METライブビューイング 《ノルマ》

 以前にも紹介しましたが、敷居が高いと感じる方の多いオペラを身近な映画館で見ることができます。国内で上演されているオペラはたまにNHKが放送するくらいですが、海外のいくつかの歌劇場では独自の事業として世界中に発信しています。中でも最も成功しているのが、この事業の先駆者でもあるニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の「METライブビューイング(現地では”MET Live in HD”と呼ばれ、日本では松竹系が配給している。”HD”はhigh difinitionの略で、「高精細、つまりきれいな映像で提供すると言いたいのでしょう)」です。Webサイトはここ(http://www.shochiku.co.jp/met/)です

 東海地方では、名駅のミッドランドスクエア・シネマで、それぞれ1週間ずつ上映されています。1上映が¥3,600と通常の映画の二倍の価格ですが、オペラの実演奏時間は2~4時間、出演者のインタビューやバックステージ・ツアーのような時間も含まれるため、一般的な映画の2倍以上の時間になりますので、納得しておきましょう。たいてい途中に1回ないし2回の休憩があります。

 シーズンは11月から翌年の5月か6月までで、10作品が上映されます。今シーズンの第1作目はベルリーニ(ベッリーニ)作曲の歌劇《ノルマ》。19世紀前半にイタリアを中心につくられた「ベルカント・オペラ」と呼ばれる一連のオペラの最高傑作とされる作品です。「ベルカント」とはイタリア語で「美しい歌」という意味ですが、オペラの場合、歌手の歌う技術を極限まで追求しています。したがって、《ノルマ》のような作品は歌手にとっては負担が大きく、必ずしも上演頻度は高くありません。

 主な登場人物は3人で、平たく言えば三角関係の末の悲劇です。いずれも感情の変化の幅が大きいため、演じる歌手は高い表現力が求められます。また、舞台となっているのが共和制ローマに支配された紀元前のガリア地方(今のフランスとその周辺)で、反乱を企てるケルト人を演じる合唱団も大きな役割を担っています。

 今回の上演で主役のノルマ役を歌ったソンドラ・ラドヴァノフスキーは、単にテクニックだけに流れることなく、感情の起伏を見事に表現していたと思います。また、合唱団は分厚い響きで非常に聴き応えがありました。

 《ノルマ》は昨年11月に実演を聴いています(ここです)。このときは歌手目当てで聴きに行きましたが、今回は演出や各歌手の歌唱、オケの演奏などいくつかの聴き所を十分に堪能できました。

 次回は12月の中旬で、モーツァルトの《魔笛》です。非常に有名な作品で、ファンタジーのようなストーリーです。ヨーロッパでは子どもが初めて見るオペラとされているとのこと。やや奇想天外すぎて、大人が見るとキツネにつままれたような気分にもなりますが、ソプラノからバスまで、高度なテクニックを要する歌唱から心にしみる響きまで、いろんなタイプの歌唱や合唱を楽しめます。

 METライブビューイング以外では、ロンドンの英国王立歌劇場(通称、コヴェント・ガーデン歌劇場、またはロイヤル・オペラ)のライブビューイングを東宝系が配給しています(Webサイトはここ:http://tohotowa.co.jp/roh/)。コヴェント・ガーデンはバレエも非常に有名であるため、オペラの上演だけではなく、バレエの上演を併せて年間10数本を、MEtと同様にそれぞれ1週間ずつ上映しています。東海地方では、TOHOシネマ・名古屋ベイ(イオンモール・名古屋港に隣接しています)で上映されています。たぶん、毎回「プレミアム・スクリーン」を使っているようですので、部屋の内装やシートなど高級感があります。