恋人との再会:ナタリー・デセイ リサイタル

月曜日は授業のあと、休暇を取り東京・サントリーホールでおこなわれた
ナタリー・デセイ&フィリップ・カサール デュオ・リサイタル
を聴きに行きました。

ナタリーとは1年半ぶりの再会。現代を代表するソプラノ歌手の1人で、特に透明感のある声と高音を巧みに操る技術、オペラでの達者な演技はずば抜けています。いつもはCDの音とDVDなどの映像でしか会うことができず、生は今回で3回目です。前回はサイン会もあり、間近で会えたのですが、今回は舞台と客席、10メートルも離れていました。

前々回は
ヴェルディ:歌劇「椿姫」(イタリア・トリノ王立歌劇場公演)(ここを観てください
オケは違いますが、『椿姫』の中の代表曲をここで歌っています
前回は
ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」(ロシア・マリンスキー歌劇場公演、演奏会形式)(ここを観てください
とオペラの主役としての来日でしたが、今回はリサイタル。しかも、母国語であるフランス語の曲が大半を占めており、半年前から予約して楽しみにしていました。

プログラムは
クララ・シューマン、ヨハネス・ブラームス、リヒャルト・シュトラウス(以上ドイツ語)、ヘンリ・デュパルク、ガブリエル・フォーレ、フランシス・プーランク、クロード・ドビュッシー(以上フランス語)のそれぞれの歌曲を数曲ずつ。作詞者はドイツのハイネやリュッケルト、フランスのボードレール、マラルメなど。

すべてを紹介することはできませんが、この日のメインはやはり最後に歌われたドビュッシーの2曲
現れ(作詞:マラルメ)とアリエルのロマンス(作詞:プルジュ)
です。
ドビュッシーは20世紀前半に活躍したフランスの作曲家、吹奏楽をやっちたかたであれば交響組曲「海」、ピアノをやっていた方は「月の光」などをご存じでしょう。ドビュッシーは歌曲もかなりたくさんつくっており、ナタリー&カサールでドビュッシーの歌曲集CDをリリースしています(これです)。つまり、これらは完全に掌中に収めた曲。さすがでした。
それまでの演奏もすべてすばらしく、うっとりと聴いていたのですが、この2曲は全くの別物。

いずれも恋の歌ですが、全く歌詞を知らなくともそうと分かる見事な表現。ときにうきうきと、ときに寂しく、ときに悲しく。彼女は歌うときにかなり身振りをいれるのですが、差し出された手がまるで自分のほうを指さしているの?と思わせるほどに、聴くものを引きつける力がありました。客席全体の雰囲気も、最後の2曲での緊張感は並大抵ではありませんでした。

前から9列目の端のほうの席。それほど離れているわけではないのですが、それでも目の前にスピーカーを置いているかのようにしっかりときこえてきます。特に、弱音からクレッシェンドしていくときや高音で長く伸ばすときの声の透明感は、いつまでの続けてほしいと思うくらいうっとりとします。

これ以外は大半がはじめて聴く曲ばかりでしたが、当日配布されたプログラムにはすべて原語と対訳がついていました。休憩時間などに斜め読みをしておおよそを頭に入れておけば、あとはナタリーの表現ですべて納得してしまえる演奏。まさに陶酔の一夜でした。