6月生まれの作曲家5:ストラヴィンスキー

 6月生まれの有名作曲家が多く、5回目はロシア生まれでスイス、フランス、そしてアメリカと渡り歩いたイーゴリ・ストラヴィンスキーです。

 1882年6月17日にロシア帝国の首都ペテルブルク近郊で生まれました。ロシア革命の混乱を避けてスイスへ亡命し、その後パリで活躍してフランス国籍を獲得するも、第二次大戦でのドイツに占領されるフランスを避けてアメリカに渡って、1971年4月6日にニューヨークで亡くなりました。

 住むところが次々と変わっていますが、作風も「カメレオン」と揶揄されるほどにコロコロ変わったようです。しかし、現在も頻繁に演奏されるのはパリにいた30代の頃に作曲した3曲のバレエ音楽です。『火の鳥』、『ペトルーシュカ』、そして『春の祭典』。いずれもディアギレフという興業主に頼まれて作曲しました。それまでのロマン派の影響も感じますが、そこから独自の作風を打ち立てていく過程といえそうです。到達点である『春の祭典』は古代ロシアの風俗に取材したストーリーで、音楽はメロディーよりもリズムに重きを置き、情緒や感情を廃して土俗的と言ってよいでしょう。18、19世紀の音楽を聴き慣れた耳にはとても受け入れられないかもしれません。事実、初演は音楽史上に残る大混乱だったとか。

 『春の祭典』の「祭典」は決してカーニバルでもフェスティバルでもなく、春の訪れを祝う意味を込めているようです。しかし、バレエとしてのストーリーは幼い少女が生贄になる過程を描くもので、キリスト教以前のロシアの古代宗教のしきたりのようです。音楽も優雅さとは程遠く、人間の持つ根源的な欲求や情念のようなものを感じさせます。個人的には20世紀に作曲された音楽の中では最高傑作だと思います。生演奏も何度か聴いていますし、CDも15種類ほど持っています。何度聴いても奥底から突き上げてくるような感情が抑えられません。