2018年度 第12回 神経線維、跳躍伝導、興奮性シナプスと抑制性シナプス

 第10回、第11回の授業では興奮の伝導と伝達について基本的なしくみを考えました。今回は、神経系を構成するニューロンや神経線維の構造を理解した上で、興奮の伝導と伝達がどのようにして生じているかを考え直してみました。

 神経線維には無髄神経線維と有髄神経線維の2種類があります。グリア細胞の特徴と合わせて解剖学でも取り上げられたはずです。よく見直しておきましょう。神経線維の構造の違いは、それぞれの機能の違い、つまり、伝導のしくみの違いを生んでいます。無髄神経線維では逐次伝導が生じ、有髄神経線維では跳躍伝導が生じます。伝導速度の違いを生み出すという点が最も重要ですが、エネルギー消費にも差が生じています。

 また、神経線維はそれぞれの直径にも差があります。特に、ヒトでは有髄線維の占める割合が高いためか、有髄線維の間で直径の違いが大きく、そのまま伝導速度の違いに結びついています。この結果、神経線維を分類したときに、大きく3種類、詳細には6種類に分類します。今後の学習では、これらの分類にしたがって具体的に名称を取り上げて説明することがたびたびあります。その神経線維が、有髄線維なのか無髄線維なのか、さらに、有髄線維である場合、その中でどの程度の伝導速度を持つものかをすぐに分かるようにしておきましょう。

 軸索終末にまで伝導した興奮は、別の細胞へ伝達されます。興奮を伝達する部分がシナプスで、ニューロンについて学ぶ場合には化学シナプス(化学的シナプス)を問題にします。伝達物質と受容体の組合せによって、シナプス後ニューロンに流入するイオンが異なります。ここで、陽イオンが流入すればシナプス後ニューロンには脱分極が生じ、陰イオンが流入すればシナプス後ニューロンに過分極が生じます。前者が興奮性シナプス後電位(EPSP)で、後者が抑制性シナプス後電位(IPSP)です。

 興奮性シナプスとはシナプス後ニューロンにEPSPが生じるシナプスであり、抑制性シナプスとはシナプス後ニューロンにIPSPが生じるシナプスです。そして、興奮性シナプスのシナプス前ニューロンを興奮性シナプスといい、抑制性シナプスのシナプス前ニューロンを抑制性ニューロンといいます。逆に言うと、興奮性ニューロンは興奮を伝達してシナプス後ニューロンにEPSPを生じるニューロンで、このシナプスが興奮性シナプスです。抑制性ニューロンとは、興奮を伝達してシナプス後ニューロンにIPSPを生じるニューロンであり、このシナプスが抑制性シナプスです。

 抑制性ニューロンも興奮しますので注意しましょう。

 シナプス後ニューロンに生じたEPSPやIPSPは細胞全体として加重されます。この結果、閾値を超えると活動電位が生じます。特に、中枢神経系のニューロンでは、各シナプスで生じるEPSPが小さいため、加重することによる効果が大きいと考えられます。プリントに脊髄の運動ニューロン(これは脊髄から骨格筋に向けて軸索を伸ばしている末梢神経)では、非常に多くのシナプス前ニューロンとの間でシナプスをつくっています。多くは興奮性シナプスと考えられますが、抑制性シナプスもあります。したがって、加重の効果によって活動電位が生じるか否かが決まります。一方、末梢神経系のニューロンや骨格筋などではシナプス1カ所に生じる(あるいは1本のシナプス前ニューロンによる)EPSPが大きく、簡単に閾値を超えることがあるようです。

 話は少しそれますが、授業でも簡単に触れたように、心筋や平滑筋では電気シナプス(電気的シナプス)によって興奮が伝達されます。刺激伝導系を構成する特殊心筋での興奮の伝達(「伝導」系といいますが、特殊心筋の細胞から細胞へと興奮が伝わっていきます)、さらに心室、心房で、それぞれを構成する固有心筋に興奮が伝わる場合に、この電気シナプスのしくみがはたらいています。前期の最後に、時間があれば心筋や平滑筋で活動電位が生じるしくみなどに触れることがあるかもしれません。

 来週は、興奮の伝達を考える上で避けることができない神経伝達物質とその受容体について説明します。その後、シナプスを介したニューロンどうしのつながりによって形成される神経回路を取り上げます。ここで、興奮性シナプスと抑制性シナプスの機能のしかたを考えてみます。その後、末梢神経系、特に自律神経系の構造と機能について取り上げます。