名フィル定期第422回 下野竜也/ブルックナー1番

2014-2015シーズンの最終回(2015/3/28)は「巨匠の1番」と題して
松村禎三:交響曲第1番
ブルックナー:交響曲第1番ハ短調(ウィーン稿)
指揮:下野竜也
でした。

今回のプログラミングは交響曲を中心に据えて活動した作曲家の「1番」です。指揮者の下野竜也は40代半ばですが、国内では非常に売れっ子の指揮者。名フィルにも何度も客演し、非常にオリジナリティーのある選曲をするかと思えば、オーソドックスに交響曲を中心にして隙のない演奏を聴かせてくれる指揮者です。数年前にも同じくブルックナーの作品(交響曲第7番)で名演を聴かせてくれました。

さて、1曲目の松村の名前をご存じの方はほとんどいないでしょう。私も名前は知っていたものの。生演奏はもちろんはじめて。CDも今回の予習用に買うまでは持っていませんでした。松村は2007年に78歳でなくなった方ですので、まさに現代の作曲家。交響曲は2曲つくっているようですが、第1番は1965年初演。50年前ですね。

曲は打楽器が大活躍する一方で、メロディーらしいものはあまりありません。主題といえるようなフレーズもよく分からないため、いつもいろんな音が鳴っているという感じです。一般にイメージする典型的な現代音楽です。逆に言うと、いろんな楽器の組み合わせによるさまざまな響きを楽しむことができます。演奏者はさぞたいへんだろうなと思いますが、今回の名フィルの演奏は弦楽器の緻密なアンサンブルがすばらしかった。さらに、舞台の4分の1くらいを占めた打楽器、奏者7人の活躍も見事。これだけの打楽器奏者が舞台に載ることはめったにありませんから、それだけでも見物でした。

ブルックナーは交響曲を1番から9番まで書いています。本当は1番の前に2曲あるのですが、習作的であると言うことでほとんど演奏されることもなく、CDもあまりありません(私も持っていません)。9番までのなかではおそらく今回の1番が最も演奏機会が少ないのではないかと思います。若い頃にいったん作った(この状態のものをリンツ稿と言い、1番の中ではよく演奏されます)後、だいぶたってから自身で手を加えました(これがウィーン稿)。ブルックナーが最初にこの第1番を書き上げたのが40歳を過ぎてから。それまでは長く教会のオルガン奏者をしていました。そのためか、ブルックナーの曲には教会の中でオルガンが鳴っているような響きを感じます。しかし、今回の第1番は、ブルックナー自身の頭の中には教会の中でのオルガンの響きがしっかりと残っていたであろうはずなのに、後期の曲ほどには感じません。また、響きの重厚感や曲全体から感じる精神性という点でもやや弱い気がします。やはり、経験の違いなのでしょうか。

今回の名フィルの演奏は、響きの広がりと言うよりも、アンサンブルを重視して隙なく作り上げたという印象でした。悪い意味ではなく、全員の息が指揮者のタクトにぴたっと合っているすばらしい演奏でした。松村の交響曲同様に弦楽器がよくまとまり、さらに金管楽器の音色もよく練られていたと思います。

指揮者の下野竜也は若い頃に当時大阪フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者だった故朝比奈隆のもとで研鑽を積んでいます。さらに、その後は読売日本交響楽団で、スタスラフ・スクロヴァチェフスキーとともに活動をしています。両者はともに世界的なブルックナーの大家。下野がブルックナーで名演を聴かせてくれるのもお二人の薫陶のたまものでしょうか。

4月からは新シーズンが始まります。テーマは「メタ」。metaは接頭語で、~の後の、~の変化した、などの意味で使われます。チョイスされている曲は誰もが耳にしたことのある名曲なども取り混ぜて、ヴァラエティー豊かなプログラムです。第1回目は、4月24日と25日、コルンゴルトの『シュトラウシアーナ』、ヴァイオリン協奏曲とマーラの交響曲第4番です。