントです.また、それぞれを構成するタンパク質についても説明しました.特に、アクチンタンパク質とミオシンタンパク質の役割を理解した上で、筋節の構造を考えられるようにしましょう.

筋の収縮、つまり筋節の収縮のしくみはイメージできましたでしょうか? 神経筋接合部での興奮伝達から興奮収縮連関、筋収縮のサイクルが回り弛緩するまでを一続きの流れとしてりかいしてください.この点でプリントp176178の図は非常によくできています.それぞれに説明を付けましたが、自分の言葉で説明できるようにして下さい.

試験勉強としては、神経筋接合部を興奮性シナプスとしてみておくことが重要です.この点で、シナプスとしての構造をもう一度確認するとともに、伝達物質や受容体についてもあわせて見直しておいて下さい.そして、興奮性シナプスでは、シナプス後電位は脱分極性の興奮性シナプス後電位です.これが筋活動電位となり、筋形質膜を伝導して興奮収縮連関の一連の現象が始まります.

筋形質膜は筋細胞の細胞膜ですから、細胞膜の構造とともに、ニューロンでの興奮の伝導で説明したことと同じ現象が生じています.大きな違いは細胞内への陥入がT細管がつくっていることです.筋線維では活動電位は細胞内にまで影響し、筋小胞体の電位依存性カルシウムチャネルを開きます.

筋小胞体は滑面小胞体であり、カルシウムイオンの貯蔵庫として機能し、筋形質に対して常に高いカルシウムイオン濃度を保っています.したがって、チャネルを開けば受動輸送でカルシウムイオンは筋形質内へ拡散していきます.また、筋小胞体は能動輸送のカルシウムポンプが稼働し、筋形質内のカルシウムイオンを筋小胞体内へくみ取るしくみが常に働いています.このため、チャネルが閉じてポンプだけが働いている状態では、カルシウムイオンは筋形質から筋小胞体内へ移動していきます.

興奮収縮連関の全体を理解する上では、カルシウムイオンをキーとして考えてみるのがいいでしょう.上記のことを理解した上で、筋活動電位の伝導から筋原線維を構成する2つのフィラメントの相互さようなでを順を追って考えていくようにしましょう.

授業の最後は時間が足りず、やや尻切れトンボのようになってしまいました.「収縮」という言葉の意味を理解することが先ず第一です.等張力性収縮(等張性収縮ともいいます)と等尺性収縮という言葉の意味は、プリントの図を見ながら考えればすぐ分かると思います.国試に出題されたこともありますので、見直しておいて下さい.

第14回 自律神経系、骨格筋の構造

夏休み明け初日ということなのか、小テストは全くできていませんでした.

さて、今日は途中で話題が大きく変わりました.前半は自律神経系、特に交感神経系と副交感神経系の作用の特徴を概観し、後半では骨格筋の構造について考えました.

交感神経系と副交感神経系による調節は、これらが器官を二重に支配しているということが重要です.ともに常時自発的に活動していて、活動の強さは中枢によって調節されています.したがって、交感神経と副交感神経のいずれが優位に働くかによって、つまりより強く作用するかによって、支配されている器官の働き方が変化します.循環器系や消化器系ですでに学んでいるように、機能が亢進する場合と低下する場合があります.このように交感神経と副交感神経のいずれが優位であるかによって、その作用は全く逆になるため、これを拮抗作用と言います.

追加で配布した表にはこの拮抗支配の結果、どのような作用が発揮されるかを簡単にまとめました.言葉づかいなど、ややわかりにくいところもあるかもしれませんが、学んだところから順に理解していってください.

交感神経系と副交感神経系で使われる神経伝達物質は2種類しかありません.授業では触れませんでしたが、自律神経節のシナプスは興奮性シナプスです.したがって、節前ニューロンの興奮は節後ニューロンの興奮を引き起こします.しかし、節後ニューロンと効果器細胞がつくっているシナプスは興奮シナプスである場合と抑制性シナプスである場合の両方があり得ます.

後半に取り上げた筋のうち、心筋と平滑筋については第5章の最後に簡単にまとめています.生理学では時間の都合で説明することができないと思いますが、生理学で学んだ内容を見直す意味では今日の内容と合わせて一度目を通しておくといいと思います.筋が収縮するためには筋細胞膜に活動電位が生じることが必要ですが、洞房結節のペースメーカー細胞がなぜ自律的に興奮する(活動電位を発する)のか、また、固有心筋の活動電位がどのようなものであるかについて簡単に説明しています.

今日のテーマは骨格筋の構造、特に筋線維の細胞膜=筋形質膜と細胞質=筋形質についてでした.図を使って説明をしましたが、プリントp169の図はおおよその構造をよく表しています.また、全体の概念としてはp170の図が非常にわかりやすいと思いますので、1度自分で描いてみて、重要な構造を頭に入れるようにしてください.

構造と機能は一体ですが、構造が分かれば機能は理解しやすくなります.したがって、自分なりのイメージをしっかりとつくって、その上で機能を考えられるようにしてください.

p170
の図に示された筋線維内の構造、特に今回は筋の収縮に関する構造が重要です.筋形質膜、T細管、筋小胞体、筋原線維の4つです.

最後に筋原線維について説明をしました.筋節の構造については、筋収縮のしくみを考えるために改めて説明しますが、筋の横紋の構成である明帯=I帯と暗帯=A帯が筋原線維の構造に因っていることはしっかりと理解してください.授業ではいくつかの写真を利用して説明しました.自分でよく見て、声に出して説明してみるといいでしょう.

来週は筋原線維の構造を基にして筋線維の収縮について考えます.また、運動ニューロンの興奮がどのように筋収縮をもたらすのかについても取り上げます.神経筋接合部についてよく復習しておいて下さい.

第13回 神経系の基礎

夏休み前最後で、神経系について一通りまとめてしまいたかったのですが、やや時間が足りませんでした。

今回のポイントは
・神経伝達物質とその受容体の考え方理解する。
・神経回路の考え方を理解する。
・自律神経系、特に遠心性神経である交感神経と副交感神経の構造的な特徴を理解する。
という3点です。

授業の中で具体的に取り上げる神経伝達物質はそれほど多くありません。まずは今回説明したアセチルコリンや自律神経系ではたらくノルアドレナリン、さらに前回の授業で名前を出したグルタミン酸やグリシン、GABAでしょうか。また、後期以降には中枢で作用しているドーパミンやセロトニンなども取り上げますが、出てきたところでしっかりと頭に入れていけば十分です。ただし、シナプスの構造と機能、受容体の機能と作用はしっかりと理解しておいて下さい。

受容体は作用のしかたによって2種類に分類できます。説明がやや複雑になってしまいましたが、わかりやすいイオンチャネル型受容体の働き方については必ず理解をして下さい。これが分からないと、伝達物質と受容体の関わり方が理解できないままになってしまい、シナプスの機能を理解することはできません。

シナプスには興奮性シナプスと抑制性シナプスの2種類があります。プリントにも何カ所かでまとめていますが、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、興奮性伝達物質、抑制性伝達物質という用語とあわせて、その意味をよく理解しておいて下さい。神経回路を考える上では、これらの理解が必須です。

神経回路は、いくつかの種類を取り上げて説明しました。特に、一緒に考えた2シナプス結合の4つのパターンが基本です。最初のニューロンが興奮することによって順にどのような現象が生じるのか、あるいはどのように作用が発揮されていくのはを自分の言葉でしっかりと説明できるようにしておいて下さい。

後半で、体性神経系と自律神経系について概観しました。体性神経系の作用は、感覚器系(感覚受容器と感覚神経の機能)や運動器系(骨格筋とそれを支配する運動神経の機能)の一部として後期のテーマです。解剖学では構造を中心にして学んだと思います。構造は機能を反映していますし、構造を無視して機能を考えることもできません。後期試験に向けた勉強という意味もありますが、夏休みによく復習しておいて下さい。

さて、自律神経系はその名の通り、自律機能を調節する神経系です。今回は構造について簡単に説明しただけでしたが、機能的には循環器系や呼吸器系で神経性調節としてすでに説明を受けている内容でもあります。すでに学んだ循環器系に関する知識をいくつか質問しました。その場でぴんとこなかった場合にはできるだけ早く見直しておくといいと思います。

自律神経系の機能として全体に共通する内容は夏休み明けの授業で説明をしますが、生理学2の復習を進める上では、自律神経系の機能が分かった方が理解しやすいと思いますので、余裕がある場合にはプリントや教科書をよく読んで参考にして下さい。

第12回 興奮の伝導と伝達

今週は神経系の構造と機能を考える上で重要な興奮の伝導と伝達について改めて取り上げました。

興奮の伝導は、神経線維の種類によって逐次伝導と跳躍伝導に分けられます。授業中にも説明したように、生物にとっては、あらゆる意味において跳躍伝導のほうが有利であると考えられます。したがって、脊髄を上下に走っている(伝導路を構成している)線維などのように長い神経線維には主に有髄線維が利用されています。また、次回の自律神経系の構成のところで、両方の使い分けに簡単に触れます。

跳躍伝導のしくみは、厳密にはまだ分かっていないこともあるようですが、逐次伝導との違いが分かればいいと思います。そして、興奮伝導の3つの原則は跳躍伝導にも逐次伝導にも当てはまることで、よく理解しておいて下さい。

有髄神経線維の活動電位で誤っている記述はどれか。(2009)
1
.両方向へ伝導する。
2
.絶縁伝導する。
3
.ランビエの絞輪で発生する。
4
.振幅は伝導中に変化する。
の様な問題も、過去に出題されています。(「振幅」とはグラフの縦軸方向の大きさの変化、つまり活動電位の電位変化の大きさの幅のことです。言い換えると、脱分極によって大きく正方向へ変化したときのトップの電位がどれくらいであるかということです。)

同時に、神経線維を伝導速度で分類したときの分類のしかたと名称はしっかりと頭に入れておいて下さい。次回の授業でも名称を使って説明します。また、後期に取り上げる感覚器の構造では、ほぼすべての神経線維の名称が出てきます。そのときに戸惑わないようにしておいて下さい。

興奮の伝達については、前回大まかなしくみを説明しました。今回は興奮性シナプスと抑制性シナプスの2種類の特徴をそれぞれ説明しました。自分なりにいくつかの用語や概念を整理してまとめてみるといいと思います。

興奮性シナプスについて、
興奮性ニューロン、興奮性伝達物質、興奮性シナプス後電位 
の3語を使ってうまく説明できるでしょうか?

伝達のしくみを考えるときには、シナプス後細胞で興奮性シナプス後電位と抑制性シナプス後電位が加重されて、シナプス後細胞のふるまいが変化するということをよく理解しておいて下さい。プリントにあるグラフを見ながら、自分で説明できるかどうか、試みて下さい。

夏休みレポートの課題図書の見本は二村先生にお預けしましたので、必要があれば申し出てください。また、まとめている途中で分からないことがあればいつでも質問してください。

第11回 興奮の伝達、ニューロンとグリア

先週に引き続き、やや盛りだくさんでしたが、ニューロンの構造と機能をいくつかの側面から考えてみました。

神経系の構成を忘れることはないと思いますが、解剖学で学ぶ内容との間でしっかりと整合性がとれるようにしておいて下さい。特に、脳神経は、神経ごとにどのような性質の神経を含んでいるのかが異なっています。まずは丸暗記もやむを得ないかと思いますが、学んでいくにしたがい、改めて確認するようにしましょう。

中枢神経系である脳や脊髄はニューロンの集合体です。これに対して、末梢神経系は脳や脊髄から伸びた神経線維で構成されます。したがって、求心性神経からの情報が中枢神経系に伝えられるということは、求心性神経の神経線維を伝導してきた興奮が脳や脊髄を構成するニューロンに伝達されるということです。そして、脳や脊髄が統合機能を発揮して、命令内容が決まると、脳や脊髄を構成するニューロンの興奮が運動神経や交感神経、副交感神経に伝達されて、さらにこれら遠心性神経の神経線維を興奮が伝導し、標的である器官に伝達されます。

神経系の構成とあわせて具体例を挙げてみると、
循環器系では、大動脈弓や頸動脈洞にある圧受容器がそこを流れている血流の圧変化を検知しています。具体的には圧が高くなることによって血管壁を構成する平滑筋が伸展しして、求心性神経を興奮させます。大動脈弓や頸動脈洞にある圧受容器からの内臓求心性神経は、それぞれ迷走神経と舌咽神経に含まれていて、心臓機能に関する中枢である延髄に達します。つまり統合機能を発揮する場は延髄にあり、血圧が高いことが検知されると、血圧を低下させるために、副交感神経によって心臓、特に洞房結節や房室結節に作用して心拍を低下させます。この心臓に伸びる副交感神経は迷走神経に含まれています。

神経線維は授業で説明したように、構造的に2種類に分類できます。来週の授業で取り上げますが、この2種類で興奮の伝導のしくみが異なっています。つまり、構造の違いが機能の違いをつくっているということです。今回説明した髄鞘やランビエ絞輪についてよく見直しておいて下さい。

第10回 脱分極、活動電位と興奮の伝導

今週は静止膜電位、脱分極、活動電位、興奮の伝導という興奮性細胞の特徴的な性質を取り上げました。

はじめに説明した膜電位自体はすべての細胞が持っている性質ですが、特に断りがなければニューロン、筋細胞(生理学2&4では腺組織を構成する細胞に対しても説明されるかもしれません)についてとりあげる静止膜電位のことです.

さて、静止膜電位の「静止」とは、脱分極や過分極が生じていない状態をさします。授業では脱分極や過分極を説明する前に静止膜電位という言葉が出てくるので、やや説明しづらいのですが、細胞が刺激を受けて脱分極が生じる、あるいは過分極が生じるという現象が分かると、静止状態も理解しやすいと思います。ニューロンや筋は興奮=活動電位が生じてこそ機能を発揮できるので、静止状態からどのような変化が生じていくのかを理解することが重要です。

細胞(ニューロン)が刺激を受けて、刺激依存性イオンチャネルが開口して、細胞外のイオンは細胞内へ流入すると、それまでカリウムイオンの移動を中心として成立していた静止膜電位が変化します。陽イオンが流入して生じる変化が脱分極で、陰イオンが流入して生じる変化が過分極です。授業でグラフを示しましたが、自分でみながら説明できるようにしておくといいでしょう。

細胞に対する刺激が大きいと、開口する刺激依存性イオンチャネルの数が多くなったり、開いている時間が長くなります。この結果、流入するイオンの量が増えます。陰イオンが流入した場合には、流入するイオンの量に比例して過分極の程度が大きくなります。陽イオンが流入した場合には、流入するイオンの量に比例して大きくなった脱分極があるところ=閾値を越えると、別の種類のイオンチャネル=電位依存性ナトリウムチャネルが開口します。この電位依存性ナトリウムチャネルは細胞内電位が閾値を超えると開口し、脱分極の程度が大きくなればなるほど(細胞内電位が陽性方向に変化すればするほど)開口するイオンチャネルの数が増えていきます。この結果、流入するナトリウムイオンがどんどん増加し、もともと府だった細胞内電位が正に変化してしまいます。この状態がオーバーシュートです。

ここでいう細胞内電位は、あくまでも膜電位としての細胞内側、つまり細胞膜近傍の電位です。したがって、サイトゾル全体が変化するわけではありません。

オーバーシュート、つまり「行き過ぎてしまう」と電位依存性ナトリウムチャネルが閉じてしまい、ナトリウムイオンの細胞内への流入が止まります。変わって、電位依存性カリウムチャネルが開口します。この結果、細胞内のカリウムイオンが細胞外へどんどん流出していき、正になってしまった細胞内電位は低下して負になり、さらに低下して静止膜電位まで戻ります。

このような変化全体を活動電位といいます。後電位も含めて考えるのが本来ですが、まずはここまでのところを理解して下さい。プリントにいくつかの図やグラフがあります。自分でみながら声に出して説明していて下さい。途中で分からなくなったり、説明がしどろもどろになったり、ごまかしたりせずに最後までしっかりとできれば大丈夫でしょう。さらに、他人に説明して、相手が分かってくれるかどうか、1度試してみるといいと思います。

後半に取り上げた「興奮の伝導」は、言い換えれば「活動電位の発生する部位が順に移動していく」ということです。移動していく方向が大切で、最初に活動電位が発生した部位からどんどん離れていく方向へ移動していき、元の場所には戻ってきません。この性質を考える上では、活動電位が生じた直後の細胞膜では、電位依存性チャネルの状態や細胞内外のイオンの分布が静止状態とは異なっているため、簡単には活動電位が発生しにくい=不応期になっていることを理解して下さい。

授業ではニューロンを題材にして説明をしました。細胞の形態や電位変化の大きさは異なりますが、筋細胞でも全く同様のことが起こっています。したがって、心筋細胞の収縮の引き金になっている活動電位も同様です。ただ、心筋はかなり特殊で、特殊心筋は静止膜電位が維持できないために自律的に興奮し、固有心筋はオーバーシュートした状態でプラトーが維持されるなどの違いがあります。

来週は興奮の伝達について概観した後、神経系の構造と機能に入ります。

第9回 能動輸送、小胞輸送、膜電位

今週は能動輸送と小胞による輸送、そしてニューロンなど興奮性細胞の性質を考える上で重要な静止膜電位について取り上げました。

能動輸送は2種類説明しましたが、何よりも先ず一次性能動輸送、つまりポンプについて理解して下さい。簡単な教科書では、能動輸送=一次性能動輸送としていることが多く、れだけに重要なしくみであるということです。濃度勾配に逆らって輸送するために「エネルギーを使う」というところが能動輸送の最大の特徴ですが、ATPを分解して生じたエネルギーを利用しているため、わかりやすいと思います。中でも「ナトリウム/カリウムポンプ」はほぼすべての細胞がもっていて、細胞内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度を維持する上で必須のしくみです。今後の学習の中でも取り上げられると思いますので、よく頭に入れておいて下さい。授業ではアニメーションを見てもらいました。プリントに記したURLで同じものをみることができます。時間があれば1度ゆっくりと見て、そのしくみを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

二次性能動輸送の説明にあたっては、図がプリントに入れてありませんでした。失礼いたしました。国家試験で問われるような知識ではないと思いますが、前回配布した小腸吸収上皮細胞でも栄養素の吸収のために利用されています。また、腎臓での尿の産生過程でも利用されている方法です。

エンドサイトーシスとエキソサイトーシスも、すでに学んでいる血液系・免疫系の細胞のほか、このあと取り上げるニューロンなどの細胞が本来の機能を発揮するために必要なしくみです。特に、エンドサイトーシスのうちの「食作用」と「エンドサイトーシス=開口放出」は今後も何度か使うと思いますので、よく理解しておいて下さい。また。言葉だけを上げた「受容体依存性エンドサイトーシス」も非常に重要なしくみで、いろんな細胞が使っているのですが、今回は省略しました。改めてまとめてますので、でき次第追加で配布します。

ここまで、細胞自体の構造と機能を少し時間をかけて説明してきました。最初の授業でも説明したように、細胞は「生体を構成する基本単位」です。したがって、たとえ個体レベルでの現象であっても、どこかの細胞に何らかの変化が生じています。生理学や今後学ぶ病理学など、常に細胞レベルの変化を意識しながら勉強していって下さい。

さて、このさきは少しずつ「生き物らしい」現象を考えていきましょう。
はじめに、全身にさまざまな情報を伝える役割を果たしている神経系を取り上げます。すでに解剖学でも習っていると思いますが、その生理学的な特徴を考えてみたいと思います。また、個々まで細胞の構造と機能を考えてきたので、神経系を構成する細胞である「ニューロン」について、特にその特殊な機能、あるいは能力を考えてみます。

細胞膜が電気的な性質を持っているといわれても、やや取っつきにくいと感じるかもしれません。ニューロンが情報を伝える上で利用している方法は、生物らしからぬ非常に物理学的な現象です。そんなに難しく考える必要なないと思いますが、順序立てて理解していって下さい。特に、今週取り上げた内容は細胞内外のイオンの分布やイオンチャネルに関する復習です。先週までの授業内容をもう一度思い出しながらよく見直しておいてください.

第8回 受動輸送

今週と来週で細胞内外への物質移動を取り上げます。「細胞膜を介した」という表現をよく使いますが、物質が「細胞膜を通過する」という意味です。

1回で終われればと思ったのですが、毎年のことですが、やはり無理でした。化学や物理の基本的な概念は分かっていればどうということはないのですが、理解できていないと丸暗記になってしまうので、やや時間をかけて説明をしました。

さて、今回は受動輸送、つまり拡散と浸透という2つの方法を説明しました。体液は水溶液です。したがって、溶媒である水に電解質やタンパク質が溶質として溶けているわけです。細胞膜を通って、細胞の内から外へ、あるいは細胞の外から内へ、溶媒である水が移動することを浸透といい、、溶質が移動することを拡散といいます。

浸透では、常に水分子が水チャネルと通過すると考えて下さい。一つ一つの水分子ごとに見ると、細胞の内から外へ移動している水分子もあれば、細胞の外から内へ移動している水分子もあります。しかし、見かけの移動方向、つまりどちら向きに移動している水分子が多いのかは細胞外液の浸透圧に依存します。つまり、細胞外液が等張であるのか、低張であるのか、高張であるのかということによって見かけの移動方向が決まります。赤血球を使った実験の説明やビデオをよく思い出してみるといいでしょう。

浸透圧という言葉は今後何度か出てくると思います。血液や細胞内液について、「浸透圧」といったときには普通は電解質の濃度に依存した浸透圧を考えます。また、血液中のタンパク質濃度に依存した「浸透圧」を考えることもあります。この場合には、「膠質浸透圧」という言い方をしますので、注意して下さい。

溶質の移動である拡散には3種類の方法があります。これらは、どういう性質、あるいは特徴を持った分子が、どの方法で移動するのかをおさえて下さい。特に、単純拡散とチャネルタンパク質を通過する拡散の2つをしっかりと理解して下さい。この2つの移動方法が理解できれば、このあと取り上げていくいろんな現象も考えやすくなると思います。例えば、膜チャネル、特にイオンチャネルは、このあとニューロンや筋細胞の性質を考える上で特に大切です。また、配布した追加プリントでも説明しているとおり、栄養素の吸収過程でも単純拡散は多用されています。

第7回 遺伝子発現

今日は遺伝子発現について概観しました。

授業でも何度か説明したプリントp63の図が全体をうまくまとめています。この図を見ながらそれぞれのステップでどんなことが起こっているのか、キーワードは何かがさっと浮かぶようにしておきましょう。

「遺伝子」という言葉はいろんな場面で使われています。遺伝子の構造はややわかりにくかったかもしれませんが、転写、翻訳を経て機能するタンパク質がつくられるための情報の一単位です。したがって、数えることができます。「DNA」もほぼ同義で用いられていることもありますが、これは物質です。また、今回考えたように、遺伝子とはセントラルドグマに沿って発現してはじめて意味を持ってくるものです。単なる物質は区別して下さい。また、実体であるDNAは塩基配列を明らかにし、さまざまな生物間で比較することもできます。現在までの多くの生物でゲノムを構成するDNAの塩基配列が明らかにされ、さまざまな研究に利用されています。

転写と翻訳は一連の現象としてまとめて理解して下さい。いくつか重要な言葉、概念がありますが、順序よく考えていけばそれほど難しくはないと思います。p69の図の左下の塩基の名称のうち、一番下の六角形のなかにUと書いてあるのは「グアニン」ではなく「ウラシル」です。訂正しておいて下さい。また、p72の図にあわせて授業中に使ったスライドの図は、メッセンジャーRNAを構成する塩基やトランスファーRNAのアンチコドンの部分の塩基がやや具体的に描かれており、わかりにくかったかもしれません。プリントの図のほうが簡易的でコドンやアンチコドンについて考えやすいと思います。

来週は、細胞膜を介して物質輸送について取り上げます。先週配布した「浸透圧」に関する内容も含まれますので、予習をかねてよく読んできて下さい。

第6回 細胞小器官、細胞分裂と染色体、DNA

今週は細胞小器官(先週の残り)と細胞分裂、染色体ならびにDNAの構造を取り上げました.

ゴルジ装置のはたらきは、先週最後に説明したリボソームや粗面小胞体の機能とあわせて考えるとわかりやすいでしょう.授業で使ったプリントp74の図は来週改めて説明しますが、自分で図の説明を読んでおくといいと思います.

リソソーム、ペルオキシソーム、プロテアソームはいずれも細胞内で不要になったものや細胞外から取り込んだ物質などを分解する小器官です.リソソーム機能は今後の学習の中でも何度が触れられることがあると思います.それぞれに特徴があり、その違いを理解しておいて下さい.

ミトコンドリアはATP産生のための小器官.ATPが細胞内でのあらゆる化学反応のエネルギー源となっていることから、細胞内の発電所などとたとえられることもあります.しかし、そんな抽象的な理解ではなく、まずは構造をしっかりと頭に入れておいて下さい.
ATP
産生の具体的なしくみは前期の後半で取り上げられると思いますが、筋細胞の性質を考えるときには、それらの知識も必要ですので、しっかりと勉強しておいて下さい.

細胞分裂のしくみについては詳しく説明しませんでしたが、今週の授業でポイントになるのは、分裂の前後で細胞がもつ遺伝情報は等しいということです.言い換えると、核内に同じ量と組成(塩基の配列)のDNAをもっているということです.したがって、染色体を中心に考えてみました.ビデオなどを思い出しながら細胞分裂の過程で染色体がどのようにふるまうのかを想像してみて下さい.

染色体は細胞分裂時にしかできませんが、常に同じ数の染色体がつくられます.ヒトが22×2246本であると説明しましたが、この程度は医学・生物学を学ぶかどうかにかかわらず常識です.また、他の生物については来週簡単に触れます.

授業では触れませんでしたが、生殖細胞は常染色体22本(対になっているいずれか一方)と性染色体1本をもっています.精子はX染色体をもっている精子とY染色体をもっている精子があります.卵子はX染色体の対になっているいずれか一方をもっているため、染色体の構成上はすべて同じです.したがって、受精によって新たにできた受精卵=個体の性別は、精子がもっている性染色体によって決まります.

来週の授業とも関わりますが、それぞれの染色体は同じ大きさ、つまり同じ量のDNAによって構成されています.1本の染色体(正確には染色分体)は一続きのDNA鎖であると考えていいと思います.途中で切れていません.したがって染色体の特定の部分は常にDNA同じ部分によって構成されています.DNAがもっている遺伝情報=遺伝子は、この長い鎖の中に位置づけられます.したがって、DNAがどのような構造であるか、遺伝子という一見抽象的な概念がどのような物質的な実体をもっているかが重要で、そこからDNAがどのような構造であるかを考える必要性が出てきます.さらに進めると、DNAを構成するヌクレオチド、実際には4種類の塩基がどのような順番で並んでいるのかが非常に重要な情報です.

第5回 細胞膜、細胞核、細胞質

細胞は細胞膜、細胞質、核の3つの部分で構成されています。今週はこの基本構成である細胞膜と核、そして細胞質(サイトゾルと細胞小器官)について取り上げました。

細胞膜の機能、特に物質輸送については再来週改めて取り上げますが、構造=流動モザイクモデルについて今回以上に説明することはありません。しっかりと復習しておいて下さい。

何よりも重要なことは、リン脂質の構造と特徴です。リン酸基をもつ頭部は強い極性があり、このことが親水性をつくりだしています。逆に、尾部の脂肪酸は極性が全くないため疎水性です。そして、1つの分子でありながら親水性と疎水性の両方の性質を持ち合つ性質を両親媒性といい、この性質を持つ物質を両親媒性物質といいます。リン脂質や糖脂質はその代表的な物質です。細胞膜という、生体の構造にとって最も基本的な部分がこのようなやや特殊ともいえる性質の物質によってつくられているということは決して偶然ではありません。それは、このリン脂質が尾部同士を向かい合わせにした二重構造になってはじめて、内部に水を溜めた状態で水の中に入ることができるからです。第1章補遺の『脂質と細胞膜』を参照して下さい。

流動モザイクモデルのもう一つのキーはタンパク質です。今後の生理学の勉強の中でたくさんのタンパク質分子の名称や機能を学びます。その中には膜タンパク質も多く含まれます。再来週取り上げる予定の「細胞膜を介した物質輸送」でもいくつかの膜タンパク質が重要な役割を果たしています。

赤血球などの例外を除いて、細胞には1個の核があります。今回は核膜で覆われていると構造だけを簡単に説明しました。内部にある核酸の構造や役割については次回取り上げます。

一つ一つの細胞の機能は細胞質で決まります。特に、サイトゾルにどんなタンパク質があり、どんな化学反応を生じているかは、細胞の性質を考える上で非常に重要です。今週の授業ではサイトゾルについては詳しく触れませんでしたが、前期の授業の中ではニューロン(神経細胞)と骨格筋線維(骨格筋細胞)を取り上げます。これらの細胞の機能もそれぞれの細胞の細胞質、特にサイトゾルにあるタンパク質の構造と機能に依っています。

細胞質にある細胞小器官については、単に列挙するような説明でおもしろくないと思います。ただ、一通り説明をしておかないと、今後取り上げられるいろんな現象を理解できないので我慢して下さい。

ただ、ひとまとめにして考えた方がわかりやすい場合もあります。来週初めに説明するゴルジ装置は、今回取り上げたリボソーム、粗面小胞体を一緒に考えるとわかりやすいので、自分で試みて下さい。

来週は、細胞小器官(残り)、細胞分裂、DNAの構造と複製、そして、遺伝子について取り上げます。

第4回 ホメオスタシス、細胞

今回は最初にホメオスタシスの一例として、体液量や体液(特に血漿)のpHについて触れました.

具体的にどのようなしくみによって維持されているかについては、他に譲るとして、それぞれが重要なしくみであり、これらを維持するために多くの器官系が関わっているということを知っておいて下さい.生理学上(皆さんの授業では生理学2&4)の最も重要なテーマの1つです.
そして、これらのしくみを考える上で共通するしくみ、概念が負のフィードバック・システムです.授業ではエアコンの温度調節を例にして説明をしましたが、何度も出てくるので、一般論を自分でも説明できるようにしておくといいでしょう.

全体のイントロダクションに少し時間をかけてしまいましたが、やっと本格的に生命現象を考えている雰囲気が出てきました.細胞の構造と機能に関する理解は、医学、生物学の基本です.避けて通るわけには生きませんし、最初の授業で「生物の階層性」という考え方について触れたように、人体の構造と機能を考える上で最も重要です.

今回は細胞膜について概観しただけですが、次回は「流動モザイクモデル」について少し詳しく触れます.最初に脂質という物質の性質についても説明しますが、第1章補遺の「水の不思議」と「脂質と細胞膜」をよく読んでおいて下さい.

生物は細胞内外での化学的反応を進めるために膨大なエネルギーを利用しています.摂取栄養の単位としても使われるカロリーとは、元々は熱量=水の温度を上げるために必要なエネルギー量として定義された量をに対する単位で、1グラムの水の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギー量が1カロリーです.摂取量を消費量は同じです.標準の摂取カロリーは1日あたり約2000~2500キロカロリーを目安としていると思います.したがって、これだけのエネルギーを消費しているということです.単純に考えると、摂取量よりも消費量が少なければエネルギーの蓄積が増える
=太ります.

さて、摂取したエネルギーを生体内での化学反応に利用するために物質を利用します.熱にして利用するわけにはいかないので、物質がもつ化学結合に変換して蓄積します.このときに利用するのがアデノシン三リン酸、ATPです.今後の授業の中でATPが関わった現象をたびたび取り上げます.名称とどのような役割を担った物質なのかをしっかりと頭に入れておいて下さい.

第3回 イオン、pH、恒常性・ホメオスタシスと体液

今日は体液の区分と組成を簡単に取り上げました.また、内部環境の恒常性、ホメオスタシスについて、言葉の定義と体液を例にして簡単に説明をしました.

3回目にして、やっと生理学らしい話題になってきましたが、2週間の水入りとなってしまいます.早めに1度復習し、さらに途中でもう一度おさらいをしておくといいかもしれません.また、時間をつくって、第1章補遺をよく読んでおいて下さい.今後の授業でざっとした説明はしますが、それだけでは理解しにくいところも多いと思います.予習をかねて、あるいはこれを機会に一気に勉強を進めてしまうのもいいかもしれません.また、久々に学校生活をする型にとってはいい意味で緊張をほぐすことができるのではないでしょうか?

さて、今日は始めにイオンについて簡単に説明しました.すでによく分かっている方には退屈だったかもしれませんが、今後の授業で、今日の知識は必須です.改めてよく見直しておいて下さい.今後、イオンの名称や化学式(イオン式)の表記について、特に説明した入り、スライドに注釈を入れたりすくことはないと思います.不確かなことがあれば各自で調べて下さい.

授業でも触れましたが、細胞内液と細胞外液のそれぞれで、最も濃度の高い陽イオンと陰イオンはしっかりと頭に入れておいて下さい.体液の性質を考える上で、また、前期の中心であるニューロンや骨格筋線維の性質を考える上で欠かせない知識です.授業で用いた体液中の電解質濃度のグラフなども利用して下さい.

pH
の概念も非常に重要です.次回の授業の冒頭で、体液のpHを調節するしくみについて少しだけ触れます.個体レベルでは、呼吸器系や泌尿器系を中心に、循環器系、内分泌系が関わって一定の範囲に収まるように調節しています.生理学2&4で取り上げられますが、血漿のpHは何よりも重要な知識ですので、先ず頭に入れておいて下さい.

他の授業でも、その分野の学問、研究の発展の上で忘れてはならない発見や事件、あるいは人物の名前などが、今後たくさん出てくると思います.1つの体系を学ぶということは、できあがった知識を身につけるだけではなく、その分野の成り立ちや発展の歴史を理解するということでもあります.生理学の発展の中で、『内部環境の恒常性』、『ホメオスタシス』は最も重要な概念です.これらのしくみを理解することこそが生理学であると言っても過言ではありません.したがって、ベルナールやキャノンの名も忘れないで下さい.

第2回 生物の階層性(消化器系)、元素、原子、分子

今日は前半で消化器系を例にして、器官系、器官、組織、細胞という階層性をどのようにとらえるのかについて考えてみました。

授業とは逆のアプローチでまとめると、
さまざまな機能や形態をもった細胞があり、それらが集まって組織を作っています。これらの細胞は、例えば、形態的には単層円柱上皮で、機能的には消化に必要なものを分泌したり、分解・消化されてできた栄養素を吸収したりしています。こうした細胞たちが集まって1つの組織を構成しています。
さまざまな役割を担った組織が集まって器官(臓器)をつくっています。器官が異なれば、同じような部位でも細胞の種類や組織の集まり方も異なり、結果として期間全体の形態や機能が異なります。こうしてさまざまな器官が作られているわけです。
いくつかの異なった形態と機能を持つ機関が集まって器官系をつくり、1つの仕事を成し遂げています。食物を摂取し、消化分解して、栄養素を吸収し、排泄するまでは一連の流れで進めた方が効率的です。しかし、すべてを同時にはできず、順番に進めていくしかありません。これを時間的にもスペースの点でも、いかに効率的にやるか、生物が進化の過程でさまざまな試行錯誤があったはず。その1つの解答が、我々哺乳類の消化管、消化器系です。それぞれの動物の食性にマッチした、すばらしいしくみを作り上げています。

後半は、一転して化学の授業のようになりましたが、生理学を学ぶ上で物質に対する化学的な理解は必須です。来週以降、水やイオン(電解質)、さまざまな高分子の名称が次々に出てきます。これらの概念が分かっていないと、最初でつまずいてしまいますので、昔の教科書などが残っている人は時間をつくって見直しておくといいでしょう。

原子の構造は、電子殻に注目しながらじっくりと見ておいて下さい。また、正の電荷を持つ陽子と負の電荷を持つ電子が同じ数であることも重要です。来週イオンの説明をしますが、ここが分かっていないと理解が難しくなります。また、分子をつくるときの共有結合のでき方も電子殻の考え方がもとになっています。

水分子は、小型の分子でありながら大きな極性を持っていることが最大の特徴です。この分子が存在するおかげで地球上には生命があふれているのです。来週はこの水と水にさまざまな溶質を含めた体液について考えてながら、生理学上の重要な概念であるホメオスタシスを取り上げます。途中で、体液の最も重要な構成要素であるイオンやpHについても触れます。

第1回 イントロ、生物の階層性

はじめまして.改めて自己紹介しておきます.

普段は名古屋大学で研究を中心にした仕事をしておりますが、週に1回だけ中和医療で授業をもっております.今年度で13年目(?)です.専門は分子生物学といい、今日取り上げた生物の階層性の最も階のレベルである、分子(あるいは化学物質と言い換えてもいいです)の構造と機能から生命現象を考えようという分野です.また、最近は皆さんのようなコメディカルの分野を目指す方々や、広く一般の方々に生物あるいは人体のしくみなどについてどうやってうまく説明したり、知識を広げたりしていけるかということにも興味を持っています.

さて、今日ははじめてでしたので、全体のイントロダクションに少し時間を割きました.他の先生方の授業スタイルが全く分かりませんので我流でやっております.気がついたことがあれば遠慮なく申し出て下さい.

今日は『生物の階層性』について、個体〜細胞レベルについて概略を説明しました.いくつか重要な言葉:テクニカルタームが出てきましたが、しっかりと覚えておいて下さい.「テクニカルタームを覚える」ということは、その言葉を記憶すればいいということではなく、当然、意味あるいは概念を理解し、他の言葉との関連をしっかりと考えられるようにするということです.したがって、何が重要であるか、あるいは何を覚えるべきであるかは自分で考えて下さい.

生理学の教科書も目次を見ると分かりますが、今日取り上げた『器官系』ごとに章だてされています.つまり、機能のまとまりごとに勉強していくということです.そして、それぞれの器官系を、器官ごとに詳細に学んでいきます.また、ある器官系、器官の機能、はたらきを考えるためには、他の器官、器官系の働きに関する知識が求められることも多々あります.生理学で最初に学ぶ細胞の基本的な機能や神経系に関する知識、生理学で最初に学ぶであろう血液や血管に関する知識は特に重要です.

生理学は、神経系、感覚器系、筋系を中心にして、神経系と感覚器系のつながり、神経系と筋系(特に骨格筋)の関わりも取り上げます.解剖学で最初に神経系について取り上げられると思いますが、生理学にも応用できるようにしっかりと学んで下さい.

最後に、授業中にはなかなか質問しづらいことも多いと思います.毎回の小テストには必ず余白がありますので、適宜利用して下さい.また、メールでもかまいません.内容によっては返事に時間がかかる場合もありますが、できる限り連絡をするようにします.(ただし、それなりの礼儀と常識にかなったスタイルのメールで送っていください.)

第30回 小脳と大脳基底核の機能、一次運動野

試験前最後の授業で、試験範囲をほとんど決めてしまっていたので、やや駆け足になってしまいました.

さて、第1のポイントは小脳の機能です.概念的にしか説明できませんでしたが、どのようにしてヒトが、あるいは動物が運動を学習していくのかというしくみを取り上げました.小脳の機能の説明で出てきた「大脳皮質の運動野」とは、最後に取り上げた一次運動野のことであると考えてください.したがって、脳幹や脊髄のα運動ニューロンを通して骨格筋へ伝えられる情報・命令が小脳へも伝えられ、その命令に応じて実行された運動の実際が脊髄小脳路によって固有受容器などから小脳へ伝えられているということです.

大脳基底核は、大きく4つ、細かく分けると7つの神経核からなる集団で、全体として運動の発現や遂行、終止を調節しています.入力部、出力部、間接経路を構成する介在部、そして修飾部の4つの間の神経回路をつくっています.一つ一つの役割を具体的に取り上げることはできませんでしたが、黒質緻密部にあるドーパミン作動性ニューロンの脱落によってパーキンソン病が生じることから、ここが直接経路のはたらきを強め、逆に間接経路のはたらきを減弱させることによって正常が維持されていると考えることもできます.

神経変性疾患はいずれも難病であり、根本的な治療方法はほとんどなく、症状を緩和したり、進行を遅らせたりすることがやっとのようです.授業では省いてしまいましたが、ジストニアのように症状を緩和するための方法すら試行錯誤しなければならないような疾患もあります.

生理学3の試験は一番最初に指定されています.次の週の月曜日が休日になってしまいましたので、答案返却はさらに1週間後です.悪しからず.

では、Good Luck!!

第29回 脳幹による運動調節

今回もやや駆け足でしたが、
脊髄反射のうち、皮膚反射の代表例として足底屈曲反射と伸展性足底反射(バビンスキー反射、またはバビンスキー徴候)を簡単に説明しました.
中心は脳幹の機能、特に眼球や頭部、姿勢の維持に関する反射の中枢としての機能を取り上げました.取り上げた反射について、その反射弓をよく考えるようにして下さい.特に、授業中にも触れたように前庭動眼反射は重要です.
プリントには前庭動眼反射と視運動性反応のメカニズムや前庭頸反射のメカニズムに関する説明図(354357ページ)を載せましたので、1度見ておいて下さい.

来週は小脳の機能を簡単に説明した後、大脳基底核と大脳皮質を取り上げます.

第28回 脊髄反射

今回から3回にわたって運動機能について取り上げます.授業の冒頭で説明したように、感覚刺激に対してどのような反応=運動が生じるかが中心です.また、最後に随意運動の指令する伝導路も取り上げます.

さて、今日は脊髄に中枢がある反射として、大きく2種類を取り上げました.「反射」や「反射弓」は次回の授業でも繰り返し出てきますので、今回の内容でよく慣れるようにして下さい.
また、授業では屈筋や伸筋、主動筋と拮抗筋という用語の説明は簡単に済ませてしまいましたが、あやふやな場合はもう一度よく見直しておいて下さい.

伸長反射と拮抗抑制は筋の伸長を刺激として常に同時に生じる反射です.プリントの図をよく見て(あるいは自分で描いて)、自分の言葉で説明できるまで復習して下さい.反射弓の構成要素ごとに整理しておきましょう.

刺激が何で、その受容器は何か.また受容器はどこにあるのか.
どういう感覚神経がどこからどこへ興奮を伝えるのか.
中枢はどこか.感覚神経か中枢へどこから入っているのか、また、運動神経は中枢をどこから出ていくのか.さらに、介在ニューロンのはたらきは何か.
どういう運動神経がどこからどこへ興奮を伝えるのか.
運動神経が興奮を伝達する筋は何か、運動神経から興奮が伝達された結果、筋がどうなるのか.(あるいは運動神経が抑制された結果、筋がどうなるのか)

この内容が基本中の基本で、これが簡単に説明できるようになれば、次回取り上げる脳幹を中枢とする反射も、非常に考えやすくなると思います.

屈曲反射と交叉性伸展反射は、屈筋と伸筋について注意しながら、プリントの図を参考にして自分で考えてみましょう.

第27回 視覚

今年最後の授業でしたが、最後に取り上げた「色の感覚」がやや尻切れトンボで終わってしまいました.後期試験終了後に少し補足するかもしれません.

さて、視覚の受容器である網膜、そして視細胞の構造と機能を概説しましたが、他の感覚器と比較するとやや異なっているために、少しわかりにくいかもしれません.

2種類の視細胞の役割分担をおさえた上で、感光色素(視物質ともいいます)の名称を覚えておいて下さい.これまでにいくつかタンパク質の名称とはたらきを取り上げてきましたが、視細胞、特に杆体細胞ではたらいているロドプシンは非常に有名で、よく研究されています.

ちなみに、「杆体」は本来は「桿体」と書きます.

視覚器における視細胞が、聴覚器における有毛細胞、味覚器における味細胞にあたると考えていいと思いますが、視細胞に光(可視光線)があたると、ロドプシンの構造が変化して、視細胞に過分極が誘発されるところが、他の感覚器の刺激受容細胞と異なっています.混乱しないように注意して下さい.

伝導路は、左右の視神経の交差のしかたが複雑に見えますが、ルールを理解してしまえば、視野と網膜に映る像の関係、左右の大脳皮質一次視覚野に視野のどの範囲が写っていることになるのか、それほど難しくはないと思います.1度自分で図を描きながら、言葉に出して説明してみる、あるいは字にして書いてみるといいでしょう.

色の感覚は勉強し出すと非常におもしろいのですが、錐体細胞の性質はしっかりと頭に入れておいて下さい.また、色盲と色弱については、プリント第8章の最後に簡単な説明を付けましたので、一度目を通しておいて下さい.

第26回 視覚

今日は視覚器の構造と機能のうち、適刺激である可視光が眼球に入射する入り口部分での調節機能を取り上げました.
光の量:虹彩にある2つの筋の収縮と弛緩によって、瞳孔を通過する光量が変化します.これによって適切な強さの光が入射します.
遠近の調節:見たい、見ようとしている物体から入射する光線に対して、網膜上に焦点を結べるように、水晶体の厚みを変化させて屈折の程度を調節します.

この2つの機能に関わって、水晶体の構造、視力、屈折の異常についても簡単に説明しました.目見直しておいて下さい.

さらに、立体視がどのようなしくみで生じるのかについても簡単ですが触れました.ややわかりにくかったかもしれませんが、興味がある方は是非自分でいろいろ調べてみて下さい.

第25回 聴覚と平衡感覚

今週は前半で聴覚の伝導路を取り上げました.空気の振動である音波がどのように細胞の膜電位変化=活動電位に変換され、それが中枢までどのような道筋を伝達されていくのか、図を見ながら自分の言葉で説明できるようにしておくといいでしょう.

後半は平衡感覚器官である前庭=半規管と耳石器を取り上げました.それぞれがどのような動きに反応するかをおさえておけば、あとは聴覚器(コルチ器)のしくみと基本的には同じです.2つの部分の構造の違い、あるいははコルチ器との構造の違いを考えながら理解するとわかりやすいのではないでしょうか.

授業中にも触れましたが、聴覚器のしくみは見事としかいいようがありません.元々は平衡感覚器=前庭が先にできていたのでしょう.ただ、海の中=水中では、音を伝える媒体は水です.つまり、どこかに音源があって、それが水の振動として自分のところにやってくると、それは体全体を振動させる=バランスを崩すもとになってしまいます.こうしたところから、平衡感覚をつかさどっていた部分で、同時に水の振動としての音波を感じる部分ができて、そこが陸上に上がった後に今の爬虫類は哺乳類が持っている蝸牛を中心とした聴覚器に発達していったのではないでしょうか.

来週は冬休みのレポート課題の参考になる書籍を持っていきます.

第24回 音波、聴覚器のしくみ

遅くなってしまいましたが、今週の授業の要点をまとめます.

音=音波は空気を構成する分子のよる振動によってつくられる縦波です.そもそもどのような物理的性質を持った「刺激」なのかということですから、しっかりと理解しておいて下さい.関連して、音波とこれを刺激として受容した場合に生じる感覚についても概説しました.時間の都合でやや不十分ではありましたが、興味のある方は自分で調べてみて下さい.

振動のエネルギー=音圧によって感じる音の大きさが決まり、周波数(または振動数)によって音の高さが決まります.音色についてはほとんど説明できませんでした.

授業の最後でこの音波、空気の振動がどのように有毛細胞の興奮へとつながるかについて説明をしました.空気の振動が、順に物体(組織)の機械的振動、液体の振動へと変換され、再らに機械的な振動に変わったあとでイオンの流入と膜電位の変化へと連続していきます.非常にうまくできたしくみで、見事としかいいようがありません.このしくみにあわせて、聴覚器の構造を見直すといいと思います.

第23回 味覚と嗅覚、聴覚器の構造

今回はパソコン用のアダプターを忘れてしまい、慌てて学校のPCを借りたので、設定に手間取ったり、一部文字がずれていたりしてご迷惑をおかけいたしました.

さて、化学感覚である味覚と嗅覚には、他の動物に比べて鈍感であるとか、順応が速いという共通点があります.また、痛覚ほどではないにせよ、情動的な反応を引き起こします.なにより、現代の我々が問題にする「味」や「臭い」に対する感じ方は、これらの感覚が本来果たすべき役割とはだいぶ異なっているということも共通しています.こういうことを頭に入れた上で、それぞれどのような受容体があるのか、化学物質が受容体に結合した後にどのようにしてニューロンが興奮するのか、そして興奮がどこを、どのように伝えられて感覚が生じるのかを見直して下さい.

味細胞には軸索がなく、別のニューロンとの間でシナプス伝達しているのに対して、嗅細胞は自信の軸索が嗅神経を構成しているという点は重要な相異点です.さらに、味覚の中枢は他の感覚同様に大脳皮質新皮質にありますが、嗅覚の中枢は旧皮質と呼ばれる進化的に古い部分を中心に構成されています.これも感覚の重要性を考える上で大切です.

最後に、聴覚器の構造を取り上げました.来週の初めに、聴覚器に対する適刺激である「音(音波)」=空気の振動について説明します.すこしでも聴覚器の構造が頭に入っていた方がわかりやすいと思いますので、よく復習しておいて下さい.

第22回 痛覚、味覚の特徴

今回はちょっと遊びに行っていたため遅くなりました<(_ _)>

さて、前半は痛覚に関して表在感覚として取り上げなかった内容を中心に説明しました.

内臓痛覚は、表在痛の「遅い痛み」と同様の特徴を持っています.伝導路については十分な説明ができませんでした.興味がある方は自分で勉強してみてください.関連痛は臨床的には重要な内容だと思います.しっかりと頭に入れておきましょう.

内因性オピオイドと痛覚抑制系は、今後研究が進んでさらにいろんなことが明らかにされていくと思います.

「痛み」とその克服は様々な疾患や障害に伴うもの.患者の立場からすると、手段はともかく何とかしてくれというものだと思います.発症のしくみや鎮痛のしくみをよく理解しておくことで、様々なアプローチが可能にあると思います.

後半から特殊感覚に入り、先ず化学感覚である味覚と嗅覚に共通する特徴、そして基本味と味覚受容器である味蕾についてその構造を考えました.キーワードははっきりしていると思いますので、しっかりと見直しておいて下さい.

来週は、味覚の受容体と伝導路、嗅覚、そして聴覚器の構造を取り上げます.

第21回 体性感覚の伝導路と中枢

今日は体性感覚の伝導路と中枢を取り上げました.

伝導路は大きく3つに分けられます.授業でも触れたように、互いの共通点と相異点を明確にするとわかりやすくなると思います.それぞれの伝導路が、どの場所のどのような感覚を、どこを通って伝えるのか.一次ニューロン、二次ニューロン、三次ニューロンの細胞体と軸索の通る部位、交差する部位を比較してみましょう.自分がわかりやすいような一覧表のようなものを必ず作ってまとめるようにして下さい.(こういう作業が「勉強」です)

また、脊髄から延髄にかけての図を描いて、脊髄の上行路を描き入れてみるのもいいと思います.

精髄小脳路と脊髄網様体路はどのような情報を伝えているのかを見直しておいてください.痛覚に関しては来週の授業でもう一度取り上げます.

中枢では、先ず視床の中継所としての役割、伝導路における位置をおさらいしましょう.そして最も重要なことは一次体性感覚野の部位と体部位局在の特徴です.「一次体性感覚野について説明しなさい」と、毎年ほとんど出題しています.

来週から「特殊感覚」に入ります.

第20回 表在性痛覚と深部感覚

今回は後期の内容の中でも最も重要なテーマの1つである痛覚(表在性痛覚)を取り上げました.

生じる感覚の違いと神経線維を含めた侵害受容器の性質をよく見直しておいてください.後期試験はもとより国家試験での必須事項です.さらに臨床の現場に出ても常に念頭に置いておくべき内容です.

実際に患者さんが訴える痛みは、表在痛よりも深部痛であることが多いかもしれません.しかし、痛覚の研究や考え方は表在痛を基本としています.また、言うまでもなく鍼や灸によって生じる痛みも表在痛ですから、いつでも自分の口で説明できるようにしっかりと勉強しましょう.

深部感覚としては骨格筋と腱にある固有感覚の受容器、筋紡錘と腱器官を中心に説明しました.授業で使った図をよく見ながら、あるいは自分で描いてみて構造をよく確認して下さい.機能的には、それぞれがどのような刺激に反応する受容器であるのかを考えながら、プリント232ページの図を理解できるように考えてみて下さい.

第19回 触圧覚と温度覚

今週と来週、再来週で一般感覚のうちの体性感覚を取り上げます.

今回の中心は表在感覚(=皮膚感覚)の触圧覚と温度覚です.
感覚にはすべて刺激に対する弁別閾がありますが、刺激の「強さ」の違いを区別できるという意味での弁別閾とは別に、表在感覚には二点弁別閾という、刺激の局在を区別する弁別閾があります.触圧点がもっともよく分かっているようで、どんな教科書にも取り上げられています.

触圧覚、温度覚ともに、受容器の名称、構造や反応性の特徴、神経線維の種類をよく見直しておいて下さい.ここから分かるように、表在感覚の受容器が皮膚に点状に分布しています.したがって、同じ強さの刺激を受けていても感覚が生じる場所と生じない場所があり、二点弁別閾を考える必要があるわけです.

第18回 感覚機能総論

今日の最初に取り上げた「収束回路と発散回路」は、小テストの問題にしたような取り上げたような興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが組み合わされたかたちで説明しませんでした.まずは単純に入力側が興奮性ニューロンであるとして考えるとわかりやすいでしょう.後期の最後に取り上げる「自律神経系」を構成している自律神経節では、授業で説明したように、入力側と出力側で両者が組み合わされたように接続しています.具体的にどうなるか、1度自分で考えてみてください.

さて、後期のメインテーマの1つである「感覚機能」に入りました、今日は
適合刺激
感覚の投射
刺激の強さと感覚の強さ、ウェーバーの法則
感覚の順応
受容器の種類
が重要ポイントです.

普段何気なく感じているものばかりが出てきますが、先入観などにとらわれずに、概念や事実をしっかりと踏まえて考えるようにして下さい.
最後のほうはやや急いでしまいましたが、各感覚受容器から中枢への興奮の伝達経路=伝導路の中で繰り返し同じような説明が出てきますので、その都度振り返るようにして下さい.

後期は、前期に学んだ内容も随所に出てきます.このような場合には、できるだけどこで取り上げた内容が触れるようにしますが、すぐにわかりにくいときには必ずあとで見直すようにして下さい.

第17回 運動単位、単収縮、神経回路

すこし時間がたってしまいましたが、後期最初の授業のまとめです.

運動単位は前期の最後に取り上げた筋線維の種類と一緒に勉強した方が分かりやすいので、前期中に収めて試験範囲に入れたかったのですが、間に合いませんでした.期末試験にも赤筋線維と白筋線維の違いを説明する問題を出題しましたが、復習をかねてあわせてまとめておくといいと思います.ただ、最も重要なのは運動単位の概念自体で、筋の運動生理学を考える上でも重要です.運動単位の構成と神経支配比の考え方(言葉の使い方もふくめて)をあわせて、いつきかれても応えられるようしっかりと頭に入れておいてください.

単収縮の説明は簡単にしかできませんでした.筋電図の見方と単収縮の加算によって強縮が生じるということを理解しておきましょう.

最後に取り上げた神経回路は、論理学的に考える練習だと思って、授業で説明したニューロンが3つ連続した場合(2シナプス結合の例)をモデルにして自分で順番に考えてみてください.決して3番目のニューロンの反応がわかればいいのではなく、どのようなシナプス伝達が生じ、伝達を受けたニューロンがどのように反応するのかを考えていくことが大切です.

次回から『感覚』に入ります.

第16回 シナプス後電位の加重、神経伝達物質、神経筋接合部

前期最後でしたが、試験範囲をやり尽くす必要があったため、やや駆け足気味でした.内容は大きく三つ、
シナプス後電位の加重
神経伝達物質
神経筋接合部の構造と機能
です.

シナプス後電位が加重されるという現象は、実際にニューロンでどのように活動電位が生じるか、つまり、生体で興奮がニューロンからニューロンへどのように伝えられるかを考えていく上で重要な考え方です.最初に見た図(プリントp174)のように、一つのニューロンには周りの多数のニューロンから軸索が伸びてきて、多くのシナプスをつくっています.これら一つ一つのシナプスで生じた後電位(IPSPEPSP)が合算された結果によって、ニューロンの興奮性が決まるということです.図(プリントp179)を見ながら自分で説明してみましょう.

神経伝達物質は、授業で取り上げた8種類をよく頭に入れておいて下さい.後期の授業でも何度が出てきます.また、内分泌系を勉強するときにも同じ物質が出てきます.

神経筋接合部は、ニューロンどうしがつくるシナプスと比べると、一方が骨格筋であるという点で、やや特殊ですが、研究がよく進んでいることと筋収縮のしくみを考える上で非常に重要であるため、必ず取り上げます.構造上の特徴、特に運動終板のイメージはしっかりと頭に入れておくように.また、アセチルコリンを伝達物質とする興奮性シナプスであるということもしっかりと確認しておいて下さい.授業で触れたように、プリントp196の図はよくできています.神経筋接合物の構造とはたらき、そして興奮収縮連関から筋の収縮・弛緩のしくみまでを一貫して説明することができます.必ず自分の言葉で(口で)説明できるように復習しておいて下さい.

過去の期末試験問題を取り組んでみれば分かることですが、決して重箱の隅をつつくような知識は必要ありません.授業では、全体像を理解するために詳細な内容を示しながら具体的に説明したのであって、重要なことはそれぞれの機能を考える上での幹になる部分をしっかりとおさえること=自分の言葉で説明できることです.d(^-^)ネ!

それでは、Good Luck !!

第15回 筋線維の種類、シナプスの構造と機能

夏休み明けの初日で、やや感覚が戻っていないか?と思える顔もいくつかありました.実技の試験も始まっていますので、できるだけ早く戻しましょう.(^^)

さて、今日の前半は筋細胞の種類をATPの産生方法で分類しました.これは単にATPの産生方法だけではなく、筋細胞の構造や収縮の性質をも決めています.よく見直しておいて下さい.
いろんな文献を見てみると、赤筋と白筋(あるいは遅筋と速筋)と分類して考えるときには、どちらかというと筋の収縮に関する性質を第一に考えていることが多いようです.また、型、型(さらにⅡAⅡB)と分類する場合には授業でも触れたようにATPの産生方法を中心にして考える場合です.細かく違いを理解していれば、結局同じことですが、自分なりに整理して(表などにして)おくといいと思います.

後半は興奮の伝達のしくみを考える上で必須であるシナプス、特にニューロンとニューロンがつくっている化学的シナプスの構造と機能を取り上げました.来週の授業で、興奮の伝達を受けた後、どのように活動電位が生じることになるのかについて考えます.今日説明したシナプスの構造と神経伝達物質のはたらきが分かっていないと全く理解できませんので、よく復習しておいて下さい.

第14回 筋収縮のしくみ、興奮収縮連関、筋のエネルギー産生

時間がたってしまい申し訳ありません.夏休み前、最後の授業の内容をまとめます.

小テストでも出題したように筋節の構造はしっかりと復習しておいて下さい.そして、筋が収縮しているときと弛緩しているときに、筋節の構造のどこがどのように異なっているのかをよく考えられるようにしておきましょう.

筋収縮のしくみですが、運動ニューロンから筋線維への興奮の伝達があって初めて収縮が生じますが.細胞間でどのように興奮(=活動電位)が伝えられるかは夏休み明けの授業で取り上げます.先週の授業では、筋線維、正確には筋線維の細胞膜に興奮が生じた=活動電位が発生したあと、筋線維の細部で何が起こっているかを考えました.

現象としては興奮収縮連関、そして太いフィラメントと細いフィラメントの滑走という2つの現象をおさえておくことです.カルシウムイオンをキーにして、プリント152ページや148ページの図を参考に、細胞内での現象をよく考えておきましょう.これらの図を見ながら声に出して説明ができるかどうか、説明しようとして何かをごまかしたり、しどろもどろになったりせずに、上手に説明できるようになれれば、同じことを字にして書いてみましょう.

後半は、筋収縮のエネルギー源であるATPをどのようにつくっているのかについて説明しました.細胞内でのATP産生については、まだ十分に習っていないようで、わかりにくかったかもしれません.夏休み明けに、ATPの産生方法による筋線維の分類を改めて詳しく取り上げようと思いますが、赤筋=遅筋と白筋=速筋の違いについてはよく見直しておくように.

第13回 神経線維、筋線維の構造

今週は最初に、神経線維の分類と名称を取り上げました.神経線維の構造の詳細は解剖学に譲るとして、何を基準にして分類しているのかを理解しておいて下さい.名称は、その神経線維がどこにあるのかともつながっています.今後の学習にも関わってきますので今のうちにしっかりと頭に入れておいて下さい.

後半は筋細胞の構造についてでした.今年は骨格筋しか説明できないと思いますが、骨格筋の特徴が理解できれば、心筋や平滑筋は比較しながら考えることができると思います.国試の問題で心筋や平滑筋が問われることもありますが、骨格筋との比較として考えれば十分に解答を導ける程度の問題です.

来週は筋細胞が収縮するしくみを、筋原線維の太いフィラメントと細いフィラメントに注目して考えます.この内容を理解するためにも、今週と説明した筋原線維の構造をよく見直しておいてください.また、この筋原線維の規則的な構造が細胞全体が示す横紋をつくっているということも改めて確認しておいて下さい.さらに、筋形質膜とT細管、筋小胞体も、筋収縮のしくみを考える上で重要な構造です.

来週の後半は、筋細胞がどのようにATPをつくっているかについて考えます.筋細胞は他の細胞に比べるとミトコンドリアが多く、また、他の細胞が持たないミオグロビンやグリコーゲンを持っているところが特徴的です.いずれも筋細胞が大量のATPを消費する=産生する必要があるために、備わっているものです.

次回の授業の内容は今週の授業の内容の上に成り立っています.1週間あいてしまいますが、小テストの勉強でもありますが、よく見直しておいて下さい.

第12回 活動電位と興奮の伝導

先週、今週と前期の中では特に重要なところの1つです.

活動電位発生のしくみを理解するには、静止膜電位がどのように成立しているかと脱分極がどのように生じるかが分かっている必要があるのはもちろんですが、細胞内外のイオン組成の違いや細胞膜にあるイオンチャネルについての理解が必要です.また、イオンチャネルは膜タンパク質ですから、細胞膜の基本構造、あるいはタンパク質がどのように産生され、細胞膜に運ばれてくるのかについてわかっていないと、難しいと思います.

活動電位のグラフは何度も見たので頭に入っていると思いますが、グラフのそれぞれの部分で何が起こっているのかをしっかりと理解して下さい.授業で説明したように、イオンチャネルのはたらきを中心にして自分の言葉で説明できるように.刺激によってはたらくイオンチャネルとその働きの結果生じる脱分極、この脱分極が閾値に達したあとではたらくイオンチャネル、細胞内がオーバーシュートすることによって閉じるイオンチャネルと開くイオンチャネル、など、キーワードは明らかだと思いますので、それらを使って自分なりの説明を書いてみるといいでしょう.

興奮の伝導は、活動電位発生によってオーバーシュートする=細胞内外の電位が逆転するということと、活動電位発生中や直後は不応期になっているということを考え合わせて理解するようにして下さい.

跳躍伝導の説明はやや舌足らずのようになってしまいましたが、有髄線維と無髄線維の違いとあわせて理解して下さい.来週は、それぞれで具体的にどれくらい伝導速度が異なっているのか、どのように使い分けされているのかを簡単に説明します.

第11回 ニューロン:静止膜電位と脱分極

今週と来週の2回で、ニューロンの特徴を考えます.どんな細胞も全て特徴がありますが、ニューロンと次に取り上げる筋細胞は、電気的に興奮する=刺激をうけると膜電位が大きく変化するという、他の細胞にはない性質があり、生理学における動物的機能を考える上でどうしても理解しておく必要があります.

膜電位は細胞膜近傍のイオンの分布によって生じます.授業中にも復習をしましたが、細胞内液と細胞外液のイオン組成をよく確認しておいて下さい.さらに、細胞膜を介したイオンの輸送のしくみ=イオンチャネル(とイオンポンプ)についてももう一度見直しておいて下さい.プリントでも改めて説明を付けましたので、必ず目を通しておいて下さい.

さて、静止膜電位がどのように生じるか、カリウムイオンの移動を中心にして説明をしました.プリントの最後にも静止膜電位がどのように生じるかについて説明を付けました.ほぼ授業で説明したとおりですが、文章だけでわかりにくいかと思います.プリントの他のページの図を一緒に見ながら考え直してみて下さい.

脱分極と過分極という現象も、今後ずっと考え続けていくこともので、今後の勉強の基本です.活動電位のしくみは来週改めて考えますが、脱分極が先にあっての活動電位です.授業ではいろんな図を使って説明をしましたが、同じように、自分で口に出して【声を出して】説明できるようにしてみると、考え方がよく身につくと思います.

第10回 タンパク質の修飾と輸送、ミトコンドリア他

今日はやや雑駁な内容になってしまいましたが、細胞小器官の役割を整理しておきましょう.

粗面小胞体とゴルジ装置:リボソームで翻訳された直後のタンパク質はアミノ酸がつながっただけで、まだ機能を持ったタンパク質とはいえません.このタンパク質に修飾を施し、それぞれの正しい形を作くる場所.両方とも膜でできた袋状の構造で、核の周囲を中心に広がっています.この2つを通り抜けたタンパク質の目的地は細胞膜で、膜タンパク質あるいは分泌タンパク質として機能します.

膜タンパク質や分泌タンパク質以外のタンパク質は、粗面小胞体上のリボソーム(膜結合型リボソーム)ではなく、サイトゾルに浮遊したリボソーム(遊離型リボソーム)で産生されて、目的地へ運ばれます.

プリントp96の粗面小胞体は、小腸で機能する消化酵素を作っている膵臓の細胞にある粗面小胞体.この細胞でつくられた消化酵素(タンパク質)は全て細胞外へ分泌され、さらに小腸へ運ばれて機能します.

滑面小胞体も構造的には粗面小胞体と連続した袋状あるいは環状の構造ですが、機能は全く異なります.授業では筋細胞や幹細胞を例に説明しました.プリントp96の滑面小胞体はホルモン産生を仕事にしています.

ミトコンドリアも膜でできていますが、脂質二重膜が二重になっていて、内膜の折りたたみ構造部分=クリステに酸化的リン酸化によるATP産生に必要なタンパク質群が集まっています.追加で配布したプリントとp99の下図はATP産生の全体を理解してもらう目的で作成しました.時間のあるときに一度目を通しておいて下さい.

リソソームとペルオキシソームも膜でできた小器官です.いずれも他の細胞小器官と異なり、特殊な環境をつくることで不必要な物質や細胞小器官を分解するためにはたらいています.また、リソソームは食作用などによって細胞外から取り込んだものを消化・分解する作用も持っています.食作用や飲作用の説明の図にも描かれていますのであわせてよく見ておいて下さい.

細胞自体も膜でできていますが、細胞小器官の多くも細胞膜と同様の膜でつくられています.水の中で、周りとは区別された空間を作り出すためには、両親媒性物質の二重膜が最も適しているということを示しています.あるいは、両親媒性物質の二重膜を使うことができたからこそ、生命体が誕生したといってもいいのかもしれません.

膜でできていない小器官として、中心体とプロテアソームを取り上げました.特に中心体は細胞分裂時にも必要で、どんな教科書でも必ず取り上げられるものですので翼頭に入れておいて下さい.

来週は第3章ニューロンに入ります.ここでも改めて細胞膜について考えます.また、細胞内外のイオン組成の違いについても理解が必要です.十分でないと思ったら、予めよく見直しておいて下さい.

第9回 遺伝子発現のしくみ

今回は遺伝子発現のしくみ、遺伝子の構造と転写、翻訳のしくみを考えました.

授業の説明はややわかりにくかったかもしれませんが、一通りの知識:用語の意味や概念を頭に入れて最初からよく見直してみるとわかりやすいと思います.遺伝子発現のしくみは一般向けの解説書やテレビ番組なども豊富で、よく知られている内容でもありますので、最低限の知識は持っていてください.

遺伝子発現という概念は抽象的ですが、一言で説明すると、「DNA上にある遺伝子にエキソンとイントロンがあり、転写後にプロセシングされてメッセンジャーRNAmRNAがつくられ、このmRNAが細胞質にあるリボソームで翻訳されてタンパク質が合成される」というところでしょうか.

遺伝子の構造、転写のしくみ、転写後のプロセシング、つくられたmRNAの移動、リボソームの構造と機能など、プリントの図を見ながら、一つ一つの現象をよく考えるようにして下さい.

翻訳という現象は少し複雑ですが、コドンをキーワードにしてよく考えてみて下さい.タンパク質のアミノ酸配列を、遺伝情報としてDNAに保存する場合にコドン=塩基配列という暗号に置き換えたと考えればわかりやすいでしょうか.そして、翻訳;translationという言葉は、核酸の文法(塩基配列)をタンパク質の文法(アミノ酸配列)に置き換えるをいうところから使われるようになったのではいないでしょうか.暗号の解読;diciphermentではやや意味が違うような気がします.

生物、あるいは生命現象には一見すると無駄に見える部分がたくさんあります.しかし、よく調べてみる=研究されるといろんな意味があるということが分かってきます.DNA上のタンパク質のアミノ酸配列をコードしている部分以外の領域は、DNAの大部分を占めています.以前は「ジャンク」といわれていたのですが、その後の研究の進展によってそのほとんどが正常な生命現象に必要な部分であるということが分かってきました.それでもまだ不明な部分があります.今後の研究の進展によってそれらの部分にも何らかの「意味」が見いだされてくるかもしれません.

第8回 染色体とDNA

今週は染色体とDNAについて取り上げました.

先週の続きですが、染色体は古くから知られている構造ですが、現在(おそらく今後も)の生命科学、あるいは医学によって最も重要な細胞内構造であり、情報源です.生物の種によって固有の数が決まっていて、多くの生物でそれぞれの染色体上にある遺伝子が特定されています.来週の授業で取り上げますが、この遺伝子に関する情報は、生物に対する理解を深めていく上で決定的です.

この遺伝子の実体がDNA:デオキシリボ核酸という物質です.つまり、遺伝子という情報をDNAという物質(分子)が担っているということです.このように、遺伝情報やその伝達である遺伝現象という「生命現象」を分子の構造や機能をもとにして考えたり研究したりする分野を「分子生物学」といいます.

DNA
の構造についてやや時間をとって説明をしました.DNAが相補的な塩基同士が向かい合った二重ラセン構造をつくっているということは1955年頃に明らかにされましたが、20世紀における生物学上の最大の発見です.DNAが半保存的に複製できるのは、この構造のおかげです.また、来週取り上げるRNAへの転写も相補的な塩基同士が向かい合った二重ラセン構造ゆえのしくみです.

リン酸-糖の基本骨格に塩基が結合した4種類のヌクレオチド、DNAを遺伝子として考えるときにはヌクレオチドとしての名称を使うことはほとんどなく、塩基の名称を使います.したがって、4種類の塩基の名称と相補的な関係にある塩基の組み合わせを頭に入れておいて下さい.

染色体の構造やDNAの複製について時間をとったために、細胞分裂の説明が簡単になってしまいました.これまでも時間におされて詳しい説明は省いてきました.いずれまとまった解説をつくってみようと思います.

第7回 エンドサイトーシスとエキソサイトーシス、細胞骨格、細胞核

今日はややまとまりのない進み方になってしまいましたが、
細胞膜を介した物質輸送:小胞による輸送のうち、食作用と飲作用(ともにエンドサイトーシス)、エキソサイトーシス
細胞質、特にサイトゾルの構成と細胞骨格
細胞核の構造と染色体
を取り上げました.

食作用については、血液で学んだことを照らし合わせながら復習してください.食作用の全体像がややわかりにくかったかと思いますので、来週追加のプリントを配布します.また、飲作用は全ての細胞が持つ機能です.細胞内に取り込んだあとは、細胞がもつ分解系に乗せていくので、再来週くらいで取り上げるリソソームのところで、もう一度触れたいと思います.
エキソサイトーシスは、ニューロンの機能のところで実例を取り上げます.また、他の科目でも細胞が何かを分泌するという場合には、その多くがエキソサイトーシスによっていると考えていいと思います.(胃の細胞が消化液の一部として塩酸を分泌していますが、これは水素イオンチャネルなどを使っているため異なります)

授業で何度も使った細胞の図(他に見やすい図があればそっちでもかまいません)、あと3回くらいは授業の前後で、予習、復習としてよく見るようにしてください.
今回はサイトゾルという、やや漠然とした部分を取り上げました.細胞内での「化学反応の場」といわれても、その化学反応を取り上げていないのでわかりにくいと思います.来週取り上げるタンパク質の合成や修飾はこの「化学反応」に入ると考えていいと思います.また、生理学2&4の「栄養・代謝」のところで、細胞内での栄養素の分解や生成について学びますが、ここで取り上げられる化学反応は全てサイトゾルで生じるものです.


細胞骨格は3種類の名称と違いがわかってもらえれば十分です.消化管の微絨毛や気管の繊毛は、それぞれ消化器系、呼吸器系の中で学ぶことになると思いますが、このような構造ができる根拠として考えてもらえればいいと思います.

核の構造とDNA、遺伝子については来週詳しく触れます.中和医療と同様の鍼灸の専門学校の中でも最もしっかりと説明していると思います.ややヘビーに感じる方もいるかもしれませんが、テレビの教養番組などでも同レベルで説明されています.

第6回 浸透、能動輸送

今日は受動輸送のうちの浸透、能動輸送を中心に話を進めました.

今後、浸透あるいは浸透圧は取り上げることはあまりないと思いますが、ホメオスタシスを考える上で重要なキーワードです.泌尿器系や循環器系の機能を考えうえで必要ですので、そのときには改めて見直すようにして下さい.また、身の回りにも浸透あるいは浸透圧の違いによって生じる現象が数多くありますので探してみて下さい.

さて、浸透は水(溶媒)の移動ですが、受動輸送ですから、濃度差にしたがって生じる現象です.授業の繰り返しですが、この基本が重要ですので、図を見ながら自分で考えられるようにしておいて下さい.先週配布した解説も参考にして下さい.浸透圧の大きさは溶質濃度が高いほど大きいと考えますので、浸透は浸透圧の低い方から高い方へ水が移動します.

浸透圧を実際の圧力として測定することはないと思いますが、物質の濃度によってその大きさを考えることができます.詳しく勉強していないので具体的に説明できませんが、モル濃度という考え方に従ってオスモル濃度(Osm)を求めます.体液の浸透圧、約300ミリオスモル/Lという数字について、生理食塩水で簡単に説明すると、塩化ナトリウムの濃度をモル濃度で表すと150M(ミリモル濃度)で、この塩化ナトリウムが水に溶解すると、生じたナトリウムイオンの濃度と塩化物イオンの濃度はともに150M、あわせると300M.ここから浸透圧300Osm/Lとします.

能動輸送として2種類の輸送方法を取り上げました.ナトリウム・カリウムポンプは非常に重要なしくみです.今後の授業でも何度か出てきますが、細胞が生きていく上で必須です.わかってしまえば単純なものですが、能動輸送という考え方とともに、細胞あるいは細胞膜の機能を考える上でも、またこの分野の研究の進展においても重要です.また、二次性能動輸送はややわかりにくいかもしれませんが、消化管での物質移動(今日配布したプリント参照)を考えるときに特に重要です.もちろん、それ以外の場面でも大切ですが、生理学の授業では取り上げられないかもしれません.

エンドサイトーシスとエキソサイトーシスは来週改めて説明しますが、先ずが細胞が大きくものを取り込む場合と放出する場合ということで言葉を知っておいて下さい.

第5回 流動モザイクモデル、受動輸送(拡散)

今週のテーマは大きく二つ、流動モザイクモデルと拡散のしくみ です.

流動モザイクモデルは、1972年にそれまでの成果をまとめる形で提唱された考え方ですが、その後の研究も基本的にこの考え方を支持しています.脂質、特にリン脂質による二重層の構造は、細胞内と細胞外に水があり、かつ細胞の形態がかなり自由に変化するという事実をうまく説明しています.さらに、脂質二重層だけでは説明のつかない細胞膜の機能、今週取り上げた拡散に代表されるような極性基を持つ分子が自由に通過できること、細胞外からのさまざまな情報を受容していること、そのほかこれまでに見つかった「タンパク質」が果たす機能が細胞膜部分で発揮されていることから、多種多様なタンパク質が脂質二重層に存在していると考えられます.授業で使った細胞膜の図は、これらの現象を非常にうまく説明してくれます.

膜タンパク質についている糖鎖については簡単な説明で済ませてしまいました.第1章の最後、プリント40ページ以降に解説していますので、読み返して下さい.

今週の授業の後半は、細胞膜の機能の一つである物質輸送のうち、溶質の受動移動である拡散を取り上げました.先週と今週の前半で取り上げた細胞膜の構造を前提にして、その構造からどのような機能を考えることができるか、あるいはある機能を果たすためにどのような構造がつくられているのかを考えながら見直すといいと思います.

拡散は3種類に分類して考えることができます.受動輸送ですから、あくまでも濃度勾配や電気化学的勾配にしたがって移動する訳ですが、どんな物質に対してどういう通り道が作られているのか、と考えればいいと思います.それぞれの通り道がどんなところで、あるいはどういう場合にはたらくのかについては、今後の授業の中で順次取り上げていきます.例えば、第3章ではいくつものイオンチャネルがニューロンの機能を発揮させるためにはたらいているしくみを考えます.また、消化器では消化・分解された栄養素がどのように吸収されるか、泌尿器では水の再吸収をはじめ、多くの物質が腎臓でろ過あるいは吸収されるしくみを学ぶことになると思います.

来週は、前半で、受動輸送のうち溶媒の輸送=浸透について取り上げます.解説を配布しましたので、来週の授業までに一読しておいて下さい.後半では、能動輸送と小胞による輸送を取り上げます.

第4回 緩衝系、ATP、細胞膜(リン脂質)

今日はやや雑駁になってしまいましたが、今後の授業につながる重要な内容がいくつかあります.

最初に取り上げたpHを維持する緩衝系は、ホメオスタシスを成立させる上で非常に重要なしくみです.体液の水素イオン濃度によってはタンパク質の変性を生じたり、化学反応がきちんと進まなかったりして、細胞機能に大きな影響を与えることになるからです.呼吸器系や泌尿器系、先生によっては「酸塩基平衡」というテーマで独立に説明されるかもしれませんが、しっかりと勉強して下さい.

アデノシン三リン酸については、突然で何をどう理解するべきかわかりにくいかと思いますが、来週の授業では、細胞膜の機能の一つとして、ATPの分解で生じたエネルギーを使って物質を輸送するしくみについて取り上げます.また、細胞内でATPがどのように産生されているかについては、消化器系から続く「栄養・代謝」のところで取り上げられると思います.私の授業の中では、細胞の機能として、細胞質やミトコンドリアのところで簡単に説明します.

第1章の最後に、「水の不思議」、「アミノ酸、ペプチド、タンパク質」、「糖と糖鎖、糖タンパク質、糖脂質」についての解説を載せました.糖については来週の授業で取り上げる内容も含んでいますが、水とタンパク質については今日、あるいはこれまでの授業の復習もかねてよく読んでおいて下さい.「食塩が水に溶ける」ということについても説明しています.

さて、第2章から本格的に生理学らしい内容に入っていきます.今日はリン脂質の構造について説明しただけで終わってしまいましたが、「細胞膜」は前期の最も重要なキーワードです.細胞膜の構造と機能に関する理解がないと、これから取り上げていくニューロンや筋細胞の機能を考えていくことができませんので、しっかりと復習しておいて下さい.

第3回 体液の組成とpH

今週は体液の組成について、このあとの学習に必要かつ重要なイオンの組成とpH=水素イオン濃度について考えました.あわせて、イオンやpHに関する基礎的な説明をしました.

イオンやpHは中学校や高校の理科で習う内容ですので、身近におさらいする材料のある場合には是非取り組んでみて下さい.また、対数は高校で習っていないヒトもいるのかもしれませんが、pHの考え方を理解してもらうために取り上げました.

単に結果を覚えるだけではなく、どうしてそのような結果が導かれるのか、あるいは、必ず何らかの道筋があって1つの結果、結論が得られているのだ、ということがわかってもらえれば幸いです.


授業では、このあと細胞の構造と機能を学びますが、その中で細胞内外のイオンの組成に関する知識を必要とする内容がたくさんあります.慣れてしまえばたいしたことはありませんので、できるだけ早く身につけて下さい.
また、授業の最後に触れたように、体液のpHを維持するしくみは生理学2&4で取り上げられます.そもそもpHがどの程度で、どのような要因によって変化するのかがわかっていないと理解が難しいと思います.

化学について、時間があればもう少しゆっくりと説明したいのですが、残念ながら先週、今週の説明が限界です.わからないことがあれば個別に質問して下さい.できるだけ応えられるようにしますので、何とかがんばって下さい.

次回がゴールデンウィーク明けです.久々の学校生活、1ヶ月間たいへんだった方もいるのではないでしょうか? ちょうどいい骨休めです.リフレッシュして臨んでください.次回は第1章の残りと、第2章「細胞の構造と機能」にはいり、細胞膜の構造と細胞膜を介した物質輸送のしくみを考えます.

第2回 階層性と恒常性

第2回目、先週の授業でやや不十分だった組織と細胞について簡単に補いました.細胞の一般的な特徴は来週以降の授業で詳しく取り上げていきます.組織については生理学2&4と解剖学で各器官系、器官ごとに説明されると思いますが、4つの基本的な組織の名称と特徴は今回のところで完全に頭に入れておいてください.

今週は分子、あるいは原子・元素についての説明に少し時間を割きました.来週以降も必要に応じて説明しますが、物質の基本的な成り立ちを知っているということは、単に何かを勉強するために必要であるというだけではなく、我々が生きている世界がどのようにしてつくられているのかを知ることです.全てに物質的な基盤があるという理解が、ものの考え方の根本です.これが小学校以来の学校教育において「理科」が取り扱われる理由です.

授業では必要なことをざっと眺める程度の説明しかできませんでした.中学校や高校の理科の教科書などが身近にある人は是非時間をつくって見直すことをおすすめします.

さて、生体を構成する高分子については、主に生理学2&4でいろいろ取り上げられると思います.前期の後半か後期の初めに、消化器系と栄養・代謝という形でこれら高分子の分解と吸収、さらにこれらをもとにしてエネルギー源であるATPを以下に産生するかという化学反応の道筋を学ぶことになるでしょう.改めて説明があると思いますが、タンパク質と糖質については、私の授業のプリントの第1章の最後に「参考」として簡単にまとめましたので、一度目を通しておいて下さい.

授業の後半では「内部環境の恒常性」、「ホメオスタシス」について説明しました.具体的にいろんな事例を考えながら説明しないとわかりにくいと思いますが、この「具体的に考えていく」ということが生理学の勉強そのものだと思って下さい.また、生理学や解剖学を学ぶ中で重要な概念を構築したり、画期的な発見、発明をした人物が出てきます.そんなに多くはないのですが、今回取り上げたクロード・ベルナールとウォルター・キャノンは絶対に忘れてはならない人物です.

次回以降、少しずつペースを上げていこうと思っていますので、できる限り予習をするようにして下さい.

第1回 生理学とは

今日から授業開始だったと思いますが、いかがでしたか?

イントロでWebページについてアナウンスし忘れてしまいました.悪しからず(^_^; 来週改めてお知らせいたします.ただ、現在使っているサイト(AppleがやっているiDisk)は6月いっぱいで閉鎖されるため、来月くらいには移動します.新しいサイトは決まっているのですが、設定に手間取っており、今しばらくお待ちください.

さて、今日は本当にイントロダクションのみで、たいした内容ではなかったですし、授業でアナウンスしなかったこともあり、これといって書くこともありません.まあ、ごあいさつがわりということで・・・(^_^)b

昨年は授業の記録だけで、授業の内容から発展した話題を提供することが全くできませんでした.今年は月に1回くらいは何か情報提供できるように努めたいと思います.

また、授業の最後にやったテスト(?)の答え合わせは順次やっていきます.授業の中でできることはできるだけ授業ないで説明しようと思いますが、私の授業では取り上げないテーマもたくさんありますので、それらはこのサイトを使って説明していこうと思います.

また、この2〜3年、学生の皆さんからの質問が少なくなってやや寂しい思いをしております.授業中に手を挙げるのはなかなか勇気がいると思いますが、メールであれば「こっそりと」質問できますので、遠慮なくどうぞ.

第31回〜

1年間ありがとうございました.
やや進行が遅れてしまい、最後にばたばたと詰め込んだような授業になってしまいました.

それぞれのポイントは授業中にかなり強調しましたが、過去の小テストなどを参考にしながら見直してみるといいと思います.最後の授業で触れましたが、各授業での要点はすべて小テストという形でまとめています.期末試験の問題も小テストで取り上げた項目やそれぞれの内容をつなげるように見直していけば、ほぼすべてが網羅されているはずです.

勉強は、例えば樹木を育てる(あるいは樹木が育つ)ようなもの.最も大切で、今後のいろんな勉強に必要なのが幹に当たる部分です.したがって、試験でもこの幹の部分がどれだけ太く、高く育っているかを問います.そして、この幹を太く、高くするためには多くの枝や葉が必要です.この枝や葉に当たるのが授業.したがって幹に当たる内容以外のこともたくさん取り上げて説明します.

樹木の幹を大きく育てるためにはしっかりとした根が必要です.この根に当たるのが教養、あるいは基礎的な学力です.したがって日常的に本も読まないといけないし、いろんなことに興味を持って自分で調べていく力が必要です.

今後(卒業後も)生理学的な内容でわからないことや疑問に思うことがあればいつでも質問してください.来年度も授業は毎週月曜日の午前中です.たぶん昼休みには学生食堂でお弁当を食べていると思いますので、適当につかまえてください.もちろんメールもオーケーです.

第30回 大脳基底核と大脳皮質

今日は大脳での運動の調節について取り上げました.
大脳基底核は、その構成が解剖学的な定義とは異なり、機能的に線条体を中心としたまとまりに入るかどうかを基準にして考えます.したがって、「大脳基底核の機能」というタイトルはおかしいのですが、一応多くの教科書にしたがいました.

さて、基底核の機能の基本は、冒頭にまとめた「運動の発現・遂行、終止の調節」と「不必要な運動の抑制」、「姿勢の制御」です.特に始めの2つを疾患と関わらせて説明しました.
神経回路の説明に時間をかけましたが、宙で描ける必要はありません.メカニズムを考えるということの実例です.取り上げた3つの疾患、特に最も有名なパーキンソン病については1度自分で説明を考えてみるといいでしょう.神経回路の考え方を理解する上では格好の材料です.

大脳皮質については時間がなく、おおざっぱな説明でした.運動性皮質を構成する3つの領野について、場所と機能を整理しておいて下さい.一次運動野は一次体性感覚野と比較しておくと、ともに理解が深まると思います.

第29回 脳幹と小脳の機能

今日は脳幹と小脳を取り上げました.

中心は脳幹を中枢とする反射とそのしくみ(反射弓)でしたが、特に前庭動眼反射はその役割から考えても重要です.図を使って説明しましたが、自分の言葉で説明できるようによく見直しておいて下さい.

眼球運動の調節は前庭動眼反射や視運動性反応を含めて、いくつかの反射や随意的な運動によって担われています.プリントに取り上げた中で授業では飛ばしてしまった「サッケード」反応も有名な運動です.

小脳の機能は簡単にしか説明できませんでしたが、随意運動を協調させる、複雑な運動の学習と記憶の2つがポイントです.

第28回 脊髄反射

今日は脊髄に中枢がある反射について取り上げました.

反射という言葉は日常会話でも使うことがありますが、生理学的には厳密に定義された現象です.いったん学んだ以上は意識して使ってください、反射のメカニズムは反射回路=反射弓で常に説明されます.来週もいろんな反射を取り上げ、全て反射弓を考えますので、よく慣れてください.

さて、今日の中心は2つ、「伸長反射と拮抗抑制、自原抑制」と「屈曲反射と交叉性伸展反射」です.図をよく見て、反射弓を自分の言葉で説明できるように復習してください.
また、神経回路の考え方も多少慣れる必要がありますが、遠心路が抑制されて効果器である筋が弛緩する場合には、中枢に抑制性介在ニューロンが含まれています.これも声に出して説明しながら考えるといいでしょう.

小テストや期末テストの設問は、しっかりと理解しているかどうかを問うことを目的として設問するので、いろんな問い方があります.自分なりに問題をつくったりして考えてみるのもいいでしょう.

今思い出しましたが、昨年、中和の治療所で鍼をうってもらった際、屈曲反射を生じました.確か左手の親指の付け根あたりだったと思います.何という場所かわかりませんが、first pain(鋭い痛み)を感じるまもなく、反応したのを覚えています.要注意!

第27回 視覚2

今年最後の授業でした.

始めに追加で取り上げた「両眼視差」はヒト(あるいは動物一般)が2つの眼を使って対象を立体的に見ることができる根拠です.プリントのステレオグラムや3D映像もこの視差がある故にできることです.授業では触れませんでしたが、ステレオグラムを簡単に立体的に見るための眼鏡もあります.

さて、感覚器の最後に視覚の受容器、つまり光をとらえる網膜のしくみを考えました.直接光エネルギーに反応する細胞は2種類、杆状体細胞と錐状体細胞で、それぞれの外節にある特殊なタンパク質が光エネルギーを受け取ると構造変化を生じます.この構造変化が細胞内のたくさんの化学反応を誘導して、最後に細胞を過分極状態にします.詳細は省きましたが、プリント309頁の図をよく見ておいてください.視細胞の過分極がグルタミン酸の放出を抑制し、双極細胞の興奮を引き起こします.双極細胞の興奮は神経節細胞を刺激して視神経をインパルスが伝導していきます.

ロドプシンを「感光色素」と表現するのは、光が当たることによってロドプシンが構造変化するが、光がなくなると(レチナールがあれば)元に戻る(=再生する)からです.杆状体細胞が暗いところでよく反応するというのは、昼間の光は強すぎてロドプシンの再生が間に合わ内からです.これに対して、錐状体細胞が持っている3つの感光色素は昼間の明るさでも十分に再生して機能します.したがって昼間はたらいているのはほとんど錐状体細胞の方です.

先週の授業で暗順応と明順応を説明しましたが、明るさが急激に低下すると、杆状体細胞の持っているロドプシンが再生して反応し始めますが、この再生にかなりの時間がかかることが、順応に時間が必要な要因の1つです.

視覚の伝導路は視交叉での交叉のしかたがやや複雑で、試験にはよく出題されます.わかりにくい場合は何度も自分で図を描いて確認してください.しかし、より根本的には、視野と一次視覚野が左右入れ替わっているということではないかと思います.体性感覚と同様で、無駄をしないはずの生き物(あるいは進化)が、どうしてこのような構造をつくったのか非常に不思議です.

色の感覚についてはもう少し説明したかったのですが、時間切れでやや中途半端になってしまいました.広告や標識など、身の回りには色によって区別することを強いているものがたくさんあります.しかし、色盲・色弱の場合には、その区別がつきにくく、非常に不便、あるいは不都合を来すことも多々あるようです.近年、「カラー・ユニバーサルデザイン」という考え方で、色を上手に使って色弱者にもうまく情報が伝えられるようにしようという運動が始まっています.興味のある方はここ(http://www.cudo.jp/cud_nani/index.html)を参考にしてください.なぜ色盲、色弱の症状が出てしまうのか、遺伝子レベルでも説明もあります.

皆さん、よい年をお迎えください.

第26回 視覚1

今週は学会出張があり、遅くなってしまいました.

今週と来週で視覚機能について取り上げます.他の感覚器官では、適合刺激がどのように受容器細胞に受容器電位(脱分極)を生じるかというテーマを考えることに終始したのですが、視覚器=眼球では可視光線を受容する場である網膜にたいして、その可視光線をどのよに届けるのかという調節も大きな意味を持っています.今週は可視光線が網膜に届く前の段階について取り上げました.

ポイントは、遠近の調節と明るさの調節です.

遠近の調節のしくみは、冒頭で少し説明をした光(光線)は通過する媒体が変化すると屈折するという性質を利用しています.膜膜と水晶体の両方で屈折していますが、調節能力としては水晶体が中心.毛様体筋の収縮と弛緩によって水晶体の厚みが変化させられ、この結果前方から入射してくる光の屈折率が変化して、網膜に結像=焦点のあった像を造ります.いくつか図を使って説明しましたので、よく見直しておいてください.また、視力について、近視や遠視、あるいは老眼がどのような原因によるのか、それらを矯正するためにはどのような工夫が必要かについても触れました.すでに近視や老眼の矯正眼鏡を使っている人には当たり前のようなことですが、改めていろいろ調べてみるといいでしょう.

明るさの調節は虹彩を構成している2種類の筋の収縮と弛緩によって調節されます.いずれも平滑筋ですから、自律神経系によって支配され、交感神経と副交感神経のいずれが優位にはたらくかによって拮抗的に作用します.

眼球の運動についてはあまり触れられませんでした.小テストでは平衡感覚との関わりで外眼筋を支配する脳神経の名称を出題しましたが、それぞれの神経がどの筋を支配しているのかも改めて復習しておいてください.年明けに運動機能について取り上げますが、ここでもう一度考えることになると思います.

第25回 平衡感覚

今日は平衡感覚について取り上げました.

動物にとって最も原始的な感覚、つまり進化的に最も早く獲得された感覚ではないかと思います.同時に、検知した情報を直ちに運動につなげる必要があるため、新皮質をほとんど使わずに、直接運動神経とつながっています.したがって、単一の「平衡感覚中枢」のような場所はなく、前庭器官から伸びた神経(=前庭神経)を一次ニューロンとして、二次ニューロンにあたる神経が運動神経核につながっています.

さて、前庭器官は大きく2つに分けて説明しました.内リンパの流れを有毛細胞の興奮に変換しているというしくみは全く同じです.さらに授業では、聴覚器である蝸牛・コルチ器と比較して説明をしました.共通する構造や機能を持っていて.空気の振動と重力に対する変化を内リンパという液体の動き(振動)に変化させているという点で共通します.同じ場所にあり、基本的に同じしくみを使って刺激を受容し、ニューロンの興奮に変えています.
半規管と卵形嚢・球形嚢が、身体、あるいは頭部のどのような動きに対して反応するのかを先ず理解しておいてください.構造的には、両者のの相異点をはっきりさせれば、試験で問われるような重要な構造が何であるかはすぐにわかってくるでしょう.

最後に、光について簡単に説明をしました.視覚器はこれまでに学んだ感覚器官とくらべると、しくみがやや複雑です.聴覚が音波(空気の振動)という物理的な現象をニューロンの興奮という生物学的な現象に変換していたように、視覚器は光線という、これも物理的な現象を受容しています.したがって、その実体についても一通りの理解が必要だと思います.

第24回 聴覚の構造と機能

今日は聴覚器(耳)の構造と機能と考えました.先週の授業で音(音波)が空気(の分子)の振動=縦波であることを説明しましたが、この空気の振動がどのようなしくみで生物学的な機能=細胞(ニューロン)の電気的な興奮に変換されていくのかを理解してください.

構造の詳細は解剖学で学んだことも含めて、改めて見直しておいてください.生理学として重要なのはプリントp279~281の図でまとめた、

外耳道に入ってきた空気の振動が

鼓膜、耳小骨、卵円窓の機械的な振動へ変換された後、
内リンパ(前庭階、鼓室階)の液体の振動(圧力波)となり、
さらに、基底膜や前庭膜の振動へ変換され、有毛細胞の不動毛(感覚毛)を押し倒す(これも機械的な振動です)
そして、カリウムチャネルを開いて脱分極を引き起こす

この一連の流れです.


授業の始めにも触れましたが、構造があって初めて機能を考えることができます.聴覚器は構造と機能を結びつけて考える上で格好の例題でもあります.よく復習してください.

これまでに学んだいろんな感覚受容器のしくみに比べると、刺激の入力から細胞の興奮に至るまでの過程がやや複雑です.例えば、味覚や嗅覚の場合には、化学物質が受容体タンパク質に結合(あるいはイオンチャネルを通過)すれば、直ちに脱分極が生じると考えればよかったわけです.空気の振動という現象があまりにも抽象的というか、特異性がないというか、単純な「受容体」では区別して受け取れないような刺激であるために、こんな回りくどい方法を作り上げてしまったのかもしれません.

聴覚の伝導路も、左右の並行経路であるという点で独自の特徴があります.しかし、他の多くの感覚同様に視床が重要な中継所として機能していますので、これは見落とさないでください.

音源定位のしくみや音程の聞き分けなど、複雑すぎて十分に勉強できていないところがたくさんあります.また、そのほかまだ未解明なところも多く、今後大いに発展していく分野だと思います.

第23回 嗅覚の伝導路、音波の特徴

今日は前半で嗅覚の伝導路を取り上げました.これまでに取り上げた体性感覚や味覚と比べると、新皮質に一次野がない、伝導路が視床を経由したシンプルか構成になっていないなど、嗅覚が原始的=哺乳類などが登場する以前から動物に備わっていた感覚であることを示すいい例だろうと思います.

授業ではあまり触れられませんでしたが、嗅覚情報が視床下部や辺縁系に入力しているということは、情動行動とも密接につながっているということです.快・不快に伴うさまざまな反応や性的な行動などに嗅覚が深く関わっていることの証です.

このあと聴覚や視覚の伝導路についても取り上げますが、いずれも視床を経由して味覚などと同様の構成をしています.これに対して、嗅覚と平衡感覚は大部様子がことなっていて、いずれも原始的な感覚であることがわかると思います.

後半では、聴覚の適合刺激である音=音波について、少し詳しく説明しました.空気の振動としての物理的な性質だけではなく、できるだけ聴覚の特性とも関わらせて説明したつもりですがいかがでしたか? 狭義の「生理学」の範疇は超えていますが、自然現象を刺激として受容しているわけですから、ある程度の知識は必要ですし、できるだけ幅広く、また本質をつかんだ勉強ができるように取り上げました.

第22回 味覚と嗅覚

今日