2018年度 第17回 運動単位、収縮の特徴

 期末試験はどうでしたか? 模範解答はWebに掲載をしましたので授業前に見ていたことでしょう。自己採点と比べていかがでしたか?
 
どれだけできたかにかかわらず、必ず一度は見直すようにしましょう。前記の内容は前期で終わってしまうわけではなく、直接、間接に後期の内容に結びついています。

 後期は前期に学んだ神経系と筋系の理解の上に立って、体性神経系の機能を、感覚機能と運動機能に分けて取り上げます。始めに取り上げる感覚器系は、感覚受容器とその適合刺激、さらに感覚受容器からそれぞれの感覚器の中枢への伝導路と中枢の機能を順に考えていきます。来週は、多くの感覚機能に共通する特徴を、『総論』として概説します。後期中盤では、中枢の機能から始まって、実際に運動に関わる筋のはたらきを考えていきます。運動機能に関する中枢のはたらきはまだまだ不明な部分が多いため、一部は疾患の症状から機能を推測することにします。

 後期の後半では、末梢神経系のもう一方である自律神経系について、前記の内容をおさらいしながらより深く取り上げる予定です。生理学Ⅱ&Ⅳで自律機能全般を身につけた後の方が理解しやすい部分が多いため、最後に取り上げます。一応、ここまでが後期末試験の前に授業できる予定です。

 時間の都合で一部を割愛して進めるかもしれませんが、授業後に何回かの授業を予定していますので、その時間に埋め合わせをする予定です。

 さて、後期最初の授業では、前期のやり残しである、運動神経による筋の支配や筋の収縮の特徴を考えました。

 運動単位は、実際の筋の収縮を考える上では重要なまとまりです。特に、一つの運動単位を構成する筋線維の型が同一であり、さらにその筋線維が筋全体に分散していることによって、できるだけ効率的に筋を収縮させ、実際の運動が実行できるようにしてます。筋を支配する運動ニューロンは、すべての運動ニューロンが同時に興奮するわけではなく、求められる張力に応じて、小さな力を発揮する運動単位を支配する運動ニューロンからより大きな力を発揮する運動単位を支配する運動ニューロンへ、順に少しずつ分散していきます。しかも、できるだけ非同期的に、つまり同時に興奮しないように時間差をもって興奮します。さらに、一つの運動単位を構成する筋線維は筋全体に分散しているため、1運動単位の収縮によって筋全体が収縮することができます。運動単位を構成する筋線維は同一の型ですから、発揮できる張力の大きさを調節することも可能だし、エネルギー効率も調節できるでしょう。自然にできたとはとても思えないくらい、みごとなしくみです。

 1運動単位による1回の収縮(運動ニューロンから筋線維へ興奮が1回伝達されることによって生じる収縮)が単収縮で、このときの筋節変化を考えると、おそらくそれほど強く収縮(または短縮)しているわけではないのでしょう。したがって、連続的に興奮が伝達されることによって収縮は加重され、強縮が生じます。

 プリントp237下図の実験の説明がやや簡単でしたので、改めて説明します。
ここでは、ネコの腓腹筋を材料にして、そこに含まれる運動単位の3つの型、FF型、FR型、S型それぞれの運動ニューロンを刺激して、それぞれに含まれている筋線維群を収縮させています。図は『標準生理学第7版』(医学書院)に掲載されていたものですが、1973年に発表された米国公衆衛生院のBruke, Levine, Tsairis and Zajacによる”Physiological types and historochemical profiles in motor units of the cat gastrocnemius”(Journal of Physiology, 234, 723-748、1973)という論文より引用されたものです。

 ⒜、⒟、⒢はいずれもそれぞれの運動ニューロンを1回だけ刺激して生じた単収縮のときの筋電図を示しています。それぞれのグラフは、横軸は時間(単位はミリ秒)、縦軸は生じた張力の大きさ(単位がg)です。グラフ中の左上に描かれた小さな波線は、運動ニューロンの膜電位変化を示しており、下向きに大きく生じたピークの部分で活動電位臥床いています。つまりこのタイミングで興奮が伝達されて、筋活動電位が生じたと考えます。

 授業でも説明したように、単収縮の筋電図を観察すると、収縮を潜伏期、収縮期、弛緩期に分けることができます。グラフからは潜伏期は時間や張力の変化があまりにも小さいため、ほとんど分かりません。しかし、収縮期と弛緩期、そして張力のピークがどこであるかはよく分かります。FF型では、70ミリ秒程度で収縮+弛緩が終わり、張力のピークはおよそ40gくらいでしょうか。FR型は収縮し始めてから弛緩が終わるまでに100ミリ秒程度かかっており、張力はせいぜい10g程度です。S型では200ミリ秒近い時間をかけて収縮+弛緩し、張力はわずかに1g程度です。三つの型を構成する筋線維はそれぞれ、FF型=ⅡB型、FR型=ⅡA型、S型=Ⅰ型ですから、収縮の速度と張力の大きさの特徴がよくわかるでしょう。

 グラフの⒝、⒠、⒣では、100Hz、つまり運動ニューロンに1秒間に100回の刺激を加えることによって単収縮を加重させて強縮を生じさせています。強縮(tetanus)を生じさせる刺激を強縮刺激(tetanus stimulation)強縮を生じることによる張力の変化を表す筋電図を特に強縮曲線といいます。ここでは3~4秒間隔で強縮刺激を加えて、これを図に示された時間だけ継続して毎回の強縮曲線を記録しています。強縮を継続させることによって生じる筋の疲労のしかたが運動単位の型ごとに異なっていることがよく分かります。

 ⒝ではFF型運動単位を刺激開始時(図中には何も示されていない)、刺激を30秒間継続(30”)と示されている)、1分間継続(1’)したとき、強縮によって生じる張力がどのように変化しているかを示しています。それぞれのグラフの横に示された時間の幅は⒜と同様です。刺激開始時には、強縮によって単収縮時よりも大きな張力が生じていますが、30秒継続後には張力のピークがやや低下し、1分継続後には極端に小さくなっています。合わせて、収縮時の立ち上がりも遅くなり、弛緩の終了までも時間がかかっています。強縮が継続されることによって筋が疲労していることを示しています。

 ⒟はFR型運動単位にたいする刺激開始時、2分継続(2’)、5分継続(5’)したときの強縮の変化を示しています。強縮によって張力が非常に大きくなっていますが、それでも50g程度でしょうか。FF型運動単位に比べると、生じる張力は小さいことが分かります。しかし、この大きな張力は2分継続してもそれほど減少しておらず、5分継続すると30%ほど減少しています。FF型に比べると筋が疲労しにくいことが分かります。

 ⒣ではS型運動単位に刺激を加えて、刺激開始時、2分継続、60分継続して、それぞれの強縮による張力の変化を観察しています。生じる張力は5g程度でしょうか。FF型、FR型と比べて、張力はからり小さいですが、長時間刺激を継続してもその張力の大きさは全く変化していません。図中に時間は示されていませんが、刺激開始時と60分継続後での強縮曲線はほとんど重なっています。

 最下段の三つ、⒞、⒡、⒤は上記のような強縮刺激をさらに長時間にわたって継続しています。FR型とS型では強縮刺激を加える頻度はやや下げている場合もあるようです。⒞のFF型では15分間、⒡のFR型では50分間、⒤のS型では60分間にわたって、同一の運動単位に対して強縮刺激を継続して加え、毎回の強縮曲線を記録します。示されているグラフは、上2段のグラフの横軸を極端に狭めた様にしていると考えるとわかりやすいでしょう。張力のピークが縦の鋭いピークとして示されています。

 刺激開始時には、上段の実験を再現していることになりますが、FF型の張力は1分程度で極端に低下しており、その後さらに低下しています。FR型は4分くらいまで、張力はそれほど大きく低下しませんが、5分を過ぎたあたりから急に低下し始めます。しかし、50分後たっても、FF型ほどには低下せず、単収縮1回分ほどの張力を維持しています。FR型が疲労しにくい性質を持っていることが分かります。

 さらにS型は1強縮あたりの張力は4g程度しかありませんが、60分間強縮刺激を継続しても最大張力は変化していません。

 三つの運動単位の性質の違い、言い換えると筋線維の収縮やATP産生に関する性質の違いがよく理解できると思います。

 来週は第6章で感覚機能全般に関する特徴を考え、その後、第7章体性感覚に入ります。