METライブビューイング《蝶々夫人》

 GW明けで上映されたMETライブビューイングは
プッチーニ作曲:歌劇《蝶々夫人》
題名はご存じの方も多いでしょう、明治時代の長崎を舞台にした名作です。ヨーロッパの作曲家の作品で日本を舞台にした歌劇は他にもないわけではありませんが、本格的に日本人や日本の情景を描いた作品は《蝶々夫人》が唯一と言っていいでしょう。

 あらすじはここにまとめたので見ていただくことにして、やはり主人公である蝶々夫人と相手役のピンカートンの2人の歌唱を注目していました。前回の《マノン・レスコー》に続いて、
クリスティーヌ・オポライス(ソプラノ、蝶々さん)
ロベルト・アラーニャ(テノール、ピンカートン)
の2人です。

 第1幕最後の2人の二重唱は息もぴったりと合い、幻想的な演出と相まってオペラの魅力を堪能できました。また、第2幕は第1場と第2場の間で休憩を入っていますが、第1場の方では蝶々さんは約1時間をほとんど出ずっぱりで歌います。相当の体力が要求されると思いますが、有名な「ある晴れた日に」の他、聴かせどころ、泣かせどころで聴くものの心をつかむ見事な歌唱でした。

 蝶々さんを歌ったオポライスはプッチーニを得意としているようで、昨年は《ラ・ボエーム》というプッチーニの代表作でヒロインのミミを歌っています。今回の蝶々さんは非常に高音域を要求するようですし、第1幕では15歳、第2幕では18歳の役。若々しさも演じなければいけないため、歌手を選びます。オポライスはまだ30代前半かと思いますが、まさに適役。今後レパートリーをどのように広げていくのか楽しみです。

 ピンカートン役のアラーニャは1963年6月生まれ、現代を代表するテノール歌手(たぶん5指には入る)です。男性は歌手寿命の長い人が多いためまだまだこれからですが、少し前の抜けるような明るさは少し薄らいだ気がします。ただ、表現力はさすが。おそらく20代半ばくらいに設定しているであろうピンカートンになりきっていたように思います。これまでにいろんな役を歌っているのを聴いていて、記憶にあるのはいずれもモテ男役ばかり。ご本人の顔立ちや声質からすると当然かもしれませんが、いかにも楽しそうです。

 メトロポリタン歌劇場のライブビューイングシリーズは毎年文化の日の週に始まり、5月末か6月初めまで、現地上映より3週間ほど遅れますが、10作品が上映されます。来シーズンの予定もすでに発表されました(ここ)。メジャーな演目から新作まで、ベテラン歌手から若手と幅広くそろえられています。