METライブビューイング ロッシーニ《セミラーミデ》

 先週土曜日からMETライブビューイング第7作目、ロッシーニ作曲の歌劇《セミラーミデ》が上映されています。金曜日までですが、どなたか観に行かれましたか?

 舞台作品を録画して映画館で上映して、生の舞台を見る機会のない多くの人々に見てもらおうという試みが歌舞伎やミュージカルなどで広がっています。日本では《ライブビューイング》を呼ばれていることが多いですが、その先鞭をつけたと言っていいのが、ニューヨークにある現代を代表する歌劇場であるメトロポリタン歌劇場(The Metroporitan Opera House; 通称MET)の企画です。アメリカでは”MET live in High Difinition”と呼ばれています。国内では松竹系で配給され、字幕などをつける都合で現地より2~3週間遅れますが、各地で1週間上映が続けられます。東海地方では名駅のミッドランドスクエア・シネマで上映されてます。HPはここです:
http://www.shochiku.co.jp/met/

 現地でのシーズンは9月から5月までですが、国内でのMETライブビューイングは11月から6がつ初めです。

 今回の作品は、19世紀初めに活躍したイタリアの作曲家ロッシーニの作品。《セビリアの理髪師》は題名はご存じでしょう。喜劇を中心に手がけていた作曲家ですが、《セミラーミデ》や《ウィリアム・テル》などシリアルなストーリーのオペラ(オペラ・セリア、正歌劇と訳されます)もいくつかつくっています。彼の活躍した時代のオペラは「ベル・カント・オペラ」と呼ばれることもあり、18世紀にモーツァルトなどによって確立されたイタリア語のオペラをさらに練り上げ、ストーリー性を持たせながらも、歌手により高度な技巧を求めるように作曲されています。”Bell canto”はイタリア語で「美しい歌」というような意味です。

 さて、今回の《セミラーミデ》は古代のバビロニアを舞台にした王位をめぐる争いをメインストーリーとして、敵討ちと母子の争いを絡ませた物語です。ストーリーはとりあえず起きますが、中心となる歌手として
ソプラノ1人:主人公であるバビロニア女王・セミラーミデ(アンジェラ・リード)
メゾ・ソプラノ1人:若き軍人で、実は死んだと思われていたセミラーミデは息子・アルサーチェ(エリザベス・ドゥシュング)
テノール1人:バビロニア王の座を狙っているインド王・インドレーノ(ハヴィエル・カマレナ)
バス1人:時期王位を狙うセミラーミデの重臣・アッスール(インダール・アブドラザコフ)
と、代表的な音域を全てカバーし、それぞれがいずれも超絶技巧を要求される難曲。歌手をそろえることが難しく、METほどの超一流歌劇場でも今回は25年ぶりの上演とか。今作はCDも持っていないため、今回が初めて視聴でした。

 実際に聴いてみないとわかりにくいですが、それぞれの常識的な音域を越える高音を聞かせるかと思えば、非常に細かな動きをこなし、とても人間業とは思えない演奏でした。これまでにいろんなオペラを見て来ましたが、技術的な難易度は非常に高い作品です。どの出演者も最初のアリアではやや??と感じるフレーズもありましたが、徐々に調子を上げて、途中からは圧巻でした。

 オペラの魅力は歌だけではなく、オーケストラの演奏や合唱、そして舞台美術と出演者の衣装です。演劇性も含めて「総合芸術」と呼ばれる所以です。今回は25年前の舞台をほぼ再現しているようで、衣装も金色を基調とした重厚感のあるもの。時代考証的には完全におかしいのですが、それを感じさせないところが舞台の良さ。石造りの柱や石棺を思わせる道具類や直接炎を上げる演出も圧倒されました。

 次回は5月5日からの1週間。モーツァルトの名作《コジ・ファン・トゥッテ》です。ストーリーはやや滑稽ですが、モーツァルトの音楽、とりわけ重唱のすばらしさを十二分に味わうことができます。