第7回 遺伝子と遺伝子発現

 遺伝子や遺伝に関わる生命現象は広く関心の高い分野だと思います。この10年くらいを遡ると、高等学校でもかなり突っ込んだ内容を学習するようです。いわば常識だということでもありますが、表面的な知識にとどまらず、生理現象あるいは疾患に関わるしくみつながるように考えられるようにしていきましょう。できるだけ材料は提供しているつもりです。

 さて、授業では遺伝子を、タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの領域とタンパク質に翻訳されないRNAの塩基配列をコードするDNAの領域と定義しました。転写や翻訳のしくみと合わせると、前者にウエイトを置いた説明になっていたと思いますが、遺伝子数としては両者がそれぞれ約20,000個で、合わせて約40,000個であると頭に入れておきましょう。遺伝子数は、研究の進展によって厳密には日々変わっていますが、概数としてはほとんど変化しないと思います。まt、ヒトの遺伝子数を他の生物の遺伝子数と比較しておきましょう。

 ゲノムマップについては、βグロビンを例に挙げて説明しましたが、今後授業で多くのタンパク質を学びます。その都度、自分で探してみましょう。ヘモグロビン以外にすでに学んだものを挙げると、α-グロビン、DNAポリメラーゼ、アルブミン、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、エリスロポエチン、ABO血液型遺伝子、いくつかの血液凝固因子などです。1番染色体の「骨格筋アクチン」はαアクチンといい、細胞骨格とした学んだアクチン(βアクチンといい、7番染色体にあります)とは異異なるタンパク質をつくります。

 タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子は、エキソンとイントロンに分かれ、さらに調節領域も隣接しています。翻訳の特徴からも分かるように、エキソンのすべてがアミノ酸配列をコードしているわけではなく、非翻訳領域を含んでいます。したがって、エキソンとは、転写後のスプライシングによってmRNAをなる部分のことを指しています。

 転写の鋳型となるDNA鎖は、2本鎖のうちのいずれか一方です。どちらの鎖が鋳型として使われるかは遺伝子に依ります。相補的な組合せによって塩基対をつくりながら、転写反応が生じるところを押さえておきましょう。5個のエキソンからなる遺伝子の場合、第1のエキソンのはじめから第5のエキソンの最後までを転写します。その後、プロセシングが生じてmRNAとして、細胞質へ出て行きます。

 細胞質へ出たmRNAは直ちにリボソームと結合すると考えていいでしょう。翻訳反応は転写よりもやや複雑でしたが、mRNAの連続する3つの塩基の並び=コドンごとに一区切りとして、それぞれをアミノ酸に対応させます。アミノ酸はサイトゾル中に豊富に存在するのですが、必ずtRNAによってリボソームへ運搬されます。

 プリントp77の図に、始まりであるメチオニン以外のアミノ酸おmRNAのコドンを見ながら、順にアミノ酸を当てはめてみましょう。実感がわくと思います。そして、最後は停止コドンには、対応するアミノ酸またはtRNAがないために、ここでペプチド結合の合成反応が止まります。つまり、蛋白質の合成反応が終わります。

 できあがったタンパク質は、そのままでは機能できないため、しかるべき立体構造をつくりながら、それぞれのタンパク質が機能する部位へ運搬されていきます。来週はこの部分を簡単に説明します。今回の予習の範囲でしたが、p78の図を説明と照らし合わせながら、もう一度よく見ておきましょう。

 さらに、次回の授業では物質がどのようにして細胞膜を通過するのかについて考えます。『生理学のための化学』第9章は脂質の構造と特徴、さらになぜ細胞膜が脂質二重膜を基本構造として成り立っているのかを取り上げています。細胞膜の構造と機能を改めて確認しましょう。さらに、第4章で学んだ溶液中での物質の拡散、さらに第6章のテーマであった浸透現象も、細胞膜を介した物質移動のしくみを考える上で基礎となる知識です。理解が不十分であると感じていれば、合わせて見直しておきましょう。