名フィル《コバケンスペシャル》 十八番の幻想

 先週の水曜日、名フィルの桂冠指揮者である小林研一郎の指揮で
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲
ベルリオーズ:幻想交響曲
ヴァイオリン独奏:徳永二男
指揮:小林研一郎
というプログラムでの演奏会がありました。

 小林は”コバケン”の愛称で知られる日本を代表する指揮者。1998年から2003年まで、名フィルの音楽監督を務めました。名フィルとの相性もよく、観客にも親しまれたキャラクターから、現在は桂冠指揮者として年に1、2回、自身のプログラミングによる特別演奏会を『コバケン・スペシャル』として指揮しています。

 今回の独奏を務めた徳永はNHK交響楽団(N響)のコンサートマスターを務めた、名ヴァイオリニストです。教育テレビで放送されるN響の演奏家で何度も見ていましたが、生で聴くのは今回が初めてです。


 ブルッフは1838年生まれのドイツの作曲家、指揮者、教育者です。作曲ジャンルはオペラ、交響曲、室内楽など多岐にわたっているようですが、現在のオーケストラのレパートリーとしては今回演奏されたヴァイオリン協奏曲などわずかです。1866年に作曲者自身の指揮で初演されました。同時代に作曲された有名なヴァイオリン協奏曲には、メンデルスゾーン(1845年初演)、ブラームス(1879年初演)、チャイコフスキー(1881年初演)などが有名ですが、それに次いで演奏頻度が高いのではないでしょうか。

 甘美なメロディーが随所に現れ、何度聴いても飽きないすばらしい曲です。独奏ヴァイオリン・徳永は安易にメロディーを歌うのではなく、しっかりした音でやや硬い雰囲気の演奏でした。オケともぴったりと息が合い、長年一緒に演奏しているかのようでした。

 ソリストアンコールを期待していたら、コバケンとの対談でした。コバケンの指揮者デビュー、1972年だそうですが、そのときのオケ(東京交響楽団)のコンマスが徳永さんとのこと。あまり内容のない話でしたが、舞台でソリストの話し声を聞く機会はほとんどないためおもしろいアイデアです。

 幻想交響曲は1830年初演、ベートーヴェンやシューベルトの没後すぐの時期に作られていたことが不思議に思えるくらい、奇想天外な曲です。

 『交響曲』と銘打ちながら5楽章構成、それぞれに表題があり、物語の一場面を描くように構成されています。ストーリーは別途紹介しようと思いますが、楽器の構成も木管楽器の中でファゴットだけが4本もあるかとと思えば、舞台裏からオーボエが聴こえたり(今回の演奏では2階席の後方でした)、さらにテューバの2本、ティンパニも2セット、おまけに鐘までも入ります。

 コバケンの指揮は、時にオーバーアクションかと思うくらいに強弱をつけていますが、それぞれが見事にはまっているため、聴いていてわくわくさせられます。オケもコバケンのタクトに応えながら、個人技とアンサンブルを見事に組み合わせた名演でした。今シーズンの名フィルのベストではないでしょうか。聴きに行ったかいがありました。

 幻想交響曲は、大学2年のときに名大オケで、何と今回と同じ小林研一郎の指揮者で演奏したことがあります。当時は小林もまだ若く(と言っても40代ですが)、アマチュアも振ってくれていました。自分たちで何度練習してもうまく合わないところが1回でぴたっと合い、「これが一流の指揮者というものか」と感じたものです。また、今回の演奏では、30年前と比べて振り方が全く同じ場所が何カ所もあり、懐かしさがなおさらこみ上げてきました。

 来シーズンには『コバケン・スペシャル』は予定されていませんが、定期演奏会で《幻想交響曲》がプログラミングされています。(来シーズンの予定はここ:https://www.nagoya-phil.or.jp/news/news_2018_08_29_090155)。