METライブビューリング:今シーズン開幕

過去のブログで何度も取り上げてきましたが、毎年秋から春にかけて、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場での上演をライブ録画して映画館で上演する企画:METライブニューリング(MET Live in High Difinition)が始まりました.日本では松竹が配給していて、名古屋ではミッドランドスクエアシネマで観ることができます.(HPはここ

今シーズンは全12作、来年がオペラの2大巨匠であるヴェルディとワーグナーのともに生誕200年に当たることから、両者、特にヴェルディの作品が多く取り上げられます.

第1作目が先週土曜日から今週金曜日まで、ドニゼッティ《愛の妙薬》です.前回紹介した《ルチア》と同じ作曲者の作品(初演は1832年)ですが、この作品はラブ・コメディ.割と気楽に観られます.

METの今シーズンのオープニングを飾った新演出.あらすじと観所・聴き所をライブビューイングのHPからコピーすると

19世紀のスペイン、バスク地方。農場主のお嬢様アディーナは、美人でチャーミングで知的と三拍子揃った皆のマドンナ。純情な青年ネモリーノは、『トリスタンとイゾルデ』を皆に読みきかせる彼女に想いを募らせる。きざな連隊隊長ベルコーレがアディーナに熱烈なアタックを開始したことを知ったネモリーノは、薬売りのドゥルカマーラから、これを飲めば相手も自分を恋するようになるという「愛の妙薬」を手に入れるが・・・。 「愛の妙薬」が取り持つ、インテリお嬢様と純情青年の恋のゆくえは?〈人知れぬ涙〉などの名アリアでも知られるドニゼッティの傑作ラブコメディが、A・ネトレプコ、M・ポレンザーニ、M・クヴィエチェンのゴールデン・トリオで登場!ヒット作を連発するB・シャーのおしゃれな舞台で、人気絶頂のスター・ソプラノ、ネトレプコのチャームが花開く!イタリアの名バリトン、A・マエストリのいかさま薬売りにも注目!

主役であるネモリーノを歌うポレンザーニは癖のないすっきりとした声で純朴な村の青年を演じ、ヒロイン・アディーナを歌うネトレプコは明るいというよりはややハスキー気味ですが落ち着いた歌声です.これが知的なお嬢様にぴったり.

このオペラの最大で最も有名なのはネモリーノが歌うアリア「人知れぬ涙」.
ここでライブが観られます.ポレンザーニの声の美しさと表現のすばらしさを感じてください.(会場からは拍手の嵐、アンコールしてくれなかったのが残念です)

オペラは常に同じ楽譜を使って演奏されるので、音楽はいつも一緒ですが、演出は劇場によって、あるいは公演によって異なります.現在のオペラは『演出の時代』といわれ、どんな舞台設定、演技かによって見方、聴き方がまるっきり違います.この《愛の妙薬》は、ややどたばたコメディっぽい演出もあり、それだけに楽しく観られるのですが、今回のMETの演出は非常にシリアスというか、奥行きのあるストーリーに仕上がっています.ハッピー・エンドであっても、そこに至る過程で登場人物たちにはいろんな悩みや葛藤があるはず.今回の上演はそこをしっかりと描いていて、非常に見応えがありました.