2018年度 第6回 細胞分裂と染色体、DNAと遺伝子

 今回と次回で遺伝子と遺伝子発現を考えます。遺伝子は、もちろん「遺伝する因子」という意味ですが、ここでいう「遺伝」とは、親から子へという意味だけではなく、細胞が分裂したときに娘細胞へ伝わるという意味でもあります。したがって、始めに細胞分裂について取り上げました。

 体細胞分裂や細胞周期のメカニズムについては現在も研究が進められている分野で、おそらく終わりはないでしょう。しかし、ビデオで見たように、細胞を顕微鏡下で観察して得られる情報はすでの多く集められています。授業では簡単な模式図しか使いませんでしたが、染色体の形成を中心に、図をよく見ておきましょう。カラーのパネルには少し解説もつけられていますのでよく読んでおくように。説明のうち、「紡錘体極」とあるのは中心体だと考えてかまいません。また、紡錘体赤道面とは中期赤道面、染色体が整列する部分のことです。

 DNAは細胞周期の間期に複製され、分裂期に入ると染色体を形成します。それぞれの染色体は二つの染色分体がセントロメアで結合した構造です。二つの染色分体を合わせて姉妹染色分体ということもありますが、両者をあえて区別する必要もないので、名称は省いて説明をしました。細胞が分割されるとき、染色分体が互いに離れて、それぞれの娘細胞へ分かれていきます。

 複製されて二倍になったDNAは、こうして2つの娘細胞へ分配されます。これら一連の現象が連続していくことから、細胞レベルでも「遺伝」と考えます。

 ところで、ヒトの体細胞の染色体の数や構成は一般常識です。一市民として当たり前の知識ですから、医学を学ぶみんなにとってはいつでも説明できなければなりません。

 DNA、あるいは核酸については『生理学のための化学』を参考に自習しましょう。ヌクレオチドの構成、相補的な塩基の組合せ、そして、2本のヌクレオチド鎖が相補的な塩基どうしが向き合うことによって二重らせん構造をつくることなど、基本的なことをおさえておけば複製のしくみや、来週取り上げる転写のしくみも理解は容易です。

 DNAの構造が、相補的な塩基どうしが向き合った二重らせん構造であるという事実は、20世紀の自然科学における最大の発見の1つです。前回紹介したオートファジーの研究も、iPS細胞の研究も、さらにこれらのベースにあるバイオテクノロジー自体が、この発見を基にして成立し発展しています。物理学分野において、量子力学無くしてコンピューターもインターネットもなかったでしょう。同じように、生物学分野においても、DNAの構造が明らかにならなければ、現在の医学・生物学の発展はありませんでした。