名フィル定期(第357回)

1年生の方は初めてこのページを開くかもしれません.どういうときに書くと決めているわけではありませんが、いつの間にか演奏会記録のようになってしまっています.

さて、名フィルの定期は4月から新年度のシリーズに入りました.オケによっては1-12月で区切りをつけているところもありますが、名フィルは日本の慣例(?)に従って4-3月で切っています.
昨年から常任指揮者が新しくなり、年間を通したテーマを決めてプログラミングしていますが、今シリーズのテーマは「四季」.
ありきたりのようなテーマですが、日本はヨーロッパに比べると季節の違いが際立っているし(常任指揮者はスイス人です)、最近は季節を感じることが少なくなってきているような気がしますし、あえてテーマに選んだのかもしれません.もちろんそれぞれの季節にふさわしい曲をプログラミングしています.

4月のプログラムは、今年がハイドンの没後200年というメモリアルイヤーであることにちなんで、そして年間テーマの冒頭を飾るにふさわしく、
ハイドン作曲:オラトリオ《四季》
指揮者:鈴木秀美、ソプラノ:森麻季、テノール:櫻田亮、バス:清水宏樹、合唱:合唱団ノース・エコー
です.

2時間を超える大曲で、めったに演奏される機会のない曲です.もちろん私も生で聴くのは初めて、というよりCDも持っていませんでした.予習のために全くスタイルの違う2種類を買って聴いてみました.

オラトリオというのは、一般的には宗教的な題材(聖書の中の逸話など)をもとに作られた歌詞を数人の歌手と合唱を伴って演奏するもの.オペラのように衣装をまとったり、舞台をつくったりはせずに、通常のオーケストラの演奏会形式をとります.バロックから古典派の時代にはけっこうたくさん作られています.

この《四季》のいいところ、というか分かりやすいところは、宗教的な題材(つまりキリスト教の話)ではなく、農村の普通の風景を描写した叙事詩をテキストに使っていることです.もちろんドイツ語ですので、聴いてすぐわかるわけではないのですが、音楽的にはやはり曲想が全く違います.あらかじめ対訳歌詞を見て、それなりにストーリーを頭に入れておけば、春の種まきのシーンとか、夏の嵐かなとか、秋の収穫を喜んでいる農民のお祭りかなとか、なじみやすい風景を想像しながら聴けます.実際に鳥や虫の鳴き声、狩人の角笛などを模したメロディーも随所に盛り込まれています.

春、夏、秋、冬の4部構成で、オケだけの序奏に続いてソリストのレチタティーヴォ、そしてアリアや合唱が代わる代わる奏されます.各季節ごとに30分以上あり、夏と秋の間で休憩が入りました.

全体として、自然とそこに根を張った農民の労働に対する賛歌という感じの、非常にすがすがしい曲です.まさに季節を忘れかけ、大地の恩寵をないがしろにしてきた現代のわれわれに、いろんなことを考えさせてくれる一曲です.(^^)

昨日の演奏は新シリーズに入る意気込みが感じられ、また指揮者の鈴木秀美はバッハやハイドンなどの古典派を得意とするひとで、非常にうまく噛みあっていたのではないでしょうか.鈴木秀美はもともとは古楽器(18世紀ごろに実際に使われていた楽器)の演奏家.この日の演奏も、ピリオド奏法という、弦楽器などがビブラートをつけずに演奏する方法を取り入れていました.初心者にはビブラートなどつけないほうがやりやすいでしょうが、いつもつけているプロにはけっこう難しいそうです.音程もごまかせないし.
多分名フィルにとっても初めて(少なくとも定期演奏会では)、私も生でこのピリオド奏法の演奏を聴くのは初めてでした.編成もあまり大きくなかったということもありますが、始めのうちは音量的に物足りないような感じがしましたが、しばらくすると耳がなれたのか、ソリストたちの透明感のある歌声や曲の素朴さともマッチして、十分に聴き応えのある演奏でした.特にコンマスのリードのもと、弦楽器の息の合った演奏が際立ったような気がします.

ピリオド奏法も初体験だったのですが、この曲では「秋」のところで狩人の角笛を模したホルンのファンファーレでナチュラルホルンを使っていました.今までCDでは聴いたことがあったのですが、生は初めて.今のホルンはバルブによって管の長さを自由に変えられるので簡単に音階を奏することができますが、昔のホルンはただ1本の管を丸くしただけなので、倍音(波長の整数倍の音)しか出ません.音階は口元を調節するか、音の出口に手を入れて変えていました.ハイドンの時代には今のようなホルンはなく、このナチュラルホルンが使われていたはずなので、古楽器奏者である鈴木秀美らしいアイデア.大変そうでしたが、効果十分.(ホルンの構造や歴史は
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今回のコンサートで楽しみにしていたのはソリスト、ソプラノの森麻季です.日本人としてはおそらく最も有名なソプラノ歌手、海外のオペラ劇場でも活躍しています.一昨年来日したドレスデン国立歌劇場の公演でも準主役を演じていました(リヒャルト・シュトラウス「バラの騎士」のゾフィー役).CDも出しているので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう.容姿端麗(個人的にはあまり好きではありませんが・・・(>_<))、ソプラノらしい透明感のある声です.オフィシャルHPもあるようですので、興味のある方は一度ご覧ください.(
http://www.makimori.com/index.php

シリーズの最初でちょっと長くなりましたが、次回5月はグラズノフ、シベリウス、そしてドビュッシーです.シベリウスのヴァイオリン協奏曲は泣かせる名曲です.