小山実稚恵 ラフマニノフ二大コンチェルト

日曜日(2015/4/5)に、名古屋・栄の愛知県芸術劇場コンサートホールで
『小山実稚恵 ラフマニノフ二大コンチェルト』
と題したコンサートがありました。プログラムは
チャイコフスキー:歌劇《エフゲニー・オネーギン》より「ポロネーズ」
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調
ピアノ独奏:小山実稚恵
指揮:川瀬賢太郎
管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団

毎年、CBCが主催して行われる《名古屋国際音楽祭》の今シーズンのオープニングコンサートでした。ピアニスト・小山実稚恵は今年がデビュー30周年を迎え、その記念コンサートとしての意味もあるようです。

先ずはピアニストの紹介を簡単に。小山は1959年生まれ、名実ともに日本を代表するピアニストで、有名なチャイコフスキーコンクールやショパンコンクールの審査員を務めています。特に、今回演奏されたラフマニノフなどのロシア音楽での評価が高く、CDもたくさんだされています。私も何度かリサイタルなどを聴きに行っています(
ここここ)が、非常に高い集中力で聴衆を惹きつけ、繊細さと力強さを併せ持つ表現力が特徴です。

さて、ラフマニノフは超絶技巧を特徴とするピアニストであり、今回演奏された2曲は彼の持つテクニックに独特のロマンティックな曲調が加わった名曲です。協奏曲というのはオーケストラに対してピアノを独奏楽器とする楽曲の形式です。この場合、オケはピアノの単なる伴奏ではなく、時に対等に、時にピアノが伴奏に回ってオケがメロディーを奏でることもあり、「楽器の王様」であるピアノと「最高の合奏形態」であるオーケストラの魅力をともに味わうことのできるスタイルです。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はフィギュアスケートでもよく使わるため、ご存じの方も多いでしょう。3つの楽章からなり、全体でおよそ40分。ピアノはほとんど休むことなく両手を動かしています。テクニカルにも表現力という点でも難曲です。この日の演奏は、ピアノもオケも息を合わせ全く隙のないものでした。ピアノとオケが入れ替わるようにメロディーを奏でるところなどでも両者が一つの楽器になっているかのよう。

コンサートホールは舞台の前方(つまり、指揮者を後ろから見る位置)だけではなく、側面や後方(指揮者を前から見る位置)にも座席があります。今回は、舞台後方、指揮者に対してやや右側の席でした。ピアノ協奏曲では、この座席はピアニストをやや後ろから見ることになるのですが、ちょうど鍵盤がよく見え、小山さんの手の動きをじっくりと観察できました。間断なく動き続ける指、ときに上を向き、ときにうつむき加減になってと曲調を全身で表現しているかのようでした。

ラフマニノフの協奏曲第3番はピアノ曲史上の最難曲の一つと言われています。ピアノが弾けない私には詳しく言えませんが、きこえてくる音の数とスピードだけで圧倒されます。このピアノに合わせるオケも大変だと思いますが、また両者を操る指揮者にも相当の力量を要求するでしょう。第1楽章はオケの前奏のようなメロディーを受けてピアノが始まります。楽章中で同じフレーズが3回出てきますが、毎回雰囲気が異なり、その音の大きさと形がすばらしかった。曲全体に対する繊細は¥名感受性の表れでしょう。また、第2楽章、一般に緩徐楽章といい、ゆっくりしたテンポで抒情的なメロディーオケが奏でるのですが、ピアノは非常に細かな動きを連続させます。この部分の両者の対比が見事でした。

オーケストラのコンサートでピアノ協奏曲が演奏される場合、普通は1曲だけ演奏します。プログラミングの考え方によりますが、なんといってもピアニストの技量と体力を考えると2曲も演奏させるのは酷です。特に、今回のようにいずれも難曲中の難曲である協奏曲を2曲も同時に演奏するとは。ピアニストの力量のなせる技です。さらに、この日はピアニストがアンコールとして
ラフマニノフ:プレリュード 作品32第5
を演奏してくれました。協奏曲とは打って変わって、胸にしみいるような味わいのある演奏。数回のコンサートを1回で堪能したような一夜でした。