METライブビューイング《湖上の美人》

オペラは敷居が高いと感じる方も多いでしょう。確かに生のオペラはかなり高額ですし、良さが分かるには多少の知識と経験も必要です。しかし、そのストーリーは決して堅苦しいものではなく、誰でもなじめるような簡単な筋のものがほとんどです。NHKが深夜の放送枠で世界の有名歌劇場の公演をよく放送していますが、映画と一緒で、家でテレビ(録画)を見てもなかなか集中して鑑賞するというわけにはいきません。

現在、いくつかの有名歌劇場が生の公演をハイビジョン撮影して映画館に配信して安価に視聴できるようなサービスを提供しています。そのうち、最も成功しているのが、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のライブビューイング、英語ではMetroporinta Opera Live in High Difinition 。カメラ・アングルもよく考えられており、歌手のアップがあるかと思えば、真上やステージ下からの映像も見られます。文字通り「ライブ」で配信しているため、休憩時間も劇場と同様にあり、その時間には出演歌手たちのインタビューの他、バックステージ・ツアーのように舞台転換の様子や衣装部屋などを紹介してくれます。世界中の2000ヶ所以上の映画館にライブで配信されているようですが、日本では松竹が配信権をもっているようで、3週間ほど遅れて字幕を付けて1週間にわたって上映してくれます(HPはここです)。上映される映画館は限られていて、この辺りでは名駅のミッドランドスクエア・シネマだけですが、土、日は毎回ほぼ満席です。

欧米のオペラシーズンは秋から初夏にかけて。そろそろ終盤にさしかかっているわけですが、METライブビューイング2014-2015シーズンは全10作、先週土曜日から今週金曜日まで、シーズン第9作、
ロッシーニ作曲、歌劇《湖上の美人 ”La Donna del Lago”》全2幕
台本:アンドレア・レオーネ・トットーラ(イタリア語)
が上映されています。劇場ではほとんど原語上演ですが、洋画同様にスクリーンの下部に字幕が出ます。(歌劇場では前の座席の背もたれに字幕が出ます。また、日本では舞台両脇に電光掲示板をたてることが多いようです)

ストーリーはここを参考にして下さい。現実にはあり得ないおとぎ話のようですが、そこにリアリティを与えるのが音楽の力。原作は18世紀のイギリスの作家ウォルター・スコットの同名の叙事詩です。おそらく同時代をイメージして作られた話だろうと思います。スコットランドの田舎が舞台のため、決して豪華なものはなく、時代を感じさせるのは衣装のみ。それだけに、歌と音楽に集中できて歌手たちの声の競演を楽しむことができました。

ロッシーニは18世紀の終わりから19世紀にかけて活躍したイタリアのオペラ作曲家です。《セビリアの理髪師》の名前は聞いたことがあるかもしれません。今回の《湖上の美人》はそれほど有名な作品ではなく、DVDなどもほとんど発売されていないため、今回はほとんど予習なしで観に行ったので完成度の高さに驚きました。特に、4人の歌手、メゾ・ソプラノ2人とテノール2人の歌の妙技を心ゆくまで堪能できます。

特に注目していた歌手は、主役であるエレナがメゾ・ソプラノのジョイス・ディドナートと振られ役に当たるスコットランド王・ジャコモ役のテノール、ファン・ディアゴ・フローレス。ともに、コロラトゥーラという、オペラ特有の超絶技巧を得意としている代表的な歌手。さらに、ファン・ディアゴ・フローレスは透き通った伸びのある声色と高音も特徴で、これを聴きたさに劇場に足を運ぶお客さんも多いはず。

今シーズンの国内でのライブビューイングのキャッチコピーは「オペラと恋は、やめられない」ですが、もう本当にやめられません。